2023.06.13
(プレサンス事件付審判請求)
LEX/DB25595157/大阪地方裁判所 令和 5年 3月31日 決定 (第一審)/令和4年(つ)第14号
請求人が大阪地方検察庁検事の職にあった被請求人Bを特別公務員暴行陵虐罪で同庁に告発したところ、同庁検察官が、被請求人を不起訴処分にしたが、その処分に不服があるから、事件を大阪地方裁判所の審判に付することを求めた事案において、威迫を上回る脅迫について特別公務員暴行陵虐罪の実行行為から除かれた立法経緯、被請求人の身上関係やこれまでに前科等がないことなども総合すると、被請求人を不起訴処分とするのが相当であり、嫌疑不十分を理由に検察官が行った不起訴処分は結論において正当であるとして、本件請求を棄却した事例(なお、本件においては刑事処分として不起訴処分が相当であると判断したというにとどまり、被請求人の行為を許容したわけではないことを付言した。)。
2023.06.06
婚姻費用分担申立て却下審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572858/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 5月17日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第17号
相手方が、その夫である抗告人に対し、婚姻費用分担審判の申立てをした事案の許可抗告審において、本件子は、戸籍上抗告人と相手方の嫡出子とされているが、相手方が抗告人との婚姻の成立の日から200日以内に出産した子であり、民法772条による嫡出の推定を受けないとすると、本件は、抗告人の本件子に対する本件父子関係に基づく扶養義務の存否を確定することを要する場合に、裁判所が本件父子関係の存否を審理判断することは妨げられないとし、原審は、本件父子関係の存否は訴訟において最終的に判断されるべきものであることを理由に、本件父子関係の不存在を確認する旨の判決が確定するまで抗告人は扶養義務を免れないとして、本件父子関係の存否を審理判断することなく、抗告人の本件子に対する本件父子関係に基づく扶養義務を認めたものであり、この原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして原決定を破棄し、原決定後に抗告人から提出された判決の正本及び同判決の確定証明書によれば、本件父子関係が存在しないことを確認する旨の判決が確定したことが認められるから、抗告人が本件子に対して本件父子関係に基づく扶養義務を負うということはできず、その他、抗告人と相手方が分担すべき婚姻費用に本件子の監護に要する費用が含まれると解すべき事情はうかがわれず、本件の事実関係の下において本件申立てを却下した原々審判は正当であり、原々審判に対する抗告を棄却した事例。
2023.06.06
損害賠償請求権行使請求事件
★「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25594882/名古屋地方裁判所 令和 5年 3月27日 判決 (第一審)/令和3年(行ウ)第18号
愛知県の住民である原告が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に関し、県が要綱に基づいてあいちトリエンナーレのあり方検証委員会及び同検討委員会を設置したことは、地方自治法138条の4第3項に規定するいわゆる附属機関条例主義に違反するとともに、被告の組織編成権に係る裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、本件各委員会の委員に対する報償費及び旅費並びに検証作業等に要した費用に係る支出負担行為及び支出命令は違法であると主張して、県の執行機関である被告を相手に、同法242条の2第1項4号に基づき、〔1〕本件各支出当時の県知事Bに対し、不法行為に基づく損害賠償請求を、〔2〕本件各支出の専決権者である県職員Cに対し、同法243条の2の2に基づく賠償命令をすることを求めた住民訴訟の事案で、本件訴えのうち、別紙検証費目録記載の「流用費目」欄の費目に係る「金額」欄の金額の支出、並びに本件報償費等のうち令和元年9月25日から同年11月26日までにされた支出負担行為等について、B知事及び本件職員に対し、損害賠償請求等をすることを求める部分は不適法であるとして却下し、その余の請求を棄却した事例。
2023.05.30
3番所有権抹消登記等請求事件
LEX/DB25572855/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 5月19日 判決 (上告審)/令和4年(受)第540号
Aの遺言執行者である被上告人が、本件土地はAの相続財産であり、本件土地につきAの遺言の内容に反する登記がされているなどと主張して、本件土地につき本件登記を受けた上告人らに対し、本件登記の抹消登記手続等を求めた事案の上告審において、上告人の本件登記の抹消登記手続請求のうち、上告人らの持分合計3分の2(上告人Y1の持分150分の23、上告人Y2の持分150分の42及び上告人Y3の持分150分の35)に関する部分については、同部分に係る訴えを却下すべきであり、上記持分合計3分の2を除くその余の持分に関する部分については、上告人らの持分を合計6分の5(上告人Y1の持分120分の23、上告人Y2の持分120分の42及び上告人Y3の持分120分の35)とする所有権一部移転登記への更正登記手続を求める限度で認容し、その余の請求を棄却すべきであるとし、原判決を一部変更した事例。
