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2021.06.08
損害賠償請求事件
LEX/DB25571503/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第290号 等
屋外の建設現場における石綿(アスベスト)含有建材の切断、設置等の作業に屋根工として従事し、石綿粉じんにばく露したことにより、中皮腫にり患したと主張するAの承継人である被上告人らが、〔1〕上告人国に対し,建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために上告人国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、〔2〕上告人株式会社ケイミュー及び同株式会社クボタ(上告人建材メーカーら)に対し、上告人建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことによりAが中皮腫にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、上告人建材メーカーらが、平成14年1月1日から平成15年12月31日までの期間に、屋外の建設作業従事者に対し、上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、被上告人らの上告人建材メーカーらに対する請求は理由がなく、被上告人らの上告人クボタに対する請求を棄却した第1審判決は正当であるとして、原判決中、被上告人らの上告人ケイミュー及び同国に対する請求に関する部分を主文第1項のとおり変更し、被上告人らの上告人クボタに対する請求につき、同上告人敗訴部分を破棄し、同部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.08
保有個人情報不開示決定処分取消請求控訴事件
LEX/DB25569195/大阪高等裁判所 令和 3年 4月 8日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第133号
大阪刑務所収容中の控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律13条に基づき、処分行政庁に対し、控訴人の診療情報(本件情報)の開示を請求したところ、処分行政庁から、本件情報は同法45条1項により開示請求の規定の適用が除外されている情報に該当するとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、本件決定は同項の解釈を誤ったものであるなどと主張して、本件決定の取消しを求め、原判決は控訴人の請求を棄却したので、控訴人が、不服であるとして、控訴した事案において、刑事施設において保有する診療情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項による開示請求の対象となるから、刑事施設の被収容者(又は被収容者であった者)からその開示請求がされた場合、当該診療情報の全部又は一部に同法14条所定の不開示情報があるかを検討した上でその開示の可否が検討されなければならないとし、本件情報が開示請求の対象外であることを理由としてされた本件決定は、同法45条1項の解釈適用を誤った違法があり、これを適法として控訴人の請求を棄却した原判決を取消し、控訴人の請求を認容した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571501/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第491号 等
〔1〕原告X1が、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、〔2〕原告X2らが、被告積水化学工業に対し、被告積水化学工業が石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより、屋外の建設現場における石綿含有建材の切断、設置等の作業に従事していたBが肺がんにり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告X1の被告国に対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻しを命じ、また、原判決中、原告X2らの被告積水化学工業に対する請求のうち、被告積水化学工業敗訴部分を破棄し、同部分につき、原告X2らの控訴を棄却した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571502/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第596号
建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する者(本件被災者)又はその承継人である上告人らが、被上告人らに対し、被上告人らが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより本件被災者らが上記疾患にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、本件立証手法により建材現場到達事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には、経験則又は採証法則に反する違法があるとして、原判決中、別紙一覧表1から19までの各1項記載の上告人らの各2項記載の被上告人らに対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2021.06.01
長男の居所及び通園先開示等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25569498/東京高等裁判所 令和 3年 5月 6日 決定 (抗告審)/令和2年(ラ)第2137号
