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2024.12.17
不動産登記申請却下処分取消請求事件 new
「新・判例解説Watch」民法(家族法)分野での解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573858/最高裁判所第三小法廷 令和 6年11月12日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第165号
被上告人らは、いずれもBとその夫との間に出生した子であり、C(本件被相続人)は、Bの母の姉であるDの子であるが、Bは、被上告人らの出生後の平成3年▲月にDとの間で養子縁組をし、これにより本件被相続人の妹となった後、平成14年▲月に死亡し、その後、本件被相続人は、平成31年▲月に死亡し、本件被相続人には、子その他の直系卑属及びB以外の兄弟姉妹はおらず、死亡時においては直系尊属及び配偶者もいなかったところ、被上告人らが、民法889条2項において準用する同法887条2項の規定によりBを代襲して本件被相続人の相続人となるとして、本件被相続人の遺産である土地及び建物につき、相続を原因とする所有権移転登記及び持分全部移転登記の各申請をしたが、横浜地方法務局川崎支局登記官は、上記各申請は不動産登記法25条4号の「申請の権限を有しない者の申請」に当たるとして、これを却下する旨の各決定をしたため、被上告人らが、上告人・国を相手に、本件各処分の取消しを求めた事件において、控訴審が、上記事実関係の下において、本件各処分は違法であるとして、被上告人らの請求を認容したことから、上告人・国が上告した事案で、民法889条2項において準用する同法887条2項ただし書は、被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子である場合に、被相続人との間に養子縁組による血族関係を生ずることのない養子縁組前の養子の子は、養子を代襲して相続人となることができない旨を定めたものと解されるから、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができないと解するのが相当であって、本件において、被上告人らは、本件被相続人とBの共通する親であるDの直系卑属でないから、Bを代襲して本件被相続人の相続人となることができず、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2024.12.17
発信者情報開示命令申立却下決定に対する即時抗告申立事件 new
「新・判例解説Watch」国際私法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573801/知的財産高等裁判所 令和 6年10月 4日 決定(抗告審(即時抗告))/令和6年(ラ)第10002号
抗告人(原審申立人)が、インターネット接続サービスを提供する台湾法人である相手方(原審相手方)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項、8条の規定に基づき、本件各投稿に係る発信者情報の開示命令の申立てをし、原審は、本件各投稿について、台湾に所在する相手方が、台湾に所在する者との間で締結された台湾に所在する者向けのプロバイダ契約に基づき提供したインターネット接続サービスを利用して行われたことがうかがわれるとして、本件申立ては日本において事業を行う者に対する日本における業務に関するものであるとはいえないから、日本の裁判所にプロバイダ責任制限法9条1項3号所定の国際裁判管轄があるとはいえないとして却下されたため、抗告人が抗告をした事案において、本件各投稿は、実質的に見て日本に居住する日本人向けとしか考えられないようなインターネット接続サービスを利用して行われたといえるところ、外国に業務の本拠を置くプロバイダが利用されたからといって、当該業務が「日本における」ものでないとして我が国の国際裁判管轄を否定するのは相当でなく、本件申立ては、「申立てが当該相手方の日本における業務に関するもの」に当たるとして、原決定を取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2024.12.10
難民不認定処分等取消請求事件 
LEX/DB25621201/東京地方裁判所 令和 6年10月25日 判決(第一審)/令和3年(行ウ)第278号
