更新日 2013.06.10
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税の増税法案が成立しました。消費税増税に際してはさまざまな経過措置を理解することが必要になります。このコラムでは経過措置を中心に、95%ルールへの影響、そして増税で一層高まる税務リスク・税務コンプライアンスの取り組みなどとの関連について解説していきます。
前回、見込み納付期限が近く、ミスが多発していることから急遽「緊急掲載:決算申告でミス多発!交際費等の別表加算も必要となる控除対象外消費税額等」を掲載しましたが、今回はそもそもの控除対象外消費税額等についての説明をさせていただきます。
95%ルール適用除外となった場合には、従前とは異なる処理が必要となり、「一括比例配分方式」「個別対応方式」のいずれかを選択して税額計算を行うこととなります。その結果、仕入税額控除の対象外となった仕入税額は、その発生原因が資産にかかわるもので、かつ多額の場合には、一定の期間で償却することとなり、それ以外の場合にはその年度の損金として処理することができます。
95%ルール改正は、平成24年4月1日以後開始事業年度から適用されます。実質的には平成25年3月決算法人の申告から適用開始となりますので、「慣れない処理のため誤った処理をしてしまう」や前回説明しましたように「法人税でも今までと異なる処理が必要なのに気がつかないで申告書を作ってしまう」ということがないように注意しましょう。
1.控除対象外消費税額等の概要
改正後は、課税売上高が5億円超の事業者については95%ルールの適用が除外され、「課税売上げにのみ要する課税仕入れ」しか控除できないことになり、控除できない消費税額等(控除対象外消費税額等)が発生することになります。
2.控除対象外消費税額等の税務処理
控除対象外消費税額等は、「資産に係る控除対象外消費税額等」と「資産に係るもの以外の控除対象外消費税額等」の2つに分けて処理をすることとなります。
- (1)資産に係る控除対象外消費税額等
- 資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法によって、損金の額に算入します。
- その資産の取得価額に算入し、それ以後の事業年度において償却費などとして損金の額に算入します。
- 次のいずれかに該当する場合には、損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に算入します。
- その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること。
- 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること。
- 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること。
- 上記に該当しない場合には、「繰延消費税額等」として資産計上し、繰延消費税額等/60×事業年度の月数(資産取得年度はその1/2)の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。
- (2)控除対象外消費税額等が資産に係るもの以外である場合
- 一般的には雑損失や租税公課等の科目で処理をし、全額をその事業年度の損金の額に算入します。
3.その他の留意点
- そもそも税込経理方式を採用している場合には、消費税額は資産の取得価額又は経費の額に含まれますので、特別な処理は要しないこととなります。
- 交際費等に係る控除対象外消費税額等に相当する金額は交際費等の額として、交際費の金額に加算した上で交際費等の損金不算入額を計算します。
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テーマ
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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