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2021.04.20
投稿記事削除請求事件
LEX/DB25568902/東京地方裁判所 令和 3年 3月 5日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第3663号
開業医である原告が、被告法人が管理運営するウェブサイトにおいて第三者が投稿した記事により、原告の名誉が毀損されたと主張して、被告に対し、人格権に基づく妨害排除請求として、同記事の削除を求めた事案で、一般の閲覧者の注意と読み方からすると、本件記事による原告の社会的評価の低下が全くないとはいえないが、その社会的評価の低下の程度は受忍限度の範囲内であるというべきであり、原告の名誉が毀損されたということはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2021.04.13
子の監護に関する処分(監護者指定)審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和3年5月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571436/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月29日 決定 (許可抗告審)/令和2年(許)第14号
A(本件子)の祖母である相手方が、本件子の実母である抗告人Y1及び養親である抗告人Y2を相手方として、家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てたところ、原審は、本件子の監護をすべき者を相手方と指定すべきものとしたため、抗告人らが許可抗告した事案において、相手方は、事実上本件子を監護してきた者であるが、本件子の父母ではないから、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないとし、相手方の本件申立ては、不適法であるとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原決定を破棄し、原々審判を取消し、相手方の本件申立てを却下した事例。
2021.04.13
子の監護に関する処分(面会交流)申立て却下審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571437/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月29日 決定 (許可抗告審)/令和2年(許)第4号
A(本件子)の祖父母である相手方らが、本件子の父である抗告人を相手方として、家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として相手方らと本件子との面会及びその他の交流について定める審判を申し立てたところ、原審は、相手方らの本件申立てを不適法として却下した原々審判を取消し、本件を原々審に差し戻しの判断をしたため、抗告人が許可抗告した事案において、相手方らは、相手方らの子であるBによる本件子の監護を補助してきた者であるが、本件子の父母ではないから、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として相手方らと本件子との面会交流について定める審判を申し立てることはできず、相手方らの本件申立ては不適法であるとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、子の監護に関する処分の申立てを却下する審判に対して即時抗告をすることができるのは「子の父母及び子の監護者」(家事事件手続法156条4号)であるところ、相手方らが本件子の「父母」又は「監護者」のいずれにも当たらないとして、原々審判に対する相手方らの抗告は不適法であるとして、却下した事例。
2021.04.13
損害賠償等請求事件
LEX/DB25568977/東京地方裁判所 令和 3年 3月16日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第1522号
放送事業を営む法人である原告が、被告がその管理運営するウェブサイトにおいて原告及びその職員が放火事件に関与したことをうかがわせる記事を投稿するとともに、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)において、上記記事を引用する記事を投稿したことにより、原告の名誉が毀損されたと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償として691万8880円及びこれに対する遅延損害金の支払並びに名誉回復処分として謝罪文書の交付を求めた事案で、被告が本件記事及び本件ツイートを投稿した行為は、原告の名誉を毀損するものとして原告に対する不法行為を構成するとし、賠償金の請求については請求額を減額した内容で認容し、謝罪文書の交付請求については、被告による本件投稿行為によって生じた原告の損害を回復するために、金銭賠償に加えて、謝罪文書の交付まで命ずることが適当であるとは認められないとして、請求を棄却した事例。
2021.04.06
退職金等請求事件
