2024.08.27
難民不認定処分取消等請求事件
★「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年12月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25620544/大阪地方裁判所 令和 6年 7月 4日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第112号
チュニジア国籍を有する外国人男性である原告は、チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に家族から暴力を受け、警察官に助けを求めても逮捕を示唆され保護を受けられなかったことなどから、帰国すると同性愛者であることを理由に迫害を受けるおそれがあるとして、出入国管理及び難民認定法(令和5年法律第56号による改正前のもの)61条の2第1項に基づき難民認定申請をしたが、大阪出入国在留管理局長から、難民の認定をしない処分を受けた。原告は、本件不認定処分につき審査請求をしたが、法務大臣から、本件審査請求を棄却する旨の裁決を受けたため、原告が、被告(国)を相手に、原告は難民に該当するなどと主張して、本件不認定処分及び本件裁決の取消しを求めた事案において、原告は、チュニジアに帰国した場合に、同性愛者であることを理由に迫害を受ける主観的恐怖を有しており、かつ、通常人が原告の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していると認められるから、原告は、本件不認定処分の時点で、難民に該当するとし、原告を難民と認定しなかった本件不認定処分は違法であるとして、本件不認定処分を取消し、本件訴えのうち本件裁決の取消しを求める部分を却下した事例。
2022.07.12
間接強制決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572214/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 6月21日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第8号
抗告人が、その夫である相手方に対し、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律134条に基づき、両名の子らのフランスへの返還を命ずる終局決定(本件返還決定)を債務名義として、間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立てをした事案の許可抗告審において、本件申立ての後、抗告人がハーグ条約実施法134条に基づき本件返還決定を債務名義として申し立てた子の返還の代替執行により子の返還が完了したことによって、本件返還決定に係る強制執行の目的を達したことが明らかであるから、本件申立ては不適法であるとし、本件申立てを却下した原決定は、結論において是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2020.02.04
親子関係不存在確認事件
★「新・判例解説Watch」国際私法分野 2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25580357/名古屋家庭裁判所豊橋支部 平成30年10月 2日 判決 (第一審)/平成30年(家ホ)第18号
原告が被告に対し、原告の母である原告法定代理人母は、被告と婚姻中に原告を懐胎したが、懐胎当時、母と被告が性交渉をもった可能性がなく、原告は被告の子ではないとして、原告と被告との間の親子関係が存在しないことの確認を求めた事案において、準拠法についての検討で、親子関係の成立という法律関係のうち嫡出性取得の問題を一個の独立した法律関係として規定している法の適用に関する通則法28条、29条の構造上、親子関係の成立が問題になる場合には、まず嫡出親子関係の成立についての準拠法により嫡出親子関係が成立するかどうかを見た上、そこで嫡出親子関係が否定された場合には、嫡出とされなかった子について嫡出以外の親子関係の成立の準拠法を別途見いだし、その準拠法を適用して親子関係の成立を判断すべきであるとし、本件の母(本国法:ルーマニア法)及び被告(本国法:日本法)は、日本で婚姻し、婚姻生活を送り、離婚していることから、離婚当時、婚姻の効力を規律した法律は日本法であるとし、法の適用に関する法律41条により、日本法が適用されることとなり、被告の本国法も日本法であることから、嫡出親子関係に係る準拠法は日本法となるとした上で、母と被告とは、母が原告を懐胎した頃には、事実上離婚状態にあり、また、科学的証拠により原告と交際相手eとの間に親子関係が存在することが認められるところ、翻って、原告と被告との間に親子関係が存在しないことが明らかであるから、原告は民法772条の推定を受けるものではなく、かつ、原告は、被告の子ではないことが明らかであるとし、原告と被告との間には、親子関係は存在しないとして、原告の請求を認容した事例。
2018.08.15
人身保護請求事件(ハーグ条約 米国在住の父へ息子引き渡し認める)
LEX/DB25560800/名古屋高等裁判所 平成30年 7月17日 判決 (差戻第一審)/平成30年(人ナ)第4号
米国に居住する請求者(被拘束者の父。日本人)が、日本に居住する拘束者(被拘束者の母。日本人)に対し、被拘束者(請求者と拘束者の二男。アメリカ合衆国で出生し、日本との二重国籍を保有)は、法律上正当な手続によらないで拘束者により身体の自由を拘束されていると主張して、人身保護法に基づき、被拘束者を釈放することを求め、差戻前第1審は、請求者の請求を棄却し、請求者が上記第1審判決に対し上告受理の申立てをし、最高裁は、拘束者の被拘束者に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たり、本件請求は、被拘束者の自由に表示した意思に反してされたものとは認められず、また、拘束者による被拘束者に対する拘束には顕著な違法性がある旨を判示し、上記原判決を破棄し、高裁に差し戻しを命じ、差戻後第1審の事案において、拘束者は、本件返還決定に基づいて子の返還の代替執行の手続がされたにもかかわらずこれに抵抗し、本件返還決定に従わないまま被拘束者を監護していることが明らかであるとし、米国への返還のために拘束者の被拘束者に対する監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情が認められない限り、拘束者による被拘束者に対する拘束には、顕著な違法性があるとして、被拘束者を釈放し、請求者に引き渡すこととした事例。
