2024.11.26
住居侵入、強盗殺人、放火被告事件(袴田事件再審無罪判決)
LEX/DB25621141/静岡地方裁判所 令和 6年 9月26日 判決(再審請求審)/平成20年(た)第1号
被告人が、住居侵入、強盗殺人、放火の罪で起訴され、被告人を死刑に処する旨の判決が確定したが、その後の再審請求審(第2次再審請求審)が、提出された新証拠は、刑事訴訟法435条6号にいう無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当するとして、再審を開始するとの決定(本件再審開始決定)をしたため、検察官が即時抗告又は抗告を申し立て、差戻前抗告審は、本件再審開始決定を取り消したことから、弁護人が特別抗告を申し立て、最高裁判所は本件を東京高等裁判所に差し戻す旨の決定をし、差戻抗告審が、1号タンクから発見された5点の衣類に付着した血痕の色調に赤みが残っていたことは、被告人を本件犯行の犯人とした確定第1審判決の認定に合理的な疑いを生じさせることが明らかであるとして、検察官の即時抗告を棄却する決定をし、本件再審開始決定が確定したため、再審公判が行われた事案で、被告人の犯人性を推認させる最も中心的な証拠とされてきた5点の衣類は、本件の犯行着衣であるとも、被告人が本件犯行後に1号タンク内に隠匿したものであるとも認められず、本件事件から長期間経過後のその発見に近い時期に、本件犯行とは関係なく、捜査機関によって血痕を付けるなどの加工がされ、1号タンク内に隠匿されたものであって、捜査機関によってねつ造されたものと認められ、また、5点の衣類と被告人を結び付けるという端切れも、捜査機関によってねつ造されたものと認めるのが相当であり、5点の衣類及び端切れは、本件とは関連性を有しない証拠であるから、本件の証拠から排除され、被告人が本件犯行の犯人であることを裏付ける証拠にはならず、そして、5点の衣類を除いた証拠によって認められる事実関係は、被告人が本件犯行の犯人であるとすれば整合するといった程度の限定的な証明力を有するに過ぎず、被告人以外の者による犯行可能性を十分に残すものであるところ、本件の事実関係には、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難な事実関係が含まれているとはいえず、被告人を本件犯行の犯人と認めることはできないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2024.11.19
文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
★「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25621078/最高裁判所第二小法廷 令和 6年10月16日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第5号
複数の者が共同して実行したとされる学校法人Fを被害者とする大阪地方検察庁の捜査に係る業務上横領事件の被疑者の1人として逮捕、勾留され、本件横領事件について起訴されたが、無罪判決を受けた抗告人が、上記の逮捕、勾留及び起訴が違法であるなどと主張して、相手方に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた本案訴訟(損害賠償請求事件)において、抗告人が、検察官がEを本件横領事件の被疑者の1人として取り調べる際にEの供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体等について、民事訴訟法220条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に該当するなどと主張して、文書提出命令の申立てをし、原々審が相手方・国に本件対象部分の提出を命じ、その余の本件申立てを却下する決定をしたことから、相手方が即時抗告をし、原審が、相手方に本件公判提出部分の提出を命ずべきものとする一方、本件申立てのうち本件公判不提出部分に係る部分を却下したところ、抗告人が抗告した事案で、本件公判不提出部分の提出を拒否した相手方の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものというべきであるとしたうえで、以上と異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから、論旨は理由があり、原決定のうち本件公判不提出部分に係る本件申立てを却下した部分は破棄を免れず、相手方に本件公判不提出部分の提出を命じた原々決定は正当であるとして、上記部分につき相手方の抗告を棄却した事例(補足意見あり)。
2024.10.15
国家賠償請求控訴事件
LEX/DB25620890/東京高等裁判所 令和 5年12月13日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第3500号
