2022.03.22
大垣警察市民監視国家賠償請求事件(甲事件)、個人情報抹消請求事件(乙事件)
LEX/DB25591788/岐阜地方裁判所 令和 4年 2月21日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第758号 等
岐阜県警察本部警備部及び岐阜県警各警察署警備課が、原告らの個人情報を長年にわたって収集、保有し、大垣警察署警備課の警察官がそれらの情報の一部を民間企業に提供したことにより、原告らの人格権としてのプライバシー等が侵害されたとして、原告らが、被告県に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金の支払等を求めた事案(甲事件)、また、原告らが、人格権としてのプライバシーに基づき、被告県に対しては岐阜県警等が保有する、被告国に対しては警察庁警備局が保有する、原告らの個人情報の抹消を求めた事案(乙事件)で、乙事件については訴えを却下し、甲事件については、原告らは、必要性もないのに、大垣警察からプライバシーに係る情報を、積極的、意図的に対立の相手方である民間企業にその情報を提供されたことにより、精神的な損害を被ったものであるとして一部認容した事例。
2022.03.22
課徴金納付命令処分取消請求控訴事件
LEX/DB25591763/東京高等裁判所 令和 3年11月24日 判決 (控訴審)/令和3年(行コ)第31号
株式会社M社の取締役である被控訴人(1審原告)が、M社の「業務執行を決定する機関」が株式会社D社との「業務上の提携」を「行うことについての決定」をした旨の重要事実を知りながら、法定の除外事由がないのに、本件重要事実の公表がされた平成27年12月11日よりも前にM社株式(本件株式)合計400株を買い付けたことが金融商品取引法166条1項1号及び同条2項1号ヨの内部者取引に当たるとして、金融庁長官(処分行政庁)から、金融商品取引法185条の7第1項に基づき、課徴金として133万円を国庫に納付することを命ずる決定を受けたことについて、本件納付命令が違法である旨主張して、控訴人(1審被告。国)に対し、その取消しを求め、原判決は、被控訴人が上記買付けをした時までにM社の「業務執行を決定する機関」が「業務上の提携」を「行うことについての決定」をしていたとは認められず、本件納付命令は違法であるとして、これを取消したため、控訴人が、これを不服として控訴した事案において、本件納付命令は違法であり、被控訴人の請求は理由があるものと判断し、原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2022.03.15
固定資産評価決定取消請求事件
LEX/DB25571984/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 3月 3日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第323号
ゴルフ場の用に供されている山口県下松市所在の一団の本件各土地に係る固定資産税の納税義務者である被上告人が、土地課税台帳に登録された本件各土地の平成27年度の価格を不服として下松市固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたところ、これを棄却する旨の決定を受けたため、上告人を相手に、本件決定のうち被上告人が適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求め、原判決は、本件決定の全部を取り消すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、本件登録価格について、塩田跡地としての取得価額を評定していないことを理由として評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした原審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件登録価格が評価基準の定める評価方法に従って算定されたものといえるか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2022.03.15
金融商品取引法違反被告事件
LEX/DB25571977/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 2月25日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第96号
証券会社の従業員であった被告人が、知人に利益を得させる目的で、職務に関して知った上場企業の株式の公開買付けに関する情報をその知人に伝達し、インサイダー取引に関与したとして、金融商品取引法違反の罪に問われ、第1審判決は、被告人を懲役2年及び罰金200万円に処し、原判決も、第1審判決を是認したため、被告人が上告した事案で、被告人において本件公開買付けの実施に関する事実を知ったことが金融商品取引法167条1項6号にいう「その者の職務に関し知ったとき」に当たるとして、本件上告を棄却した事例。
2022.03.15
損害賠償請求控訴事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 令和4年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25591730/大阪高等裁判所 令和 4年 2月22日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第228号