中華人民共和国の国籍を有する外国人男性である原告が、cの思想に従って活動しているc修煉者であることから、中国に帰国すると迫害を受けるおそれがあるとして、法務大臣に出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づき、難民の認定の申請をしたところ、法務大臣から難民の認定をしない処分を受けたため、本件不認定処分の取消しを求めるとともに、原告に対する難民の認定の義務付けを求めた事案で、原告には、迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情に加え、cの思想に従った活動をする者であることを理由として、中国政府による迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を抱くような客観的事情があると認められるから、原告は、難民に該当すると認められ、原告を難民として認定しなかった本件不認定処分は、違法であり、また、本件義務付けの訴えは適法である(行訴法37条の3第1項2号)として、法務大臣が原告に対してした難民の認定をしない処分を取り消し、法務大臣に対し、原告に同法61条の2第1項の規定による難民の認定をすることを命じた事例。
2024.12.10
再審請求事件(福井女子中学生殺人事件第二次再審請求開始決定) 
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和7年3月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621140/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 6年10月23日 決定(再審請求審)/令和4年(お)第2号
請求人(当時20歳)が、P2(被害者)方において、P2の二女であるP3(当時15歳)といさかいになって激昂の余り、殺意をもって、被害者に対し、同室にあったガラス製灰皿でその頭部を数回殴打し、同室にあった電気カーペットのコードでその首を絞め、同室にあった包丁でその顔面、頸部、胸部等をめった突きにし、よって、その頃、同所において、被害者を脳挫傷、窒息、失血等により死亡させ殺害したが、請求人は本件当時、シンナー乱用による幻覚、妄想状態で、心神耗弱の状態にあったとして、殺人罪に問われ、名古屋高等裁判所金沢支部が平成7年2月9日に請求人を懲役7年に処し、確定したところ、請求人が第2次再審請求をした事案で、本件殺人事件については、もともと請求人の自白はもちろん、犯人性を直接基礎付ける物証や犯行目撃供述は存在しないところ、確定判決によって、慎重な信用性判断を要する主要関係者供述に依拠して立証された間接事実により請求人が犯人と認定された事案であるが、その主要関係者供述についても、本件殺人事件との関連性が強い客観的裏付けに乏しいものの、最終的に主要関係者が概ね一致して確定判決にいう大要を供述していることを理由に、相互に各供述を補強し、その信用性が肯定されたといえるところ、しかしながら、主要関係者供述が大筋で一致しているからといって、同供述が実際に体験した事実を供述するものとは評価することはできず、確定判決のように主要関係者供述の信用性を認めることは、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則にもとることになり、正義にも反し許されないというべきであるから、主要関係者供述を間接証拠として、犯行可能性、血痕目撃や犯行告白といった間接事実は認定することができず、弁護人らが提出した心理学者作成の鑑定書や、他の新証拠を更に検討するまでもなく、請求人が本件殺人事件の犯人であることについては合理的な疑いを超える程度の立証がされているとは認められず、請求人を犯人であると認めることはできないから、弁護人らの主張には理由があるとして、本件について再審を開始した事例。
2024.12.03
損害金請求事件 
LEX/DB25621110/水戸地方裁判所下妻支部 令和 6年10月23日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第200号
被告市議会の議員である原告らが、被告市議会からそれぞれ出席停止の懲罰(地方自治法135条1項3号)を受けたことについて、同懲罰を原告らに科したのは被告市議会の裁量権を逸脱するものであって違法な公権力の行使であるとして、国家賠償法1条による損害賠償請求権に基づき、被告に対し、それぞれ、慰謝料等の支払を求めた事案で、本件配布行為はそもそも懲罰事由に当たらないものというべきであるから、本件配布行為を懲罰事由とした本件懲罰1は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとし、また、本件懲罰2の相当性を判断するに際しては前件懲罰において出席停止1日という処分がされたことを前提とすることは相当ではなく、議会における議員の発言の自由の重要性にかんがみると、議会の自律性を踏まえても、本件懲罰2において発言機会を奪う結果となる出席停止3日という処分としたことは重きに過ぎ、議会の裁量権を著しく逸脱した又はこれを濫用したものというべきであるから、本件懲罰2は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとして、原告らの請求を一部認容し、なお、事案の性質にかんがみ、前件懲罰、本件懲罰1及び本件懲罰2においてはいずれも、議長の指名により懲罰動議を発議した議員のみによって懲罰特別委員会が構成され、前記各懲罰を行うことを求める委員会報告がなされ、前記各懲罰に至ったことが認められるところ、このような委員会の構成方法は、委員会へ付託し慎重な審理を求めた古河市議会会議規則162条の趣旨に反するのではないかとの疑問を禁じ得ないところである、と付言した事例。
