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2024.10.29
各組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 new
LEX/DB25573793/最高裁判所第三小法廷 令和 6年10月 7日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第1059号
被告人両名が、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で起訴され、第一審が、被告人両名から、被告会社が仮想通貨交換所の運営会社に対して有する仮想通貨の移転を目的とする債権を没収したところ、弁護人が控訴し、控訴審が、暗号資産であるNEM及びBTCは、通貨である日本銀行券や貨幣とは異なり、日本国内での強制通用力がなく、その移転を目的とする債権は、組織犯罪処罰法13条1項にいう没収可能な金銭債権には当たらず、組織犯罪処罰法16条1項によれば、犯罪収益等が金銭債権ではなく、同法13条1項による没収ができないときは、その価額を追徴することができるとされており、暗号資産の移転を目的とする債権が金銭債権に当たらないと解したとしても、犯人から犯罪収益等をはく奪することは可能であり、妥当性を欠く結果とはならないなどとして、原判決を破棄したことから、検察官及び被告人両名が上告した事案で、検察官、弁護人、被告人両名の各上告趣意は、判例違反をいうが、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとし、なお、被告人のみが控訴した場合において、第1審判決が法13条1項の規定により没収するとした財産について、控訴審判決において、没収に換えて法16条1項の規定によりその相当価額の追徴を言い渡すことは、刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑を言い渡す」ことにはならないと解するのが相当であると職権で判断し、本件各上告を棄却した事例。
2024.10.29
短期売買利益提供請求控訴事件(東京機械製作所からの主要株主に対する短期売買利益提供請求事件控訴審判決) new
LEX/DB25620953/東京高等裁判所 令和 6年 7月31日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第6191号
上場会社である被控訴人(原告)が、被控訴人の主要株主である控訴人(被告)が被控訴人発行の株式を自己の計算において買い付けて、その後6か月以内にこれを売り付けて利益を得たと主張して、控訴人に対し、金融商品取引法164条1項に基づき、当該利益及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、原判決が被控訴人の請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案で、証券取引法164条1項は、証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともに、これに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるところ、その規制目的は正当であり、また、その規制手段は、売買取引自体を制限するものではなく、一定期間内に行われた取引から得た利益の提供を求めることによって当該利益の保持を制限することにとどまるものであって、それ以上の財産上の不利益を課するものではなく、上記の立法目的達成のための手段として必要性又は合理性に欠けるものではないから、同項は公共の福祉に適合する制限を定めたものであって、憲法29条に違反するものではなく、以上の理は、現行の金商法164条1項についても同様に妥当するものと解され、したがって、本件売付けについて同項の適用を認めることにつき、同項の規制目的とは明らかに関連性のない手段・内容の規制が生じているか、またはそれが同項の目的に照らし過剰規制であるという控訴人の主張は、いずれも採用することができず、本件売付けについては、類型的適用除外取引に該当すると認めることはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.10.22
開発許可取消請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 解説記事の掲載がされました
LEX/DB25620465/神戸地方裁判所 令和 6年 6月27日 判決 (第一審)/令和5年(行ウ)第23号
A株式会社は、丹波篠山市に所在する各土地上にホテルを用途とする建物の新築工事を行うため、丹波篠山市まちづくり条例に基づき、上記新築工事を含む開発行為等の許可の申請をし、処分行政庁である丹波篠山市長は、同条例10条に基づく許可をしたところ、上記各土地の周辺に居住する原告らが、上記許可には市長の裁量権の範囲を逸脱・濫用した違法があるなどと主張して、処分行政庁の所属する被告・丹波篠山市に対し、行政事件訴訟法3条2項に基づき、上記許可の取消しを求めた事案で、原告P1及び原告P2は、本件開発行為等が実施されることにより騒音、日照遮蔽等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるとはいえないから、原告P1及び原告P2については、上記の権利又は法律上保護された利益の侵害のおそれを根拠として原告適格を認めることはできず、本件許可の取消しを求める訴えは、不適法であるとしたうえで、本件許可は、まちづくり条例9条が定める許可基準に適合するものと認められるものであり、また、本件許可が市長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものとは認められないから、本件許可の手続がまちづくり条例及びまちづくり条例施行規則に違反するとは認められず、本件許可について実体的違法性及び手続的違法性はないから、本件許可は適法であるとして、本件訴えのうち、原告P1及び原告P2の訴えをいずれも却下し、原告P3の請求を棄却した事例。