旧優生保護法(平成8年法律第105号による改正前のもの)に基づく不妊手術(人の生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術。優生手術)を受けたという本人又はその配偶者である控訴人らが、旧優生保護法が人の性と生殖に関する権利であるリプロダクティブ・ライツ、自己決定権、平等権等を侵害する違憲なものであるにもかかわらず、〔1〕国会議員が旧優生保護法を立法したこと、〔2〕国会議員が被害救済立法を行わなかったこと、〔3〕厚生労働大臣及び内閣総理大臣が被害救済措置を講じなかったことがいずれも違法であると主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金の支払等を求めたところ、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、これを不服の控訴人らが控訴した事案で、控訴人1、控訴人2に対し、旧優生保護法4条の申請に基づく優生手術が実施されたと認定し、被控訴人は、控訴人らに対し、国家賠償法1条1項に基づき、旧優生保護法4条ないし13条に係る違法な立法行為による権利侵害につき損害賠償義務を負うものと判示し、控訴人らの被控訴人に対する国家賠償法1条1項に基づく各損害賠償請求権は、除斥期間の経過によって消滅したものとはいえず、その消滅をいう被控訴人の主張は採用することができないとし、原判決を変更して、控訴人らの請求を一部認容した事例。
2022.03.08
窃盗,窃盗未遂被告事件
LEX/DB25571957/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 2月14日 決定 (上告審)/令和2年(あ)第1087号
被告人が、氏名不詳者らと共謀の上、金融庁職員になりすましてキャッシュカードを窃取しようと考え、警察官になりすました氏名不詳者が、被害者宅に電話をかけ、被害者(当時79歳)に対し、被害者名義の口座から預金が引き出される詐欺被害に遭っており、再度の被害を防止するため、金融庁職員が持参した封筒にキャッシュカードを入れて保管する必要がある旨うそを言い、さらに、金融庁職員になりすました被告人が、被害者をして、キャッシュカードを封筒に入れさせた上、被害者が目を離した隙に、同封筒を別の封筒とすり替えて同キャッシュカードを窃取するため、被害者宅付近路上まで赴いたが、警察官の尾行に気付いて断念し、その目的を遂げなかったとした原判決の是認する第1審判決判示第15の窃盗未遂罪の成否について、上告審が職権により判断した事案で、被告人が被害者に対して印鑑を取りに行かせるなどしてキャッシュカード入りの封筒から注意をそらすための行為をしていないとしても、本件うそが述べられ、被告人が被害者宅付近路上まで赴いた時点では、窃盗罪の実行の着手が既にあったとして、被告人について窃盗未遂罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2022.03.08
憲法53条違憲国家賠償請求控訴事件
LEX/DB25591582/広島高等裁判所岡山支部 令和 4年 1月27日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第77号
他の衆議院議員119名と連名で憲法53条後段に基づく臨時会召集決定を要求した衆議院議員である控訴人が、被控訴人・国に対し、内閣を加害公務員として、内閣が合理的期間内に召集を決定すべき義務に違反して本件召集要求後98日が経過するまで臨時会の召集を怠る加害行為をしたことによって、国会議員の権能行使を侵害されたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、原審が控訴人の請求を棄却したところ、控訴人が一部控訴した事案で、控訴人が主張する国会議員としてなし得たであろう国会活動の内容は、仮定的ないし抽象的な可能性をいうに留まっているといわざるを得ず、同法1条1項は、公務員が個別の国民の権利又は法律上保護される利益を侵害して、国民が具体的な損害を被った場合に、その損害を賠償させることにより当該侵害を救済する趣旨の規定であり、仮定的ないし抽象的な可能性を保護の対象にするものではないから、内閣が仮定的ないし抽象的な国会活動の可能性を有するに留まる控訴人との関係で職務上の法的義務違背を生じることもないというべきであるところ、原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2022.03.08
著作権法違反被告事件
LEX/DB25591679/大阪地方裁判所 令和 3年 5月12日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第2469号
被告人は、法定の除外事由がなく、かつ、著作者の許諾を受けないで、平成27年8月26日頃から平成28年1月11日頃までの間、株式会社P2において、パーソナルコンピュータ等を使用し、株式会社P3が著作者人格権を有する映画の著作物であるゲームソフト『MONSTER HUNTER 4G』のセーブデータ6点を、同ゲームに登場する装備の強さ等の数値を同社の設定を超える数値に書き換えるなどの方法により改変し、同ゲームソフトのストーリーが本来予定されていた範囲を超えて展開する状況を作出させ、もって著作者人格権である同一性保持権を侵害したとして、懲役1年6月及び罰金50万円を求刑された事案で、被告人が本件各セーブデータを書き換えた改造行為は、株式会社P3の保有する同一性保持権の侵害に該当するとはいえないと判断し、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2022.03.01
準強制わいせつ被告事件
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LEX/DB25571962/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 2月18日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1026号