LEX/DB25571413/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月25日 判決 (上告審)/令和2年(受)第753号 等
被上告人が、母Aの死亡に関し、上告人機構に対し上記共済契約に基づく退職金の、上告人JPP基金規約に基づく遺族給付金の、出版厚生年金基金の権利義務を承継した上告人出版基金に対し出版厚生年金基金の規約に基づく遺族一時金の各支払を求め、中小企業退職金共済法、JPP基金規約及び出版基金規約において、本件退職金等の最先順位の受給権者はいずれも「配偶者」と定められており、被上告人は、Aとその民法上の配偶者であるCとが事実上の離婚状態にあったため、Cは本件退職金等の支給を受けるべき配偶者に該当せず、被上告人が次順位の受給権者として受給権を有すると主張している事案の上告審で、民法上の配偶者は、事実上の離婚状態にある場合には、中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらず、遺族給付金及び遺族一時金についても、民法上の配偶者は、その婚姻関係が事実上の離婚状態にある場合には、その支給を受けるべき配偶者に当たらないものというべきであるとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.04.06
損害賠償請求事件
LEX/DB25568901/熊本地方裁判所 令和 3年 3月 3日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第319号
熊本県少年保護育成条例違反の被疑事実により熊本県警察に逮捕・勾留された原告(当時19歳)が、その逮捕・勾留中に熊本県警察の警察官が取調べの際に黙秘権を告知しなかったほか、黙秘権侵害となる発言をし、弁護人との接見内容に関する質問を行ったこと等により原告の黙秘権及び弁護人との接見交通権が侵害された旨主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金220万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告は、C巡査部長の違法な取調べによって、その黙秘権及び弁護人との接見交通権を侵害されて精神的苦痛を受けたものと認め、原告の請求を一部認容した事例。
2021.03.30
検証物提示命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571393/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月18日 決定 (許可抗告審)/令和2年(許)第10号
相手方は、本件メールの送信者に対する損害賠償請求訴訟を提起する予定であり、本件送信者の氏名、住所等(送信者情報)が記録され、又は記載された電磁的記録媒体又は文書(本件記録媒体等)についてあらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると主張し、訴えの提起前における証拠保全として、本件記録媒体等につき検証の申出をするとともに抗告人に対する検証物提示命令の申立てをしたところ、原審は、電気通信事業に従事する者には民事訴訟法197条1項2号が類推適用されるとした上で、本件申立てを認容すべきものとしたたため、抗告人が抗告した事案で、抗告人は、本件メールの送信者情報について黙秘の義務を免除されていないことが明らかであるから、本件記録媒体等を検証の目的として提示する義務を負わないというべきであり、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消し、本件申立てを却下した事例。
2021.03.30
要指導医薬品指定差止請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年6月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571387/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月18日 判決 (上告審)/令和1年(行ツ)第179号
店舗以外の場所にいる者に対する郵便その他の方法による医薬品の販売をインターネットを通じて行う事業者が、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律36条の6第1項及び3項(本件各規定)は、憲法22条1項に違反するなどと主張して、国を相手に、要指導医薬品として指定された製剤の一部につき、上記方法による医薬品の販売をすることができる権利ないし地位を有することの確認等を求めた事案の上告審において、本件各規定による規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度に照らすと、本件各規定による規制に必要性と合理性があるとした判断が、立法府の合理的裁量の範囲を超えるものであるということはできず、本件各規定が憲法22条1項に違反しないとして、本件上告を棄却した事例。
2021.03.23
法人税更正処分取消請求事件
LEX/DB25571360/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月11日 判決 (上告審)/令和1年(行ヒ)第333号
