2025.04.01
特別地方交付税の額の決定取消請求事件
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LEX/DB25574103/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 2月27日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第297号
上告人・泉佐野市が、総務大臣がした特別交付税の額の決定(本件各決定)について、令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前)は、いわゆるふるさと納税に係る収入が多額であることをもって特別交付税の額を減額するものであって、地方交付税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるなどと主張して、被上告人・国に対し、本件各決定の取消しを求め、第一審が上告人の請求をいずれも認容したところ、被上告人が控訴し、控訴審が、本件訴えは、行政主体としての上告人が、法規の適用の適正をめぐる一般公益の保護を目的として提起したものであって、自己の財産上の権利利益の保護救済を目的として提起したものと見ることはできないから、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらないとして、原判決を取り消し、上告人の訴えをいずれも却下したことから、上告人が上告した事案で、特別交付税は、地方交付税の一種であり、交付されるべき具体的な額は、総務大臣がする決定によって定められるものである(地方交付税法4条2号、6条の2第1項、15条1項、2項、16条1項)から、特別交付税の交付の原因となる国と地方団体との間の法律関係は、上記決定によって発生する金銭の給付に係る具体的な債権債務関係であるということができ、地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、国と当該地方団体との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に当たるというべきであり、また、特別交付税の額の決定は、地方交付税法及び特別交付税に関する省令に従ってされるべきものであるから、上記訴えは、法令の適用により終局的に解決することができるものといえ、以上によれば、地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たると解するのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2025.03.25
旅券発給拒否取消等請求控訴事件
LEX/DB25621991/東京高等裁判所 令和 7年 1月30日 判決(控訴審)/令和6年(行コ)第52号
一審原告(フリージャーナリスト)は、外務大臣に対して一般旅券の発給申請をし、外務大臣から、トルコへの入国が認められない者であるから旅券法13条1項1号に該当するとして、一般旅券の発給拒否処分を受けたため、一審原告は、一審被告(国)に対し、〔1〕本件旅券発給拒否処分の取消し、〔2〕主位的に全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、予備的にトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、〔3〕外務大臣が本件旅券発給拒否処分をしたことが違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として慰謝料等の支払を求め、原審が〔1〕を認容し、〔2〕及び〔3〕を棄却したところ、請求全部の棄却を求めて一審被告が控訴し、請求全部の認容を求めて一審原告が控訴した事案で、本件旅券発給拒否処分の取消請求は理由があるから認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきであるとし、これと同旨の原判決は相当であるとして、一審被告及び一審原告の本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2025.02.25
選挙無効請求事件
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LEX/DB25574034/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 1月28日 判決(上告審)/令和5年(行ツ)第404号 等
千葉県議会議員の定数及び選挙区等に関する条例(昭和49年千葉県条例第55号)に基づいて令和5年4月9日に行われた千葉県議会議員一般選挙について、船橋市選挙区の選挙人である上告人が、本件条例のうち各選挙区において選挙すべき議員の数を定める規定が公職選挙法15条8項及び憲法14条1項に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の本件選挙区における選挙も無効であると主張して選挙無効を求めたところ、原審が、本件定数配分規定が定められた本件改正当時において同法15条8項ただし書にいう特別の事情があるとの評価がそれ自体として合理性を欠いていたとも、本件選挙当時において上記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたともいい難いから、本件選挙当時における本件定数配分規定が公選法15条8項に違反していたものとはいえず、適法というべきであるとして、請求を棄却したことから、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、本件選挙当時、本件条例による各選挙区に対する定数の配分が千葉県議会の合理的裁量の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法14条1項に違反していたものとはいえないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁等)の趣旨に徴して明らかというべきであり、また、その余の上告理由は、違憲をいうが、その前提を欠くものであって、民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しないとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、反対意見あり)。