2023.05.30
勾留理由開示に対する特別抗告事件
LEX/DB25572838/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 5月 8日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第270号
裁判官が勾留理由開示期日において告知した勾留理由に関し不服を申立てた事案の特別抗告審において、勾留理由の開示は、公開の法廷で裁判官が勾留の理由を告げることであるから、刑事訴訟法433条1項にいう「決定又は命令」に当たらないとし、本件抗告の申立ては不適法であるとしとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.05.23
納骨堂経営許可処分取消、納骨堂経営変更許可処分取消請求事件
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LEX/DB25572835/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 5月 9日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第150号
大阪市長が、宗教法人であるA寺に対し、墓地、埋葬等に関する法律10条の規定により、納骨堂の経営の許可及びその施設の変更の許可をしたところ、同納骨堂の周辺に居住する被上告人らが、上告人を相手に、本件各許可の取消し(被上告人X5及び同X6にあっては本件変更許可の取消しを除く)を求め、原審は、本件納骨堂からおおむね300m以内の人家に居住する被上告人らは本件各許可の取消しを求める原告適格を有すると判断し、第1審判決のうち被上告人らの訴えを却下した部分を取消して、同部分につき本件を第1審に差し戻したため、上告人が上告した事案で、被上告人らは、いずれも、本件納骨堂の所在地からおおむね300m以内の場所に敷地がある人家に居住している者に当たるから、大阪市墓地、埋葬等に関する法律施行細則8条を根拠として、本件各許可の取消しを求める原告適格を有するものということができるとし、原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、及び、意見がある)。
2023.05.23
保護責任者遺棄致死、詐欺、窃盗被告事件
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LEX/DB25572757/福岡高等裁判所 令和 5年 3月 9日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第284号
Aのママ友であった被告人がAに対し虚言を重ねて現金や預金通帳を交付させ、その預金通帳を使ってATMから現金を引き出すという経過の中で、A及びその子供3人の生活全般を実質的に支配していた被告人が、Aと共謀の上、被告人を信じ切っていたAにおいてAの三男である被害者に十分な食事を与えず、被害者を飢餓死させた保護責任者遺棄致死の事案の控訴審において、原判決は、A証言の信用性判断に当たり、その証言の核心部分が被告人とAとの間のSNSのやり取り等やAの多額の収入とそれに反する生活困窮状態といった客観的な証拠等によって裏付けられていると説示しているが、当裁判所においても、A証言の信用性を認め、原判示の事実を認定した原判決の認定・説示には、論理則、経験則等に照らして不合理な点はないと判断するとして、原判決には判決に影響を及ぼす重大な事実誤認があるとの弁護人の主張を斥けるなどして、本件控訴を棄却した事例。
2023.05.16
石炭火力発電所建設等差止請求事件
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LEX/DB25594806/神戸地方裁判所 令和 5年 3月20日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第1551号
本件新設発電所の建設予定地の近隣に住む原告らが、〔1〕本件新設発電所の建設予定地は、住宅地から至近の場所にあり、また従来からNOx、PM2.5等の影響が指摘され、大気汚染物質に係る様々な規制対象となっている場所であるにもかかわらず、本件新設発電所が稼働すれば、NOx、SOx、ばいじん、水銀及びPM2.5が大気中に放出されることとなり、大気汚染が進み原告らに健康被害をもたらすおそれがある、また、〔2〕温室効果ガスの削減については国際合意がされているにもかかわらず、石炭という使用燃料の特性上、大量のCO2が排出されるから、石炭火力発電所の新設は許されず、これが稼働すれば地球温暖化が進み気候変動が生じ災害をもたらすおそれがあるとして、原告らの伝統的人格権又は人格権の一内容である健康平穏生活権若しくは安定気候享受権が受忍限度を超えて違法に侵害されるおそれがあるなどと主張し、人格権に基づく妨害予防又は妨害排除請求として、(1)主位的に、新設発電所を建設・所有することになる被告コベルコパワーに対し、新設発電所の稼働の準備行為としての建設行為の差止め(請求〔1〕)を、新設発電所を稼働することになる被告コベルコパワー及び同社が本件新設発電所の操業を委託すると考えられる被告神戸製鋼に対し、新設発電所の稼働全部の差止め(請求