2024.10.22
傷害致死被告事件 
LEX/DB25620608/大阪高等裁判所 令和 6年 4月23日 判決 (控訴審)/令和5年(う)第756号
被告人が傷害致死の罪で懲役12年を求刑され、原審が、おおむね公訴事実に沿う認定をして、被告人を懲役10年に処したところ、被告人が事実誤認を主張して控訴した事案で、原判決は、e供述にはその信用性に疑問を差し挟む余地があり、被告人の前記検察官調書と明確に食い違う部分もあるのに、十分な検討をせず、同供述と整合することをもって同調書の信用性があると即断したものといえ、証拠評価の在り方において不合理であり、是認し難いところ、本件については、被害者の遺体にe供述によっては説明することができない損傷がある点を含め、関係証拠を基に改めて同供述の信用性を検討し、被告人が単独で公訴事実記載の犯行に及んだと合理的な疑いを入れる余地がない程度の立証が尽くされているかどうかにつき、被告人の原審供述を含め、関係者の供述を再検討して判断する必要があり、また、本件犯行期間中、被告人のみならず、被告人以外の者が被害者に暴行を加えた可能性が考えられる場合は、〔1〕被告人単独による暴行内容、この暴行と被害者の死亡結果の間の因果関係の有無、〔2〕刑法207条の適用の可否、〔3〕同条を適用し難い場合の被告人の罪責等を検討する必要もあるといえるとして、原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2024.10.15
窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年12月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620895/大阪高等裁判所  令和 6年 9月 3日 判決 (控訴審)/令和6年(う)第439号
被告人が、窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で懲役2年6か月を求刑され、原審が、被告人を懲役2年6か月に処し、4年間その刑の執行を猶予し、訴訟費用は被告人の負担としたところ、被告人が控訴した事案で、各故意及び共謀を認定した原判決に事実の誤認はないとしたうえで、刑事訴訟法181条1項本文により原審通訳人に支給される旅費・日当及び通訳料を含む訴訟費用の全部を被告人に負担させた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるとし、また、未決勾留日数の算入をしなかった原判決は、裁量の範囲を逸脱したものであり、この点において、原判決の量刑は重過ぎて不当であるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役2年6か月に処し、原審における未決勾留日数中120日をその刑に算入し、この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予するとともに、原審及び当審における訴訟費用のうち、原審国選弁護人に関する分を被告人の負担とした事例。
2024.10.15
国家賠償請求控訴事件 
LEX/DB25620890/東京高等裁判所 令和 5年12月13日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第3500号
薬剤師である控訴人(原告)は、A警察署の警察官が控訴人の勤務先病院に、電話で、控訴人をストーカー行為等の規制等に関する法律違反の容疑で被疑者として捜査していると述べるなどしてその職権を濫用したなどとして、原判決別紙の告訴状を添付書面と共にB地方検察庁に送付したが、同庁特別捜査部直告班の担当検察官は、告訴事実の特定が十分でないとして本件告訴状を受理せず、本件告訴状及び添付書面を控訴人に返戻したところ、控訴人が、本件検察官が本件告訴状を受理して捜査に着手することを怠り、控訴人が職場において業務を妨害され、健康な生活の確保が危うくされている旨をB地検を管轄する法務省等に報告することを怠ったものであり、本件返戻行為、本件捜査不着手行為及び本件不対応行為は違法であるとして、被控訴人(被告)に対し、国家賠償法1条1項又は同法4条及び民法709条に基づく損害賠償請求として、慰謝料及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求を棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、本件返戻行為によって控訴人の法律上保護された利益が害されたということはできず、控訴人は、本件告訴状を提出したのは公益目的に出たものであると主張し、この主張は、告訴が公益目的でされた場合には、告訴人が捜査又は公訴提起によって受ける利益が捜査又は公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にとどまるとする考え方は妥当しないことをいうものと解されるが、告訴について独自の考えを述べるものに過ぎないものであって採用することはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.10.08
退職共済年金及び老齢厚生年金減額処分無効確認乃至取り消し等請求事件 
LEX/DB25573746/最高裁判所第二小法廷 令和 6年9月13日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第352号