相手方の夫である抗告人が、抗告人と相手方との間の長男と共に別居している相手方に対し、監護権を含む親権及び人格権に基づき、〔1〕親権を共同で行う者として長男の利益のために抗告人と協力すること、〔2〕長男の通園先の施設及び居所をいずれも開示すること、〔3〕抗告人の承諾なく長男の居所を移転させないこと及び〔4〕抗告人が長男の保護者として長男を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負うことの確認を求めた仮処分命令の申立てをしたところ、原審は本件申立てをいずれも却下したので、抗告人が即時抗告をした事案において、相手方も親権に基づいて長男を監護しているものであるし、相手方が長男を連れて抗告人と別居するに至った経緯を見ても、相手方による長男の監護が不当であると認めることはできず、他に相手方による親権の行使が不当であることあるいは不当な親権行使がされるおそれがあることを認めるに足りる証拠はなく、抗告人は相手方に対し、長男の居所等の開示や抗告人の承諾なく長男の居所を移転させないことを求めることはできないなどとして、本件申立てを却下した原決定は相当であり、本件抗告を棄却した事例。
2021.05.25
各損害賠償請求事件
LEX/DB25571500/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1447号 等
主に神奈川県内で建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する本件被災者ら又はその承継人である原告らが、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、被告建材メーカーらに対し、被告建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより本件被災者らが上記疾患にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告らのうち別紙一覧表1記載の者らの被告国に対する請求に関する部分、原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの被告エーアンドエーマテリアルら、被告大建工業及び被告ノザワに対する請求に関する部分、原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求に関する部分並びに原告らのうち別紙一覧表5及び別紙一覧表6記載の者らの被告ノザワに対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため上記部分につき本件を原審に差戻し、原告らのうち別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の者ら(同欄記載の者の訴訟承継人を含む。)の被告エーアンドエーマテリアルらに対する請求に関する部分を主文第2項のとおり変更し、被告国及び被告エーアンドエーマテリアルらの各上告を棄却した事例。
2021.05.25
準強姦被告事件
LEX/DB25571498/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月12日 決定 (上告審)/令和2年(あ)第343号
被告人は、飲食店で、被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ、同人と性交をしたとし準強姦の罪に問われ、第1審判決は、被害者を含む上記飲食店にいた8名の証人尋問及び被告人質問を実施した上で、被害者が抗拒不能であったことは認めたものの、本件認識がなかった旨を述べる被告人の公判供述の信用性は否定できないから、被告人に本件認識があったことには合理的な疑いが残るとして、被告人に無罪の言渡しをしたことに対し、検察官が控訴し、控訴審判決は、訴訟記録及び第1審において取り調べた証拠に基づき、被告人は被害者が飲酒酩酊のため眠り込んでいる状態を直接見て、これに乗じて被害者と性交したから、本件認識があったことは明らかであり、第1審判決が、本件認識がなかった旨を述べる被告人の公判供述の信用性は否定できないとしたのは論理則、経験則に反し、同供述は、本件認識があったことに合理的な疑いを生じさせるものとはいえないとして、事実誤認により第1審判決を破棄し、被告人を有罪として懲役4年に処したため、被告人が上告した事案において、原審は、争点の核心部分について事実の取調べをしたということができ、その結果が第1審で取り調べた証拠以上に出なくとも、被告事件について判決をするのに熟していたといえるから、第1審が無罪とした公訴事実を認定して直ちに自ら有罪の判決をしても、刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとして、本件上告を棄却した事例。
2021.05.25
住民訴訟による違法確認請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571497/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 5月14日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第238号
徳島県の住民である被上告人(原告・控訴人)が、県知事Aが管弦楽団の演奏会への出席のために公用車を使用したことは違法であり、公用車の燃料費並びに同行した秘書及び運転手の人件費に相当する額につき、県はA知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するにもかかわらず、上告人(被告・被控訴人)はその行使を違法に怠っていると主張して、上告人を相手に、当該怠る事実が違法であることの確認を求めた住民訴訟で、原判決が被上告人の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、県を統轄して、これを代表し、また、その事務を管理し及びこれを執行する県知事であるA知事が、県の事務として開催された本件演奏会に出席したことは、公務に該当するものというべきであるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の請求を棄却した第1審判決は相当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2021.05.18
建設工事差止等仮処分命令申立事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25569325/広島地方裁判所 令和 3年 3月25日 決定 (第一審)/令和2年(ヨ)第78号
債権者らが、本件予定地上に産業廃棄物最終処分場を建設中の債務者に対し、本件処分場の建設、操業により、井戸水、水道水及び河川の水が有害物質によって汚染され、あるいは土砂災害を誘発するおそれがあるとして、人格権等(〔1〕水質汚染による浄水享受権、生命・身体・健康に対する侵害、農業者・漁業者らの生活権に対する侵害、農業者の水利権に対する侵害、〔2〕土砂災害による生命・身体・健康に対する侵害)に基づき、本件処分場の建設、使用、操業を差止めるとの仮処分命令を求めた事案において、債権者らの本件申立てのうち、本件4井戸関係債権者9名の申立ては理由があり、本件事案の性質に照らして同債権者らに担保を立てさせないで、これらを一部認容し、その余の債権者らの申立ては、却下した事例。