薬剤師である控訴人(原告)は、A警察署の警察官が控訴人の勤務先病院に、電話で、控訴人をストーカー行為等の規制等に関する法律違反の容疑で被疑者として捜査していると述べるなどしてその職権を濫用したなどとして、原判決別紙の告訴状を添付書面と共にB地方検察庁に送付したが、同庁特別捜査部直告班の担当検察官は、告訴事実の特定が十分でないとして本件告訴状を受理せず、本件告訴状及び添付書面を控訴人に返戻したところ、控訴人が、本件検察官が本件告訴状を受理して捜査に着手することを怠り、控訴人が職場において業務を妨害され、健康な生活の確保が危うくされている旨をB地検を管轄する法務省等に報告することを怠ったものであり、本件返戻行為、本件捜査不着手行為及び本件不対応行為は違法であるとして、被控訴人(被告)に対し、国家賠償法1条1項又は同法4条及び民法709条に基づく損害賠償請求として、慰謝料及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求を棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、本件返戻行為によって控訴人の法律上保護された利益が害されたということはできず、控訴人は、本件告訴状を提出したのは公益目的に出たものであると主張し、この主張は、告訴が公益目的でされた場合には、告訴人が捜査又は公訴提起によって受ける利益が捜査又は公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にとどまるとする考え方は妥当しないことをいうものと解されるが、告訴について独自の考えを述べるものに過ぎないものであって採用することはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.10.01
債権処分禁止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25620832/東京高等裁判所 令和 5年 1月25日 決定 (抗告審)/令和4年(ラ)第2326号
本件金等を氏名不詳者に詐取された抗告人が、本件金を氏名不詳者から預かり、本件金を警察に任意提出した相手方に対し、所有権に基づく本件金の引渡請求権を被保全権利として、本件金を押収物として保管する第三債務者から本件金の引渡しを受け、又は相手方が第三債務者に対して有する上記目録記載の引渡請求権(本件押収物引渡請求権)の処分をすることを禁止するとともに、第三債務者に対し、相手方に対して本件金を引き渡したり、相手方の指図に従って処分することを仮に禁止することを求めたところ、原審が、抗告人が相手方に対して本件引渡請求権を有することは一応認められるものの、抗告人が本件引渡請求権を被保全権利として本件申立てに係る債権の処分禁止等の仮処分命令を求めることは不適法であるとして、本件申立てを却下したことから、抗告人が抗告した事案で、本件金については、相手方が第三債務者から還付処分を受けた場合、抗告人が相手方を被告として、本件引渡請求権に基づき、本件金の引渡しを求める本案訴訟を提起し、その請求が認容された場合には、第三債務者は、相手方に対して本件金を引き渡す義務を負うため、民事執行法170条1項により、執行裁判所が相手方の第三債務者に対する本件押収物引渡請求権を差し押さえ、その行使を抗告人に許す旨の命令を発する方法により本件金の引渡しの執行がされることになり、抗告人は、第三債務者に対し、本件金を直接抗告人に引き渡すよう請求することができるのであるから、本件仮処分は、本案請求の範囲を超えるものとはいえず、また、第三債務者は、その禁止が解かれるまでの間、第三債務者が相手方に対して本件金を引き渡すことなどを禁止されたとしても、第三債務者が本来負っている上記保管義務が継続することになるに過ぎず、第三債務者に対して不利益を課すものともいえないとして、抗告人に300万円の担保を立てさせて本件申立てを認容した事例。
2024.08.27
損害賠償請求事件(国家賠償請求)
LEX/DB25620432/東京地方裁判所 令和 6年 7月18日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第5542号
弁護士であった原告が、犯人隠避教唆の被疑者として検察官から受けた取調べに違法があり、精神的苦痛を受けたと主張して、被告・国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件取調べにおけるP4検察官の言動は、事案の内容・性質、嫌疑の程度及び取調べの必要性を考慮しても、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものといわざるを得ず、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであり、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえるところ、原告の請求は、被告に対し、違法な本件取調べと相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2024.08.20
死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件(飯塚事件第2次再審請求棄却決定)
★「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和6年11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25620263/福岡地方裁判所 令和 6年 6月 5日 決定 (再審請求審)/令和3年(た)第3号