2024.12.03
損害賠償請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年1月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621082/札幌高等裁判所 令和 6年 9月13日 判決(控訴審)/令和6年(ネ)第8号
ホテルの運営を行う被控訴人(被告)会社において宿泊部部長として勤務していた控訴人(原告)が、アメリカ合衆国ハワイ州で挙行される控訴人の娘の結婚式に出席するため年次有給休暇の時季を指定したが、渡航予定日の前日に被控訴人から新型コロナウイルス感染症に関する状況等を理由に時季変更権の行使を受け、渡航及び結婚式への出席ができなかったことについて、当該時季変更権の行使は、時季変更事由である被控訴人の「事業の正常な運営を妨げる場合」(労働基準法39条5項ただし書)に当たらないから違法であり、違法な時季変更権の行使により精神的苦痛を被ったなどと主張して、被控訴人に対し、労働契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求め、原審が控訴人の請求を棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、不可避に伴う海外渡航によって控訴人自身が新型コロナウイルスに感染する危険性が高まることなどは、被控訴人の事業運営を妨げる客観的事情であると認められるから、本件期間に有給休暇を与えることは被控訴人の「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するといわざるを得ない一方、休暇開始日の前日に至って本件時季変更権を行使したことは、合理的期間を経過した後にされたものであって権利の濫用というほかなく、違法とすべきであるところ、結婚式に参加することができなかったことによる精神的苦痛を上記不法行為と相当因果関係のある損害ということはできず、控訴人の請求は、本件期間開始の前日に本件時季変更権が行使されたことによって休暇取得に対する期待を侵害されたことによる精神的苦痛の限度で相当因果関係が認められ、本件控訴は前記の限度で理由があるとして、原判決を変更した事例。
2024.11.26
地位確認等請求事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年2月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573841/最高裁判所第一小法廷 令和 6年10月31日 判決(上告審)/令和5年(受)第906号
上告人(被控訴人・被告)との間で期間の定めのある労働契約を締結し、上告人の設置する大学の教員として勤務していた被上告人(控訴人・原告)が、労働契約法18条1項の規定により、上告人との間で期間の定めのない労働契約が締結されたなどと主張して、上告人に対し、労働契約上の地位の確認及び賃金等の支払を求め、第一審が被上告人の請求を棄却したため、被上告人が控訴し、控訴審(原審)が、本件労働契約は大学の教員等の任期に関する法律7条1項所定の労働契約には当たらないとしたうえで、労働契約法18条1項の規定により、被上告人と上告人との間で無期労働契約が締結されたとして、被上告人の地位確認請求を認容し、賃金等の支払請求の一部を認容したことから、上告人が上告した事案で、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職の意義について、殊更厳格に解するのは相当でないというべきであり、本件事実関係によれば、上記の授業等を担当する教員が就く本件講師職は、多様な知識又は経験を有する人材を確保することが特に求められる教育研究組織の職であるというべきであるから、本件講師職は、任期法4条1項1号所定の教育研究組織の職に当たると解するのが相当であって、以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、前項の部分につき、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2024.11.26
住居侵入、強盗殺人、放火被告事件(袴田事件再審無罪判決) 
LEX/DB25621141/静岡地方裁判所 令和 6年 9月26日 判決(再審請求審)/平成20年(た)第1号