被上告人(一審原告、控訴審控訴人)が、上告人(一審被告、控訴審被控訴人)・国らを相手に、特老厚年金の一部を支給停止とする処分を除く3個の処分の取消しを求めるとともに、上記支給停止に係る特退共年金の支払を求めるなどし、第一審が訴えのうち処分の取消請求に係る部分を却下し、その余の請求を棄却したことから、被上告人が控訴し、控訴審が、複数の適用事業所を有する法人内での異動等により適用事業所が変更になったが、引き続き同一法人内において継続して就労しており、給与に関する雇用条件が異ならないような場合には、本件規定1に規定する者及び本件規定2に規定する者と同視して、本件配慮措置の適用があるものと解するのが相当であるところ、本件は上記の場合に当たるから、被上告人の平成28年5月分以降の特老厚年金及び特退共年金に本件配慮措置を適用すべきであり、本件各処分は違法であるとして、その取消請求を認容するとともに、特退共年金の支払請求の一部を認容したところ、上告人・国が上告した事案で、被上告人は、平成28年4月1日、一元化法施行日の前から有していたB高校を適用事業所とする厚生年金保険の被保険者資格を喪失したというのであるから、これにより、本件規定1に規定する者及び本件規定2に規定する者に該当しなくなったものというべきであり、被上告人の同年5月分以降の特老厚年金及び特退共年金には本件配慮措置は適用されず、以上によれば、控訴審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、被上告人の本件各処分の取消請求は理由がなく、また、特退共年金の支払請求のうち原審が認容した部分も理由がなく、これらはいずれも棄却すべきであるとして、原判決を変更した事例。
2024.10.08
損害賠償等請求控訴事件 
LEX/DB25620664/東京高等裁判所 令和 6年 4月11日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第5588号
Z社(破産会社)が被控訴人らを含むファクタリング会社に対して売掛金債権を譲渡したところ、債務者らが供託したことから、破産会社の破産管財人である控訴人(原告)が、被控訴人らに対し、被控訴人(被告)らが既に還付を受けた分については、不法行為又は不当利得に基づき、その取得額及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、還付未了の供託金については、控訴人が還付金請求権を有することの確認を求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、破産会社が被控訴人らに譲渡した本件債権にはいずれも基本契約において譲渡禁止特約が付されていたところ、被控訴人らは自らのファクタリング会社としての知識や経験を踏まえ、本件債権について譲渡禁止特約が付されている可能性が高いことを認識していたのであるから、破産会社に対して譲渡禁止特約の有無を確認してしかるべきであり、そうすれば、譲渡禁止特約の存在が明らかとなったにもかかわらず、被控訴人らは、こうした極めて容易な確認作業を行うことなく、漫然と破産会社から本件債権の譲渡を受けたものであり、譲渡禁止特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失があったというべきであるし、供託金の還付を受けたことについて少なくとも過失があったと認められるから、不法行為に基づき、控訴人が受けた損害について賠償義務を負うというべきであるところ、控訴人の請求を棄却した原判決は失当であるとして、原判決を取り消したうえ、控訴人の請求をいずれも認容した事例。
2024.10.01
名誉毀損被告事件 
LEX/DB25620363/大阪高等裁判所 令和 6年 6月20日 判決 (控訴審)/令和5年(う)第853号
被告人が、A(当時38歳)の名誉を毀損しようと考え、自己のスマートフォンを使用し、インターネットを通じて、b協同組合c会ホームページに記載された令和5年度新卒職員採用案内の問合せメールアドレス宛てに、被告人がd協同組合に勤務していた当時、あたかもAが、その容姿が他の職員より醜悪で、通常の営業活動により顧客との契約を成立させる能力がなく、被告人から容姿を中傷されているにもかかわらず、被告人に対する一方的な恋愛感情を有しているかのような事実を記載した電子メールを送信し、その頃、前記メールアドレスを使用する同会の職員らが閲覧可能な状態にし、もって公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損したとして、名誉毀損の罪で懲役2年6か月を求刑され、原審が、被告人の行為は「公然性」の要件を満たすなどとして、名誉毀損の事実を認定し、被告人を懲役1年6か月に処したところ、被告人が控訴した事案で、f会に対する照会や同会等の関係者の供述を得ることで比較的容易に判明する事実関係といえ、その内容により、公然性(伝ぱの可能性)及びこの点に関する被告人の故意の有無の判断が左右されるものと考えられるが、記録上は、本件メールの受信状況等に関する捜査報告書、f会のホームページ画面を写した写真撮影報告書及び問合せメールの報告システムに関する電話聴取書の各証拠の取調べにとどまっており(Aの証人尋問も実施されたが、被害状況に関する供述が主であり、本件メールの内容を知った経緯は簡単に触れられた程度に過ぎない)、原判決は、この点等を検討することなく、そのための証拠も十分ではない審理内容であったのに、本件メールの伝ぱの可能性を認めたのであり、その判断は論理則・経験則等に照らしても不合理であって、論旨は理由があるとして、原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2024.10.01