亡死刑囚に対する死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件(いわゆる飯塚事件)について、同人は死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定した。死刑を執行された後、再審請求人が、再審を請求(第一次再審請求)したが、弁護人が提出した証拠を確定記録中の全証拠と併せて総合評価した結果、同人が犯人であると認めた確定判決における事実認定について合理的な疑いは生じず、弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められないとして、第1次再審請求を棄却し、即時抗告、特別抗告も棄却決定となったが、新証拠をもとに請求人から第2次再審請求をした事案で、P16及びP15の各証言を中心に、本件再審請求において提出された新証拠について検討してきたが、P16証言や本件報告書によって本件各調書の信用性が減殺されることはなく、P15証言を踏まえても、事件本人とは別の人物が犯人である合理的疑いは生じず、弁護人はその他縷々主張するが、これを踏まえて検討しても、本件再審請求において提出された新証拠が、確定審及び第1次再審請求審において取り調べられた他の証拠の証明力に影響することはなく、情況事実の総合評価の結論を左右することもなく、事件本人が犯人であることについて合理的な疑いを超えた高度の立証がなされているという結論は揺らがず、本件再審請求において提出された新証拠は、いずれも明白性が認められないとして、本件再審請求を棄却した事例。
2024.05.21
勾留の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25573490/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 4月24日 決定 (特別抗告審)/令和6年(し)第262号
刑事訴訟法207条の2の規定について、被疑者を勾留するに当たり、その理由を被疑事件を特定して告げるものとはいえず、また、被疑者が弁護人に依頼する権利を侵害するとして、憲法34条違反の主張につき、前提を欠き、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとして、抗告を棄却した事例。
2024.05.14
死刑の執行告知と同日の死刑執行受忍義務不存在確認等請求事件
LEX/DB25599034/大阪地方裁判所 令和 6年 4月15日 判決 (第一審)/令和3年(行ウ)第122号
死刑確定者である原告らが、被告に対し、死刑執行告知と同日にされる死刑執行が違法である旨主張して、〔1〕行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟として、死刑執行告知と同日にされる死刑執行を受忍する義務がないことの確認を求める(本件確認の訴え)とともに、〔2〕死刑執行に関わる公務員らは、死刑確定者に対し、死刑執行告知と同日に死刑執行を行うという執行方法による死刑執行をしてはならない義務を負うにもかかわらず、同義務に違反し、このような死刑執行方法を維持していることにより原告らが精神的苦痛を被っている旨主張して、国家賠償法1条1項に基づき、損害金各1100万円(慰謝料各1000万円及び弁護士費用各100万円)等の支払を求めた(本件各賠償請求)事案で、本件確認の訴えは不適法であるとして却下し、また、本件各賠償請求は理由がないとして棄却した事例。
2024.02.20
再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件(名張毒ぶどう酒殺人事件第10次再審請求特別抗告棄却決定)
LEX/DB25573300/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 1月29日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第206号
申立人の兄である被告人(当時35歳。事件本人)は、妻(当時34歳)と愛人(当時36歳)との三角関係の処置に窮し、両名を殺害してその関係を清算しようと考え、昭和36年3月28日、事件本人及び両名らが所属する生活改善クラブの年次総会と懇親会が開催される三重県名張市内の公民館に女子会員用のぶどう酒を運び入れた上、公民館に誰もいなくなった隙に、女子会員らが死亡するかもしれないことを十分認識しながら、本件ぶどう酒を開栓して、竹筒に入れて忍ばせて持参していた有機燐テップ製剤である農薬ニッカリンTを4ないし5cc注入し、替栓(内蓋)を元どおりかぶせるなどし、同日午後8時頃、懇親会に出席した女子会員20名に提供させ、これを飲んだ17名につき、有機燐中毒により、妻と愛人を含む5名を死亡させて殺害し、12名に傷害を負わせ、3名については飲ませるに至らなかったとする殺人、殺人未遂事件につき、事件本人は、確定審において、犯人ではないと主張したが、確定判決は、事件本人に対し無罪を言い渡した第1審判決を破棄し、事件本人が犯人であると認定して、事件本人を死刑に処した。事件本人が上告を申し立てたが棄却され、上記確定判決は確定した。事件本人は、これまで9回にわたり再審請求に及んだが、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生じさせるものではないと判断され、いずれの再審請求も棄却された。本件は、事件本人(平成27年10月4日死亡)の妹を申立人とする第10次再審請求で、再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告した事案で、本件再審請求において提出された各新証拠を併せ考慮してみても、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないというべきであり、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原々決定を是認した原決定は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例(反対意見がある)。
2023.12.12
仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件