外科医として勤務する被告人が、自身が執刀した右乳腺腫瘍摘出手術の患者である女性Aが同手術後の診察を受けるものと誤信して抗拒不能の状態にあることを利用し、わいせつな行為をしようと考え、病室内で、ベッド上に横たわるAに対し、その着衣をめくって左乳房を露出させた上、その左乳首をなめるなどし、Aの抗拒不能に乗じてわいせつな行為をしたと起訴され、第1審判決は、被告人に無罪を言い渡したが、原判決は、第1審判決には事実誤認があるとしてこれを破棄し、準強制わいせつ罪の成立を認めて被告人を懲役2年に処したため、被告人が上告した事案で、Aの証言の信用性判断において重要となるDNAの本件定量検査の結果の信頼性については、これを肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があり、それにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、Aの証言に本件アミラーゼ鑑定及び本件定量検査の結果等の証拠を総合すれば、被告人がわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法があるとして、原判決を破棄し、専門的知見等を踏まえ、本件定量検査に関する疑問点を解明して本件定量検査の結果がどの程度の範囲で信頼し得る数値であるのかを明らかにするなどした上で、本件定量検査の結果を始めとする客観的証拠に照らし、改めてAの証言の信用性を判断させるため、本件を高等裁判所に差し戻すこととした事例。
2022.03.01
公金支出無効確認等請求事件
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LEX/DB25571948/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 2月15日 判決 (上告審)/令和3年(行ツ)第54号
市の住民である上告人らが、大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例(平成28年大阪市条例第1号)2条、5条~10条(本件各規定)が憲法21条1項等に違反し、無効であるため、大阪市ヘイトスピーチ審査会の委員の報酬等に係る支出命令は法令上の根拠を欠き違法であるなどとして、市の執行機関である被上告人を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、当時市長の職にあった者に対して損害賠償請求をすることを求めた住民訴訟の事案の上告審において、本件各規定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものというべきであるとし、本件各規定は憲法21条1項に違反しないとして、本件上告を棄却した事例。
2022.02.22
宅地造成等規制法に基づく変更許可決定取消請求事件(第一事件)、宅地造成等規制法に基づく許可決定の無効等確認請求事件(第二事件、第三事件)
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LEX/DB25591494/静岡地方裁判所 令和 3年12月24日 判決 (第一審)/平成30年(行ウ)第32号 等
伊東市長が、訴外会社に対し、太陽光発電所(メガソーラー)の建設を目的とする宅地造成等規制法8条1項に基づく宅地造成工事の許可(本件処分)をし、同法12条1項に基づく本件工事の変更許可(本件変更処分)をしたのに対し、被告(伊東市)に住居を有し、又は居住している者である原告番号1から9及び同11から42の第一事件原告らが、本件変更処分の取消しを求め(第一事件)、原告番号9及び同40の第二事件原告ら並びに原告番号18、同37及び同39の第三事件原告らが、本件処分の無効等確認を求めた事案(第二事件、第三事件)において、第一事件原告らが本件変更処分の取消しを求める原告適格を有するとは認められず、また、第二事件及び第三事件原告らが本件処分の無効等の確認を求める原告適格を有するとは認められないとして、本件訴えをいずれも却下した事例。
2022.02.22
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25591421/大阪高等裁判所 令和 3年12月15日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第281号
控訴人が、自らの乗車していた車両と被控訴人b運転の車両との交通事故により脳脊髄液漏出症等の傷害を負い、損害が発生したと主張して、被控訴人bに対しては不法行為に基づき、被控訴人bの使用者である被控訴人会社に対しては使用者責任に基づき、連帯して損害賠償金の支払等を求め、原審は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案において、本件事故に起因して脳脊髄液漏出症が生じ、これが持続しているものと認め、控訴人に後遺している障害は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」として後遺障害等級9級10号に該当するとしたうえで、本件事故時の被控訴人bには、前方を注視して自動車を運転すべき注意義務を怠った過失があり、不法行為責任を負うとし、被控訴人会社は、使用者責任を負うとして、原判決を変更し、損害賠償金の支払について請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2022.02.15
非認定処分取消請求事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 令和4年4月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25571941/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 2月 7日 判決 (上告審)/令和3年(行ツ)第73号
専門学校を設置する上告人(控訴人・原告)が、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に基づき、あん摩マッサージ指圧師に係る養成施設で視覚障害者以外の者を養成するものについての同法2条1項の認定を申請したところ、厚生労働大臣から、視覚障害者であるあん摩マッサージ指圧師の生計の維持が著しく困難とならないようにするため必要があるとして、平成28年2月5日付けで、同法19条1項の規定(本件規定)により上記認定をしない処分を受けたため、本件規定は憲法22条1項等に違反して無効であると主張して、被上告人(被控訴人・被告)を相手に、本件処分の取消しを求めたところ、第1審判決は請求を棄却し、控訴審判決も控訴棄却したため、上告人が上告した事案で、本件規定について、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることについての立法府の判断が、その政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるということはできないとして、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律19条1項が憲法22条1項に違反しないとし、本件上告を棄却した事例(意見がある)。
