注目の判例

会社法

2024.10.29
短期売買利益提供請求控訴事件(東京機械製作所からの主要株主に対する短期売買利益提供請求事件控訴審判決) 
LEX/DB25620953/東京高等裁判所 令和 6年 7月31日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第6191号
上場会社である被控訴人(原告)が、被控訴人の主要株主である控訴人(被告)が被控訴人発行の株式を自己の計算において買い付けて、その後6か月以内にこれを売り付けて利益を得たと主張して、控訴人に対し、金融商品取引法164条1項に基づき、当該利益及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、原判決が被控訴人の請求を認容したことから、控訴人が控訴した事案で、証券取引法164条1項は、証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともに、これに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるところ、その規制目的は正当であり、また、その規制手段は、売買取引自体を制限するものではなく、一定期間内に行われた取引から得た利益の提供を求めることによって当該利益の保持を制限することにとどまるものであって、それ以上の財産上の不利益を課するものではなく、上記の立法目的達成のための手段として必要性又は合理性に欠けるものではないから、同項は公共の福祉に適合する制限を定めたものであって、憲法29条に違反するものではなく、以上の理は、現行の金商法164条1項についても同様に妥当するものと解され、したがって、本件売付けについて同項の適用を認めることにつき、同項の規制目的とは明らかに関連性のない手段・内容の規制が生じているか、またはそれが同項の目的に照らし過剰規制であるという控訴人の主張は、いずれも採用することができず、本件売付けについては、類型的適用除外取引に該当すると認めることはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.09.10
株主総会決議不存在等確認請求控訴事件 
LEX/DB25620549/東京高等裁判所 令和 5年 1月18日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第3531号
特例有限会社である控訴人の株主である被控訴人が、控訴人に対し、控訴人の本件株主総会において、被控訴人を取締役から解任すること(本件議題〔1〕)及び後任取締役を1名選任すること(本件議題〔2〕)を内容としてされた本件株主総会決議につき、選択的に、その不存在確認、又は会社法831条1項1号に基づきその取消しを求め、控訴人の株主で本件株主総会の議長を務めた松野弁護士を代理人に選任していた補助参加人C及び本件議題〔2〕によって取締役に選任された補助参加人Bが、控訴人を補助するため、訴訟に参加したところ、原審が、松野弁護士が議長の選任手続を経ずに議長となり、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案の採決を行ったこと並びに松野弁護士が議長として本件仮処分決定の内容と異なる議決権数の算定を行い、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案を可決させたことにつき、いずれも同号に定める瑕疵に当たるから、本件株主総会決議の取消しを求める請求には理由があるとして、被控訴人の同請求を認容したことから、補助参加人らが控訴した事案で、松野弁護士が議長の選任手続を経ずに議長となり、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案の採決を行ったことは本件株主総会決議の瑕疵に当たり、また、松野弁護士が議長として本件仮処分決定の内容と異なる議決権数の算定を行い、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案を可決させたことは本件株主総会決議の瑕疵に当たるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.05.14
各株券引渡請求及び独立当事者参加事件
LEX/DB25573475/最高裁判所第二小法廷 令和 6年 4月19日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1266号
上告人が、被上告人会社に対し、株式会社U社の設立に当たり、その株式200株(本件株式1)を有する株主であることの確認等を求め、また、被上告人Y1に対し、上告人が株式会社U社の募集株式310株のうち240株(本件株式2)を有する株主であることの確認等を求めた事案の上告審において、本件株券1及び2につき、それぞれA及びCに交付されたことをもって、本件株式1及び2に係る株券としての効力を有しないということはできないから、上記両名から本件株券1及び2の交付を受けた上告人は、本件株式1及び2に係る株券の交付を受けたと認められる余地があるとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2024.04.23
