更新日 2013.03.18
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税の増税法案が成立しました。消費税増税に際してはさまざまな経過措置を理解することが必要になります。このコラムでは経過措置を中心に、95%ルールへの影響、そして増税で一層高まる税務リスク・税務コンプライアンスの取り組みなどとの関連について解説していきます。
1.売上返品貸倒の経過措置
商品の販売仕入を行い、その後返品・値引き・割戻しがあった場合、販売仕入時点にさかのぼって処理をするのではなく、その「返品・値引き・割戻しがあった」時点の課税期間で処理をすることとなっています。
しかし、その際に適用する税率は「返品・値引き・割戻しがあった」時点での税率ではなく、販売仕入があった時点での税率を適用することとされています。
また、貸倒についても同様に貸倒時点での税率ではなく、販売時点での税率が適用されます。
2.仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の留意点
消費税95%ルールの適用除外となった場合などで、消費税が全額控除ではなく「個別対応方式」もしくは「一括比例配分方式」を採用している事業年度分の仕入れの返品・値引き・割戻し等の対価の返還を受けた場合には、全額控除はできず「個別対応方式」または「一括比例配分方式」の調整計算を行うことになります。
3.棚卸資産にかかる消費税額の調整
免税事業者が課税事業者となる場合、免税期間の期末棚卸資産にかかる消費税額は、課税事業者となった期間の課税仕入れの額とみなされます。
この場合の税率については、施行日前に仕入れた商品に関しては旧税率が適用されることとなりますので注意してください。
なお、課税事業者が免税事業者となる場合についても同様に施行日前に仕入れた商品に関しては旧税率が適用されることとなります。
4.売掛金・買掛金・棚卸資産は税率別の管理が必要になります
消費税改正後に値引きや貸倒等が生じた場合には、その販売(仕入)された商品の当時の税率が何%だったかの情報が必要となります。
同様に、返品等が生じた場合には、どの税率時代に販売(仕入)された商品で当時の税率が何%だったかの情報が必要となります。
そのため商品受け払い帳や取引先元帳・台帳等できちんと税率区分が明確になるよう管理することが求められます。
(注意) 締日が月末以外の企業は変更直後の時期では同月内に2つの税率区分が生じることになりますので特に注意が必要です。
(例)20日締めのケース
請求書(3月21日~4月20日)
うち、3月21日~3月31日…5%
うち、4月1日~4月20日…8%
※このようなケースで4月20日締めの請求書の会計処理をする際に請求金額全体に対し消費税率8%を課し会計処理を行ってしまった場合は誤った会計処理となってしまいます。
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テーマ
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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