2022.02.15
業務上過失傷害、業務上過失往来危険被告事件
LEX/DB25591574/福岡高等裁判所宮崎支部 令和 4年 1月27日 判決 (控訴審)/令和2年(う)第11号
被告人は、漁船a丸(総トン数1.5トン)に船長として乗り組み、同船の操船業務に従事していたものであるが、深夜に漁港から出航し、峰ヶ埼灯台から真方位48度,約1370メートル付近海上を、同漁港の沖合に向けて、速力約3.8ノットで航行するに当たり、自船左前方方向の約197メートル先に漁船b丸(総トン数1.1トン)の灯火に気付き、同船が自船方向に接近中であるのを認めたのであるから、自船の灯火を点灯させて航行するはもとより、b丸の動静を十分に注視し、同船の左舷側を通過することができるように針路を右に転ずるなどして同船との衝突を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、針路を左に転ずれば、同船との衝突を回避できるなどと思い込み、自船の灯火を点灯しないまま、b丸の動静を十分に注視せず、針路を左に転じて前記速力で航行した過失により、b丸が接近して衝突の危険を感じ、自船の舵を更に左に切り、スロットルレバーを操作して加速しようとしたが及ばず、峰ヶ埼灯台から真方位47度,約1340メートル付近海上において、自船右舷船尾部にb丸の船首部を衝突させ、同船船底に破口等の損傷を、自船後部甲板右舷側の外板に亀裂及び破口等の損傷をそれぞれ生じさせ、もって船舶の往来の危険を生じさせるとともに、自船の船員c(当時68歳)に加療約111日間を要する右肩関節周囲炎の傷害を負わせたとして、原判決が、罰金30万円を言い渡したため、被告人が控訴した事案で、被告人について、a丸の針路を左に転じて航行した点、無灯火で航行した点のいずれにおいても、過失を認めることはできず、e証言、実況見分調書等により過失を認めた原判決の判断は、論理則・経験則等に反する不合理なものであって、支持できないとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2022.02.08
離婚等請求本訴,同反訴事件
LEX/DB25571927/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 1月28日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1765号
平成16年11月に婚姻の届出をし、婚姻後同居し、2子をもうけたが、平成29年3月に別居するに至った夫婦の上告人と被上告人の間で、上告人が、本訴として、被上告人に対し、離婚を請求するなどし、被上告人が、反訴として、上告人に対し、離婚を請求するなどするとともに、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、原審が、被上告人の離婚請求を認容し、被上告人の慰謝料請求を120万円の限度で認容すべきものとした上で、上記120万円に対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求を認容したため、上告人が上告した事案で、離婚に伴う慰謝料として上告人が負担すべき損害賠償債務は、離婚の成立時である本判決確定の時に遅滞に陥るとして、改正法の施行日前に上告人が遅滞の責任を負ったということはできず、上記債務の遅延損害金の利率は、改正法による改正後の民法404条2項所定の年3パーセントであるとし、原判決中、上記部分を認容した部分を主文第1項のとおり変更し、子の監護費用の分担に関する上告については却下し、その余の上告については棄却した事例。
2022.02.08
損害賠償請求控訴事件、附帯控訴事件(布川事件国賠訴訟控訴審判決)
LEX/DB25591454/東京高等裁判所 令和 3年 8月27日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第3124号 等
昭和42年8月に発生した本件強盗殺人事件(いわゆる布川事件)について、逮捕及び勾留をされた上で公訴を提起され、有罪判決を受けて服役し、再審において無罪判決が確定した被控訴人兼附帯控訴人(1審原告)が、控訴人兼被附帯控訴人(1審被告)らに対し、検察官及び茨城県警所属の警察官による捜査、検察官による公訴の提起、検察官及び警察官の公判における活動並びに検察官の再審請求審及び再審における活動に違法があったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、損害賠償金の支払等を求めたところ、原判決が1審原告の請求を一部認容したため、1審被告らが請求全部の棄却を求めて控訴し、他方、1審原告は、別件窃盗事件逮捕の日から確定審第二審判決の宣告の日までの逸失利益に対する再審判決が確定した日から刑事補償金が支払われた日までの確定遅延損害金の請求の認容を求めるとともに、当審において請求を拡張して附帯控訴した事案で、控訴人らの控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき、控訴人らは、被控訴人に対し、原判決の認容額を減額した内容で認容し、被控訴人のその余の請求を棄却し、被控訴人が当審において拡張した請求に基づき、控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して賠償金の支払を認容し、被控訴人が被控訴人が当審において拡張したその余の請求を棄却した事例。
2022.02.01
不正指令電磁的記録保管被告事件