臨時社員総会招集許可申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25573446/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月27日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第18号
医療法人の社員である抗告人らが、当該医療法人の理事長に対して社員総会の招集を請求したが、その後招集の手続が行われないと主張して、裁判所に対し、社員総会を招集することの許可を求めた事案の許可抗告審において、医療法人の社員が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできないとして、本件抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2024.04.23
損害賠償請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件)
LEX/DB25598472/東京地方裁判所 令和 5年12月21日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第20446号   等 
被告会社の発行済株式を証券取引所において売買したと主張する原告会社らが、〔1〕被告が提出した有価証券報告書及び四半期報告書に、被告の不適切な会計処理に起因する重要な事項についての虚偽記載があったこと、〔2〕上記〔1〕のとおり虚偽記載があったにもかかわらず、被告が提出した内部統制報告書に、被告の財務報告に係る内部統制は有効であると判断したと記載され、重要な事項についての虚偽記載があったこと、〔3〕被告が、同社の連結子会社において減損損失を計上したことの開示を怠り、適時開示義務違反があったことから、被告株式の株価が下落する損害を被ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、また、上記〔1〕及び〔2〕については、選択的に金融商品取引法21条の2第1項に基づき、各原告がそれぞれ損害賠償金等の支払を求めた事案で、原告らのうち、非名義株主原告による損害賠償請求は認められないとしたうえで、被告は、有価証券報告書等の提出にあたり、その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠ったものとして、本件名義株主原告らに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うというべきであり、原告らの請求は、本件虚偽記載部分と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容し、その余を棄却した事例。
2024.02.27
短期売買利益提供請求事件(東京機械製作所からの主要株主に対する短期売買利益提供請求事件)
LEX/DB25597111/東京地方裁判所 令和 5年12月 6日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第13836号 
上場会社である原告が、原告の主要株主である被告が原告発行の株式を自己の計算において買い付けて、その後6か月以内にこれを売り付けて利益を得たと主張して、被告に対し、金融商品取引法164条1項に基づき、当該利益及び遅延損害金の支払を求めた事案で、本件売付けは、信用取引によって買い建てていた原告株式162万0100株を売却したものであり、同法164条1項の「売付け等」に当たるとし、また、被告は本件売付けにより「利益を得た」というべきであるとし、さらに、本件売付けは類型的適用除外取引に当たらないというべきであるとしたうえで、本件利益関係書類によれば、被告は、本件売付けにより、19億4342万3161円の短期売買利益を得たことが認められるとして、原告の請求を認容した事例。
2024.01.30
株式交換無効等、株式交換無効請求控訴事件(旧アルプス電気・アルパイン間の株式交換無効等請求事件) 
LEX/DB25596584/東京高等裁判所 令和 5年 9月28日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第2300号 