〔2〕)を、新設発電所の発電する電力を全量買電し、その稼働についても指示を行う予定である被告関西電力に対し、発電指示全部の差止め(請求〔3〕)を、(2)予備的に、被告コベルコパワー及び被告神戸製鋼に対し、新設発電所の稼働の割合的な差止めを(請求〔2〕に係る予備的請求)、被告関西電力に対し、その稼働の指示行為の割合的差止め(請求〔3〕に係る予備的請求)をそれぞれ求めた事案で、本件訴訟のうち、別紙2死亡当事者目録記載の者による訴えは、同人らが本件訴訟の提起後、本判決言渡し前である同別紙記載の各死亡日に死亡したことにより訴訟の終了の宣言をし、その余の原告らの請求は、本件新設発電所の稼働により原告らの生命、身体、健康が侵害される具体的危険が存在すると認めることはできず、また、温暖化に起因する気候変動による気象・気候災害の激甚化によって原告ら個々人に生ずるおそれのある被害との間に相当因果関係があると認めることもできないなどとし、本件新設発電所の建設及び稼働の差止めを求めることはできないとして、請求を棄却した事例。
2023.05.16
DNA型、指紋及び写真データの抹消等請求事件
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LEX/DB25594817/名古屋地方裁判所 令和 5年 2月17日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第3808号
愛知県あま市内の立入禁止の用水路の護岸に入って釣りをしていた原告が、愛知県津島警察署に任意同行され、警察官から軽犯罪法違反の被疑事実で取調べを受け、顔写真撮影、指掌紋及びDNA型鑑定試料の採取をされたところ、当該任意同行、取調べ、顔写真撮影、指掌紋及びDNA型の情報の採取行為は原告の人身の自由及びプライバシー権を侵害する違憲違法なものであり、また、被告国が法律に基づかずに同情報を保管することが原告の情報自己決定権を侵害する違憲違法なものであるなどと主張して、被告国に対し、人格権に基づき、原告の顔写真、指掌紋及びDNA型の記録の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、また、被告県に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案において、原告に係る被疑者写真記録、指掌紋記録及び被疑者DNA型記録について、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由が侵害されたということはできず、原告の人格的利益(人格権)の侵害があったということはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.05.09
退去強制令書発付処分取消等請求事件等
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LEX/DB25572781/大阪地方裁判所 令和 5年 3月15日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第134号
ウガンダ共和国国籍を有する原告は、出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づく難民認定の申請をしたところ、法務大臣から順次権限の委任を受けた大阪出入国在留管理局長から、難民の認定をしない旨の処分を受けるとともに、入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない旨の処分を受け、原告は、大阪出入国在留管理局主任審査官から、退去強制令書の発付処分を受けたため、原告は、これらの処分は、原告が難民であるにもかかわらず、これを看過した違法なものであり、仮に原告が難民に該当しないとしても、本件在特不許可処分及び本件退令発付処分は憲法及び市民的及び政治的権利に関する国際規約等に違反するなどと主張して、被告(国)を相手に、本件不認定処分、本件在特不許可処分及び本件退令発付処分の各取消しを求めるとともに、難民の認定の義務付けを求めた事案で、原告はレズビアンであることを「理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ものであるとし、原告は難民に該当すると認め、原告につき難民の認定をしない旨の本件不認定処分は違法であるとし、本件在特不許可処分はその前提を欠くもので違法であるとし、及び、原告をウガンダに向けて送還する旨の本件退令発付処分は違法であるとして、原告の各処分の取消請求をいずれも認容した事例。
2023.05.02
各威力業務妨害、強要未遂被告事件
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LEX/DB25594774/大阪高等裁判所 令和 5年 3月 6日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第469号