被告人が、住居侵入、強盗殺人、放火の罪で起訴され、被告人を死刑に処する旨の判決が確定したが、その後の再審請求審(第2次再審請求審)が、提出された新証拠は、刑事訴訟法435条6号にいう無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当するとして、再審を開始するとの決定(本件再審開始決定)をしたため、検察官が即時抗告又は抗告を申し立て、差戻前抗告審は、本件再審開始決定を取り消したことから、弁護人が特別抗告を申し立て、最高裁判所は本件を東京高等裁判所に差し戻す旨の決定をし、差戻抗告審が、1号タンクから発見された5点の衣類に付着した血痕の色調に赤みが残っていたことは、被告人を本件犯行の犯人とした確定第1審判決の認定に合理的な疑いを生じさせることが明らかであるとして、検察官の即時抗告を棄却する決定をし、本件再審開始決定が確定したため、再審公判が行われた事案で、被告人の犯人性を推認させる最も中心的な証拠とされてきた5点の衣類は、本件の犯行着衣であるとも、被告人が本件犯行後に1号タンク内に隠匿したものであるとも認められず、本件事件から長期間経過後のその発見に近い時期に、本件犯行とは関係なく、捜査機関によって血痕を付けるなどの加工がされ、1号タンク内に隠匿されたものであって、捜査機関によってねつ造されたものと認められ、また、5点の衣類と被告人を結び付けるという端切れも、捜査機関によってねつ造されたものと認めるのが相当であり、5点の衣類及び端切れは、本件とは関連性を有しない証拠であるから、本件の証拠から排除され、被告人が本件犯行の犯人であることを裏付ける証拠にはならず、そして、5点の衣類を除いた証拠によって認められる事実関係は、被告人が本件犯行の犯人であるとすれば整合するといった程度の限定的な証明力を有するに過ぎず、被告人以外の者による犯行可能性を十分に残すものであるところ、本件の事実関係には、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難な事実関係が含まれているとはいえず、被告人を本件犯行の犯人と認めることはできないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2024.11.19
仮差押命令認可決定に対する保全抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573832/最高裁判所第三小法廷 令和 6年10月23日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第1号
抗告人が、文化功労者年金法所定の文化功労者である相手方を債務者として、相手方の第三債務者国に対する同法に基づく年金の支給を受ける権利について仮差押命令の申立て等をし、原審(大阪高等裁判所)が、文化功労者自身が現実に本件年金を受領しなければ本件年金の制度の目的は達せられないから、本件年金の支給を受ける権利は、その性質上、強制執行の対象にならないと解するのが相当であり、上記権利に対しては強制執行をすることができないというべきであると判断し、上記権利の仮差押えを求める本件申立ては理由がないとして、これを却下したことから、抗告人が許可抗告をした事案で、文化功労者年金法その他の法令において、本件年金の支給を受ける権利に対して強制執行をすることはできない旨を定めた規定は存せず、そして、文化功労者年金法の上記の各定めによれば、本件年金は、文化功労者の功績等を世間に知らせ、表彰することを目的として支給されるものと解され、そうすると、国が文化の向上発達に関し特に功績顕著な者を文化功労者として決定することにより、その者に本件年金の支給を受ける権利が認められることで、表彰の目的は達せられるものといえ、その者が現実に本件年金を受領しなければ上記目的が達せられないとはいえず、したがって、本件年金の支給を受ける権利は、その性質上、強制執行の対象にならないと解することはできず、本件年金の支給を受ける権利に対しては強制執行をすることができるというべきであるとして、原決定を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2024.11.19
文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621078/最高裁判所第二小法廷 令和 6年10月16日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第5号
複数の者が共同して実行したとされる学校法人Fを被害者とする大阪地方検察庁の捜査に係る業務上横領事件の被疑者の1人として逮捕、勾留され、本件横領事件について起訴されたが、無罪判決を受けた抗告人が、上記の逮捕、勾留及び起訴が違法であるなどと主張して、相手方に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた本案訴訟(損害賠償請求事件)において、抗告人が、検察官がEを本件横領事件の被疑者の1人として取り調べる際にEの供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体等について、民事訴訟法220条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に該当するなどと主張して、文書提出命令の申立てをし、原々審が相手方・国に本件対象部分の提出を命じ、その余の本件申立てを却下する決定をしたことから、相手方が即時抗告をし、原審が、相手方に本件公判提出部分の提出を命ずべきものとする一方、本件申立てのうち本件公判不提出部分に係る部分を却下したところ、抗告人が抗告した事案で、本件公判不提出部分の提出を拒否した相手方の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものというべきであるとしたうえで、以上と異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから、論旨は理由があり、原決定のうち本件公判不提出部分に係る本件申立てを却下した部分は破棄を免れず、相手方に本件公判不提出部分の提出を命じた原々決定は正当であるとして、上記部分につき相手方の抗告を棄却した事例(補足意見あり)。