LEX/DB25573136/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月 6日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第735号
東京高等裁判所裁判官がした仮拘禁許可状の発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑事訴訟法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.07.11
(大崎事件第4次再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25595222/福岡高等裁判所宮崎支部 令和 5年 6月 5日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和4年(く)第25号
請求人の母親であるAに対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日鹿児島地方裁判所が言い渡した有罪判決(Aに対する確定判決)及び請求人の父親であるB(平成5年10月2日死亡)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日同裁判所が言い渡した有罪判決(Bに対する確定判決)に関し、A及びBに対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したから、請求人は、刑事訴訟法439条1項4号に該当する者として、同法435条6号により各再審開始請求(いわゆる大崎事件第4次再審請求)をしたところ、各再審請求を棄却したため、請求人が即時抗告した事案で、S鑑定及びQ・R鑑定はH及びIの各供述を減殺するものとはいえず、また、N鑑定は、各確定判決が証拠の標目に掲げたJ旧鑑定の信用性を減殺するものではあるが、各確定判決の事実認定においてJ旧鑑定が占める重要性からすれば、各確定判決の事実認定に合理的疑いを生じさせるものとはいえず、H及びIの各供述の信用性、B、C及びFの各自白並びにGの供述の信用性を減殺するものとはいえないとし、弁護人の提出する新証拠は、確定判決の事実認定に合理的疑いを差し挟むものとはいえないと判断した原決定に誤りはないとして、本件各即時抗告を棄却した事例。
2023.06.27
警察庁保有個人情報管理簿一部不開示決定取消等請求控訴事件
LEX/DB25595169/東京高等裁判所 令和 5年 5月17日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第31号
控訴人(原告)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づき、警察庁長官に対し、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律10条2項1号、2号又は11号に該当する個人情報ファイルの数及び名称、同ファイルに含まれる個人情報の概要等が分かる行政文書の開示請求をしたところ、同長官は、本件開示請求の対象となる文書を保有個人情報管理簿126通と特定した上で、そのうち同項11号に該当する個人情報ファイルに係る4通の管理簿を開示し、その余の122通の管理簿については、それぞれの項目を示す部分のみを開示し、各項目の内容を記載した部分はいずれも不開示とする旨の決定をしたことで、控訴人が、被控訴人(被告。国)に対し、本件処分の取消し及び本件各文書のうち本件不開示部分についての開示決定の義務付けを求め、原審は、原判決別表1の各記載欄に「○」を付していない部分は、情報公開法5条3号所定の情報(3号情報)又は同条4号所定の情報(4号情報)に該当すると認められる一方、その余の部分はこれらの該当性を認めることができず、情報公開法6条1項に基づいて開示されなければならないなどと判断して、本件処分のうち、原判決別表1記載の各部分は違法であるとしてこれを取消し、警察庁長官に対して同部分を開示する旨の決定をするよう命じ、本件処分のうちその余の取消請求については棄却し、本件訴えのうちその余の義務付け請求に係る部分は不適法として却下したため、これを不服とする控訴人が、控訴した事案において、本件不開示部分につき一律に不開示情報該当性を認めることはできず、本件各文書の記載欄ごとに不開示情報該当性を検討すべきところ、全10項目のうち3項目の記載欄についてはいずれも3号情報又は4号情報に該当すると認められ、7項目の記載欄については,そのうち分類A及び分類Bの情報については3号情報又は4号情報に該当すると認められる一方、分類Cの情報についてはこれらの該当性を認めることができないとし、7項目の記載欄のうち分類Cに係る部分は、情報公開法6条1項に基づき、開示しなければならないとして、原告の請求中、本件処分のうち本件各文書中別表1記載の各部分を不開示とした部分の取消しを求め、同部分につき開示決定の義務付けを求める部分については認容し、その余の取消請求については棄却し、本件訴えのうち、その余の義務付け請求に係る部分については却下した事例。
2023.06.20
弁護人選任権侵害等国家賠償請求事件
LEX/DB25595142/前橋地方裁判所 令和 5年 3月24日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第259号