債権処分禁止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25620832/東京高等裁判所  令和 5年 1月25日 決定 (抗告審)/令和4年(ラ)第2326号
本件金等を氏名不詳者に詐取された抗告人が、本件金を氏名不詳者から預かり、本件金を警察に任意提出した相手方に対し、所有権に基づく本件金の引渡請求権を被保全権利として、本件金を押収物として保管する第三債務者から本件金の引渡しを受け、又は相手方が第三債務者に対して有する上記目録記載の引渡請求権(本件押収物引渡請求権)の処分をすることを禁止するとともに、第三債務者に対し、相手方に対して本件金を引き渡したり、相手方の指図に従って処分することを仮に禁止することを求めたところ、原審が、抗告人が相手方に対して本件引渡請求権を有することは一応認められるものの、抗告人が本件引渡請求権を被保全権利として本件申立てに係る債権の処分禁止等の仮処分命令を求めることは不適法であるとして、本件申立てを却下したことから、抗告人が抗告した事案で、本件金については、相手方が第三債務者から還付処分を受けた場合、抗告人が相手方を被告として、本件引渡請求権に基づき、本件金の引渡しを求める本案訴訟を提起し、その請求が認容された場合には、第三債務者は、相手方に対して本件金を引き渡す義務を負うため、民事執行法170条1項により、執行裁判所が相手方の第三債務者に対する本件押収物引渡請求権を差し押さえ、その行使を抗告人に許す旨の命令を発する方法により本件金の引渡しの執行がされることになり、抗告人は、第三債務者に対し、本件金を直接抗告人に引き渡すよう請求することができるのであるから、本件仮処分は、本案請求の範囲を超えるものとはいえず、また、第三債務者は、その禁止が解かれるまでの間、第三債務者が相手方に対して本件金を引き渡すことなどを禁止されたとしても、第三債務者が本来負っている上記保管義務が継続することになるに過ぎず、第三債務者に対して不利益を課すものともいえないとして、抗告人に300万円の担保を立てさせて本件申立てを認容した事例。
2024.09.24
出席停止処分差止め請求控訴事件、同附帯控訴事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年12月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620823/大阪高等裁判所  令和6年 8月28日 判決 (控訴審)/令和6年(行コ)第24号 他
市議会は、市議会議員である被控訴人(附帯控訴人・原告)の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、被控訴人に対して陳謝の懲罰を科したが、被控訴人は、陳謝文の朗読を拒否したため、市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに被控訴人に陳謝の懲罰を科し、これに対し被控訴人が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に被控訴人に陳謝の懲罰を科すということが繰り返され、市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を被控訴人に科した後、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、被控訴人に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をしたところ、被控訴人が、本件処分が違法であると主張して、控訴人(附帯被控訴人・被告)香芝市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料及び弁護士費用並びに遅延損害金の支払を求め、原審が被控訴人の請求を一部認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した事案で、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるかの評価をするうえで、本件処分に至る経緯の中でされた陳謝処分についての適法性、相当性の検討は避けられないというべきであって、本件処分は違法との評価を避けられないとし、また、本件処分の内容、程度等に鑑み、被控訴人が指摘する事情を踏まえても、被控訴人が被った議員としての責務に対する侵害、名誉、信頼の棄損等による精神的苦痛の慰謝料は30万円をもって相当と認めるとして、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した事例。
2024.09.24
地位確認等請求事件(AGCグリーンテック事件) 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和6年11月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620058/東京地方裁判所  令和 6年 5月13日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第20432号