2024.11.12
大垣警察市民監視国家賠償、個人情報抹消請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和6年12月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25621036/名古屋高等裁判所 令和 6年 9月13日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第287号
岐阜県警察本部警備部及び岐阜県警各警察署警備課が、一審原告らの個人情報を長年にわたって収集、保有し、大垣警察署警備課の警察官がそれらの情報の一部を民間企業に提供したことにより、一審原告らの人格権としてのプライバシー等が侵害されたとして、一審原告らが、一審被告県に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金の支払等を求め(甲事件)、また、一審原告らが、人格権としてのプライバシーに基づき、一審被告県に対しては岐阜県警等が保有する、一審被告国に対しては警察庁警備局が保有する、一審原告らの個人情報の抹消を求め(乙事件)、原審が、甲事件について、一審原告らの一審被告県に対する請求を一部認容し、その余をいずれも棄却し、乙事件につき、抹消を求める内容の特定性を欠くから不適法であるとして、一審原告らの一審被告県及び一審被告国に対する訴えをいずれも却下したところ、一審被告県及び一審原告らがそれぞれ控訴し、なお、一審原告らは、当審において、乙事件の請求につき、抹消請求の対象を変更して、訴えの変更をした事案で、甲事件について、原判決を一部変更し、一方、乙事件について、大垣警察を含めた岐阜県警による一審原告らの上記個人情報の保有は、一審原告らのプライバシーを侵害するもので違法であり、とりわけ本件においては、一審原告らの個人情報が、法令の根拠に基づかず、正当な行政目的の範囲を逸脱して、第三者であるq2に開示され提供されているのであり、岐阜県警が保有する一審原告らの個人情報が、法令等の根拠に基づかず、正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示される具体的現実的な危険が生じていると認められるから、一審原告らは、人格権に基づく妨害排除請求として、一審被告県に対し、上記各個人情報の抹消を請求できるものと認められ、一審原告らの乙事件の変更後の一審被告県に対する予備的請求3は、いずれも理由があるが、一審被告国に対する予備的請求3は、一審被告国が一審原告らの個人情報を保有しているものとは認められないから、いずれも理由がないとして、一部認容、一部却下し、その余を棄却した事例。
2024.11.12
通知処分取消請求事件 
「新・判例解説Watch」租税法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620754/名古屋地方裁判所 令和 6年 7月18日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第67号
社会福祉法人である原告が、本件各課税期間の消費税等に係る確定申告について、原告が提供する本件各福祉サービスを利用して生産活動に従事する利用者に対し支払った本件工賃を消費税法上の課税仕入れに係る支払対価の額に計上すべきであるとして、本件各更正の請求をしたところ、処分行政庁から、更正をすべき理由がない旨の本件各通知処分を受けたことから、被告(国)を相手として、本件各通知処分の取消しを求めた事案で、原告は、本件各福祉サービスの一環として、本件各事業所の利用者に対し、工賃支払を含む生産活動の機会を提供しているものであって、本件工賃は生産活動による成果物の販売代金に転嫁可能な程度に生産活動への従事と結びついているとはいえないから、本件工賃の支払が利用者による役務の提供に対する反対給付であるとは認められず、本件工賃の支払は、生産活動への従事に伴う役務の提供を受けたことに対応しているとはいえないから、本件工賃が消費税法30条1項に規定する課税仕入れに係る支払対価に該当すると認めることはできず、本件各通知処分はいずれも適法であるとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2024.11.05
就籍許可申立許可審判に対する即時抗告事件 
