TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2013.06.24

消費税増税に向けた実務対応

第9回 仕入税額控除否認事例も!帳簿の記載要件は満たされていますか?

税理士 畑中 孝介TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税の増税法案が成立しました。消費税増税に際してはさまざまな経過措置を理解することが必要になります。このコラムでは経過措置を中心に、95%ルールへの影響、そして増税で一層高まる税務リスク・税務コンプライアンスの取り組みなどとの関連について解説していきます。

 第9回は、仕入税額控除の要件についてです。

 消費税の仕入税額控除を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。現行ではそれらの要件を満たしていないシステムや帳簿も散見されており、課税仕入等の税額控除が否認される事例も実際に出ているようです。今後消費税率アップにより、税務リスクは2倍に高まりますので、今から見直しが必須となります。

帳簿"及び"請求書の保存が要件

 仕入税額控除のために保存する帳簿に記載すべき要件に関しては、消費税法第30条7項に記載されています。「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ税額については適用しない。」とされています。つまり、帳簿"及び"請求書等の双方の保存が要件とされています。

 消費税の導入当初は帳簿"または"請求書ということでいずれか一方でよかったのですが、平成9年4月1日以後については"または"⇒"及び"に変更されています。そのため、現行では請求書及び帳簿双方の保存が必要となっていますので注意が必要です。

 次に帳簿の定義は消費税法第30条第8項各号《仕入税額控除に係る帳簿の記載事項》に定められており下記の4点に関しての記載が必須要件となっています。

イ 相手方の氏名又は名称
  • 原則として、正式名称(フルネーム)
  • 再生資源卸売業など、不特定多数の者から課税仕入れを行う事業の場合は、省略可
ロ 年月日(課税仕入れを行った年月日が異なる場合にはその日付も)
  • 商品の引き渡しを受けた日(相手先がサービス業なら、その役務の提供を受けた日)
  • 水道光熱費や電話料金、賃貸料など、一定の使用料については、「平成25年4月分」といった記載でよい
ハ 資産又は役務の内容
  • 取引内容(商品名等)
  • 正式名称でなくても、食料品代や部品代、文房具代など消費税が課税される物品や役務の提供であることが判断できる程度の記載でよい

ニ 対価の額(税込み)

 本来これらの記載要件をすべて満たしていない場合には仕入税額控除が認められません。一部のシステムにおいてはイの「相手方の氏名または名称」について個別の記載欄が設けられていないことなどから、入力者が気をつけていないと記載漏れが多く発生しているようです。

実際に帳簿の記載要件漏れにより課税仕入れが否認される事例も!

 実際に最近の事例では、イの「相手方の氏名または名称」について個別の記載欄が設けられていないことから記載漏れをしており、ほとんどの課税仕入高が帳簿の記載要件を満たしていないとして否認される事例が複数発生しているようです。

 課税仕入高のほとんどが否認されるということで金額も数千万円を超えるような事例もあるようですし、税務調査の結果そのような指摘がされ過去にさかのぼって更正され、なおかつ加算税や延滞税を課せられるというようなことになった場合には企業経営の屋台骨を揺るがす事態ともなりかねません。

 本来帳簿の記載要件を満たしていない場合には、仕入税額控除が認められません。税務上のコンプライアンス強化の流れはますます強まっており、課税の適正化への取り組みは強化される方向にあります。同様の指摘は増加する傾向と思われます。

 今後、消費税率の引上げにより、きちんとした処理を行っていない場合の税務リスクは2倍に高まります。消費税率アップを機に帳簿の記載要件についてもきちんと見直すべきだと考えられます。

「TKC統合型会計情報システム FX5」画面サンプル

「TKC統合型会計情報システムFX5」入力画面サンプル

プロフィール

税理士 畑中孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー

著書等
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
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