内国法人である被上告人(原告・被控訴人)は、平成24年4月1日から同25年3月31日までの連結事業年度において、外国子会社から資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当(本件配当)を受け、このうち、資本剰余金を原資とする部分(本件資本配当)は法人税法24条1項3号所定の資本の払戻しに、利益剰余金を原資とする部分(本件利益配当)は同法23条1項1号所定の剰余金の配当にそれぞれ該当するとして、本件連結事業年度の法人税の連結確定申告(本件申告)をした。これに対し、所轄税務署長は、本件配当の全額が上記の資本の払戻しに該当するとして、本件連結事業年度の法人税の更正処分をしたことにより、被上告人が、上告人(被告・控訴人。国)を相手に、本件更正処分のうち本件申告に係る申告額を超える部分の取消しを求めた事案で、1審判決は、被上告人の請求を認容したため、上告人が控訴し、控訴審判決も被上告人の請求を認容すべきものとして控訴を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件資本配当の額を超える直前払戻等対応資本金額等に基づいて、本件配当におけるみなし配当金額及び有価証券の譲渡に係る対価の額を計算することは誤りであるといわざるを得ず、被上告人の本件連結事業年度における連結所得金額が本件申告の額を超え、翌期へ繰り越す連結欠損金額が本件申告の額を下回るものと認めることはできないから、本件更正処分のうち本件申告に係る申告額を超える部分は違法であるとし、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.03.23
生活保護基準引下げ処分取消等請求事件(甲事件、乙事件)
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25568796/大阪地方裁判所 令和 3年 2月22日 判決 (第一審)/平成26年(行ウ)第288号 等
大阪府内に居住して生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けている原告ら(ただし、原告X1、原告X2及び原告X3については、その夫が生活扶助の支給を受けている。)が、生活保護法の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保護の基準」(保護基準)の数次の改定により、所轄の福祉事務所長らからそれぞれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定(本件各決定)を受けたため、保護基準の上記改定は憲法25条、生活保護法8条等に違反する違憲、違法なものであるとして、〔1〕原告X1,原告X2及び原告X3を除く原告らにおいて、被告ら(ただし、被告国を除く。)を相手に、本件各決定の取消しを求めるとともに、〔2〕被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めた事案で、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があり、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるから、本件改定は、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法であるとして、原告らのうち原告X1、原告X2及び原告X3を除く者の本件各決定の取消請求については認容し、原告らのその余の請求(国家賠償請求)については棄却した事例。
2021.03.16
不当利得返還請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571330/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 3月 2日 判決 (上告審)/令和2年(受)第763号
被上告人(原告・被控訴人。栃木県)が、上告人(被告・控訴人。国)から、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にいう補助金を交付された後に、上告人から、補助金により取得した財産の処分価格に係る補助金相当額である金員の納付命令を受け、同額の金員を上告人に支払ったが、本件納付命令は無効であるから、上告人は、本件返納により法律上の原因なく金員を利得し、被上告人は同額の損失を被ったと主張して、上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、金員の返還及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、第1審は被上告人の請求を認容したため、上告人が控訴し、控訴審は第1審判決は相当であるとして本件控訴を棄却したため、上告人が上告した事案で、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による本件交付決定条件に基づいてされたものとして適法であるとし、控訴審判決を破棄し、被上告人の請求は理由がないから、第1審判決を取消し、同請求を棄却した事例(補足意見がある)。
2021.03.16
不正競争防止法違反被告事件
LEX/DB25571332/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月 1日 決定 (上告審)/平成30年(あ)第10号