2025.02.18
第二次世界大戦戦没者合祀絶止等請求事件
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LEX/DB25574001/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 1月17日 判決(上告審)/令和6年(受)第275号
靖國神社は、被上告人(被告・被控訴人)・国から第二次世界大戦で戦没した軍人及び軍属の氏名等の情報の提供を受け、それらの者を合祀していたところ、大韓民国の国籍を有する上告人(原告・控訴人)らが、被上告人に対し、被上告人が、上告人らの了承を得ずに、靖國神社に上告人らの各父親の情報をも提供した行為は違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払等を求め、第一審が請求をいずれも棄却した事件の上告審の事案で、上告人らの請求に係る損害賠償請求権については、平成29年法律第44号による改正前の民法724条後段の除斥期間が経過していることが明らかであり、そして、原審が適法に確定した事実及び上告人らの主張を精査しても、被上告人が上記除斥期間の主張をすることが、信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断するに足りる事情があるとはうかがわれないから、本件情報提供行為に係る上告人らの損害賠償請求を棄却すべきものとした原審の結論は是認することができ、論旨は、原判決の結論に影響を及ぼさない事項についての違法をいうに帰着し、採用することができないとして、本件上告を棄却した事例(原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻す旨の反対意見あり)。
2024.11.12
大垣警察市民監視国家賠償、個人情報抹消請求控訴事件
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LEX/DB25621036/名古屋高等裁判所 令和 6年 9月13日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第287号
岐阜県警察本部警備部及び岐阜県警各警察署警備課が、一審原告らの個人情報を長年にわたって収集、保有し、大垣警察署警備課の警察官がそれらの情報の一部を民間企業に提供したことにより、一審原告らの人格権としてのプライバシー等が侵害されたとして、一審原告らが、一審被告県に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金の支払等を求め(甲事件)、また、一審原告らが、人格権としてのプライバシーに基づき、一審被告県に対しては岐阜県警等が保有する、一審被告国に対しては警察庁警備局が保有する、一審原告らの個人情報の抹消を求め(乙事件)、原審が、甲事件について、一審原告らの一審被告県に対する請求を一部認容し、その余をいずれも棄却し、乙事件につき、抹消を求める内容の特定性を欠くから不適法であるとして、一審原告らの一審被告県及び一審被告国に対する訴えをいずれも却下したところ、一審被告県及び一審原告らがそれぞれ控訴し、なお、一審原告らは、当審において、乙事件の請求につき、抹消請求の対象を変更して、訴えの変更をした事案で、甲事件について、原判決を一部変更し、一方、乙事件について、大垣警察を含めた岐阜県警による一審原告らの上記個人情報の保有は、一審原告らのプライバシーを侵害するもので違法であり、とりわけ本件においては、一審原告らの個人情報が、法令の根拠に基づかず、正当な行政目的の範囲を逸脱して、第三者であるq2に開示され提供されているのであり、岐阜県警が保有する一審原告らの個人情報が、法令等の根拠に基づかず、正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示される具体的現実的な危険が生じていると認められるから、一審原告らは、人格権に基づく妨害排除請求として、一審被告県に対し、上記各個人情報の抹消を請求できるものと認められ、一審原告らの乙事件の変更後の一審被告県に対する予備的請求3は、いずれも理由があるが、一審被告国に対する予備的請求3は、一審被告国が一審原告らの個人情報を保有しているものとは認められないから、いずれも理由がないとして、一部認容、一部却下し、その余を棄却した事例。
2024.11.05
就籍許可申立許可審判に対する即時抗告事件
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LEX/DB25620948/名古屋高等裁判所 令和 6年 9月11日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和5年(ラ)第431号
抗告人が、2022年に、かつてアフガニスタン・イスラム共和国国籍を有していた抗告人父母の間の子として愛知県豊橋市内において出生したが、この頃までに、共和国全土はタリバーンによって国家の要件を欠くなどしたために抗告人父母はいずれも無国籍となっていたから、抗告人は、日本で生まれ、かつ、父母がともに国籍を有しない子であり、国籍法2条3号後段の要件を満たすとして、日本国民として就籍の許可を求めたところ、原審が本件申立てを却下したことから、抗告人が抗告した事案で、抗告人が出生した当時、共和国は、実質的に国家としての実体を失っていたというべきであり、また、暫定政府(タリバン政権)は、「自国民の保護等を他国の政府に求めることができない。」という要件を欠いている状態にあったと解されるし、抗告人父母は、かつて共和国が存在していた領域に戻って暫定政府の保護を受ける意思はないものと解され、そして、国籍は、当該国家が存在することを当然の前提とするものであるから、共和国の国籍をもと有していた抗告人父母は、いずれも、上記当時、少なくとも実質的に国籍法2条3号にいう「国籍を有しないとき」に該当する者であったというべきであるが、抗告人父母は、共和国及び暫定政府のいずれからも国民としての保護を受けられない状態になっていたというべきであるから、抗告人父母が共和国又は首長国の国籍を有するものとし、日本において出生した抗告人に日本国籍の取得を認めないことは、可及的に無国籍者の発生を防止して国家による本人の利益の保護を図るという同号の趣旨に反すると解されるし、児童は出生の時から国籍を取得する権利を有し、締約国はこの権利の実現を確保するとしている「児童の権利に関する条約」7条の趣旨にも反するものと解され、抗告人は、国籍法2条3号に基づき、日本国籍を取得したものというべきであるとして、原審判を取り消し、抗告人の申立てを認容した事例。
