2023.12.19
助成金不交付決定処分取消請求事件
★「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25573159/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月17日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第234号
映画製作会社である上告人(原告・被控訴人)が、被上告人(被告・控訴人)の理事長に対し、「宮本から君へ」と題する劇映画の製作活動につき、文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をしたところ、理事長から、本件助成金を交付することは公益性の観点から適当でないとして、本件助成金を交付しない旨の決定(本件処分)を受けたため、被上告人を相手に、本件処分の取消しを求めたところ、第1審判決は、上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、原判決は、本件処分は適法であるとして、本件処分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとし、これと異なる原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件処分の取消請求を認容した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.12.19
傷害被告事件
LEX/DB25596304/大阪地方裁判所 令和 5年 1月17日 判決 (第一審)/令和3年(わ)第2757号
被告人が、深夜、ビル5階の飲食店で、被害者(当時32歳)に対し、右手の拳骨でその左目付近を1回殴る暴行を加え、同人に通院加療約2か月間を要する左眼窩底骨折、左眼網膜震盪の傷害を負わせたとして、傷害の罪で懲役1年6月を求刑された事案において、被告人に殴られた旨の被害者証言は採用できず、被告人以外の者の行為によって被害者が傷害を負った可能性が否定できない上、被告人供述も排斥できないから、被告人が、被害者に暴行を加え上記傷害を負わせた犯人であると認めるには合理的な疑いが残るとして、本件公訴事実(訴因変更後)については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪を言渡した事例。
2023.12.12
仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件
LEX/DB25573136/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月 6日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第735号
東京高等裁判所裁判官がした仮拘禁許可状の発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑事訴訟法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.12.12
株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25573122/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第11号
S社の株主である抗告人が、利害関係参加人を吸収合併存続株式会社、S社を吸収合併消滅株式会社とする吸収合併についての会社法785条2項所定の株主(反対株主)であるとして、S社に対し、抗告人の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求したが、その価格の決定につき協議が調わないため、同法786条2項に基づき、価格の決定の申立てをしたところ、原審は、抗告人は反対株主ではないから、本件申立ては不適法であるとして却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、本件委任状の送付は、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思をS社に対して表明するものということができるとして、抗告人がS社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当であるとし、これと異なる見解の下に、本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を原々審に差し戻すこととした事例。
2023.12.12
各監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25596133/松江地方裁判所 令和 5年 9月27日 判決 (第一審)/令和5年(わ)第32号 等
(第1)被告人両名は、共謀のうえ、被告人Aの長女であるBが18歳に満たない児童であることを知りながら、29回にわたり、Bにその乳房又は陰部を露出した姿態をとらせ、被告人Aが、これらを撮影したうえ、各静止画データ合計29点をそれぞれ保存し、もって児童ポルノを製造し、(第2)被告人Aは、Bを現に監護する者、被告人aは、被告人Aの交際相手であるが、被告人両名は、共謀のうえ、Bが18歳未満の者であることを知りながら、被告人aがBと性交をすることを企て、被告人A方において、同人がBを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、被告人aがBと性交をし、(第3)被告人aは、前記被告人A方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態の静止画データ66点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台を所持したとして、被告人両名が、各監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪で、被告人aにつき懲役9年、被告人Aにつき懲役6年を求刑された事案で、Bが被った身体的、精神的苦痛は多大であり、本件事案の性質上、被告人Aの精神障害等について、情状面で考慮するほどの各犯行への影響はなかったと認められるところ、被告人aの刑事責任は重大であり、被告人Aの刑事責任は、被告人aほどではないが相応に重いとしたうえで、被告人両名にはさしたる前科がないこと、被告人aについて、Bに対し300万円の被害弁償を行い、反省の言葉を述べていること、母親が更正に協力する旨証言していること、被告人Aについて、Bが重い処罰を求めているとまではいえないこと、反省の言葉を述べ、更生環境の整備に着手しつつあること等の各被告人に有利な事情があるが、被告人両名のいずれについても酌量減軽をすることは相当ではないとして、被告人aを懲役6年に、被告人Aを懲役5年に処した事例。
