“革新する技術者集団”が取組む会計・税務申告業務の標準化
“はかり”から始まり、包装機、ラベルプリンター、レジなど、卓越した技術力で新しい市場を生み出し続けてきた寺岡精工。その先駆的思想は、会計・税務業務にもおよんでいる。ビジネスサービス部の丹澤一浩常務取締役、塩澤俊係長(アカウンティングサービス課)、安池真司主任(同)、そしてシステムコンサルタントの畑中孝介税理士に話を聞いた。
──創業期から「世界初」の製品を数多く作られているとか。
丹澤一浩常務取締役
丹澤「新しい常識の創造」が当社の変わらぬ理念です。創業者の寺岡豊治は、米国で機械工学を学んで帰国するとすぐに日本初の計算機を開発。さらに「はかり」に目を付けて、ものを置いただけで重さが分かる非常に精度の高い商業用バネばかりを開発しました。これを、当時のお肉屋さんや魚屋さんなどの小売店を中心に販売。会社の基礎が出来たわけです。
──技術革新へのこだわりにはすごいものがあるようですね。
丹澤 はかりというニッチな分野ですが、われわれの技術が業界を牽引(けんいん)してきたと自負しています。たとえば、1960~70年代にかけ、重量と料金の同時読み取りができる機械式料金秤、さらに、それをデジタルで表示する電子式秤、電気抵抗で重さをはかるロードセル方式など、当社がはかりの常識を覆してきました。
──さらに、ラベルプリンターの分野でもイノベーションを……。
丹澤 1981年に感熱紙に印字するサーマルヘッドをラベルプリンターに世界で初めて搭載しました。従来はドラム式のもので数字や文字を打ち出していましたが、サーマルヘッドにすることでバーコードが打てるようになった。その意味でも、当社はバーコードを普及させた立役者の一人だと自負しています。さらに、台紙がなくサイズを自由に設定できる「ライナーレスプリンター」を開発。いまではこの商品が当社の主力です。
セルフ精算専用機
──80年代にはレジ分野に進出されると同時に、88年には大ヒット商品を発売されました。
丹澤 重さをはかり、ラベルを貼る作業とラップ(包装)することを世界で初めて一体化した「自動計量包装値付機」(AWシリーズ)を開発しました。「ラッピー」の愛称で、小売店のバックルームの常識を変えた商品です。
──同じく80年代後半には世界進出に本格的に取り組まれます。
丹澤 「世界市場なくして成長なし」という現会長の寺岡和治の強い意向でした。シンガポール、イギリス、中国と次々と生産拠点を設立し、加えてビジネスシステムを現地化する「グローバルローカリゼーション」を推進。売り上げの半分が海外という時期もありました。現在では7カ国で展開する販売子会社、そして146カ国におよぶ世界の販売ネットワークをつくりあげています。
──そして、近年ではセミセルフレジの評価が高いようです。
セルフスキャニングPOSレジ セミセルフレジのイメージ
丹澤 84年からレジ分野に参入しましたが競合も多く、最初は苦労しました。それでもなんとか他社と違うものを出そうと、フルセルフレジを開発しました。これも当社が初めてです。ところが評判があまり良くない。使い方が分からなかったり誤使用なども頻発し、どうしてもクレームが出てしまうのです。そこで、店員が商品をスキャニングし、お客に手渡したレシートを精算機にかざすと支払金額が表示されるセミセルフレジを考案しました。
──これが受けましたね。
丹澤 昨年度、500店超に導入、今年度は累計1,000店をクリアしそうです。スキャニング後に精算機が点滅するので、迷わずに会計できるし、小銭もまとめて入れることができます。さらに、各レジの釣り銭状況をネットワークで一元管理するキャッシュマネジメントシステムにも高い評価をいただいています。これは、釣り銭機の残高不足・超過等の状態を即座に判別することが可能で、店内の準備金を圧縮したり、閉店時のレジ締め作業の効率化を実現する新しいネットワークソリューションです。
申告作業が2週間から半分の1週間に
──『ASP1000R』を導入されたきっかけは?
