更新日 2013.03.04
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税の増税法案が成立しました。消費税増税に際してはさまざまな経過措置を理解することが必要になります。このコラムでは経過措置を中心に、95%ルールへの影響、そして増税で一層高まる税務リスク・税務コンプライアンスの取り組みなどとの関連について解説していきます。
1.請負契約における経過措置の概要
消費税法上、請負による資産の譲渡等の時期は、原則として相手方に引き渡した日もしくは役務の全部を完了した日とされています。しかし、指定日(平成25年10月1日)の前日、つまり平成25年9月30日までに契約が行われた場合には、引渡しが施行日(平成26年4月1日)以降になった場合であっても旧税率の5%が適用されることになります。また、契約後に追加工事等で契約金額が増加した場合については、全体が新税率の適用を受けるわけではなく、増額分の金額のみが新税率の適用対象となります。
また、この経過措置の適用を受ける場合には契約の相手方に対し、旧税率の適用を受けたことを"書面(契約書や請求書等)"で通知する必要があります。
2.対象は建築契約だけではない!
平成9年の改正を例に取ると、以下のように意外に広い範囲が経過措置の対象になっています。
- 建築請負契約
- 製造請負契約
- 測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計
- 映画の制作
- ソフトウエアの開発
- その他の請負に係る契約(修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、情報提供、検査・検定等の事務処理、市場調査)
請負契約というと建築契約をイメージする方が多いと思いますが、「仕事の完成に長期間を要し、かつ、当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているもので、契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの」とされていますので、対象は建築契約に限らないこととなります。
3.リフォーム・修理・大規模修繕でも適用あり
経過措置の取扱いは、上述の「2.対象は建築契約だけではない!」に記載の通り、建築の請負契約にとどまりません。
住宅関連であれば、以下のものも経過措置の対象となります。
- リフォーム
- 修繕
- 改修工事
自宅のリフォームやバリアフリー等の改修工事、自宅や賃貸物件の修繕・大規模修繕等の工事も同様になりますので、特に期間が長くなるような大規模修繕等では早めの計画と契約が重要になります。
4.マンション購入の場合の留意点
一般的なマンションの分譲の場合には、請負契約ではなく資産の譲渡契約となりますので上述の経過措置の適用は受けられません。
しかし、建売住宅やマンション等の建物の譲渡に係る契約であっても、建物の内装・外装・設備などに注文工事がある場合には、平成9年の改正の例をとると、経過措置の適用対象となると思われます。特別な注文等が無い場合には請負工事ではなく、単なる完成物の引渡しとなり、経過措置が受けられないことが考えられます。
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テーマ
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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