2023.12.05
法人税更正処分等取消請求事件
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LEX/DB25573132/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月 6日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第228号 等
内国法人である被上告人(原告・控訴人。都市銀行)は、平成27年度の本件事業年度に係る法人税及び地方法人税の申告をしたところ、処分行政庁から、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)66条の6第1項の規定により、ケイマン諸島において設立された被上告人の子会社の課税対象金額に相当する金額が、被上告人の本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受け、また、被上告人は、本件事業年度の法人税等について更正の請求をしたが、処分行政庁から、更正をすべき理由がない旨の各通知処分を受けた。本件は、被上告人が、上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、上記各増額更正処分の一部及び上記各賦課決定処分並びに本件各通知処分の取消しを求めた事案の上告審において、増額更正処分後に国税通則法23条1項の規定による更正の請求をし、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた者は、当該通知処分の取消しを求める訴えの利益を有するとし、被上告人は、本件各通知処分の取消しを求める訴えの利益を有するものということができるから、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決主文第1項から第3項までを破棄した事例(補足意見がある)。
2023.12.05
特別の寄与に関する処分申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
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LEX/DB25573121/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第14号
亡Aの親族である抗告人が、Aの相続人の1人である相手方に対し、民法1050条に基づき、特別寄与料のうち相手方が負担すべき額として相当額の支払を求め、原審は、相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料について、民法900条から902条までの規定により算定した相続分(法定相続分等)に応じた額を負担するから(同法1050条5項)、遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されないと判断して、本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.11.28
情報不開示決定取消等請求事件
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LEX/DB25573120/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 判決 (差戻上告審)/令和4年(行ヒ)第296号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた被上告人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの)に基づき、東京矯正管区長に対し、被上告人が収容中に受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定は違法であると主張して、上告人を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審及び第1次控訴審は、本件情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たり、同法12条1項の規定による開示請求の対象から除外されるから、本件決定は適法であるとして、被上告人の請求をいずれも棄却したが、第1次上告審は、刑事施設に収容されている者(被収容者)が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないとし、本件情報は同法12条1項の規定による開示請求の対象となる旨判断して、第1次控訴審判決を破棄し、本件を原審に差戻した。その後の第2次控訴審は、本件訴えのうち本件決定の取消請求に係る部分につき、訴えの利益を欠くとして却下する一方、本件決定は行政機関個人情報保護法に反し違法であるとした上で、損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、第2次上告審は、本件決定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の損害賠償請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は結論において正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.11.28
監禁、恐喝未遂被告事件
LEX/DB25506585/大阪高等裁判所 令和 5年 8月25日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第446号