塩澤俊係長
塩澤 TKCさんの連結会計システム『eCA-DRIVER』導入が決まった際のミーティングで、当時使用していた申告システムの使い勝手の悪さを何げなく話題にしたら、「『ASP1000R』がありますよ」と。
──どのような使い勝手の悪さがあったのですか。
塩澤 各別表間の整合性がとれなかったり、地方税の処理が非常に面倒だったりといったことです。
──具体的には?
塩澤 別表4(所得の金額の計算に関する明細書)と別表5(利益積立金額及び資本積立金額の計算に関する明細書、租税公課の納付状況等に関する明細書)がうまく連動していないので、一通り作業を終えた後に数字が合わず、チェックし直したりということがよくありました。また、地方税の税率も、申告書を作る前に各地方自治体のホームページを見て確認する作業がとても面倒でした。一方、『ASP1000R』では、前者については入力段階でエラーチェックがかかりますし、後者については、税率マスターによって自動的に計算されます。不満が一挙に解決しました。
──電子申告は以前からされていたのでしょうか。
安池真司主任
安池 いいえ。紙ベースでした。印刷して押印し封入、郵送と2日くらいかけて行っていましたが、それが、『ASP1000R』を導入してからはワンクリックで、「イータックス」(国税電子納税・申告システム)と「エルタックス」(地方税ポータルシステム)にそのままデータを流し込める。非常に楽になりましたね。電子申告といえば、償却資産税の申告も『e-TAX償却資産』の導入によって、これも数日かけて行っていたものが、わずか1日で乗り切れるようになりました。
──かなりの効率化ができたと。
安池 はい。全体でいえば従来は2週間かかっていた税務申告作業が、いまでは半分の1週間です。
──TKCのシステムを採用されたのは、それらの機能面が決め手だったのでしょうか。
塩澤 それもありますが、税務と会計の専門家である畑中(孝介税理士)先生にサポートいただけるというのが大きかったですね。システムまわりだけでなく、会計・税務面での相談にものっていただけるわけですから、安心感があります。
──畑中先生はシステム導入当初、寺岡精工さんに対してどういう印象を持たれていましたか。
畑中孝介税理士
畑中 属人化していた経理業務を標準化・効率化していくスタート時期だったと思います。先ほども話がありましたが、当時のシステムは別表間がうまく連携しておらず、そのため転記ミスも頻発していました。各種優遇税制なども、見逃されていたものもあったようです。それらが『ASP1000R』の導入によって解消されたという印象です。現在でも年2回、システム改訂案内のため訪問していますが、その際にたまった質問をわっといただきます(笑)。最近では消費税、あるいは組織再編についての質問もありました。
──組織再編とは?
丹澤 昨年、グループの一体感を出すために、関連会社の100%子会社化に取り組みました。これを6社で実施したのですが、なにしろ初めてのことなのでどう処理していいのかが分かりません。それで、畑中先生のお知恵を拝借したというわけです。
畑中 中堅・大企業で組織再編をいくつか手がけたことがあるので、その経験をもとにアドバイスさせていただきました。
──今後は?
丹澤 アカウンティングサービス課としては、グループを「ワンカンパニー」へと収斂(しゅうれん)させるためにも、管理会計による有効性の高いデータをより早く提供できるインフラ整備を行っていきたいですね。当社には「2018年度、売上高1,000億円」という中期計画の目標があります。これを実現するには、タイムリーな業績、とくにグローバルキャッシュフローの把握が必要です。そのためには、すべて自社でまかなうのではなく他社の技術を活用しながら効率的に行うことが大切でしょう。その意味で、会計・税務の専門家であるTKCさんとのコラボレーションを今後も深めていきたいと思っています。
名称 | 株式会社寺岡精工 |
自動計量包装付機 |
---|---|---|
創立 | 1934年11月 | |
所在地 | 東京都大田区久が原5-13-12 | |
売上高 | 859億円(2015年度 連結) | |
社員数 | 3,539名(2015年12月現在 連結) | |
URL | http://www.teraokaseiko.com/ |
『戦略経営者』2016年8月号より転載
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