注目の判例

民事執行法

2023.04.18
債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25572788/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 3月29日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第13号
抗告人は、本件被転付債権は前件転付命令が第三債務者に送達された時点で存在したから、前件転付命令の執行債権は、本件被転付債権の券面額で弁済されたものとみなされ(民事執行法160条)、その大部分が消滅しており、本件差押命令は、同法146条2項が禁止する超過差押えに当たるとして、その取消しを求める執行抗告をしたところ、本件差押命令は超過差押えに当たらないとして、抗告人の執行抗告を棄却したため、抗告人が許可抗告をした事案で、第三債務者が差押命令の送達を受ける前に債務者との間で差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合において、上記差押えに係る金銭債権について発せられた転付命令が第三債務者に送達された後に上記電子記録債権の支払がされたときは、上記支払によって民事執行法160条による上記転付命令の執行債権及び執行費用の弁済の効果が妨げられないとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、本件支払がされた時期等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.03.14
動産引渡等請求事件
LEX/DB25572655/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 2日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1176号
被上告人が、被上告人を債務者とする動産執行事件において物資搬送装置一式(本件動産)を買受けた上告人に対し、本件動産の売却は無効であるなどと主張して、所有権に基づき、本件動産の引渡し等を求めたところ、原審は、本件動産の引渡しを求める被上告人の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、執行処分が弁済受領文書(民事執行法39条1項8号)の提出による強制執行の停止の期間中にされたものであったとしても、そのことにより当該執行処分が当然に無効となるものではないというべきであり、本件売却は、弁済受領文書の提出による強制執行の停止の期間中にされたことにより当然に無効となるものではないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、所有権に基づき本件動産の引渡しを求める被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2022.10.25
財産開示手続実施決定に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572361/最高裁判所第一小法廷 令和 4年10月 6日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第16号
執行力のある債務名義である養育費支払等契約公正証書の正本を有する金銭債権の債権者である抗告人が、民事執行法197条1項2号に基づき、債務者である相手方について、財産開示手続の実施を申し立てたところ、原審が、本件債権は弁済により消滅したとして、原々決定を取消し、本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告した事案で、民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告においては、請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできないとし、これと異なる見解の下に、本件申立てを却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2021.07.06
売却不許可決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571597/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月21日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第7号
横浜地方裁判所は、平成25年12月27日、Aが所有する本件土地建物につき、Aを債務者とする根抵当権の実行としての競売の開始決定(本件競売事件)をし、Aは、平成26年6月18日、破産手続開始の決定を受け、同年9月18日、破産手続廃止の決定を受けた。Aは、同日、免責許可の決定を受け、同決定はその後確定した。上記根抵当権の被担保債権は、上記免責許可の決定の効力を受けるものである。その後、Aは、平成27年2月23日に死亡し、その子である抗告人等がAを相続した。執行官は、令和2年12月1日午前9時に開かれた本件競売事件の開札期日において、抗告人を最高価買受申出人と定めた。そして、執行裁判所は、令和2年12月21日、本件競売事件の債務者であったAの相続人である抗告人は上記土地建物を買い受ける資格を有せず、民事執行法188条において準用する同法71条2号に掲げる売却不許可事由があるとして、抗告人に対する売却不許可決定をしたため、抗告人が執行抗告をしたところ、原審は、抗告人の執行抗告を棄却したため、抗告人が許可抗告をした事案で、担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合には、当該債務者の相続人は被担保債権を弁済する責任を負わず、債権者がその強制的実現を図ることもできなくなるから、上記相続人に対して目的不動産の買受けよりも被担保債権の弁済を優先すべきであるとはいえないし、上記相続人に買受けを認めたとしても同一の債権の債権者の申立てにより更に強制競売が行われることはなく、上記相続人に買受けの申出を認める必要性に乏しいとはいえず、また、上記相続人については、代金不納付により競売手続の進行を阻害するおそれが類型的に高いとも考えられず、上記の場合、上記債務者の相続人は、民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらないと判示し、これと異なる見解の原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消した上、その他の売却不許可事由の有無につき審理を尽くさせるため,本件を原々審に差し戻すこととした事例。
2020.06.30
不当利得返還請求事件
