更新日 2013.04.15

消費税増税に向けた実務対応

第5回 軽減税率とシステム対応

  • twitter
  • Facebook

税理士 畑中 孝介TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税の増税法案が成立しました。消費税増税に際してはさまざまな経過措置を理解することが必要になります。このコラムでは経過措置を中心に、95%ルールへの影響、そして増税で一層高まる税務リスク・税務コンプライアンスの取り組みなどとの関連について解説していきます。

 消費税率の引上げは8%・10%と1年半の間に2回引上げが行われることになっています。それに加え第4回目までに記載した通り経過措置がいろいろと講じられておりますので、結果として当分の間の税率は5%・8%・10%が混在することが考えられます。また、将来的には軽減税率が導入される可能性があることから、会計システムだけでなく、レジや販売管理システムなど広範なシステムの改修が必要になる可能性があります。
 以下にその注意点を記載しますのでご参考にしてください。

Ⅰ 軽減税率について

 軽減税率の導入は、「企業の事務負担増への懸念」や「対象品目の絞り込みが間に合わない」等の理由から、平成25年度税制改正大綱では、「消費税率10%引き上げ時に軽減税率導入を目指す」こととされ先送りされました。
 今後協議すべき課題としては「対象、品目・軽減する消費税率・財源の確保・インボイス制度など区分経理のための制度の整備・中小事業者等の事務負担増加、免税事業者が課税選択を余儀なくされる問題への理解・その他」などが挙げられています。

<ご参考>諸外国の軽減税率例

【フランス】
  • 国内産業保護のためにキャビアは標準税率、フォアグラ・トリュフには軽減税率
  • チョコレートは標準税率だが、板チョコは軽減税率
【イギリス】
  • ハンバーガーなど暖かいテイクアウト商品は標準税率、惣菜などの気温より低いものは軽減税率
【ドイツ】
  • 店内で飲食すると標準税率、持ち帰ると軽減税率
【カナダ】
  • ドーナツ5個以下は標準税率だが、6個以上は軽減税率

Ⅱ システム対応について

1.販売管理システムのバージョンアップ
  • 複数税率(5%・8%・10%)への対応は可能ですか?
  • 移行期において、それぞれの税率別の売上集計・消費税の集計が可能ですか?
  • 将来、貸倒・値引き・返品等があった場合でも税率の追跡は可能ですか?
2.会計システムのバージョンアップ

 会計システムでの複数税率(5%・8%・10%)対応では、前述のとおり経過措置がありますので、当分の間は複数税率への対応が必要となります。
 会計システムにおける消費税の課税仕入れの「税区分」と「税率」の取り扱いについては、以下の2種類に大別されます。

(1)「税区分」と「税率」を個別に組み合わせるタイプ

(2)「税区分」と「税率」がセットになっているタイプ

 (2)のタイプの場合には、5%・8%・10%が混在する際、多くの税区分(2.5倍~3倍)が生じることになるため、対応コストへの留意はもちろん、実際の運用に当たって税区分を間違えずに選択する注意が必要となります。
 また、消費税複数税率対応に当たっては、システム会社から対応コスト等の見積もりを事前に取得しておかないと、思わぬコスト負担が生じることも考えられます。

3.レジシステム等

 レジシステム等に関しては、消費税率切り替え時の円滑な切り替え対応はもちろんですが、特に月末締め以外の店舗では月報等で税率別の集計が可能かどうかの確認が必要となります。また、上述の軽減税率が導入された場合、同一商品の販売であっても個数や温度により税率が異なる場合がありますので軽減税率への対応についても別途必要になることが考えられます。

  • twitter
  • Facebook

この連載の記事

テーマ

プロフィール

この執筆者の記事一覧へ

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和4年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。