被告人P1はA支部の書記次長、被告人P2及び被告人P4はいずれも執行委員、P5は組合員であるが、被告人3名及びP5は、他のA支部組合員らと共謀の上、大阪市α区所在のA支部事務所周辺に和歌山県内から元暴力団員らが来ていたことから、B協の実質的運営者であるP6を脅迫するなどして、P6が元暴力団員らを差し向けたなどと認めさせて謝罪させようと考え、B協の業務を妨害することをいとわず、和歌山県海南市所在のB協事務所前において、P6らに対し、本件各発言を言うとともに、他の組合員らが、B協事務所周辺に集結し、P6を誹謗中傷する演説を大音量で繰り返し、元暴力団員をA支部事務所に差し向けた旨認めて謝罪するよう要求して、P6らにその対応を余儀なくさせて約4時間30分間にわたりB協の業務の遂行を不能にするとともに(威力業務妨害)、前記要求に応じなければP6の身体、自由、名誉等に対し危害を加える旨告知してP6を脅迫し、P6に義務のないことを行わせようとしたが、P6がこれに応じなかったためその目的を遂げなかった(強要未遂)として起訴され、原判決は、被告人らに威力業務妨害罪及び強要未遂罪が成立するとして、被告人P1を懲役1年4月・執行猶予3年に、被告人P2を懲役10月・執行猶予3年に、被告人P4を懲役1年・執行猶予3年にそれぞれ処したため、これに不服の被告人3名が控訴した事案で、被告人らの行為の強要未遂罪及び威力業務妨害罪の各構成要件該当性の判断、さらには、正当行為に当たるか否かという判断において、原判決は、事実の認定やその評価を誤ったものであり、各構成要件の該当性に疑問が残るとともに、被告人らの行為が労働組合法1条2項、刑法35条の正当行為となることも否定できない以上、上記事実誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人らの行為は、正当行為として罪とならないから、刑事訴訟法336条により被告人らに対し無罪の言渡しをした事例。
2023.05.02
排除措置命令取消、課徴金納付命令取消請求控訴事件(マイナミ空港サービス(株)による排除措置命令等取消請求控訴事件)
★「新・判例解説Watch」経済法分野 令和5年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25594716/東京高等裁判所 令和 5年 1月25日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第70号
被控訴人(原審被告。公正取引委員会)が、控訴人(原審原告)は、八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売に関して〔1〕自社の取引先需要者に対し、S航空から機上渡し給油を受けた場合には自社からの給油は継続できない旨等を通知し、〔2〕S航空から機上渡し給油を受けた自社の取引先需要者からの給油に係る依頼に応じる条件として、S航空の航空燃料と自社の航空燃料の混合に起因する事故等が発生した場合でも控訴人に責任の負担を求めない旨等が記載された文書への署名又は抜油を求めることにより、自社の取引先需要者にS航空から機上渡し給油を受けないようにさせており、これが令和元年法律第45号による改正前の独占禁止法2条5項の私的独占に該当し、独占禁止法3条に違反するとして、令和2年7月7日、独占禁止法7条1項に基づき、排除措置を命じるとともに、令和3年2月19日、控訴人に対し、令和元年法律第45号による改正後の独占禁止法7条の9第2項に基づき、課徴金として612万円を国庫に納付することを命じたのに対して、控訴人が、被控訴人に対し、上記排除措置命令及び上記課徴金納付命令の各取消しを求め、原判決は、上記〔1〕及び〔2〕の行為は、独占禁止法2条5項の「私的独占」に当たり、同法3条の規定に違反すると判断し、控訴人が主張するその余の取消事由の存在も認められないとして、控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決をしたため、控訴人が原判決を不服として控訴した事案で、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.04.25
損害賠償請求事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 解説記事が掲載されました★
LEX/DB25594700/東京地方裁判所 令和 5年 3月29日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第22748号
俳優等として活動する原告が、被告T社が同社のウェブサイトに掲載した記事が原告の名誉を毀損するものであり、被告Y社が、ニュースページにおいて当該記事を配信したことも原告に対する名誉毀損に当たると主張して、被告らに対し、不法行為に基づき、連帯して、損害賠償金の支払等を求めた事案で、本件各記述は、原告の名誉を毀損する違法な表現であるとし、被告T社がした本件各記述を含む本件記事を公表した行為は、原告に対する不法行為を構成するとして、被告T社に対する請求については、一部認容し、当該記事を配信した被告Y社には不法行為責任を認めることができないとして、被告Y社に対する請求については、棄却した事例。
2023.04.25
傷害被告事件
LEX/DB25594344/福岡高等裁判所 令和 5年 1月25日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第277号