2024.08.06
損害賠償請求事件
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LEX/DB25573641/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月11日 判決 (上告審)/令和4年(受)第2281号
被上告人宗教法人の信者であった亡Aが被上告人宗教法人に献金をしたことについて、上告人(亡Aは原審係属中に死亡し、同人の長女である上告人が亡Aの訴訟上の地位を承継した。)が、被上告人らに対し、上記献金は被上告人Y1を含む被上告人宗教法人の信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求め、原審は、上告人の被上告人宗教法人に対する損害賠償請求(ただし、亡Aの承継人として請求する部分に限る。)に係る訴えを却下し、被上告人Y1に対する請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、亡Aと被上告人宗教法人との間に念書による本件不起訴合意は、亡Aがこれを締結するかどうかを合理的に判断することが困難な状態にあることを利用して、亡Aに対して一方的に大きな不利益を与えるものであったと認められ、公序良俗に反し、無効であるとし、また、被上告人宗教法人の信者らによる献金の勧誘した行為が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法があるとして、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分は破棄し、被上告人らの不法行為責任の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2024.07.30
国家賠償請求事件
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LEX/DB25573621/最高裁判所大法廷 令和 6年 7月 3日 判決 (上告審)/令和5年(受)第1319号
旧優生保護法に基づく優生手術を受けさせられたとする一審原告らが、旧優生保護法は違憲無効であり、国会議員には旧優生保護法の規定を改廃しなかった立法不作為や偏見差別を解消する措置を講じなかったなどの立法不作為があると主張するとともに、厚生大臣が優生手術を推進したことは違法であるし、厚生大臣及び厚生労働大臣には旧優生保護法を廃止し優生政策を抜本的に転換すべき義務等があるのにこれを怠った不作為があるなどと主張して、国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金及び遅延損害金の支払を求め、第一審が請求をいずれも棄却する旨の判決をしたため、一審原告らの一部がそれぞれ控訴し、控訴審が、優生条項に基づき本件各手術を受けた一審原告らは、国に対し、同法1条1項に基づく損害賠償請求権を取得するとし、また、一審原告らの国に対する各損害賠償請求権は、除斥期間の経過によって消滅したとはいえないとして、第一審判決を変更し、一審原告らの請求を一部認容したため、国が上告した事案で、旧優生保護法の本件規定は、憲法13条及び14条1項に違反するものであったというべきであり、本件規定の内容は、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であったというべきであるから、本件規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けると解するのが相当であるとしたうえで、本件訴えが除斥期間の経過後に提起されたということの一事をもって、本件請求権が消滅したものとして上告人が第1審原告らに対する損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができないというべきであって、本件請求権が除斥期間の経過により消滅したとはいえないとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、意見あり)。
2024.06.11
罷免訴追事件
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LEX/DB25599459/裁判官弾劾裁判所 令和 6年 4月 3日 判決 /令和3年(訴)第1号
平成6年4月13日、判事補に任命され、その後、平成31年4月1日仙台高等裁判所判事兼仙台簡易裁判所判事に補せられ、今日に至っている被訴追者は、平成9年頃からホームページを作成し、法律に携わる人に有益な情報提供をするための媒体にしていったが、コメント欄への不適切な書き込みによりそのサイトは平成18年に閉鎖せざるを得なくなり、平成20年、法律情報を法律関係の方々に伝達する手段として被訴追者の実名が付されたアカウントによるツイッターを始めたところ、被訴追者は、裁判官であることが他者から認識することができる状態で当該投稿等を行い、不特定多数の者が閲覧可能な状態にしたとして、訴追委員会が、被訴追者を罷免することを求めた事案で、被訴追者による刑事事件投稿等行為群(〔3〕〔10〕を除く)につき、裁判官弾劾法31条2項但書に基づき、本件審理に関与した裁判員の3分の2以上の多数意見により、同法2条2号を適用するとして、被訴追者を罷免した事例。
2024.06.04
法人税青色申告承認取消処分取消請求事件