LEX/DB25571911/最高裁判所第一小法廷 令和 4年 1月20日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第457号
インターネット上のウェブサイト『X』の運営者である被告人が、Xの収入源としてコインハイブによるマイニングの仕組みを導入するために本件プログラムコードをサーバコンピュータに保管した行為について、不正指令電磁的記録保管罪に問われ(主な争点は、本件プログラムコードが、刑法168条の2第1項(本件規定)にいう「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」に当たるか否か)、第1審判決は無罪を言い渡したが、これに不服の検察官が控訴し、控訴審判決は、第1審判決が刑法168条の2第1項の解釈を誤り、事実誤認をしたものであるとして、第1審判決を破棄し、被告人を罰金10万円に処したため、被告人が上告した事案で、本件プログラムコードは、反意図性は認められるが、不正性は認められないため、不正指令電磁的記録とは認められないとし、原判決は、不正指令電磁的記録の解釈を誤り、その該当性を判断する際に考慮すべき事情を適切に考慮しなかったため、重大な事実誤認をしたものというべきであり、これらが判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとして、刑事訴訟法411条1号、3号により原判決を破棄することとし、本件プログラムコードの不正指令電磁的記録該当性を否定して被告人を無罪とした第1審判決は是認することができ、本件規定の解釈適用の誤りや事実誤認を主張する検察官の控訴は理由がないことに帰するから、刑事訴訟法413条ただし書、414条、396条によりこれを棄却した事例。
2022.02.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571900/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 1月18日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1518号
被上告人会社の株主であった上告人が、被上告人会社の違法な新株発行等により自己の保有する株式の価値が低下して損害を被ったとして、被上告人会社の代表取締役である被上告人Y2に対しては民法709条等に基づき、被上告人会社に対しては会社法350条等に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、本件新株発行について不法行為が成立するとして、上告人の請求のうち被上告人Y2に対する民法709条に基づく損害賠償請求及び被上告人会社に対する会社法350条に基づく損害賠償請求をそれぞれ一部認容したが、その際、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金について民法405条は適用又は類推適用されず、遅延損害金を元本に組み入れることはできない旨の判断をしたため、上告人が上告した事案で、上告審も、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は、民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできないとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2022.01.25
行政処分取消請求事件
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LEX/DB25591359/札幌地方裁判所 令和 3年12月17日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第7号
原告が、北海道公安委員会から銃砲所持の許可を取り消す旨の処分を受けたところ、当該処分は銃砲刀剣類所持等取締法所定の要件を満たさず、また裁量権を逸脱・濫用したものであると主張して、被告(北海道)に対し、その取消しを求めた事案において、市の要請でヒグマ1頭を駆除するため、ライフル銃から弾丸1個を発射した原告の行為が、鳥獣保護管理法38条3項に違反し、もって銃砲刀剣類所持等取締法10条2項1号に違反したものと判断する余地があるとしても、これを理由にライフル銃の所持許可を取り消すというのは、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くというべきであり、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものといわざるを得ないとし、本件処分を取り消した事例。
2022.01.25
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25591382/札幌高等裁判所 令和 3年12月14日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第18号
北海道内の漁業者である控訴人らが、〔1〕被控訴人(国・北海道)らは、遅くとも平成29年7月1日までに法的拘束力のある漁獲制限をする義務があったにもかかわらず、これを怠り、漁業者の自主管理に委ねた結果、第3管理期間において上限を大幅に超過する漁獲を招き、控訴人らは第4管理期間以降のくろまぐろ漁が事実上できなくなった、〔2〕被控訴人国の第4管理期間における超過差引きは裁量権を逸脱・濫用するものであり違法であるなどと主張して、被控訴人らに対し、国家賠償法1条1項に基づき、第4管理期間以降6年間の逸失利益及び慰謝料等の支払をそれぞれ求めたところ、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らは、原判決を不服として控訴した事案で、被控訴人国の資源管理法、漁業法及び水産資源保護法に基づく規制権限の不行使について、国家賠償法1条1項の適用上、違法とはいえないとし、また、被控訴人北海道の規制権限不行使についても違法とはいえないなどとして、原判決は相当であるとし、本件各控訴を棄却した事例。