2022.05.10
傷害、暴行被告事件
LEX/DB25572105/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 4月21日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1751号
被告人は、交際相手Cの双子の男児A及びB(当時7歳)に対する傷害等(Aに対する暴行及び傷害、Bに対する傷害)の各事実で起訴され、第1審判決は、Aに対する暴行及びBに対する傷害の各事実を認定した上、Aに対する傷害について、急性硬膜下血腫等及び重度の認知機能障害等の後遺症を伴う脳実質損傷の傷害を負わせた旨の犯罪事実を認定し、被告人を懲役3年に処したため、被告人は、第1審判決に対して控訴し、原判決は、Aに対する傷害について本件暴行を認定することはできないとして第1審判決を事実誤認を理由に破棄し、被告人に対し、Aに対する暴行及びBに対する傷害の各事実につき懲役1年6月、4年間執行猶予を言い渡し、Aに対する傷害の事実につき無罪を言い渡したため、検察官および被告人の双方が上告した事案で、本件暴行を認定した第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできず(最高裁平成23年(あ)第757号同24年2月13日第一小法廷判決・刑集66巻4号482頁参照)、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤ったものというべきであり、この違法は判決に影響を及ぼすものであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。なお、Aに対する傷害の事実は、原判決が有罪としたAに対する暴行及びBに対する傷害の各事実と併合罪の関係にあるとして起訴されたものであるから、上記違法は、原判決の全部に影響を及ぼすものである。よって、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄し、同法413条本文に従い、本件を高等裁判所に差し戻すこととした事例。