「「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和7年7月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620948/名古屋高等裁判所 令和 6年 9月11日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和5年(ラ)第431号
抗告人が、2022年に、かつてアフガニスタン・イスラム共和国国籍を有していた抗告人父母の間の子として愛知県豊橋市内において出生したが、この頃までに、共和国全土はタリバーンによって国家の要件を欠くなどしたために抗告人父母はいずれも無国籍となっていたから、抗告人は、日本で生まれ、かつ、父母がともに国籍を有しない子であり、国籍法2条3号後段の要件を満たすとして、日本国民として就籍の許可を求めたところ、原審が本件申立てを却下したことから、抗告人が抗告した事案で、抗告人が出生した当時、共和国は、実質的に国家としての実体を失っていたというべきであり、また、暫定政府(タリバン政権)は、「自国民の保護等を他国の政府に求めることができない。」という要件を欠いている状態にあったと解されるし、抗告人父母は、かつて共和国が存在していた領域に戻って暫定政府の保護を受ける意思はないものと解され、そして、国籍は、当該国家が存在することを当然の前提とするものであるから、共和国の国籍をもと有していた抗告人父母は、いずれも、上記当時、少なくとも実質的に国籍法2条3号にいう「国籍を有しないとき」に該当する者であったというべきであるが、抗告人父母は、共和国及び暫定政府のいずれからも国民としての保護を受けられない状態になっていたというべきであるから、抗告人父母が共和国又は首長国の国籍を有するものとし、日本において出生した抗告人に日本国籍の取得を認めないことは、可及的に無国籍者の発生を防止して国家による本人の利益の保護を図るという同号の趣旨に反すると解されるし、児童は出生の時から国籍を取得する権利を有し、締約国はこの権利の実現を確保するとしている「児童の権利に関する条約」7条の趣旨にも反するものと解され、抗告人は、国籍法2条3号に基づき、日本国籍を取得したものというべきであるとして、原審判を取り消し、抗告人の申立てを認容した事例。
2024.11.05
相続税更正処分等取消請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」租税法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620971/東京高等裁判所 令和 6年 8月28日 判決 (控訴審)/令和6年(行コ)第36号
被相続人f(本件被相続人)の相続人である被控訴人(原告)らが、本件被相続人からの相続(本件相続)により取得した財産の価額を国税庁長官による当時の財産評価基本通達(評価通達)の定める方法により評価して本件相続に係る相続税の申告をしたところ、仙台北税務署長(処分行政庁)から、本件相続に係る財産のうち、被相続人の経営していた株式会社gの株式の価額について、評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるなどとして、本件相続税の各更正処分及びこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたことから、これらを不服として、本件各更正処分等の取消しを求め、原審が被控訴人らの請求を認容したところ、控訴人(被告)・国が控訴した事案で、当裁判所の判断は、一部補正するほかは、原判決に記載のとおりであるとしたうえで、当審における控訴人の主張のうち、評価通達6の適用にあたり、租税回避行為があることは要件とならないとする点については、当裁判所はそのような要件が存するものと説示しているものではないから、同主張に対する判断の必要はないなどとし、被控訴人らの請求を認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.11.05
間接強制決定及び同申立一部却下決定に対する執行抗告事件 
「新・判例解説Watch」民法(家族法) 令和7年1月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620965/東京高等裁判所 令和 5年 1月17日 決定 (抗告審(執行抗告))/令和4年(ラ)第984号