2021.05.18
憲法53条違憲国家賠償等請求事件
LEX/DB25569113/東京地方裁判所 令和 3年 3月24日 判決 (第一審)/平成30年(行ウ)第392号
衆議院及び参議院の各総議員の4分の1以上の議員が、平成29年6月22日、憲法53条後段及び国会法3条に基づき、連名で、各院の議長を経由して内閣にそれぞれ要求書を提出することにより、臨時会の召集の決定を要求し、P4前内閣総理大臣を首長とする内閣は、同日、上記の各要求書を受理したにもかかわらず、P4内閣が、臨時会の召集を決定したのは同年9月22日であり、現実に臨時会が召集されたのは同月28日であったが、衆議院は、同日、憲法7条の規定に基づき、解散されたところ、本件召集要求をした参議院議員の1人である原告が、P4内閣がした上記の臨時会の召集の決定又はP4内閣が少なくとも92日間にわたって本件召集要求に対応する臨時会の召集を決定しなかったことが憲法53条後段に違反するものであるとして、原告が、次に、参議院の総議員の4分の1以上の1人として、連名で、議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に、主位的には、内閣が、20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うことの、予備的には、原告が、20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの各確認を求めるとともに、本件不作為等により、臨時会の召集の決定を要求する権能だけではなく参議院議員として有する諸権能も長期間にわたり行使することができなかったという損害を受けたとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害の一部である1万円及び遅延損害金の支払を求めた事案で、原告は、機関訴訟(行政事件訴訟法6条)は、行政権内部又は議会内部の紛争に係る訴えに限定され、憲法上の国家機関相互の紛争は、同条が規定する機関訴訟の概念には当たらないと解すべきである旨主張し、これに沿う証拠もあるが、機関訴訟について、原告が上記に主張するとおりにその範囲を限定して解すべき法令上の根拠は見当たらず、また、機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができるところ(行政事件訴訟法42条)、我が国の法制上、国会議員と内閣との間の権限の行使に関する紛争について、訴えの提起を許す法令の規定は見当たらないから、本件確認訴訟部分は、いずれも不適法なものであるとして、本件確認訴訟部分をいずれも却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。
2021.05.18
金融商品取引法違反被告事件
LEX/DB25569083/横浜地方裁判所 令和 3年 3月12日 判決 (第一審)/令和1年(わ)第1118号
被告人A株式会社は、その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第一部に上場し、その平成27年3月期の連結業績予想につき、営業利益が9億円、経常利益が7億円、当期純利益が5億円である旨公表していたものであり、また被告人Dは、被告会社の実質的経営者としてその業務全般を統括していたものであり、そして、被告人Eは被告会社の代表取締役社長としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人D及び同Eは、被告会社の取締役であったFと共謀のうえ、被告会社の業務に関し、関東財務局長に対し、被告会社の平成26年4月1日から平成27年3月31日までの連結会計年度につき、営業利益が約4億9800万円、経常損失が約1800万円、当期純利益が約1億3500万円であったにもかかわらず、架空売上を計上するなどの方法により、営業利益を10億1200万円、経常利益を4億9600万円、当期純利益を4億8800万円と記載するなどした虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出し、もって重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出したとして、金融商品取引法違反の罪で、被告会社につき罰金1000万円、被告人Dにつき懲役2年6か月、被告人Eにつき懲役1年6か月を求刑された事案で、本件各取引に実態はなく、本件各取引に基づく売上等を売上高に含めることは許されないから、不動産売却益、貸付金利息、仲介手数料及び販売委託手数料を利益として計上することは認められず、被告会社は、架空売上を計上するなどの方法により虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出したといえるなどと認定し、被告人A株式会社を罰金1000万円に、被告人Dを懲役2年6か月に、被告人Eを懲役1年6か月に処し、被告人Dに対し4年間、被告人Eに対し3年間、それぞれその刑の執行を猶予した事例。
2021.05.11
手数料還付申立て却下決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571482/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 4月27日 決定 (許可抗告審)/令和2年(行フ)第2号
平成31年4月21日執行の新宿区議会議員選挙で、当選人とされたが、選挙人からの異議の申出を受けた新宿区選挙管理委員会から、引き続き3か月以上新宿区の区域内に住所を有する者という被選挙権の要件を満たしていないとして、当選を無効とする決定を受け、東京都選挙管理委員会に審査の申立てをしたところ、これを棄却するとの裁決を受け、本件の本案訴訟(東京高等裁判所令和2年(行ケ)第1号)は、抗告人が、東京都選挙管理委員会を相手に、本件裁決の取消し及び本件決定の取消しに加え、上記選挙で当選人とされたAの当選を無効とすることを求めた(本件裁決の取消しを求める請求を「請求1」、本件決定の取消しを求める請求を「請求2」、Aの当選無効を求める請求を「請求3」)。本件は、抗告人が、本案訴訟の訴え提起の手数料として、訴訟の目的の価額320万円に応じた2万1000円を納めたが、訴訟の目的の価額は正しくは160万円であり、これに応じた手数料の額は1万3000円であるとして、民事訴訟費用等に関する法律9条1項に基づき、8000円の還付を申し立てたところ、原審は、本案訴訟の目的の価額は、少なくとも、請求1及び2に係る160万円と請求3に係る160万円を合算した320万円になるとして、抗告人の申立てを却下したため、抗告人が許可抗告した事案において、請求1及び2と請求3とでは、訴えで主張する利益が共通であるということはできないと判示し、本案訴訟の目的の価額は、少なくとも、請求1及び2に係る160万円と請求3に係る160万円とを合算した320万円になり、これに応じて訴え提起の手数料の額を算出することとなるとして、抗告人の申立てを却下した原審の判断は是認できるとし、本件抗告を棄却した事例。