被告人は、Aと数年来同棲していたものであるが、令和4年4月25日夜、同人と2軒で飲酒するなどして共にタクシーを降りた同日午後11時頃から、自ら119番通報した同日午後11時30分頃までの間に、当時の居住先である北九州市内のA方において、A(当時40歳)から馬乗りになられて首を絞められたりする暴行を加えられたのに伴い、自己の身体を防衛するため、防衛の程度を超え、Aに対し、手に持ったペティナイフ(刃体の長さ約11.8cm)で、その左腹部を1回、背部を3回刺す暴行を加え、よって、同人に加療約43日間を要する左腹部刺創、背部刺創、鋭的肝損傷、左外傷性血気胸、第12肋骨骨折及び肋間動脈損傷の傷害を負わせたとして、原審は、被告人の過剰防衛の成立を認め、被告人に対し、懲役1年6月、3年間の刑の執行を猶予を言い渡したため、これに不服の被告人が控訴した事案で、被告人による暴行が、防衛の程度を超えた行為であると認めた原判決の認定、判断は、被告人の原審公判供述の信用性評価を誤り、ひいては防衛行為の相当性の判断を誤ったもので、論理則、経験則等に照らし不合理なものであり、正当防衛を否定した原判決には、事実誤認があると判断し、被告人の行為は、Aによる急迫不正の侵害に対する防衛行為として必要かつ相当なものであり、正当防衛が成立し、よって、本件公訴事実は、犯罪の証明がないから、刑事訴訟法336条により被告人に対し、無罪の言渡しをした事例。
2023.04.18
債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572788/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 3月29日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第13号
抗告人は、本件被転付債権は前件転付命令が第三債務者に送達された時点で存在したから、前件転付命令の執行債権は、本件被転付債権の券面額で弁済されたものとみなされ(民事執行法160条)、その大部分が消滅しており、本件差押命令は、同法146条2項が禁止する超過差押えに当たるとして、その取消しを求める執行抗告をしたところ、本件差押命令は超過差押えに当たらないとして、抗告人の執行抗告を棄却したため、抗告人が許可抗告をした事案で、第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済の効果が妨げられないとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、本件支払がされた時期等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.04.18
再審開始決定に対する即時抗告申立事件(袴田事件再審開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594670/東京高等裁判所 令和 5年 3月13日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(く)第14号
住居侵入、被害者4名の強盗殺人、放火被告事件につき、死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定したため、再審請求人(有罪の言渡を受けた者の保佐人)が、地方裁判所に第2次再審請求をしたところ、地方裁判所は再審開始の決定をしたため、検察官が即時抗告の申立てをした事案で、原決定は、5点の衣類等のDNA型鑑定に関する証拠(とりわけP1鑑定)及び5点の衣類の色に関する証拠(とりわけ、各みそ漬け実験報告書等)を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当すると認めたものであるところ、DNA型鑑定に関するP1鑑定について再審開始を認めるべき証拠に該当するかどうかを改めて判断するまでもなく、原審において提出された、みそ漬け実験報告書等の新証拠は、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当するとして、みそ漬け実験報告書等について、刑事訴訟法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」であると認めた原決定の判断には誤りはなく、本件再審を開始するとした原決定は、その結論において是認できるとし、本件即時抗告を棄却した事例。
2023.04.11
共有持分移転登記手続請求事件
LEX/DB25572742/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第324号
上告人は、被上告人に対し、遺留分減殺を原因とする不動産の所有権一部移転登記手続を求める訴えを提起したが、被上告人は、適式な呼出しを受けたにもかかわらず、第1審の第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったため、第1審で、一人の裁判官によって審理されていたところ、同裁判官は、上記期日において口論弁論を終結し、判決言渡期日を指定し、上記の指定に係る判決言渡期日において、上記口頭弁論に関与していない裁判官が、民事訴訟法254条1項により、判決書の原本に基づかないで上告人の請求を全部認容する第1審判決を言い渡したが、上告人は、本件第1審判決には民事訴訟法249条1項に違反する判決手続の違法があり、これは再審事由(同法338条1項1号)にも当たるなどとして、本件第1審判決を取消し、改めて上告人の請求を全部認容する旨の判決を求めて控訴をし、原判決は、本件控訴は不適法であるとして却下したため、上告人が上告した事案で、第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民事訴訟法