脅迫罪の被疑事実で逮捕され、弁解録取手続し、罰金5万円の略式命令を受けた後、原告が正式裁判の請求をし、本件請求1は、〔1〕被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である警察官が、原告の逮捕の際の弁解録取手続において、原告の弁護人選任権を阻害する言動をしたこと、〔2〕被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である留置担当の警察官が、原告の逮捕中、原告が弁護人選任の申出をしたにもかかわらず、弁護士に対してその申出があったことの通知を怠ったこと及び〔3〕被告国の公権力の行使に当たる公務員である副検事が、原告の勾留請求前の弁解録取手続の際に、原告が弁護人選任の申出をしたにもかかわらず、弁護士に対してその申出があったことの通知を怠ったことにつき、被告らに対し、精神的損害と弁護士費用等の連帯支払を求め、本件請求2は、被告群馬県の公権力の行使に当たる公務員である警察官が、原告の逮捕中、原告の真意に基づく承諾や捜査の必要性がなかったにもかかわらず、本件採尿及び本件DNA型資料採取を行ったことにつき、被告群馬県に対し、精神的損害と弁護士費用等の支払を求め、本件請求3は、被告国の公権力の行使に当たる公務員である副検事が、原告が正式裁判の請求をして原告刑事被告事件の審理期間中、原告に対し、同請求を取り下げるように強要し又はこれを迫り、あるいは原告において同請求を取り下げるように要求をされたと受け取るような行為につき、被告国に対し、精神的損害と弁護士費用等の支払を求めた事案で、本件請求1は、被告国の副検事による勾留請求前の弁解録取手続における原告の弁護人選任権に係る行為について国家賠償法上違法な点があるとは認められないとして、棄却し、本件請求2は、被告群馬県の警察官らによる本件DNA型資料採取は、警察官らが負っている職務上の注意義務に違反するものとして、国家賠償法上違法なものであり、また、担当した警察官らに過失があることも明らかであり、被告群馬県には、当該行為によって原告が被った損害賠償責任があるとして、一部認容し、本件請求3は、副検事の原告に対する各発言は、その内容やこれらが複数回にわたって行われたことに加え、各発言がされた時の状況や原告と副検事との関係性などに照らせば、原告の裁判を受ける権利を侵害するものというべきであるから、副検事の当該行為は、職務上の注意義務に違反するものとして、国家賠償法上違法なもので、副検事に過失があることも明らかであり、被告国には、原告が被った損害賠償責任があるとして、一部認容した事例。
2023.06.13
(プレサンス事件付審判請求)
LEX/DB25595157/大阪地方裁判所 令和 5年 3月31日 決定 (第一審)/令和4年(つ)第14号
請求人が大阪地方検察庁検事の職にあった被請求人Bを特別公務員暴行陵虐罪で同庁に告発したところ、同庁検察官が、被請求人を不起訴処分にしたが、その処分に不服があるから、事件を大阪地方裁判所の審判に付することを求めた事案において、威迫を上回る脅迫について特別公務員暴行陵虐罪の実行行為から除かれた立法経緯、被請求人の身上関係やこれまでに前科等がないことなども総合すると、被請求人を不起訴処分とするのが相当であり、嫌疑不十分を理由に検察官が行った不起訴処分は結論において正当であるとして、本件請求を棄却した事例(なお、本件においては刑事処分として不起訴処分が相当であると判断したというにとどまり、被請求人の行為を許容したわけではないことを付言した。)。
2023.05.30
勾留理由開示に対する特別抗告事件
LEX/DB25572838/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 5月 8日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第270号
裁判官が勾留理由開示期日において告知した勾留理由に関し不服を申立てた事案の特別抗告審において、勾留理由の開示は、公開の法廷で裁判官が勾留の理由を告げることであるから、刑事訴訟法433条1項にいう「決定又は命令」に当たらないとし、本件抗告の申立ては不適法であるとしとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.05.16
DNA型、指紋及び写真データの抹消等請求事件
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LEX/DB25594817/名古屋地方裁判所 令和 5年 2月17日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第3808号
愛知県あま市内の立入禁止の用水路の護岸に入って釣りをしていた原告が、愛知県津島警察署に任意同行され、警察官から軽犯罪法違反の被疑事実で取調べを受け、顔写真撮影、指掌紋及びDNA型鑑定試料の採取をされたところ、当該任意同行、取調べ、顔写真撮影、指掌紋及びDNA型の情報の採取行為は原告の人身の自由及びプライバシー権を侵害する違憲違法なものであり、また、被告国が法律に基づかずに同情報を保管することが原告の情報自己決定権を侵害する違憲違法なものであるなどと主張して、被告国に対し、人格権に基づき、原告の顔写真、指掌紋及びDNA型の記録の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、また、被告県に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案において、原告に係る被疑者写真記録、指掌紋記録及び被疑者DNA型記録について、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由が侵害されたということはできず、原告の人格的利益(人格権)の侵害があったということはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.04.18
