消費税増税に向けた実務対応

第4回 経過措置③ 長期割賦販売・リース契約・資産の貸付・サービス提供など

更新日 2013.04.01

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税理士 畑中 孝介TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税の増税法案が成立しました。消費税増税に際してはさまざまな経過措置を理解することが必要になります。このコラムでは経過措置を中心に、95%ルールへの影響、そして増税で一層高まる税務リスク・税務コンプライアンスの取り組みなどとの関連について解説していきます。

1.長期割賦販売等

(1)長期割賦販売等の概要

 法人税や所得税において延払基準を適用し長期割賦販売等を行った場合には、消費税においても売上の計上時期にあわせて消費税の課税売上高を計算することが"できる"こととされています。
 なお、長期割賦販売等には資産の販売譲渡や工事・製造の請負、役務の提供が含まれますが、長期大規模工事の請負は除かれています。

長期割賦販売等に該当するための要件は以下の3点です。

  1. 月賦、年賦等で3回以上に分割して支払
  2. 販売等から最終支払期日まで2年以上
  3. 頭金・申込金などが2/3以下

(2)経過措置の内容

 平成26年4月1日以前に行った長期割賦販売等については、経過措置として施行日以後に売り上げを計上した分についても引き続き税率5%を適用することができます(工事進行基準を採用した長期大規模請負工事は除きます)。

2.リース契約

(1)リース契約の概要

 平成19年度税制改正により、平成20年4月1日以後に行われるリース取引(所有権移転外ファイナンス・リース取引)については、従来のリース処理ではなく資産の売買取引とされました。
 そのため、リース取引については、原則としてリース資産の引渡しを行った日に資産の譲渡があったことになり、売買取引と同じように譲渡対価の全額が課税対象になります。この点は前回の消費税率引き上げ時とは大きく異なっておりますので注意してください

(2)毎月リース料として計上している場合の特例

 毎月リース料として計上している場合は、特例として従来どおりリース料を支払いの都度リース料として計上し、課税仕入れとして消費税の申告をすることも認められます。
 この特例は、賃貸借処理に基づいて分割控除して差し支えないとしたものですから、その場合の税率は契約締結時の旧税率を適用すべきだと考えられます。
 結果として(1)の原則的な売買処理として処理する場合でも、(2)の特例的な賃貸借処理とする場合も、いずれもリース資産の引渡し時の税率を適用することとなります。

3.資産の貸付

経過措置適用の要件

 平成25年9月30日までに契約締結し、平成26年3月31日までに貸付を開始した場合には、平成26年4月1日以降についても旧税率を適用することが可能です。

しかし、いくつかの要件を満たす必要があります。

  1. 平成26年3月31日までに引き渡し、貸付を開始すること
  2. 平成26年4月1日以降に引き続き貸付を行っていること
  3. 貸付の期間と対価の額が定められていること
  4. 事業者が対価の額の変更を求めることができないこと
  5. 契約期間中にいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがない こと

など

(ご注意)一般的な不動産契約においては経過措置は適用できない?
 一般的な不動産契約では「賃料が経済事情の変動、公租公課の増額、近隣の同種物件の賃料との比較等によって著しく不相当となったときには、協議のうえ、賃料を改定することができる」といった旨の規定がありますので、そのような場合には上記④「事業者が対価の額の変更を求めることができないこと」に該当しないため、経過措置を適用できないこととなります。

4.サービス提供・水道光熱費・定期代

(1)経過措置の適用対象

経過措置の対象となり、旧税率が適用されるものは以下のとおりです。

  1. 旅客運賃、映画、演劇等の料金を施行日前に支払っている場合
  2. 電気、ガス、水道水及び電気通信料等で施行日から1カ月の間に検針されるもの

また、平成9年の改正では

  1. 競馬場、競輪場、小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金
  2. 美術館、遊園地、動物園、博覧会の入場料

も同様に対象となっています。

(2)具体例

 たとえば交通機関の定期券を施行日前に購入していた場合は上記の①に該当します。
 また、前売入場券を施行日前に購入し、施行日後に使用した場合などは③④に該当し、それぞれ旧税率が適用されることになります。

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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