2021.05.11
 
LEX/DB25569269/東京地方裁判所 令和 3年 4月21日 判決 (第一審)
アメリカ合衆国のニューヨーク州において婚姻を挙行したとする原告らが、千代田区長に対し、「婚姻後の夫婦の氏」につき「夫の氏」と「妻の氏」のいずれにもレ点を付した婚姻の届書を提出して婚姻の届出をしたところ、民法750条及び戸籍法74条1号に違反していることを理由として不受理とする処分を受けたことから、被告(国)に対し、(1)主位的に、戸籍法13条等に基づき、戸籍への記載によって原告らが互いに相原告と婚姻関係にあるとの公証を受けることができる地位にあることの確認を求め、(2)予備的に、〔1〕憲法24条等に基づき、被告が作成する証明書(戸籍への記載以外の方法によるものと解される。)の交付によって原告らが互いに相原告と婚姻関係にあるとの公証を受けることができる地位にあることの確認を求めるとともに、〔2〕外国の方式に従って「夫婦が称する氏」を定めないまま婚姻した日本人夫婦について,婚姻関係を公証する規定を戸籍法に設けていない立法不作為は憲法24条に違反するなどと主張して、国家賠償法1条1項の規定に基づき,慰謝料各10万円の支払を求めた事案において、本件訴えのうち地位の確認に係る部分はいずれも不適法であるとして却下し、原告らのその余の請求を棄却した事例。
2021.05.06
損害賠償請求事件
LEX/DB25571480/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 4月26日 判決 (上告審)/令和1年(受)第1287号
乳幼児期に集団ツベルクリン反応検査又は集団予防接種を受けたことによりB型肝炎ウイルス(HBV)に感染して成人後にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し、鎮静化をみたものの、その後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症した件で、上告人(原告・被控訴人)らが、被上告人(被告・控訴人)に対し、HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことにより精神的・経済的損害等を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、原審は、被上告人には、上告人らに対する集団予防接種等の実施に当たり、HBV感染を未然に防止すべき義務を怠った過失があるとした上で、上告人らの損害賠償請求権は除斥期間の経過により消滅したとして、上告人らの請求を棄却したため、上告人らが上告した事案において、上告人らがHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については、HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく、HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるというべきであると判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、上告人らの損害額について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例(補足意見がある)。
2021.05.06
再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25571479/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 4月21日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第76号
亡死刑囚に対する死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件について、同人は死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、第1審判決が確定し、同人に対し、既に死刑が執行されたものであるが、申立人(再審請求人)が再審を請求したところ、原々決定は、弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められないとして再審請求が棄却されたため、申立人が即時抗告し、原決定は、原々決定が新証拠の立証命題と関連しない旧証拠の証明力に関する原々審弁護人の主張について明示的に判断を示していないことに誤りはなく、旧証拠の証明力に関する判断を原々決定が遺脱しているとの所論は理由がないとし、原々決定の判断を是認し、即時抗告を棄却したため、申立人(再審請求人)が特別抗告をした事案において、HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力は,確定判決が説示するとおり、鑑定資料のDNA量や状態の不良、更にはこれらの鑑定自体の特性等に基づいて評価されるべきものであって、MCT118型鑑定の証明力減殺が、HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえないから、それらの再評価を要することになるものではないとした上で、原々決定がこれらの鑑定の証明力を再評価しなかったことに誤りはない旨判示した原決定の判断は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.04.27
遺言有効確認請求事件
LEX/DB25571463/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 4月16日 判決 (上告審)/令和2年(受)第645号