(1)被控訴人アルパインの株主である控訴人らが、被控訴人アルパインを株式交換完全子会社とし、被控訴人旧アルプス電気を株式交換完全親会社とする本件株式交換契約に基づく本件株式交換について、本件株式交換契約の締結を承認した被控訴人アルパインの株主総会決議(本件承認決議)に無効原因が存在するなどと主張して、本件株式交換を無効とすることを求めるとともに、控訴人オアシスらが、(2)本件株式交換を無効とする判決の確定により、被控訴人アルパインが控訴人オアシスらの株式買取請求に基づき控訴人オアシスらから買い取った被控訴人アルパインの株式の価値相当額から、被控訴人アルパインが支払った公正な価格として認める額(会社法786条5項)を控除した金額の損失を被るなどと主張して、被控訴人アルパインに対し、不当利益に基づき、〔1〕控訴人オアシスインベストメンツが380億4064万6683円等の支払を、〔2〕控訴人オアシスジャパンが21億2600万5278円等の支払をそれぞれ求め、(3)被控訴人らの各代表取締役が本件株式交換について任務懈怠又は不法行為を行ったなどと主張して、被控訴人らに対し、共同不法行為に基づき、〔1〕控訴人オアシスインベストメンツが380億4064万6683円等の連帯支払を、〔2〕控訴人オアシスジャパンが21億2600万5278円等の連帯支払をそれぞれ求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことに対し、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断し、原判決は相当であるとして、本件各控訴を棄却した事例。
2023.08.08
損害賠償(株主代表訴訟)請求控訴事件(世紀東急工業株主代表訴訟控訴審) 
LEX/DB25595301/東京高等裁判所 令和 5年 1月26日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第2134号
E(控訴人ら補助参加人)の株主である被控訴人が、Eにおいて遅くとも平成23年3月から平成27年1月27日までの間、同業他社8社との間で共同してアスファルト合材の販売価格の引上げを行っていく旨の合意をすることにより、公共の利益に反して、我が国における合材の販売分野における競争を実質的に制限していた行為が独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金28億9781万円の納付命令を受け、上記課徴金の納付を余儀なくされたことについて、Eの当時の取締役又は代表取締役であった控訴人らには善管注意義務違反があり、そのためにEは納付した上記課徴金の一部である18億3417万円相当の損害を被ったと主張して、会社法423条1項に基づく損害賠償請求として、控訴人Bに対しては18億3417万円、控訴人Aに対しては17億3227万円、控訴人C及び同Dに対しては各15億7942万円、各控訴人の上記責任金額の限度で連帯してEに支払うことを求め、原審は、被控訴人の請求をいずれも認容したところ、控訴人らがこれを不服として控訴した事案(なお、Eは、当審において、控訴人らを被参加人として補助参加した。)で、被控訴人の請求をいずれも認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.06.13
株式売買価格決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25572868/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 5月24日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第8号
相手方M社が、抗告人らが有する相手方M社の譲渡制限株式(本件株式1)について、会社法144条2項に基づき売買価格の決定の申立てをし、相手方M社が、抗告人Y1及び抗告人Y2が有する相手方M社の譲渡制限株式(本件株式2)について、同様に売買価格の決定の申立てをしたところ、原審は、鑑定意見に依拠し、本件各評価額から非流動性ディスカウントとして30%の減価を行い、本件株式1の売買価格を1株当たり5266円、本件株式2の売買価格を1株当たり4514円と定めた変更決定に対し、抗告人らが許可抗告をした事案において、本件各株式の評価方法として、DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.01.24
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25594126/東京高等裁判所 令和 4年 9月 7日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第1711号
控訴人(被告)の取締役兼代表取締役であった被控訴人(原告)が、正当な理由がないにもかかわらず取締役を解任された旨を主張して、会社法339条2項に基づく損害賠償として、残任期中の報酬相当額から既払額を控除した1712万5403円の支払等を求めたところ、原審は、被控訴人の請求を認容したため、控訴人が控訴した事案で、当審における控訴人の補充主張を考慮しても、被控訴人の請求は理由があるものと判断し、本件控訴を棄却した事例。
2022.10.11
社員除名請求事件
「新・判例解説Watch」会社法分野 令和4年12月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25601488/東京地方裁判所 令和 3年11月29日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第28629号