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、その判決手続は同法249条1項に違反するものであり、同判決には民事訴訟の根幹に関わる重大な違法があり、また、上記の違反は、訴訟記録により直ちに判明する事柄であり、同法338条1項1号に掲げる再審事由に該当するものであるから、上記の第1審判決によって紛争が最終的に解決されるということもできないとして、上告人は、本件第1審判決に対して控訴をすることができるとし、本件控訴を不適法であるとして却下した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、改めて審理をさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.04.11
死体遺棄被告事件
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LEX/DB25572744/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第196号
被告人は、当時の被告人方において、被告人が出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、死体を遺棄したとして、第1審判決は、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処したが、これに対し被告人が控訴し、原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たるとし、第1審判決を破棄し、懲役3月、2年間の執行猶予を言い渡したため、被告人が上告をした事案で、被告人の行為は、死体を隠匿し、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したものであるが、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとし、原判決は、「遺棄」についての解釈を誤り、本件作為が「遺棄」に当たるか否かの判断をするに当たり必要なその態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点からの検討を欠いたため、重大な事実誤認をしたとし、本件作為について死体遺棄罪の成立を認めた原判決及び第1審判決は、いずれも判決に影響を及ぼすべき法令違反及び重大な事実誤認があるとして、原判決を破棄し、既に検察官による立証は尽くされているので、当審において自判し、被告人に無罪の言渡しをした事例。
2023.04.04
未払賃金等請求事件
LEX/DB25572682/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月10日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1019号
被上告人に雇用され、トラック運転手として勤務していた上告人が、被上告人に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金並びに付加金等の支払を求めたところ、原審は、上告人の各請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、被上告人の上告人に対する本件時間外手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分を破棄し、上告人に支払われるべき賃金の額、付加金の支払を命ずることの当否及びその額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2023.04.04
電子計算機使用詐欺被告事件
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LEX/DB25594479/山口地方裁判所 令和 5年 2月28日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第69号 等
被告人は、A銀行の支店に開設された自己名義の普通預金口座に、山口県B町が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を誤って振込入金したこと(本件誤振込金)を利用して、電子計算機を使用し、被告人口座の預金からオンラインカジノサービスの決済代行業者にその利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考え、誤って振り込まれた被告人に無関係なものであることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金についてデビットカード情報を利用して決済代金の支払委託等をすることが許されないにもかかわらず、デビットカード情報を利用し、アメリカ合衆国2万4000ドル余り相当のオンラインカジノサービスを利用し得る地位を得て、財産上不法の利益を得た行為をしたとして、懲役4年6か月を求刑された事案において、被告人がインターネットに接続した携帯電話機からA銀行の電子計算機に情報を与える行為は正当な権利行使とはいえず、電子計算機使用詐欺罪が成立するとして、被告人に懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例。