相手方及び抗告人は、元夫婦であり、当事者間の長女及び二女である未成年者らについて、平成30年3月23日、相手方が未成年者らと面会交流することを妨害してはならない旨審判されたが、これに対して相手方が即時抗告をし、東京高等裁判所は、抗告人は相手方に対し、相手方と未成年者らを面会交流させなければならない旨の決定をし、確定したことから、相手方と抗告人は、本件決定で定められた面会交流について実施してきたが、相手方が、本件決定で定められた面会交流の時間に不足する場合や特別の日の面会交流が実施されなかった場合が生じているとして、間接強制決定を求めたところ、原審が、今後も抗告人の義務が完全に履行されないおそれがあるということができるとし、なお、債務の不履行に際して債務者が支払うべき金額は、不履行1回につき3万円と定めるのが相当であるとして、債権者の申立てを一部認容したことから、抗告人が執行抗告した事案で、平成30年決定が命じていた相手方と未成年者らとの面会交流の実施等のうち令和4年9月16日以降の実施等に係る部分については、令和4年決定の確定により失効したことが明らかであるから、抗告人は、もはや平成30年決定の上記部分を債務名義とする強制執行(間接強制)を求めることはできず、本件申立てのうち、令和4年9月16日以降の面会交流の実施等を求める部分については、不適法であるから取り消すべきであるとしたうえで、抗告人による義務の履行状況は、平成30年決定の内容に照らしその本旨に従ったものであるといえないというべきであり、相手方が、抗告人に対し、強制金の心理的強制の下に、平成30年決定に基づく面会交流の実施を求めることが過酷な執行に当たるとはいえず、本件申立てが権利の濫用に当たるとは認められないとして、原決定を一部取り消す一方、抗告人のその余の抗告を棄却した事例。
2024.10.29
各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25573793/最高裁判所第三小法廷 令和 6年10月 7日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第1059号
被告人両名が、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で起訴され、第一審が、被告人両名から、被告会社が仮想通貨交換所の運営会社に対して有する仮想通貨の移転を目的とする債権を没収したところ、弁護人が控訴し、控訴審が、暗号資産であるNEM及びBTCは、通貨である日本銀行券や貨幣とは異なり、日本国内での強制通用力がなく、その移転を目的とする債権は、組織犯罪処罰法13条1項にいう没収可能な金銭債権には当たらず、組織犯罪処罰法16条1項によれば、犯罪収益等が金銭債権ではなく、同法13条1項による没収ができないときは、その価額を追徴することができるとされており、暗号資産の移転を目的とする債権が金銭債権に当たらないと解したとしても、犯人から犯罪収益等をはく奪することは可能であり、妥当性を欠く結果とはならないなどとして、原判決を破棄したことから、検察官及び被告人両名が上告した事案で、検察官、弁護人、被告人両名の各上告趣意は、判例違反をいうが、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとし、なお、被告人のみが控訴した場合において、第1審判決が法13条1項の規定により没収するとした財産について、控訴審判決において、没収に換えて法16条1項の規定によりその相当価額の追徴を言い渡すことは、刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑を言い渡す」ことにはならないと解するのが相当であると職権で判断し、本件各上告を棄却した事例。
2024.10.29
短期売買利益提供請求控訴事件(東京機械製作所からの主要株主に対する短期売買利益提供請求事件控訴審判決) 
LEX/DB25620953/東京高等裁判所 令和 6年 7月31日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第6191号
上場会社である被控訴人(原告)が、被控訴人の主要株主である控訴人(被告)が被控訴人発行の株式を自己の計算において買い付けて、その後6か月以内にこれを売り付けて利益を得たと主張して、控訴人に対し、金融商品取引法164条1項に基づき、当該利益及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、原判決が被控訴人の請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案で、証券取引法164条1項は、証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともに、これに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるところ、その規制目的は正当であり、また、その規制手段は、売買取引自体を制限するものではなく、一定期間内に行われた取引から得た利益の提供を求めることによって当該利益の保持を制限することにとどまるものであって、それ以上の財産上の不利益を課するものではなく、上記の立法目的達成のための手段として必要性又は合理性に欠けるものではないから、同項は公共の福祉に適合する制限を定めたものであって、憲法29条に違反するものではなく、以上の理は、現行の金商法164条1項についても同様に妥当するものと解され、したがって、本件売付けについて同項の適用を認めることにつき、同項の規制目的とは明らかに関連性のない手段・内容の規制が生じているか、またはそれが同項の目的に照らし過剰規制であるという控訴人の主張は、いずれも採用することができず、本件売付けについては、類型的適用除外取引に該当すると認めることはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.10.22