合同会社である原告が、原告の業務執行社員である被告には会社法859条3号及び5号所定の除名事由があるとして、被告を原告の社員より除名することを求める事案において、会社法859条によれば、訴えをもって社員の除名を請求するためには、当該社員以外の社員の過半数の決議を要するものとされているところ、この要件は社員が3名以上である通常の場合を想定したものと解されることや、会社法においては社員が1名となったことが持分会社の解散事由とはされていないこと(会社法641条参照)などに照らせば、社員が2名の合同会社においても、このうち1名の社員の意思に基づき訴えをもって他の社員の除名を請求することができるものと解するのが相当であるとし、原告の請求を認容した事例。
2022.10.04
(三ッ星新株予約権無償割当差止仮処分命令申立事件)
LEX/DB25593190/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 7月28日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第12号
抗告人の株主である相手方が、抗告人において取締役会の決議に基づき現に手続中の株主に対する新株予約権の無償割当てについて、〔1〕株主平等の原則に違反する法令違反がある、〔2〕著しく不公正な方法によるものである旨主張して、会社法247条1号及び2号の類推適用に基づき、本件新株予約権の無償割当てを仮に差し止めることを求めた基本事件において、大阪地方裁判所が相手方の本件申立てに理由があると認め、相手方に代わり第三者に3億円の担保を立てさせて、これを認容する仮処分決定をしたところ、これに対し、抗告人が保全異議の申立てをして、原々決定の取消しを求めたが、原審裁判所が原々決定を認可する旨の決定をしたため、抗告人が本件保全抗告をし、抗告審が、現経営陣による本件新株予約権の無償割当てによって相手方が著しい損害を被るおそれがあることが認められ、本件において、保全の必要性についての疎明があるといえるとして、本件保全抗告を棄却したことから、抗告人が許可抗告した事案で、本件の事実関係の下において、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができるから、抗告人の論旨は採用することができないとして、本件抗告を棄却した事例。
2022.09.20
株主権妨害禁止仮処分命令申立事件(スルガ銀行定時株主総会開催禁止等仮処分命令申立事件)
LEX/DB25593055/静岡地方裁判所沼津支部 令和 4年 6月27日 決定 (第一審)/令和4年(ヨ)第32号
債務者会社の代表取締役である債務者aは、令和4年6月、株主らに対し、定時株主総会において第4号議案ないし第13号議案を提案した株主である債権者らが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、株主による株主総会への出席について事前登録制を採用することは、株主が株主総会に出席して、議題・議案に関する説明を求め、又は意見を陳述する機会や、株主提案の趣旨説明をする機会を不当に奪うものである旨主張して、主位的に、債務者会社に対し、株主の総会参与権に基づく妨害排除請求権として、又は、会社法360条の違法行為差止請求権に基づき、本件株主総会の開催の差止を求め、予備的に、債務者らに対し、総会参与権に基づく妨害排除請求権に基づき、本件株主総会に債権者らが出席して株主権を行使することの妨害禁止を求めた事案において、本件主位的及び予備的申立ては、被保全権利はいずれも認められないとして、却下した事例。
2022.09.13
損害賠償請求事件、共同訴訟参加事件
LEX/DB25593168/東京地方裁判所 令和 4年 7月13日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第6274号 等
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波によって、東京電力が設置、運転する福島第一原子力発電所が破壊され、炉心損傷ないし炉心溶融に至ったこと等により、原子炉から放射性物質を大量に放出する事故が発生したことについて、東京電力の株主である原告らが、東京電力の取締役であった被告らにおいて、福島県沖で大規模地震が発生し、福島第一原発に津波が遡上して過酷事故(原子炉から放射性物質を大量に放出する事故)が発生することを予見し得たから、そのような過酷事故の防止に必要な対策を福島第一原発に速やかに講ずべきであったのに、これを怠った取締役としての善管注意義務違反等の任務懈怠があり、これにより、本件事故が発生し、東京電力に巨額の損害賠償責任や大幅に増加した廃炉費用の負担を余儀なくさせるなどの損害を被らせ、その損害額は22兆円を下らないなどと主張し、会社法847条3項に基づき、同法423条1項の損害賠償請求として、被告らに対し、連帯して、損害金22兆円及び遅延損害金を東京電力に支払うよう求めた株主代表訴訟の事案で、被告W4、被告W3、被告W1及び被告W2が、それぞれの任務懈怠の時点(被告W4は平成20年7月31日以降、被告W3は平成20