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LEX/DB25573500/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 5月 7日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第334号
上告代理人の上告理由のうち憲法31条違反をいう部分について、税務署長が上告人に対してした、上告人の平成30年7月1日から令和元年6月30日までの事業年度以後の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(本件処分)につき、事前に防御の機会が与えられなかったことをもって、本件処分が違憲であるとの論旨で、法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえないなどとして、本件上告を棄却した事例(反対意見、補足意見がある)。
2024.04.30
「結婚の自由をすべての人に」訴訟事件
LEX/DB25598385/東京地方裁判所 令和 6年 3月14日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第7645号
法律上同性の者同士の婚姻を希望する原告らが、現行の法律婚制度を利用できる者を法律上異性の者同士の婚姻に限定している民法及び戸籍法の本件諸規定が、憲法14条1項、24条1項及び同条2項に違反するにもかかわらず、被告(国)が、正当な理由なく長期にわたって、同性カップル等の婚姻を可能とする立法措置を講ずるべき義務を怠っているなどと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案で、同性カップル等が、現状、人格的利益の享受について大きな不利益を被っており、また、昨今の国際的な潮流や、日本における国民の意思の変容を踏まえれば、婚姻の主体を、法律上の男性と法律上の女性という異性カップルのみにすべきであるといった伝統的価値観は、揺らいでいるといえる状況にあるにもかかわらず、本件諸規定が、同性カップル等の婚姻を認めず、また、法律上、同性カップル等が婚姻による法的利益と同様の法的利益を享受したり、社会的に公証を受ける利益を享受したりするための制度も何ら設けられていないのは、同性カップル等が、自己の性自認及び性的指向に即した生活を送るという重要な人格的利益を、同性カップル等から剥奪するものにほかならないのであるから、本件諸規定及び立法がされていない状況は、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理的な理由があるとは認められず、憲法24条2項に違反する状態にあるとしたが、憲法24条1項、憲法14条1項に違反するとはいえないとし、本件諸規定を改廃していないことについて、被告に国家賠償法1条1項の違法があるということはできないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2024.04.16
犯罪被害者給付金不支給裁定取消請求事件
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LEX/DB25573429/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月26日 判決 (上告審)/令和4年(行ツ)第318号 等
上告人(昭和50年生まれの男性)が、平成6年頃に本件被害者(昭和37年生まれの男性)と交際を開始し、同居生活をしていたところ、同人は、平成26年12月22日、第三者の犯罪行為により死亡した。そこで、上告人は、平成28年12月22日、本件被害者の死亡について、上告人は犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯給法)5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当すると主張して、遺族給付金の支給の裁定を申請した。愛知県公安委員会から、平成29年12月22日付けで、上告人は上記の者に該当しないなどとして、遺族給付金を支給しない旨の裁定を受けたたため、上告人が、被上告人(愛知県)を相手に、上記裁定の取消しを求め、原審は、犯給法5条1項1号が憲法14条1項等に反するとはいえないとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得るとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、上告人が本件被害者との間において「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当するか否かについて、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例(反対意見及び補足意見がある)。
2024.04.16
損害賠償請求控訴事件
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LEX/DB25598384/札幌高等裁判所 令和 6年 3月14日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第194号
同性愛者である控訴人らが、民法及び戸籍法が同性者間の婚姻を許容していないのは憲法24条、13条、14条1項に違反すること、国会は必要な立法措置を講じるべき義務があるのにこれを怠っていること(立法不作為)、これにより控訴人らは婚姻することができず、精神的苦痛を被っていることを主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、各人につき100万円等の支払を求めたところ、原審は、民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定(本件規定)が同性者間の婚姻を許容していないことは、憲法24条と13条には違反しないものの、憲法14条1項には違反するとしたが、そのことを国会において直ちに認識することは容易ではなかったから、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないとして、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