被告の女性従業員である原告が、被告に対して、(1)被告が総合職に対してのみ社宅制度の利用を認めているのが、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律6条2号、同法7条及び民法90条に違反すると主張して、〔1〕原告が社宅管理規程に基づき月額負担を求める権利を有する地位にあることの確認、〔2〕社宅制度の男女差別に係る不法行為に基づく損害賠償、〔3〕社宅制度に基づく賃料負担義務の不履行を理由とする損害賠償を求め、(2)男性の一般職と原告との間にある賃金格差が労働基準法4条に違反すると主張して、〔4〕原告が基本給月額の支給を受ける権利を有する地位にあることの確認、〔5〕労働契約による賃金請求権に基づき、各賃金の差額の支払〔6〕上記〔5〕に対応する弁護士費用等の支払を求め、(3)社宅制度の男女差別及び男女賃金差別が違法であると主張して、〔7〕不法行為ないし債務不履行に基づく慰謝料等の支払を求め、(4)被告による違法な業務外しをされたと主張して、〔8〕不法行為に基づく損害賠償を求め、(5)被告による違法な査定により低い人事考課をされたと主張して、〔9〕不法行為に基づく損害賠償を求め、(6)上記(1)〔3〕が認容されない場合に備え、〔10〕社宅制度の男女差別による不法行為に基づく損害賠償を、上記(2)〔5〕及び〔6〕が認容されない場合に、〔11〕男性一般職との男女賃金差別による不法行為に基づく損害賠償を予備的に求めた事案で、社宅制度という福利厚生の措置の適用を受ける男性及び女性の比率という観点からは、男性の割合が圧倒的に高く、女性の割合が極めて低いこと、措置の具体的な内容として、社宅制度を利用し得る従業員と利用し得ない従業員との間で、享受する経済的恩恵の格差はかなり大きいことが認められる。他方で、転勤の事実やその現実的可能性の有無を問わず社宅制度の適用を認めている運用等に照らすと、営業職のキャリアシステム上の必要性や有用性、営業職の採用競争における優位性の確保という観点から、社宅制度の利用を総合職に限定する必要性や合理性を根拠づけることは困難であることからすると、被告が社宅管理規程に基づき、社宅制度の利用を、住居の移転を伴う配置転換に応じることができる従業員、すなわち総合職に限って認め、一般職に対して認めていないことにより、事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められず、被告が上記のような社宅制度の運用を続けていることは、雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当するというべきであるなどとして、原告の請求を一部認容した事例。
2024.09.17
保護責任者遺棄被告事件 
LEX/DB25620818/東京高等裁判所 令和 6年 8月20日 判決 (第一審)/令和4年(刑わ)第1727号
被告人は、b、分離前の相被告人c(本件後に婚姻し「d」姓となり、令和5年4月9日に死亡)及び同eとともに、令和3年6月10日から東京都豊島区内の本件ホテルの一室にg(当時38歳)と宿泊滞在し、同室において同人らとともに複数種類の薬剤を摂取し、その効果を味わうなどしていたものであるが、前記gが薬剤を過剰に摂取して同月11日午前8時過ぎ頃には身体をゆするなどしても全く反応しない昏睡状態に陥っているのを認めたのであるから、直ちに救急車の派遣を求めて医師による専門的診察・治療を受けさせ、同人の生命、身体の安全のために必要な保護をなすべき責任があったにもかかわらず、b、c及びeと共謀の上、その頃から同日午後4時14分頃までの間、同所において、救急車の派遣を求めることなく同人を放置し、もって同人の生存に必要な保護をしなかったとして、保護責任者遺棄の罪で、懲役2年を求刑された事案で、gが、6月11日午前8時過ぎ頃から同日午前9時24分頃までの間に要保護状態に陥っていたと認めるには合理的な疑いが残り、また、同日午前8時過ぎ頃より後の同日午前9時24分頃までの間については、被告人がgの状態を見て把握していたことにも疑問が残るとして、本件公訴事実については犯罪の証明がないとし、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2024.09.17
首都圏建設アスベスト損害賠償神奈川訴訟(第2陣)請求控訴事件 
LEX/DB25620211/東京高等裁判所 令和 6年 5月29日 判決 (差戻控訴審)/令和4年(ネ)第3245号
原告ら(控訴人ら)は、築炉工としての作業等(炉の設置等)に従事し、石綿粉じんにばく露したことにより石綿肺にり患して死亡したと主張する故人(承継前の原告)の承継人として、石綿含有建材の製造販売をしていた建材メーカーである被告ら(被控訴人ら)に対し、被告らが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺を含む石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務(警告義務)を負っていたにもかかわらず、これを履行しなかったことにより、築炉工として石綿含有建材を使用する建設作業に従事した故人が石綿肺にり患して死亡したと主張し、民法719条1項後段の類推適用に基づく損害賠償として、損害金等の連帯支払を求めた事案で、差戻前の訴訟経過において原告の請求が認容されたが、上告審では、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し警告義務を負っていたということはできないとして、差戻し前の控訴審判決中の被告ら敗訴部分を破棄し、故人が石綿含有建材を使用する建設作業に従事していた時期があることから、損害の額等について更に審理を尽くさせる必要があるとして、本件を東京高等裁判所に差戻し、当審での審理判断の対象は、民法719条1項後段の類推適用に基づく各損害賠償請求権の存否及びその額(差戻し前の控訴審が認容した範囲に限る)であり、主として、故人が築炉工としての作業(炉の設置等)に従事した際、被告らが製造販売した石綿含有建材の石綿粉じんにばく露したと認められるか、これにより故人が石綿肺にり患して死亡したとされる場合の被告らの損害賠償責任の範囲等が争点であったところ、故人が築炉工としての作業に従事した現場に被告らの製造販売に係る保温材が相当回数にわたり到達した事実を認めることはできないから、原告らの被告らに対する民法719条1項後段の類推適用に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がないとして、請求を棄却した事例。