年8月上旬頃以降、被告W1及び被告W2は平成21年2月11日以降)において、東京電力の取締役としての善管注意義務に従い、W4決定を前提とし、福島第一原発1号機~4号機に明治三陸試計算結果と同様の津波が襲来することを想定して、これにより全交流電源喪失(SBO)及び主な直流電源喪失となることを防止する対策を速やかに講ずるよう指示等を行っていたならば、本件事故を回避し得たであろうことを是認し得る高度の蓋然性が認められるから、上記被告らの任務懈怠と本件事故発生との間には因果関係が存在するとして、被告W4、被告W3、被告W1及び被告W2は、いずれも本件事故により東京電力に生じた損害を賠償する責任を負うとして、原告らの請求は、被告W1、被告W2、被告W3及び被告W4に対し、13兆3210億円及びこれに対する平成29年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して東京電力に支払うよう求める限度で一部認容することとし、被告W1、被告W2、被告W3及び被告W4に対するその余の請求並びに被告W5に対する請求はいずれも棄却した事例。
2022.07.26
保険金請求事件
LEX/DB25572248/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 7月14日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1473号
被上告人の運転する原動機付自転車は、交差点において右折するために自車線上で停止していたところ、反対車線から中央線を越えて進行してきた車両の運転者の前方不注視等の過失により、同車両と衝突した交通事故によって傷害を受けた被上告人が、加害車両を被保険自動車とする自賠責保険の保険会社である上告人に対し、自動車損害賠償保障法16条1項の規定による請求権に基づき、保険金額120万円の限度における損害賠償額から上告人の被上告人に対する既払金を控除した残額である103万9212円の支払を求め、上告人は、被上告人が上記事故による傷害に関して労働者災害補償保険法に基づく給付を受けたことにより国に移転した直接請求権の行使を受け、国に対して103万9212円の支払をしていることから、本件支払が有効な弁済に当たるか否かが争われ、原審は、有効な弁済に当たらないとして、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案で、被害者の有する直接請求権の額と、労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超える場合であっても,自賠責保険の保険会社が国の上記直接請求権の行使を受けて国に対して自賠責保険金額の限度でした損害賠償額の支払は、有効な弁済に当たるとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人の請求は理由がないから、第1審判決を取消し、同請求を棄却した事例。
2022.07.19
訴訟代理人による訴訟行為の排除を求める申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572225/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 6月27日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第3号
株式会社である抗告人を原告とし、その取締役であった相手方らを被告とする本件訴訟において、相手方らが、O弁護士及びK弁護士が抗告人の訴訟代理人として訴訟行為をすることは弁護士法25条2号、4号等の各趣旨に反すると主張して、Oべ弁護士らの各訴訟行為の排除を求め、原審は、相手方らは、金品受領問題等について、本件責任調査委員会の委員であるO弁護士らの独立かつ中立・公正な立場を信頼し、その事情聴取に応じたのであり、その回答はO弁護士らに対して上記立場からの法律的な解決を求めるためにされたに等しく、また、O弁護士らの上記立場は裁判官と変わるところがないから、本件訴訟においてO弁護士らが抗告人の訴訟代理人として行う各訴訟行為は弁護士法25条2号及び4号の各趣旨に反するとして、上記各号の類推適用により、上記各訴訟行為を排除したため、抗告人が許可抗告した事案で、本件訴訟においてO弁護士らが抗告人の訴訟代理人として行う各訴訟行為について、弁護士法25条2号及び4号の類推適用があり、これを排除することはできないと解するのが相当であるとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、本件訴訟においてO弁護士らが抗告人の訴訟代理人として行う各訴訟行為について、相手方らが指摘するその余の条項の類推適用があるとして、これを排除することができないことは明らかであり、本件申立てを却下した原々決定は正当であるから、原々決定に対する抗告を棄却した事例。
2022.05.24
株主総会決議取消請求控訴事件(日邦産業の株主総会決議取消請求事件)