電子書籍に施されているDRM(デジタル著作権管理)技術による影像のキャプチャ防止措置を、専用ビューア以外でも視聴することを可能にするプログラムにより無効化したことが、不正競争防止法2条1項10号(平成27年法律第54号による改正前のもの)にいう「技術的制限手段の効果を妨げる」という要件に該当するとし、原判決は第1審判決を是認したため、被告人が上告した事案で、本件ビューア以外で影像の視聴ができないよう影像の視聴等を制限するプログラムGの機能により得られる効果は技術的制限手段の効果に当たり、これを無効化するF3は、技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴を可能とする機能を有するプログラムに当たると認め、F3を提供した被告人両名の行為は、不正競争防止法2条1項10号の不正競争に当たり、同法21条2項4号に該当するとし、同号の罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は結論において正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.03.09
固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571309/最高裁判所大法廷 令和 3年 2月24日 判決 (上告審)/令和1年(行ツ)第222号
那覇市の管理する都市公園内に儒教の祖である孔子等を祀った久米至聖廟(本件施設)を設置することを参加人に許可した上で、その敷地の公園使用料の全額を免除(本件免除)した当時の市長の行為は、憲法の定める政教分離原則に違反し、無効であり、第1審被告が参加人に対して平成26年4月1日から同年7月24日までの間の公園使用料181万7063円を請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるとして、市の住民である第1審原告が、第1審被告を相手に、地方自治法242条の2第1項3号に基づき上記怠る事実の違法確認を求めた住民訴訟の上告審において、本件免除は、市と宗教との関わり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に該当するとして、参加人の上告を棄却することとし、原判決中第1審原告敗訴部分は破棄し、第1審原告の請求を認容した第1審判決は正当であるから、上記部分につき、参加人の控訴を棄却し、同控訴の提起後にされた第1審被告の控訴は、二重上訴であって不適法であるとして、却下した事例(反対意見がある)。
2021.03.09
新株発行差止等仮処分命令申立事件、独立当事者参加申出事件
LEX/DB25568614/名古屋地方裁判所一宮支部 令和 2年12月24日 決定 (第一審)/令和2年(ヨ)第12号 等
債務者・会社が、当該取締役会決議に基づいて、本件新株予約権及び本件新株予約権付社債を第三者割当ての方法により発行したことについて、債務者の株主である債権者が、被保全権利(差止事由)につき、本件新株予約権等の行使に応じてする債務者の新株発行を仮に差し止めるよう求めたのに対し、本件新株予約権等の引受人である各参加人が、それぞれ債権者の本件各申立手続の結果によりその権利が害されると主張して独立当事者参加の申出をし、参加人らの債務者に対する本件新株予約権等に基づき新株予約権を行使して、債務者の株式の発行を受ける地位にあることを被保全権利として、〔1〕債権者及び債務者との間で、本件新株予約権等の新株予約権を行使して債務者から普通株式の発行を受けることができる地位にあることを仮に定めること、〔2〕債務者は、参加人らが本件新株予約権等の新株予約権を行使した場合に、参加人らに対して、それぞれ普通株式を発行しなければならないこと、〔3〕債権者の本件各申立ての却下を求める旨の各申立てをした事案で、新株予約権発行の無効原因については、取引の安全、法的安定性の見地から限定的に解すべきであることからすれば、本件有価証券届出書において、払込金額の算定理由の記載や市場流動性の制約に関する記載がないことを理由に公示義務違反に当たるとして、新株予約権発行の無効原因があると解することはできず、また、本件新株予約権等の発行について、有利発行や不公正発行をその無効原因と解することはできないなどから、債権者の申立てはいずれも理由がないとして却下し、参加人らの本件各申立ては、いずれも保全の必要性があるとは認められないとして却下した事例。
2021.03.02
受信料請求控訴事件
LEX/DB25568718/東京高等裁判所 令和 3年 2月10日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第1675号
第1審被告会社は、テレビの受信設備のアンテナを第1審原告の放送を受信できないものに変更して、放送受信契約を解約したと主張して、受信料の支払を停止し、解約事由がないと主張する第1審原告が、未払の受信料の支払を求めたところ、原判決は第1審原告の請求を全部認容したため、第1審被告が原判決の全部を不服として控訴した事案において、第1審原告の請求は理由があるから認容すべきであり、これと同旨の原判決は正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2021.03.02
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25571255/大阪高等裁判所 令和 2年12月17日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第559号
