2018.08.28
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25560842/東京高等裁判所 平成30年 1月18日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第4886号
認知症の要介護者が、被控訴人との間の訪問介護契約に基づき在宅介護を受け、被控訴人が派遣したヘルパーが昼食の副食として調理、提供したシュウマイを摂食した際、誤嚥を起こし、シュウマイを喉に詰まらせる事故を起こし、それにより低酸素脳症に陥り、嚥下性(誤嚥性)肺炎が原因で死亡したことについて、亡き要介護者の兄弟姉妹で相続人である控訴人らは、ヘルパーが、(1)要介護者の介護に当たり、食事時の誤嚥リスクを十分に理解していたにもかかわらず、ア 食品の調理を刻み食にするなどせず、シュウマイを4分割しただけで、かつ適切な調理を怠って提供し、イ 食事中も要介護者を見守り、声をかけるに止まり、食事方法について適切な指示、介助をしなかったことにより、本件事故を発生させ、(2)その後も直ちに救急車の出動を要請するなど適切な応急措置を執らなかったことから、要介護者は、低酸素脳症に陥り、嚥下性肺炎により死亡したと主張して、使用者責任による損害賠償請求権に基づき、被控訴人に対し、控訴人につき慰謝料及び弁護士費用、その余の兄弟姉妹らにつき各慰謝料及び各弁護士費用の支払等を求めたところ、原判決は、ヘルパーについて上記(1)ア及びイの注意義務違反を認めることができず、上記(2)のような救命措置についての注意義務違反もなかったとして、控訴人らの本件各請求をいずれも棄却した。このため、第1審で訴えを取り下げた者を除く兄弟姉妹らは控訴人を選定当事者として控訴をし(控訴人以外の者については控訴を取り下げた)、また、控訴人は、当審において、使用者責任(不法行為)に加えて、債務不履行(契約及びそれに付随する安全配慮義務違反)による損害賠償請求も追加した事案において、ヘルパーには、不法行為上並びに本件契約上あるいは本件契約に付随する、食事の調理、提供に関する注意義務(結果回避義務)違反、摂食中の注意義務(結果回避義務)違反及び誤嚥後の注意義務違反はないから、本件控訴及び当審における控訴人の追加請求はいずれも理由がないものと判断し、本件控訴を棄却し、当審における追加請求も棄却した事例。