2025.08.05
生活保護基準引下げ処分取消等請求事件
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LEX/DB25574399/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 6月27日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第397号 他
大阪府内に居住して生活保護法に基づく生活扶助を受給していた上告人ら(上告人X3らについてはその各夫)は、平成25年から平成27年にかけて行われた、厚生労働大臣による「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定を理由として、所轄の福祉事務所長らから、それぞれ、生活扶助の支給額を変更する旨の保護変更決定を受けたことから、上告人らが、本件改定は違法であるなどと主張して、〔1〕上告人X1ら及び上告人X2らにおいて被上告人各市を相手に上記の保護変更決定の取消しを求め、〔2〕上告人X1ら及び上告人X3らにおいて被上告人国に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第一審が、X1、X2及びX3を除く者の本件各決定の取消請求については認容し、その余の請求(国家賠償請求)については棄却したところ、双方がそれぞれ控訴し、控訴審が、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできないなどとして、第一審判決中、被上告人ら敗訴部分を取り消し、上告人らの請求を棄却したことから、上告人らが上告した事案で、デフレ調整における改定率の設定については、上記不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として用いたことに、専門的知見との整合性を欠くところがあり、この点において、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったものというべきであるから、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法というべきであり、したがって上記請求を認容した第1審判決は正当であるとして、同部分につき被上告人各市の控訴を棄却する一方、本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとして当該部分に係る上告を棄却した事例(反対意見1名、補足意見1名)。
2025.08.05
生活保護基準引下げ処分取消等請求事件
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LEX/DB25574400/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 6月27日 判決(上告審)/令和6年(行ヒ)第170号
愛知県内に居住して生活保護法に基づく生活扶助を受給していた被上告人承継人を除く被上告人らは、平成25年から平成27年にかけて行われた、厚生労働大臣による「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定を理由として、所轄の福祉事務所長らから、それぞれ、生活扶助の支給額を変更する旨の保護変更決定を受けたことから、被上告人らを含む一審原告らが、本件改定は違法であるなどと主張して、〔1〕上告人各市を相手に、上記の保護変更決定の取消しを求めるとともに、〔2〕上告人国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、一審が請求をいずれも棄却したため、一審原告らの一部(上告人ら)が控訴し、控訴審が、一審原告らの請求はいずれも理由があるとして、一審判決を取り消し、上記請求をいずれも認容し、当審における拡張請求を棄却したところ、上告人らが上告した事案で、本件改定は、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をすることとした点において、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法というべきであるとする一方、厚生労働大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とデフレ調整に係る判断をしたと認め得るような事情があったとまでは認められず、他に、同大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件改定をしたと認め得るような事情があったというべき根拠は見当たらないから、上告人各市の上告を棄却し、他方、本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないから、損害賠償請求を認容した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、上告人国の論旨は理由があるから、控訴審判決のうち上記請求に関する部分は破棄を免れず、そして、既に説示したところによれば、上記請求を棄却した一審判決は結論において正当であるとして、同部分につき被上告人らの控訴を棄却した事例(補足意見1名、反対意見1名)。
2025.08.05
破産管財人報酬決定に対する即時抗告事件
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LEX/DB25622948/福岡高等裁判所那覇支部 令和 6年 4月26日 決定(抗告審(即時抗告))/令和6年(ラ)第14号
Bを破産者とする那覇地方裁判所破産手続開始申立事件(基本事件)の申立人であり、破産債権者である抗告人が、基本事件における破産管財人(被抗告人)の報酬を600万円と定めた原決定を不服として、即時抗告した事案で、基本事件は、抗告人の申立てにより開始されたものの、その債務者審尋期日において破産者自身がもともと自己破産を検討しており自らの破産状態につき異議を述べず、破産管財人に対して抵抗する態度を示さなかったうえ、基本事件における破産手続の費用として予納された金額は297万円、債権認否表における破産債権の総額は約4億3102万円、形成された破産財団が約1264万円であり、仮に上記報酬額を600万円とした場合の配当原資は、上記破産財団から上記予納金額と上記報酬額を控除した約367万円(配当率は約0.8%)となるものと認められるところ、上記上申書において指摘されている管財業務の内容等の事情を考慮したとしても、その適正な報酬額は400万円を上回るものではないとみるのが相当であり、これを超えて600万円とした原審の判断は、明らかにその裁量権の範囲を逸脱したものといわざるを得ないなどとして、原決定を取り消し、基本事件に係る破産管財人の報酬を400万円と定めた事例。