らは、これを不服として控訴をした事案で、本件規定は、異性間の婚姻のみを定め、同性間の婚姻を許さず、これに代わる措置についても一切規定していないことから、個人の尊厳に立脚し、性的指向と同性間の婚姻の自由を保障するものと解される憲法24条の規定に照らして、合理性を欠く制度であり、少なくとも現時点においては、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っていると認め、本件規定は、憲法24条に違反するとし、また、国会が立法裁量を有することを考慮するとしても、本件規定が、異性愛者に対しては婚姻を定めているにもかかわらず、同性愛者に対しては婚姻を許していないことは、現時点においては合理的な根拠を欠くものであって、本件規定が定める本件区別取扱いは、差別的取扱いに当たり、本件規定は、憲法14条1項に違反するとしたうえで、同性婚立法の在り方には多種多様な方法が考えられ、設けるべき制度内容が一義的に明確であるとはいい難いこと、同性婚に対する法的保護に否定的な意見や価値観を有する国民も存在し、議論の過程を経る必要があること等から、国会が正当な理由なく長期にわたって本件規定の改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできないとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.03.05
旅券発給拒否取消等請求事件
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LEX/DB25597235/東京地方裁判所 令和 6年 1月25日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第10号
原告は、外務大臣に対して一般旅券の発給申請をしたところ、外務大臣から、トルコへの入国が認められない者であるから旅券法13条1項1号に該当するとして、旅券発給拒否処分を受けた。本件は、原告が、〔1〕上記旅券発給拒否処分の取消しを求めるとともに、〔2〕主位的に全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、予備的にトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付けを求め、また、〔3〕外務大臣が上記旅券発給拒否処分をしたことが国家賠償法上違法であるとして、同法1条1項に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた事案において、原告は、旅券法13条1項1号は、憲法22条及び13条並びに自由権規約12条2項に違反しないとしたうえで、本件旅券発給拒否処分は、トルコ及びトルコと地理的に近接する国を除く地域に原告が渡航することによって、トルコと我が国との二国間の信頼関係が損なわれる蓋然性がないにもかかわらず、これらの地域への渡航を制約する態様でされたものであるから、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したもので違法であり、本件旅券発給拒否処分は取り消されるべきものであるとして一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2024.01.16
年金減額改定決定取消、年金減額改定決定取消等請求事件
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LEX/DB25573213/最高裁判所第二小法廷 令和 5年12月15日 判決 (上告審)/令和4年(行ツ)第275号
国民年金法上の老齢基礎年金及び厚生年金保険法上の老齢厚生年金の一方又は双方の受給権者である上告人(原告・控訴人)らが、厚生労働大臣から、各自の老齢年金の額を改定する旨の処分を受けたことから、被上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、その取消し等を求めた事案の上告審において、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成24年法律第99号)1条の規定のうち、国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置等について定める部分は、著しく合理性を欠き、明らかに裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものといえず、年金受給権に対する不合理な制約であるともいえないとし、憲法25条、憲法29条に違反しないとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2023.11.14
選挙無効請求事件
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LEX/DB25573107/最高裁判所大法廷 令和 5年10月18日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第54号
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙について、東京都選挙区及び神奈川県選挙区の選挙人である上告人らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の事案の上告審において、本件定数配分規定が本件選挙当時憲法に違反するに至っていたということはできないとした原審の判断は、是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(反対意見、意見がある)。
2023.11.14
選挙無効請求事件
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LEX/DB25573108/最高裁判所大法廷 令和 5年10月18日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第52号 等
