2025.09.02
遺留分減殺請求事件

LEX/DB25574428/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月10日 判決(上告審)/令和6年(受)第2号
被上告人らが、亡Aの遺言により亡Aの遺産を相続した上告人に対し、民法(平成30年法律第72号による改正前)1031条の規定による遺留分減殺請求権の行使に基づき、亡Aの遺産のうち、不動産について持分移転登記手続等を求めるとともに、預貯金等について金員の支払を求めた事件における上告審の事案で、遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受けた受遺者が民法1041条1項の規定により遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をした場合において、遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたときは、遺留分権利者は、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権を遡って失い、これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得するが、遺留分権利者が上記意思表示をするまでは、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権のみを有するものと解するのが相当であるとしたうえで、本件各持分について、上告人が価額を弁償する旨の意思表示をしたのに対して、被上告人らが価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたことはうかがわれないから、被上告人らは、価額弁償請求権を確定的に取得したとは認められず、共有持分権及び共有持分権に基づく現物返還請求権のみを有するものであるから、本件各持分の価額の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を変更した事例。
2025.09.02
年金額減額処分取消等請求事件
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LEX/DB25574433/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月10日 判決(上告審)/令和7年(行ツ)第125号
国民年金法上の老齢基礎年金並びに厚年法上の老齢厚生年金及び遺族厚生年金の受給権者である第一審原告らが、第一審原告らの年金の額を減額する旨を定めた平成24年改正法は、憲法13条、25条及び29条、社会権規約並びにILO102号条約に違反しており、いずれも無効であるから、平成24年改正法及び平成25年政令に基づいて厚生労働大臣がした原告らの年金額を減額する旨の改定処分は違法であるなどとして、同処分の取消しを求めるとともに、同処分をした被告職員の行為により損害を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料の支払を求め、第一審が、処分の取消しを求める部分を却下し、その余の請求を棄却した事件の上告審の事案で、記録によれば、原審の第1回及び第2回口頭弁論期日において控訴状の陳述その他の実質的弁論がされたうえ、第3回口頭弁論期日において合議体の裁判官の1名が代わったが、従前の口頭弁論の結果が陳述されないまま、第4回口頭弁論期日において弁論が終結され、上記の交代後の裁判官によって原判決がされたことが明らかであるところ、そうすると、原判決は、民訴法249条1項に違反し、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官によってされたものであり、同法312条2項1号に規定する事由が存在するから、上告理由について判断をするまでもなく、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した事例。
2025.08.26
行政処分取消等請求事件
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LEX/DB25574450/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月17日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第276号
被上告人(原告・控訴人)が、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律20条1項に基づき、介護給付費の支給決定に係る申請をしたところ、上告人(被告・被控訴人)・千葉市からこれを却下する処分を受けたため、本件処分が違法であると主張して、上告人を相手に、本件処分の取消し及び支給決定の義務付けを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、原審(控訴審)が、本件処分の取消請求及び支給決定の義務付け請求を認容するとともに、損害賠償請求を一部認容したところ、上告人が上告した事案で、上告人が原審のいう不均衡を避ける措置をとらなかったことを理由として、本件処分に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるということはできず、原審の判断には、市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果、受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした上告人の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法があるというべきであるから、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事例。