2025.06.03
性別の取扱いの変更申立事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年5月2日解説記事が掲載されました
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LEX/DB25622260/京都家庭裁判所 令和 7年 3月19日 審判(第一審)
性同一性障害の診断を受けた生物学的には男性である申立人が、妻との婚姻関係を維持したまま性別の取扱いを男から女に変更することを求め、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づき、男から女への性別の変更を申し立て、申立人は、同項2号の「現に婚姻をしていないこと」の要件(非婚要件)は、憲法13条及び24条に違反するから無効であり、非婚要件を除いた同項の要件をすべて満たす申立人については、性別の取扱いを変更する旨の審判がされるべきであると主張した事案で、非婚要件の存在により、憲法上保障された婚姻の継続という法的利益又は人権が制約を受けるとしても、あるいは二者択一として、性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける法的利益に制約を受けるとしても、国会において定められるべき婚姻関係を含めた法律関係の整合性の担保として非婚要件が定められている趣旨に照らせば、非婚要件が、直ちに憲法13条、24条に反して無効となると解することはできず、本件申立ては、非婚要件を欠くものであって、理由がないことに帰するといわざるを得ないとして、本件申立てを却下した事例。
2025.06.03
地位確認等請求事件
★「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25622415/京都地方裁判所 令和 7年 2月13日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第1652号
被告法人が運営する高校の常勤講師として被告に雇用されていた原告が、その後常勤嘱託という事務職員への配置転換命令を受けたことに関し、〔1〕原告と被告との間には原告の職種及び業務内容を教育職員に限定する合意(本件職種限定合意)が成立しており、原告を事務職員に配転することはできないなどと主張して、常勤講師としての労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、〔2〕仮に本件職種限定合意が成立していないとしても、原告を常勤嘱託に配置転換したことは配転命令権の濫用であるなどと主張して、常勤嘱託として勤務する義務がないことの確認を求め、さらに、〔3〕期間の定めのない労働契約を締結している労働者である専任教員と有期労働契約を締結している労働者である常勤講師との間の賃金の差は、合理的な根拠のない差別であり、原告に対して常勤講師の賃金しか支払わなかったことは違法であるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、原被告間で、本件職種限定合意が存在するとは認められないところ、原告の教育職員としての勤務態度には多大な問題があり、かつ、継続的な指導によっても容易に改善しなかったなどの事実からすれば、本件配転命令は、社会通念上相当性を欠き、被告の配置転換命令権を濫用したものとはいえない一方、就業規則及び給与規程により、常勤講師であった原告と専任教員との間に賃金の差を設けることは、違法というべきであるから、原告に専任教員よりも低い賃金しか支給しなかった被告の対応は、原告に対する不法行為を構成するものと認められるところ、原告の請求のうち、〔1〕に係る訴えは確認の利益を欠くとして不適法却下し、〔2〕に係る請求を棄却し、〔3〕に係る請求を上記の限度で認容した事例。
2025.05.27
差押禁止債権の範囲変更(差押命令取消し)申立事件
LEX/DB25622399/大阪地方裁判所 令和 6年 7月 5日 決定(第一審)/令和6年(ヲ)第9088号
申立人が、本件差押命令により、継続的な業務委託契約に基づく報酬債権全額(6か月分)を差し押さえられたことについて、生活困窮等を理由に、民事執行法153条1項に基づき、本件差押命令の取消しを求めた事案で、本件差押命令により差し押さえられた報酬債権は、実質的に、民事執行法152条1項2号の「給与に係る債権」と同視することができ、そうすると、本件差押命令の一部を取り消して、差押禁止債権の範囲を別紙(申立人から4000円の入金があったため、同額につき相手方は申立てを取り下げた。)のとおり変更するのが相当であるとしたうえで、各種ローンの返済額があることを理由に差押禁止債権の範囲を変更すると、他の債務の返済を優先することを認めることになるから、本件でこれを理由に範囲変更を認めることはできず、申立人の収入・支出の状況を踏まえると、収入によって生活に要する費用を賄うことができないとまで認めることはできず、現時点における申立人の経済的困難の程度は自助努力で対応すべき範囲内のものというべきであるとして、申立人の申立てを一部認容し、その余を却下した事例。