被告人が、〔1〕令和3年7月28日午前9時31分頃から30分弱にわたり、b(当時18歳)を兵庫県姫路市内の路上に駐車中の自動車(c車両)のトランク内に閉じ込め、あるいは、トランクから外に出たbを同車両のボンネット上に乗せた状態でcをして同車両を発進、走行させるなどして、bを同車両内から脱出することを不能にして、不法に監禁し、〔2〕〔1〕の犯行によりbが被告人を畏怖しているのに乗じ、bがc車両のボンネット上に乗った際に、同車両に傷がついたことに因縁をつけてbから現金を喝取しようと考え、同日午前10時46分頃から同日午後1時14分頃までの間に、走行中のc車両内において、bに対し、「3日以内に修理するんやったら、俺のところで修理したるから、今日中に17万円用意しろ。」などと申し向けて現金の交付を要求したが、同人が知人に相談するなどしたため、その目的を遂げなかったとして、原判決は、具体的な恐喝文言を一部変更するなどしつつも、各公訴事実とおおむね同旨の原判示第1及び第2の各事実を認定し、被告人を有罪とした上、被告人を懲役1年10月の実刑に処したたため、被告人の弁護人が事実誤認、量刑不当及び法令適用の誤りの主張して控訴した事案で、本件各公訴事実に沿うb及びcの各証言は少なくとも信用性に疑問が残る上、これら証言以外に本件各公訴事実を認めるに足る証拠はない一方、本件各公訴事実を争う被告人供述の信用性は排斥することができず、本件については、犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法336条により被告人に対し、無罪を言渡した事例。
2023.11.21
損害賠償請求事件
LEX/DB25573116/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月23日 判決 (上告審)/令和3年(受)第2001号
M社からマンションの建築工事を請け負った被上告人が、上告人会社においてM社から上記マンションの敷地を譲り受けた行為が被上告人のM社に対する請負代金債権及び上記マンションの所有権を違法に侵害する行為に当たると主張して、上告人会社に対しては、不法行為に基づき、その代表取締役である上告人Y1に対しては、主位的に不法行為、予備的に会社法429条1項に基づき、被上告人の損害の一部である1億円及び遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、被上告人の上告人らに対する不法行為に基づく損害賠償請求を認容すべきものとしたため、上告人らが上告した事案で、マンションの建築工事の注文者から上記マンションの敷地を譲り受けた行為は、自ら上記マンションを分譲販売する方法によって請負代金債権を回収するという請負人の利益を侵害するものとして本件債権を違法に侵害する行為に当たらないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件行為は、被上告人の権利又は法律上保護される利益を侵害するものではなく、被上告人の上告人らに対する請求は、いずれも理由がないことが明らかであるから、第1審判決中上告人らに関する部分を取り消し、被上告人の上告人らに対する請求をいずれも棄却した事例(反対意見がある)。
2023.11.21
訴訟救助付与申立て却下決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
LEX/DB25573117/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月19日 決定 (許可抗告審)/令和5年(許)第1号
相手方らを含む32名は、豪雨による河川の氾濫により被災したと主張して、各自の被った損害につき、抗告人ほか3名に対して損害賠償金等の連帯支払を求める訴えを共同して提起するとともに、訴訟上の救助を申し立て、原々審は、相手方らは民事訴訟法82条1項本文に規定する要件を欠くことを理由として、相手方らの上記の申立てを却下したところ、相手方らが即時抗告をし、原審は原々決定を取消し、本件を原々審に差し戻したため、抗告人が許可抗告をした事案において、共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合、各原告の請求に係る訴え提起の手数料の額は、上記訴訟の目的の価額を基礎として算出される訴え提起の手数料の額を各原告の請求の価額に応じて案分して得た額であるとし、上記の場合、訴え提起の手数料につき各原告に対する訴訟上の救助の付与対象となるべき額は、案分して得た額に限られるとし、各原告につき民訴法82条1項本文にいう「訴訟の準備及び追行に必要な費用」として考慮すべき訴え提起の手数料の額は、上記訴額を基礎として算出される訴え提起手数料の額を各原告の請求に応じて案分して得た額であるとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、民訴法82条1項本文に規定する要件の該当性について更に審理を尽くさせるため、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2023.11.21
宅地建物取引業法違反被告事件
LEX/DB25573110/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月16日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第1752号
検察官は、第1審において、「被告人は、免許を受けないで、」とあるのを、「被告人は、株式会社Aの代表取締役であるが、同会社の業務に関し、免許を受けないで、」に改める旨の訴因変更を請求し、第1審裁判所はこれを許可して変更後の訴因に係る事実を認定したもので、変更前と変更後の両訴因は、被告人が、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いはあるが、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する行為を内容とするものである点で事実が共通しており、両立しない関係にあるものであって、基本的事実関係において同一であるとして、両訴因の間に公訴事実の同一性を認めて訴因変更を許可した第1審の訴訟手続に法令違反はなく、第1審判決を維持した原判決は正当であるとし、本件上告を棄却した事例。
2023.11.14
選挙無効請求事件