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙について、青森県選挙区、岩手県選挙区、宮城県選挙区、福島県選挙区及び山形県選挙区の選挙人である原審原告らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟の事案の上告審において、原判決は、原審原告らの請求をいずれも棄却した上で、青森県選挙区、岩手県選挙区、宮城県選挙区、福島県選挙区、山形県選挙区の各選挙区における本件選挙が違法であることを主文において宣言したものであるが、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、上記規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとして、原審被告らの上告に基づき、原判決を変更して、原審原告らの請求をいずれも棄却するとともに、原審原告らの上告を棄却した事例(反対意見、意見がある)。
2023.11.07
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
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LEX/DB25573119/最高裁判所大法廷 令和 5年10月25日 決定 (特別抗告審)/令和2年(ク)第993号
生物学的な性別は男性であるが心理的な性別は女性である抗告人が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)3条1項の規定に基づき、性別の取扱いの変更の審判を申し立て、原審は、抗告人について、性同一性障害者であって、特例法3条1項1号から3号までにはいずれも該当するものの、特例法3条1項4号(本件規定)に該当するものではないとした上で、本件規定は、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、社会に混乱を生じさせかねないなどの配慮に基づくものと解されるところ、その制約の態様等には相当性があり、憲法13条及び14条1項に違反するものとはいえないとして、本件申立てを却下すべきものとしたため、抗告人が特別抗告した事案において、本件規定は憲法13条に違反し無効であるところ、これと異なる見解の下に本件申立てを却下した原審の判断は、同条の解釈を誤ったものであるとして原決定を破棄し、原審の判断していない5号規定に関する抗告人の主張について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例(反対意見、補足意見がある)。
2023.10.31
選挙無効請求事件
LEX/DB25573096/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月12日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第55号
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙に関し、いわゆる特定枠制度を定める公職選挙法の規定は憲法43条1項に違反するとし、また、本件選挙と同日に行われた参議院の選挙区選出議員の選挙は同法が定める定数配分規定が憲法に違反するため無効であるとして、被上告人(原審被告)に対し、選挙無効請求をしたところ、原判決は、上告人(原審原告)の請求を棄却したため、これに不服の上告人が上告をした事案において、参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙について特定枠制度を定める公職選挙法の規定が憲法43条1項等に違反しないとし、また、参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙の無効を求める訴訟において選挙区選出議員の選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることができないことは、平成11年大法廷判決の趣旨に徴して明らかであるとし、原審の判断は正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.09.26
憲法53条違憲国家賠償等請求事件
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LEX/DB25573040/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 9月12日 判決 (上告審)/令和4年(行ツ)第144号 等
憲法53条後段の規定により、内閣に対し、国会の臨時会の召集を決定を要求した参議院議員の一人である上告人(原告・控訴人)が、被上告人(被告・被控訴人。国)に対し、〔1〕主位的に、上告人が次に参議院の総議員の4分の1以上の議員の一人として国会法3条所定の手続により臨時会召集決定の要求をした場合に、内閣において、20日以内に臨時会が召集されるよう臨時会召集決定をする義務を負うことの確認を、予備的に、上記場合に、上告人が20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの確認を求めるとともに、〔2〕内閣が臨時会召集決定の要求から92日後まで臨時会召集決定をしなかったことが違憲、違法であり、これにより、上告人が自らの国会議員としての権利を行使することができなかったなどとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審判決は、確認訴訟部分に係る各訴えを不適法として却下し、国賠請求部分に係る請求を棄却したため、上告人が控訴し、原判決も控訴を棄却したため、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、上告理由(憲法53条後段の解釈の誤りをいう部分に限る。)及び上告受理申立て理由中、本件各確認の訴えの適否に係る部分、及び、本件損害賠償請求に係る部分については、原審の判断は是認することができるとし、その余の上告理由については、民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しないとして、上告を棄却した事例(反対意見がある)。