開発許可取消請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 解説記事の掲載がされました
LEX/DB25620465/神戸地方裁判所 令和 6年 6月27日 判決 (第一審)/令和5年(行ウ)第23号
A株式会社は、丹波篠山市に所在する各土地上にホテルを用途とする建物の新築工事を行うため、丹波篠山市まちづくり条例に基づき、上記新築工事を含む開発行為等の許可の申請をし、処分行政庁である丹波篠山市長は、同条例10条に基づく許可をしたところ、上記各土地の周辺に居住する原告らが、上記許可には市長の裁量権の範囲を逸脱・濫用した違法があるなどと主張して、処分行政庁の所属する被告・丹波篠山市に対し、行政事件訴訟法3条2項に基づき、上記許可の取消しを求めた事案で、原告P1及び原告P2は、本件開発行為等が実施されることにより騒音、日照遮蔽等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるとはいえないから、原告P1及び原告P2については、上記の権利又は法律上保護された利益の侵害のおそれを根拠として原告適格を認めることはできず、本件許可の取消しを求める訴えは、不適法であるとしたうえで、本件許可は、まちづくり条例9条が定める許可基準に適合するものと認められるものであり、また、本件許可が市長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものとは認められないから、本件許可の手続がまちづくり条例及びまちづくり条例施行規則に違反するとは認められず、本件許可について実体的違法性及び手続的違法性はないから、本件許可は適法であるとして、本件訴えのうち、原告P1及び原告P2の訴えをいずれも却下し、原告P3の請求を棄却した事例。
2024.10.22
傷害致死被告事件 
LEX/DB25620608/大阪高等裁判所 令和 6年 4月23日 判決 (控訴審)/令和5年(う)第756号
被告人が傷害致死の罪で懲役12年を求刑され、原審が、おおむね公訴事実に沿う認定をして、被告人を懲役10年に処したところ、被告人が事実誤認を主張して控訴した事案で、原判決は、e供述にはその信用性に疑問を差し挟む余地があり、被告人の前記検察官調書と明確に食い違う部分もあるのに、十分な検討をせず、同供述と整合することをもって同調書の信用性があると即断したものといえ、証拠評価の在り方において不合理であり、是認し難いところ、本件については、被害者の遺体にe供述によっては説明することができない損傷がある点を含め、関係証拠を基に改めて同供述の信用性を検討し、被告人が単独で公訴事実記載の犯行に及んだと合理的な疑いを入れる余地がない程度の立証が尽くされているかどうかにつき、被告人の原審供述を含め、関係者の供述を再検討して判断する必要があり、また、本件犯行期間中、被告人のみならず、被告人以外の者が被害者に暴行を加えた可能性が考えられる場合は、〔1〕被告人単独による暴行内容、この暴行と被害者の死亡結果の間の因果関係の有無、〔2〕刑法207条の適用の可否、〔3〕同条を適用し難い場合の被告人の罪責等を検討する必要もあるといえるとして、原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2024.10.15
窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年12月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620895/大阪高等裁判所  令和 6年 9月 3日 判決 (控訴審)/令和6年(う)第439号
被告人が、窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で懲役2年6か月を求刑され、原審が、被告人を懲役2年6か月に処し、4年間その刑の執行を猶予し、訴訟費用は被告人の負担としたところ、被告人が控訴した事案で、各故意及び共謀を認定した原判決に事実の誤認はないとしたうえで、刑事訴訟法181条1項本文により原審通訳人に支給される旅費・日当及び通訳料を含む訴訟費用の全部を被告人に負担させた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるとし、また、未決勾留日数の算入をしなかった原判決は、裁量の範囲を逸脱したものであり、この点において、原判決の量刑は重過ぎて不当であるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役2年6か月に処し、原審における未決勾留日数中120日をその刑に算入し、この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予するとともに、原審及び当審における訴訟費用のうち、原審国選弁護人に関する分を被告人の負担とした事例。