再審開始決定に対する即時抗告申立事件(袴田事件再審開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594670/東京高等裁判所 令和 5年 3月13日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(く)第14号
住居侵入、被害者4名の強盗殺人、放火被告事件につき、死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定したため、再審請求人(有罪の言渡を受けた者の保佐人)が、地方裁判所に第2次再審請求をしたところ、地方裁判所は再審開始の決定をしたため、検察官が即時抗告の申立てをした事案で、原決定は、5点の衣類等のDNA型鑑定に関する証拠(とりわけP1鑑定)及び5点の衣類の色に関する証拠(とりわけ、各みそ漬け実験報告書等)を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当すると認めたものであるところ、DNA型鑑定に関するP1鑑定について再審開始を認めるべき証拠に該当するかどうかを改めて判断するまでもなく、原審において提出された、みそ漬け実験報告書等の新証拠は、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当するとして、みそ漬け実験報告書等について、刑事訴訟法435条6号にいう「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」であると認めた原決定の判断には誤りはなく、本件再審を開始するとした原決定は、その結論において是認できるとし、本件即時抗告を棄却した事例。
2023.03.28
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572679/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 7日 決定 (異議審)/令和5年(す)第14号
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対し、被告人が弁護人を介して被告人本人作成の上告趣意書を提出したはずであり、原決定には被告人本人の上告趣意について判断遺脱があるとして、異議申立てをした事案で、弁護人が上告棄却決定後に、被告人作成の上告趣意書を裁判所に提出した事実につき、原審がした上告棄却決定に何ら判断遺脱はないとして、本件申立てを棄却した事例。
2023.03.28
(日野町事件第2次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594460/大阪高等裁判所 令和 5年 2月27日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(く)第251号
P3(平成23年3月18日死亡。事件本人)に対する強盗殺人被告事件について、同人を犯人と認め、無期懲役に処した大津地方裁判所の確定判決につき再審の開始を認めた原決定に対し、弁護人が提出した証拠等の証明力を検討しないまま、新規性のある新証拠である限り、その証明力にかかわらず全て旧証拠との総合評価に立ち入った点、及び旧証拠に対する再評価を各証拠の立証命題とは関係なく行った点において、その判断は極めて違法・不当であり、確定判決の心証形成にみだりに介入した違法があるから、これを取消し、請求人らの再審請求を棄却する旨の裁判を求め、検察官の抗告人が、即時抗告をした事案で、事件本人を本件の犯人と認めた確定判決等の事実認定には合理的な疑いが生じており、原審で取り調べられた各新証拠は、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠に当たり、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠があらたに発見されたとし、刑事訴訟法435条6号、448条1項により、事件本人について再審を開始した原決定の結論は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.02.14
検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25572567/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 1月30日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第594号
申立人が、東京簡易裁判所の略式命令により終結した政治資金規正法違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録(本件保管記録)の閲覧請求をしたのに対し、本件保管記録の保管検察官が、閲覧を一部不許可とした(本件閲覧一部不許可処分)ため、申立人が東京簡易裁判所に準抗告を申し立てたという事案の特別抗告審において、本件閲覧一部不許可処分は、検察庁法12条、関係通達に基づき、東京地方検察庁に属する検察官が東京区検察庁の検察官の事務を取り扱ってしたものであると認められ、地方検察庁に属する検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合、当該区検察庁の対応する簡易裁判所は、刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」に当たるというべきであり、東京簡易裁判所は本件準抗告の管轄裁判所でないとして、本件閲覧一部不許可処分の当否を審査しないまま、本件準抗告を棄却した原決定を取消し、本件を東京簡易裁判所に差し戻すことを命じた事例。