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LEX/DB25573107/最高裁判所大法廷 令和 5年10月18日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第54号
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙について、東京都選挙区及び神奈川県選挙区の選挙人である上告人らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の事案の上告審において、本件定数配分規定が本件選挙当時憲法に違反するに至っていたということはできないとした原審の判断は、是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(反対意見、意見がある)。
2023.11.14
選挙無効請求事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年12月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25573108/最高裁判所大法廷 令和 5年10月18日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第52号 等
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙について、青森県選挙区、岩手県選挙区、宮城県選挙区、福島県選挙区及び山形県選挙区の選挙人である原審原告らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の事案の上告審において、原判決は、原審原告らの請求をいずれも棄却した上で、青森県選挙区、岩手県選挙区、宮城県選挙区、福島県選挙区、山形県選挙区の各選挙区における本件選挙が違法であることを主文において宣言したものであるが、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとして、原審被告らの上告に基づき、原判決を変更して、原審原告らの請求をいずれも棄却するとともに、原審原告らの上告を棄却した事例(反対意見、意見がある)。
2023.11.14
窃盗被告事件
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LEX/DB25596115/東京高等裁判所 令和 4年12月13日 判決 (差戻控訴審)/令和3年(う)第1581号
被告人が、スーパーマーケットで、店長管理の大葉2束等10点(販売価格合計1614円)を窃取したとして起訴され、原判決は、被告人が、本件犯行時、心神耗弱の状態にあったと認めるのが相当であると判断した上で、被告人を懲役4月に処したため、検察官が控訴し、心神耗弱を認定した原判決の判断には事実誤認がある旨を主張したことに対し、控訴審判決は、被告人が、本件犯行時、窃盗症にり患していたとしても、犯行状況からは自己の行動を相当程度制御する能力を保持していたといえるのであり、行動制御能力が著しく減退してはいなかったといえるから、被告人は完全責任能力を有していたと認められ、被告人は重症の窃盗症により心神耗弱の状態にあったとした原判決の認定は論理則、経験則等に照らして不合理であるとして、事実誤認を理由に原判決を破棄し、完全責任能力を認めた上で、被告人を懲役10月に処したため、弁護人が上告した。上告審判決は、弁護人の上告趣意はいずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとした上で、職権判断により、控訴審判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した。その後の差戻控訴審判決の事案で、被告人は、本件犯行時に重症の窃盗症の影響により、行動制御能力は著しく減退していた合理的疑いが残るとして、心神耗弱の状態にあったと認定した原判決の判断は、論理則、経験則等に照らして不合理であって、事実誤認があるといわざるを得ず、この誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとし、検察官の論旨には理由があり、原判決を破棄し、本件犯行の背景には、被告人が、当時、重症の窃盗症にり患し、窃盗の衝動性は強かったものと認められることを十分考慮しても、被告人の刑事責任は決して軽視することはできない一方で、被告人は、以前から、家族の協力を得ながら窃盗症の専門的治療を受けるなどしており、最終的には本件犯行に至ったものの、被告人なりに再犯防止に努めてきたこと、被告人が現行犯逮捕されたためとはいえ、被害品が全て被害店に還付されていること、本件犯行は確定裁判前の余罪に当たることなど、被告人のために酌むべき事情も認められるとして、被告人に対し、懲役8月に処するのが相当であると判断した事例。
2023.11.07
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
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LEX/DB25573119/最高裁判所大法廷 令和 5年10月25日 決定 (特別抗告審)/令和2年(ク)第993号
生物学的な性別は男性であるが心理的な性別は女性である抗告人が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)3条1項の規定に基づき、性別の取扱いの変更の審判を申し立て、原審は、抗告人について、性同一性障害者であって、特例法3条1項1号から3号までにはいずれも該当するものの、特例法3条1項4号(本件規定)に該当するものではないとした上で、本件規定は、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、社会に混乱を生じさせかねないなどの配慮に基づくものと解されるところ、その制約の態様等には相当性があり、憲法13条及び14条1項に違反するものとはいえないとして、本件申立てを却下すべきものとしたため、抗告人が特別抗告した事案において、本件規定は憲法13条に違反し無効であるところ、これと異なる見解の下に本件申立てを却下した原審の判断は、同条の解釈を誤ったものであるとして原決定を破棄し、原審の判断していない5号規定に関する抗告人の主張について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例(反対意見、補足意見がある)。