2018.08.15
人身保護請求事件
(平成30年7月17日名古屋高等裁判所(平成30年(人ナ)第4号)の第一審)
LEX/DB25560799/名古屋高等裁判所金沢支部 平成29年11月 7日 判決 (第一審)/平成29年(人ナ)第1号
米国に居住する請求者(被拘束者の父。日本人)が、日本に居住する拘束者(被拘束者の母。日本人)に対し、人身保護法に基づき、被拘束者(請求者と拘束者の二男。アメリカ合衆国で出生し、日本との二重国籍を保有)の釈放を求めた事案において、被拘束者が拘束者によって身体の自由を拘束されているとは認められず、請求者の本件請求は被拘束者の自由に表示した意思に反するから、被拘束者の監護権の帰属が問題となることはないのであり、請求者の主張するように別件米国裁判によって拘束者が被拘束者の監護権を失い、請求者が監護権を有するとしても、本件の結論は左右されないとし、また、拘束者による監護状況や13歳という年齢(自己の置かれた状況を理解してその意思を表明し得る年齢)にある被拘束者の意向などを考え、拘束者による監護が被拘束者の福祉に反するとはいえず、監護(拘束)の違法性が顕著であるとも解せられないとして、本件請求を棄却した事例。
2018.03.27
人身保護請求事件
LEX/DB25449323/最高裁判所第一小法廷 平成30年 3月15日 判決 (上告審)/平成29年(受)第2015号
米国に居住する上告人(夫)が、日本に居住する被上告人(妻)により、上告人と被上告人との間の二男である被拘束者(米国で出生し、戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出がされたことによる米国籍と日本国籍との重国籍。現在13歳)が法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されていると主張して、人身保護法に基づき、被拘束者を釈放することを求めたところ、原審は、上告人の請求を棄却したため、上告した事案において、本件請求は、被拘束者の自由に表示した意思に反してされたもの(人身保護規則5条)とは認められず、被上告人による被拘束者に対する拘束には、顕著な違法性があるとし、原判決を破棄し、上告人の本件請求は認容すべきでところ、本件については、被拘束者の法廷への出頭を確保する必要がある点をも考慮し、原審に差し戻した事例。
2018.01.09
終局決定の変更決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449155/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月21日 決定 (許可抗告審)/平成29年(許)第9号
相手方が、変更前決定が確定した後の事情の変更によりこれを維持することが不当になったと主張して、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律117条1項に基づき、変更前決定を変更し、本件申立てを却下するよう求めた事案の許可抗告審において、変更前決定は、その確定後の事情の変更によってこれを維持することが不当となるに至ったと認めるべきであるから、同法117条1項の規定によりこれを変更し、本件申立てを却下するのが相当であるとし、これと同旨の原審の判断は、結論において是認することができるとして、抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2017.12.26
仲裁判断取消申立て棄却決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449115/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月12日 決定 (許可抗告審)/平成28年(許)第43号
申立人らと相手方らとの間の一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA)大阪11-02号仲裁事件において、3人の仲裁人の合議体である仲裁廷がした仲裁判断につき、相手方らが、仲裁法44条1項6号所定の事由があるなどとして、その取消しの申立てをしたところ、原々審は、申立てを棄却したため、申立人らが抗告し、原審は、申立人らの申立てを認容し、これと結論を異にする原々審を取消した上で、本件仲裁判断を取り消すこととしたため、相手方らが許可抗告した事案において、仲裁人が、当事者に対して仲裁法18条4項の事実を開示しなかったことについて、同項所定の開示すべき義務に違反したというためには、仲裁手続が終了するまでの間に、仲裁人が当該事実を認識していたか、仲裁人が合理的な範囲の調査を行うことによって当該事実が通常判明し得たことが必要であるとし、本件事実を開示すべき義務に違反したものとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、高等裁判所に差し戻した事例。
2017.06.06
市町村長の処分に対する不服申立て却下の審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25448658/最高裁判所第二小法廷 平成29年 5月17日 決定 (許可抗告審)/平成28年(許)第49号
相手方らが、その子らに係る戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出等を抗告人にしたところ、抗告人からこれらを受理しない旨の処分を受けたため、同法121条に基づき、抗告人に本件届出等の受理を命ずることを申し立てたところ、原審は本件各国籍留保の届出が戸籍法104条3項所定の期間内にされたものであるとして、本件申立てを却下した原々審判を取消し、抗告人に本件各届出の受理を命じたため、抗告人が許可抗告した事案において、戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出について同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断は、法令の違反があるとし、原決定を破棄し、本件各届出をいずれも不受理とした抗告人の処分に違法はなく、本件申立てを却下した原々審判は相当であるとし、これに対する相手方らの抗告を棄却した事例。