LEX/DB25565726/神戸地方裁判所 令和 2年 5月28日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第1955号
原告(信用保証協会)が、被告(地方公共団体)に対し、本件土地に係る担保不動産競売事件において、根抵当権の被担保債権者である原告に配当されるべき544万2154円が、原告との関係で優先権を有しない被告に配当されたとして、不当利得返還請求権に基づき、配当金の支払を求めた事案で、原告債権が被告債権に優先する場合、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権を行使することができるとして、原告の請求を認容した事例。
2019.02.05
譲渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449939/最高裁判所第二小法廷 平成31年 1月23日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第1号
相手方を債務者として、社債、株式等の振替に関する法律(社債等振替法)2条4項に規定する口座管理機関であるS証券会社が備える振替口座簿に開設した亡A名義の口座に記録された株式、投資信託受益権及び投資口につき、亡Aの相続人である相手方ほか4名が共同相続し,相手方がそれらの共有持分を有するとして、本件持分に対する差押命令の申立てをし、本件差押命令を得た。本件は、抗告人が、本件差押命令により差し押さえられた本件持分について譲渡命令の申立てをし、原決定は、本件申立てを却下したため、抗告人が抗告した事案で、被相続人名義の口座に記録等がされている振替株式等が共同相続された場合において、その共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命令は、当該振替株式等について債務者名義の口座に記録等がされていないとの一事をもって違法であるということはできないと判示し、さらに、執行裁判所は、譲渡命令の申立てが振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分についてのものであることから直ちに当該譲渡命令を発することができないとはいえないと判示し、これと異なる見解の下に、本件申立てを却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差戻した事例(補足意見がある)。
2019.01.16
請求異議事件
LEX/DB25449875/最高裁判所第三小法廷 平成30年12月18日 決定 (上告審)/平成29年(オ)第1725号
債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合、当該申立てに係る差押えによる時効中断の効力が民法154条により初めから生じなかったことになると解するのは相当でなく、このような法令解釈に関する意見(本件意見)は、最高裁平成8年(オ)第2422号同11年9月9日第一小法廷判決・裁判集民事193号685頁(平成11年判決)と相反するから、民訴規則203条所定の事由があるとして、高等裁判所が、民訴法324条に基づき、本件を最高裁判所に移送する旨の本件決定をしたが、平成11年判決は、担保不動産競売の申立てをした債権者が当該競売の手続において請求債権の一部又は全部の満足を得ることなく当該申立てを取り下げた場合について判断したものであって、債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合についての本件意見とは前提を異にしているというべきであるとし、本件意見は平成11年判決と相反するものではなく、本件決定に係る民訴規則203条所定の事由はないと認められるとして、本件を最高裁判所に移送する旨の本件決定を取り消した事例。
2018.05.08
株式差押命令取消決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449418/最高裁判所第二小法廷 平成30年 4月18日 決定 (許可抗告審)/平成29年(許)第13号
株券が発行されていない株式である債務者保有の株式に対する差押命令を得て、上記株式につき売却命令による売却がされた後、配当表記載の抗告人外1名の配当額について配当異議の訴えが提起され、そのため、上記配当額に相当する金銭の供託がされたが、その供託の事由が消滅する前に債務者が破産手続開始の決定を受け、その破産管財人が執行裁判所に本件差押命令の取消しを求める旨の上申書を提出したところ、執行裁判所が、本件差押命令に係る強制執行の手続が破産法42条2項本文により破産財団に対してはその効力を失うことを前提として、職権により本件差押命令を取り消す旨の決定をしたため、本件強制執行手続に同項本文の適用があるか否かが争われた事案の許可抗告審において、本件強制執行手続には破産法42条2項本文の適用があるとし、これと同旨の見解に基づき、執行裁判所が職権により本件差押命令を取り消すことができるとした原審の判断は、正当として是認できるとし、本件抗告を棄却した事例。
2018.05.01
不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449412/最高裁判所第三小法廷 平成30年 4月17日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第3号
抵当権者に対抗することができない賃借権が設定された建物が担保不動産競売により売却された場合、その競売手続の開始前から当該賃借権により建物の使用又は収益をする者は、当該賃借権が滞納処分による差押えがされた後に設定されたときであっても、民法395条1項1号に掲げる「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」に当たるとし、抗告人の相手方に対する引渡命令の申立てを却下した原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2017.10.31
債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25448955/最高裁判所第三小法廷 平成29年10月10日 決定 (許可抗告審)/平成28年(許)第46号
抗告人が、抗告人の相手方に対する元金及びこれに対する支払済みまでの遅延損害金の支払を内容とする金銭債権を表示した債務名義による強制執行として、債権差押命令の申立てをし、上記債務名義による強制執行として既に発せられた債権差押命令(前件差押命令)に基づく差押債権の取立てに係る金員が、前件差押命令の申立書に請求債権として記載されていなかった申立日の翌日以降の遅延損害金にも充当されるか否かが争われ、原審が債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告を棄却決定したため、抗告人が許可抗告した事案において、本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合、申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となると解され、原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、本件申立てを却下した原々決定を取り消した上、本件を原々審に差し戻した事例。