上告人が、被上告人に対し、両名の母であるAを遺言者とする平成20年4月17日付け自筆証書(本件遺言書)による本件遺言が有効であることの確認を求め、原審が、本件訴えを却下したため、上告人が上告した事案で、前訴において、上告人は、被上告人に対し、被上告人がAの立替金債務を法定相続分の割合により相続したと主張し、その支払を求めて前件反訴を提起したが、上告人による立替払の事実が認められないとして請求を棄却する判決がされ、前件反訴によって利益を得ていないのであるから、本件訴えにおいて本件遺言が有効であることの確認がされたとしても、上告人が前件反訴の結果と矛盾する利益を得ることになるとはいえず、本件訴えの提起が信義則に反するとはいえないとし、これと異なる見解の下に、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻しを命じた事例。
2021.04.27
訴訟行為の排除を求める申立ての却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571470/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 4月14日 決定 (許可抗告審)/令和2年(許)第37号
相手方らを原告とし、抗告人を被告とする訴訟(本件訴訟)において、相手方らが、A弁護士及びO弁護士が抗告人の訴訟代理人として訴訟行為をすることは弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反すると主張して、A弁護士らの各訴訟行為の排除を求めた事案の上告審において、弁護士職務基本規程57条に違反する訴訟行為については、相手方である当事者は、同条違反を理由として、これに異議を述べ、裁判所に対しその行為の排除を求めることはできないというべきであり、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、本件申立てを却下した原々決定は、結論において是認することができるから、原々決定に対する抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2021.04.27
強盗殺人被告事件(干物店強盗殺人事件)
LEX/DB25571457/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 1月28日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第1270号
金銭に窮した被告人が、以前勤務していた干物店において、経営者の女性らを殺害して現金を強取しようと決意し、同女と従業員の男性の頸部等を刃物で突き刺すなどした上、業務用冷凍庫に入れ、扉の外にバリケードを設けて閉じ込め、両名を出血性ショックにより死亡させて殺害し、その際、店の売上金等を強取したという強盗殺人の事案で、第1審判決は死刑を言い渡し、原判決も控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず、当初から強盗殺人を計画した犯行であるとまでは認められないこと、犯行前は懲役前科がなかったことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、被告人を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は、やむを得ないものとして、上告審も死刑判決を維持した事例。
2021.04.20
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 解説記事が掲載されました
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年6月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25568979/札幌地方裁判所 令和 3年 3月17日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第267号
原告らが、同性の者同士の婚姻を認めていない民法739条1項及び戸籍法74条1号の本件規定は、憲法13条、14条1項及び24条に反するにもかかわらず、国が必要な立法措置を講じていないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張し、慰謝料各100万円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、本件規定が、異性愛者に対しては婚姻という制度を利用する機会を提供しているにもかかわらず、同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは、立法府が広範な立法裁量を有することを前提としても、その裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず、本件区別取扱いは、その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ないとし、本件規定は憲法14条1項に違反すると認めたものの、国家賠償法1条1項の適用の観点からみた場合には、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反することが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたって改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2021.04.20
保険金請求控訴事件
LEX/DB25568960/広島高等裁判所 令和 3年 3月12日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第322号
控訴人(原告)が、被控訴人(被告。損害保険会社)との間で、控訴人名義の自動車(本件車両)につき自動車保険契約を締結し、また、被控訴人を保険者とする団体保険契約の被保険者とされていたところ、これらの保険期間中に、本件車両を運転中に起こした交通事故により受傷したなどと主張して、被控訴人に対し、本件保険契約に基づく人身傷害等の保険金(5680万7604円)及び本件団体保険契約の傷害補償特約等に基づく保険金(1641万円)の合計7321万7604円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求めたところ、原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、これを不服として控訴人が控訴した事案で、本件事故の原因となった控訴人の行為については、ほとんど故意に等しい注意欠如の状態にあり、重大な過失に当たるとし、これと同旨の原判決は相当であり、控訴人の本件控訴を棄却した事例。