2023.11.07
ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25596007/東京高等裁判所 令和 5年 9月20日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第1538号
被告人が、Aに対する恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的で、Aから拒まれたにもかかわらず、令和3年7月4日頃から同月29日頃までの間、11回にわたり、A方宛てに、愛しているなどと記載されたはがき合計11通を発送し、同月5日頃から同月30日頃までの間、これらをA方に到達させ、その頃、これらをAに閲覧させ、連続して文書を送付し、もってAに対し、つきまとい等を反復して行い、ストーカー行為をしたとして、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪で起訴され、原審が犯罪の事実を認定したところ、被告人が控訴した事案で、原判決の「罪となるべき事実」においては、はがき合計11通の各送付行為について、1つの「連続して」行った行為であると認定したのか、各行為間の日数の多寡等を踏まえて、複数の「連続して」行った行為であると認定したのかが判然とせず、仮に前者であれば、「ストーカー行為」の判断に必要な複数の「つきまとい等」、すなわち、構成要件に該当する事実を認定していないことになるし、後者であるとしても、個々の「つきまとい等」の内容を明確に区別して示しておらず、「罪となるべき事実」の認定として不十分であるところ、原判決は、「罪となるべき事実」において、「反復して」行うことが必要な複数の「つきまとい等」の個々の内容を明示していないといわざるを得ず、「ストーカー行為」に該当する具体的事実の記載を欠いており、この点において、原判決には理由不備の違法があるとして、原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2023.11.07
殺人、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、逮捕監禁被告事件(遺体なき殺人事件)
LEX/DB25573085/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 7月 3日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第855号
被告人が、いずれも共犯者の指示を受け、約2年の間に、殺人2件、逮捕監禁致死・生命身体加害略取1件、逮捕監禁2件の各犯罪を、時に並行しながら、連続的に犯したとする、殺人、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、逮捕監禁の罪で起訴され、第1審判決は、被告人に死刑を言い渡したため、被告人が控訴し、原判決も控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人は、首謀者である共犯者の犯行計画に沿った準備や他の共犯者への指示等を中心となって行い、また、各殺人の実行行為やA及びCの遺体の焼却処分は専ら被告人が担ったものであるとし、本件各犯行を立案し、被告人らに実行させた首謀者は別の共犯者であることを踏まえても、被告人は、首謀者の共犯者の指示の下で動く実行役の中では中核的な存在で、その果たした役割は重要かつ不可欠なものであり、被告人の刑事責任は極めて重大であるとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.31
損害賠償請求事件
LEX/DB25573103/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月16日 判決 (上告審)/令和4年(受)第648号
交通事故によって死亡したAの配偶者又は子である上告人らが、加害車両の運転者である被上告人らに対し、民法709条、719条等に基づき、損害賠償を求め、原審は、上告人X1の民法709条、719条に基づく請求を357万9854円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容すべきものとし、上告人子らの各請求をそれぞれ105万0761円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容したため、上告人らが上告した事案で、人身傷害保険の保険会社(参加人)が上告人らに対して人身傷害保険金額に相当する額を支払った場合において、上告人らの被上告人に対する損害賠償請求権の額から上記の支払額を全額控除することはできないとして、原判決を一部変更し、その余の上告人らの請求を棄却した事例。
2023.10.31
選挙無効請求事件
LEX/DB25573096/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月12日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第55号
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙に関し、いわゆる特定枠制度を定める公職選挙法の規定は憲法43条1項に違反するとし、また、本件選挙と同日に行われた参議院の選挙区選出議員の選挙は同法が定める定数配分規定が憲法に違反するため無効であるとして、被上告人(原審被告)に対し、選挙無効請求をしたところ、原判決は、上告人(原審原告)の請求を棄却したため、これに不服の上告人が上告をした事案において、参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙について特定枠制度を定める公職選挙法の規定が憲法43条1項等に違反しないとし、また、参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙の無効を求める訴訟において選挙区選出議員の選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることができないことは、平成11年大法廷判決の趣旨に徴して明らかであるとし、原審の判断は正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。