2017.10.17
執行文付与の拒絶処分に対する異議申立て事件 
LEX/DB25546971/東京地方裁判所 平成29年 8月21日 決定 (第一審)/平成29年(行ク)第256号
申立人が、別訴の仮の差止めの申立て事件で、同裁判所がした決定(本件決定)につき、執行文の付与の申立てをしたところ、同裁判所の裁判所書記官から、本件決定に基づく国に対する強制執行はできないとして、執行文の付与を拒絶する処分を受けたことから、民事執行法32条1項に基づき、上記拒絶処分に対する異議を申し立てた事案において、本件決定を債務名義として強制執行をすることはできないから、本件決定について執行文を付与することを拒絶した上記拒絶処分は正当であると判断し、本件申立てを却下した事例。
2017.10.03
配当表に対する異議申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25448911/最高裁判所第三小法廷 平成29年 9月12日 決定 (許可抗告審)/平成29年(許)第3号
破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた破産債権者である相手方が、破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額のうち実体法上の残債権額を超過する部分を物上保証人に配当すべきものとした抗告人作成の配当表に対する異議申立てをしたところ、原々審は、超過部分は債権の一部を弁済した求償権者に配当すべきであるなどとして、配当表に対する相手方の異議申立てを却下し、これに対し、原審は、超過部分を求償権者に配当することはできないとし、原々決定を取消し、本件を原々審に差し戻しを命じたため、これに不服の抗告人が許可抗告した事案において、破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合に、破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは、その超過する部分は当該債権について配当すべきであるとし、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるが、相手方の異議申立てを却下した原々決定は不当であるから、原々決定を取り消して本件を原々審に差し戻した原審の判断は、結論において是認することができるとして、抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2017.08.01
執行費用額負担決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25448801/最高裁判所第一小法廷 平成29年 7月20日 決定 (許可抗告審)/平成29年(許)第1号
既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担は、執行裁判所が、民事執行法20条において準用する民事訴訟法73条の規定に基づいて定めるべきものと解するのが相当であるとした上で、相手方から民事執行法20条において準用する民事訴訟法73条1項の裁判の申立てを受けた執行裁判所は、上記強制競売が終了するに至った事情を考慮して、同条2項において準用する同法62条の規定に基づき、同強制競売の執行費用を抗告人の負担とする旨の裁判をすることができるとし、上記強制競売の執行費用を抗告人の負担とすべきものとした原審の判断は、是認することができるとして、抗告を棄却した事例。
2017.05.30
債権差押命令取消及び申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25448653/最高裁判所第二小法廷 平成29年 5月10日 決定 (許可抗告審)/平成28年(許)第26号
輸入業者である抗告人から依頼を受けてその輸入商品に関する信用状を発行した銀行である相手方が、抗告人につき再生手続開始の決定がされた後、上記輸入商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、抗告人が転売した上記輸入商品の売買代金債権の差押えを申し立てた事案の上告審において、本件商品の輸入について信用状を発行した銀行である相手方は、抗告人から占有改定の方法により本件商品の引渡しを受けたものと解するのが相当であるとした上で、相手方は、抗告人につき再生手続が開始した場合に本件譲渡担保権を別除権として行使することができるというべきであるから、譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、本件転売代金債権を差し押さえることができるとし、原審の判断を是認することができるとして抗告を棄却した事例。
2016.04.05
差押処分取消請求事件 
LEX/DB25447866/最高裁判所第三小法廷 平成28年 3月29日 判決 (上告審)/平成26年(行ヒ)第228号
彦根市長が、被上告人会社が彦根市内に所有する当該土地、当該家屋及びその他複数の土地の固定資産税等の滞納処分として、被上告人会社の訴外A社に対する当該土地及び当該家屋の賃貸借契約に基づく賃料債権の差押えをしたことから、被上告人らが、当該土地は、被上告人X2を委託者兼受益者、被上告人会社を受託者とする信託財産であって、上記賃料債権のうち当該土地の賃料相当額部分も信託財産であるから、滞納処分を行うことはできないなどとして、上告人を相手に、当該差押えの取消しを求め、原審は、当該差押えが全体として違法であるとして、これを取り消したため、上告人が上告した事案において、当該差押えを違法であるとした原審の判断は、法令違反があるとし、原判決を破棄し、当該差押えが適法であるとして被上告人らの請求を棄却した第1審判決は結論において是認することができるとし、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2015.11.04
配当異議事件
LEX/DB25447529/最高裁判所第三小法廷  平成27年10月27日  判決 (上告審)/平成25年(受)第2415号
供託金の支払委託がされた時点における各貸金債権に、供託金及び供託利息の法定充当がされた結果残存するその各貸金債権の額は、配当表記載の被上告人の債権額を下回らないものと認められるから、上告人の請求には理由がないことになり、これを棄却した原審の判断は、是認することができるとして、上告を棄却した事例。