2024.09.10
株主総会決議不存在等確認請求控訴事件 
LEX/DB25620549/東京高等裁判所 令和 5年 1月18日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第3531号
特例有限会社である控訴人の株主である被控訴人が、控訴人に対し、控訴人の本件株主総会において、被控訴人を取締役から解任すること(本件議題〔1〕)及び後任取締役を1名選任すること(本件議題〔2〕)を内容としてされた本件株主総会決議につき、選択的に、その不存在確認、又は会社法831条1項1号に基づきその取消しを求め、控訴人の株主で本件株主総会の議長を務めた松野弁護士を代理人に選任していた補助参加人C及び本件議題〔2〕によって取締役に選任された補助参加人Bが、控訴人を補助するため、訴訟に参加したところ、原審が、松野弁護士が議長の選任手続を経ずに議長となり、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案の採決を行ったこと並びに松野弁護士が議長として本件仮処分決定の内容と異なる議決権数の算定を行い、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案を可決させたことにつき、いずれも同号に定める瑕疵に当たるから、本件株主総会決議の取消しを求める請求には理由があるとして、被控訴人の同請求を認容したことから、補助参加人らが控訴した事案で、松野弁護士が議長の選任手続を経ずに議長となり、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案の採決を行ったことは本件株主総会決議の瑕疵に当たり、また、松野弁護士が議長として本件仮処分決定の内容と異なる議決権数の算定を行い、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案を可決させたことは本件株主総会決議の瑕疵に当たるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.09.10
盗品等有償譲受け、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25620264/神戸地方裁判所 令和 6年 5月30日 判決 (第一審)/令和5年(わ)第300号
被告人が、法定の除外事由がないのに、氏名不詳者と共謀のうえ、(第1)P2らが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたVJAギフトカード5000円券30枚(時価合計15万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「P3」から代金約13万5000円で買い受け、(第2)P2らが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたVJAギフトカード5000円券80枚(時価合計40万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「P3」から代金約36万円で買い受け、(第3)P2らが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたUCギフトカード5000円券20枚(時価10万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「P3」から代金約9万円で買い受け、もって財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を有償で譲り受けるとともに、犯罪収益等を収受したとして、盗品等有償譲受け、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で、懲役3年及び罰金50万円を求刑された事案で、検察官が主張する各事実関係は、いずれもそれ自体から直ちに被告人の知情性を推認させるものではなく、そして、これらの事実関係を総合考慮しても、被告人の知情性を未必的にも認定することはできず、「P3」からのギフトカードの仕入れを担当していたのは、被告人ではなく主としてP5であり、被告人がどの程度「P3」との取引について把握していたかは証拠上明らかでなく、また、関係各証拠を精査しても、その他に被告人の知情性を推認することのできる事実も認められないから、被告人が本件の知情性を有していたと認定するには、合理的な疑いが残るというべきであるとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2024.09.03
法人税更正処分等取消請求事件 
「新・判例解説Watch」租税法分野 令和6年11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573661/最高裁判所第一小法廷  令和 6年 7月18日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第373号