LEX/DB25592151/名古屋高等裁判所 令和 4年 2月18日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第609号
被控訴人(被告)の株主である控訴人(原告)が、被控訴人に対し、被控訴人の令和2年6月24日開催の第69期定時株主総会(本件株主総会)における本件議案を可決する旨の本件決議は、控訴人が提出した本件議案に反対する旨の議決権行使書面が提出期限までに到達したか、到達したとみなすべきであるのに、被控訴人がその議決権行使を認めなかった点において、決議の方法が法令に違反するものであったとして、本件決議の取消しを求め、原審が控訴人の請求を棄却する旨の判決をしたところ、これを不服として控訴人が控訴した事案で、本件決議が内容とする本件買収防衛策の有効期間は、原審口頭弁論終結後に被控訴人の第70期定時株主総会が開催され、終結したことによって、満了しており、被控訴人の第70期定時株主総会において、「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)継続の件」を可決する旨の決議がされたのであるから、本件買収防衛策が既に失効しているにもかかわらず、これを可決した本件決議を取り消すことに具体的な実益があるという特別の事情がない限り、本件訴えは、本件買収防衛策の有効期間満了により訴えの利益を欠くに至ったというべきであるとし、原判決を取消し、控訴人の訴えを却下した事例。
2022.01.11
新株予約権無償割当差止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25591322/東京高等裁判所 令和 3年11月 9日 決定 (抗告審)/令和3年(ラ)第2391号
相手方(債務者)の株主である抗告人(債権者)らが、相手方に対し、相手方取締役会によって導入が決定されたいわゆる有事導入型買収防衛策に基づく対抗措置の本件新株予約権無償割当てについて、〔1〕株主平等の原則(会社法109条1項)に違反する法令違反がある、〔2〕著しく不公正な方法により行われるものである旨主張して、同法247条1号及び2号(類推適用)に基づき、これを仮に差し止めることを求めたところ、原審は、被保全権利についての疎明がされていないとして、抗告人らの本件申立てをいずれも却下したので、これに不服の抗告人らが本件抗告をした事案で、抗告人らの本件申立ては、被保全権利(会社法247条1号及び2号(類推適用)の差止請求権)についての疎明がされていないので、抗告人らの本件申立てはいずれも却下すべきであるから,これと同旨の原決定は相当であるとし、抗告人らの本件抗告はいずれも棄却した事例。
2021.11.09
株主総会招集許可申立事件(日邦産業株主総会招集許可申立事件)
LEX/DB25590929/名古屋地方裁判所 令和 3年 7月14日 決定 (第一審)/令和3年(ヒ)第24号
利害関係参加人の総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主である申立人が、「2021年4月24日付で無償割当ての効力が発生した新株予約権の無償取得の件」を株主総会の目的として、利害関係参加人に対し、株主総会の招集を請求したが、利害関係参加人がこれに応じないと主張して、会社法297条4項に基づき、申立人が、上記議題を株主総会の目的とする利害関係参加人の株主総会を招集する許可を求めた事案において、本件招集請求に係る議題は、会社法297条1項の「株主総会の目的である事項」に該当しないとして、本件申立てを却下した事例。
2021.08.24
株主総会決議取消請求事件(第1事件、第2事件)(乾汽船の株主総会決議取消請求事件)
LEX/DB25590307/東京地方裁判所 令和 3年 4月 8日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第24145号 等
被告の株主である原告が、被告に対し、令和元年6月開催の定時株主総会における取締役選任議案、買収防衛策導入議案等を可決する各決議には、無効な委任状に基づく議決権行使、違法な投票用紙に基づく議決権行使、招集通知等における虚偽記載ないし重要事項の不記載、議決権行使書面の不適切集計等の瑕疵があり、招集手続又は決議方法に法令違反若しくは著しい不公正があるとして、会社法831条1項1号(平成17年法律第86号)に基づき、各決議の取消しを求めた事案(第1事件)、原告が、被告に対し、令和2年6月の定時株主総会における取締役選任議案、情報提供要請承認議案等の各議案を可決する各決議には、招集通知の発送日の期間制限違反、招集通知等における虚偽記載ないし重要事項の不記載、議決権行使書面の不適切集計の瑕疵があり、招集手続又は決議方法に法令違反若しくは著しい不公正があるとして、同法831条1項1号に基づき、各決議の取消しを求め、また、情報提供要請承認議案については特別利害関係人による議決権行使によって著しく不公正な決議がされたとして、同項3号に基づき、当該決議の取消しを求めた事案(第2事件)において、本件訴えのうち、令和元年総会の取締役選任議案の取消しを求める部分はその利益を欠くから却下し、その余の請求についてはいずれも棄却した事例。