連結納税の承認を受けた内国法人である被上告人(第一審原告、控訴審控訴人)が、法人税及び地方法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、英領バミューダ諸島において設立された被上告人の子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料は、租税特別措置法施行令(平成28年政令第159号による改正前)39条の117第8項5号括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のうちいわゆる非関連者基準を満たさないなどとして、本件法人税再更正処分及び本件地方法人税再更正処分並びに本件法人税当初賦課決定処分及び本件地方法人税当初賦課決定各処分をしたため、上告人(第一審被告、控訴審被控訴人)国に対し、各処分について控訴人主張額を超える各部分の取消しを求め、第一審が被上告人の請求をいずれも棄却したところ、被上告人が控訴し、控訴審が第一審判決を取り消し、被上告人の請求をいずれも認容したことから、上告人が上告した事案で、本件元受保険契約の実質に照らせば、本件再保険契約に係る保険は、本件NGRE事業年度におけるNGREに係る関連者に当たるNRFMが有する資産である本件クレジット債権に係る経済的不利益を担保するものであるということができるから、上記保険は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」には当たらず、NGREは本件NGRE事業年度において非関連者基準を満たさないから、措置法68条の90第1項の適用が除外されることとはならないところ、原審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄するとともに、被上告人の控訴を棄却した事例。
2024.09.03
株主権確認等請求控訴事件 
LEX/DB25620467/大阪高等裁判所  令和 6年 7月12日 判決 (控訴審)/令和6年(ネ)第149号
〔1〕控訴人(原告)T社が、被控訴人(被告)P2が被控訴人会社に対して控訴人T社の無議決権株式40株を譲渡する本件売買契約は、通謀虚偽表示又は弁護士法72条若しくは73条違反に当たり無効であると主張して、被控訴人P2に対し、控訴人T社と被控訴人P2との間において、被控訴人P2が従前から保有している株式を含む控訴人T社の無議決権株式52株を有する株主であることの確認を求め、〔2〕上記の株式譲渡が控訴人T社によって承認されなかったことにより指定買取人に指定された控訴人C社が、被控訴人会社に対し、控訴人C社と被控訴人会社との間において、控訴人C社の被控訴人会社に対する株式売買代金支払債務が存在しないことの確認を求め、原審が、本件売買契約は無効とはいえないとして、〔1〕控訴人T社の請求を被控訴人P2が控訴人T社の無議決権株式12株を保有する株主であることの確認を求める限度で認容し、その余を棄却し、〔2〕控訴人C社の請求を棄却したところ、控訴人らが控訴した事案で、被控訴人会社が本件事業の業として行った本件売買契約の締結は、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとは認められず、本件売買契約は弁護士法73条に違反して無効であると認められるから、被控訴人P2は控訴人T社の無議決権株式52株を有する株主であり、控訴人C社と被控訴人会社との間の売買契約に基づく控訴人C社の被控訴人会社に対する代金債務は存在しないと認められるところ、控訴人らの請求はいずれも理由があるとして、原判決を変更し、控訴人らの請求〔1〕〔2〕をいずれも認容した事例。
2024.08.27
損害賠償請求事件(国家賠償請求) 
LEX/DB25620432/東京地方裁判所  令和 6年 7月18日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第5542号
弁護士であった原告が、犯人隠避教唆の被疑者として検察官から受けた取調べに違法があり、精神的苦痛を受けたと主張して、被告・国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件取調べにおけるP4検察官の言動は、事案の内容・性質、嫌疑の程度及び取調べの必要性を考慮しても、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものといわざるを得ず、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであり、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえるところ、原告の請求は、被告に対し、違法な本件取調べと相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2024.08.27
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25573652/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 7月16日 判決 (上告審)/ 令和4年(あ)第1460号
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件の上告審の事案で、弁護人らの上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとしたうえで、本件の事情の下では、氏名不詳者が、不正に入手したA社のNEMの秘密鍵で署名した上で本件移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した行為は、正規に秘密鍵を保有するA社がNEMの取引をするものであるとの「虚偽の情報」をNEMのネットワークを構成するNISノードに与えたものというべきであるから、本件移転行為が電子計算機使用詐欺罪に該当し、本件NEMが組織的犯罪処罰法2条2項1号にいう「犯罪行為により得た財産」に当たるとして、その一部を収受した被告人について、犯罪収益等収受罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見あり)。