控訴人A1(原告)が、被控訴人医院で、妊娠していた5胎の一部を減胎する手術を受けたが、その後人工妊娠中絶手術を受け、上記胎児らを1児も出産するに至らなかったことにつき、控訴人らが、本件医師が注意義務に反し手術の際に太い穿刺針を使い多数回の穿刺を行い、感染症対策を怠るなどしたことによるものであるなどと主張して、損害賠償を求めたところ、請求が棄却されたため、控訴人らが控訴した事案において、本件医師は、母体に対する侵襲への配慮を欠き、穿刺針の選択に注意を払わず、控訴人A1の腹部を穿刺した点で、母体に対する危険防止のために経験上必要とされる最善の注意を尽くす義務に違反したものとして、本件医師の上記行為は、控訴人A1に対する不法行為を構成し、被控訴人は、控訴人A1に対し、民法715条1項による使用者責任を負うとともに、診療契約上の債務不履行責任を負うとして、原判決を変更し、請求を一部認容した事例。
2021.02.24
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25568621/東京高等裁判所 令和 3年 1月21日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第2298号
故Gは、被控訴人会社の従業員であり、平成23年当時、被控訴人会社のH支社に勤務していたところ、同年8月6日に脳幹部出血である本件脳出血を発症して同月7日に死亡した。控訴人Aは故Gの妻、控訴人B及び同Cはその間の子であり、被控訴人E、同D及び同Fは、故Gの死亡当時、いずれも被控訴人会社の取締役であった。本件は、控訴人らが、故Gが本件脳出血を発症して死亡したのは被控訴人会社から長時間にわたる時間外労働を強いられたことによるものであって、被控訴人会社には債務不履行(安全配慮義務違反)が、被控訴人E、同D及び同Fの悪意又は重過失による任務懈怠がそれぞれあったと主張して、被控訴人会社に対しては債務不履行を理由とする損害賠償請求権に基づき、被控訴人E、同D及び同Fに対しては会社法429条1項に基づき、総損害額合計7695万7326円から控訴人らの自認する損益相殺をした後の残額(控訴人Aにつき2634万9030円、控訴人B及び同Cにつき各1923万9331円)及びこれらに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、故Gの死亡は被控訴人会社での長時間の時間外労働によるものであったと認定して被控訴人会社の債務不履行責任を肯定する一方、その余の被控訴人らについては、H支社の工場長であり、故Gの直属の上司でもあった被控訴人Fにつき軽過失があったにとどまり、いずれも悪意又は重過失があったとは認められないと判断して会社法429条1項所定の取締役の責任を否定した上、弁護士費用以外の総損害額について、故Gの身体的素因等を理由とする過失相殺の類推適用により7割を減じた額を控訴人らが法定相続分割合により相続し、損益相殺(遺族基礎年金及び遺族厚生年金の合計1120万7066円)をした後の残額に弁護士費用を加算した額(控訴人Aにつき495万円、控訴人B及び同Cにつき各509万9201円)及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で控訴人らの被控訴人会社に対する請求を一部認容し、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人らが本件控訴をした事案で、原判決中、被控訴人会社及び同Fに関する部分は不当であるとし、原判決の認容額を増額した内容で変更し、原判決中、控訴人らの被控訴人E及び同Dに対する請求をいずれも棄却した部分は正当であり、控訴人らのその余の控訴を棄却した事例。
2021.02.24
損害賠償等請求控訴事件
LEX/DB25568129/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 2年12月16日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第39号
被控訴人法人が運営する病院で医療保護入院中に身体的拘束を受けた亡Dが死亡したことについて、亡Dの相続人である控訴人らが、被控訴人に対し、被控訴人病院に勤務する医師らが、違法に身体的拘束をしたうえ、それによる肺動脈血栓塞栓症の発症を回避するための注意義務に違反した過失により亡Dが死亡したとして、使用者責任に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審が控訴人らの請求を棄却したところ、控訴人らが控訴した事案で、精神科病院の入院患者に対する行動制限にあたっては、精神保健指定医の裁量に委ねられているとしても、身体的拘束は当該患者の生命の保護などに重点を置いたものであるから、この選択にあたっては特に慎重な配慮を要するが、本件担当医師の判断においては早きに失し、精神保健指定医に認められた裁量を逸脱し、違法であるというべきであり、亡Dは、本件身体的拘束により急性肺血栓塞栓症を発症して死亡したものと認められるから、被控訴人は控訴人らに対して使用者責任に基づく損害賠償義務を負うものというべきであるところ、これと異なる原判決は失当であるとして、原判決を変更した事例。
2021.02.16
わいせつ電磁的記録記録媒体陳列、公然わいせつ被告事件
LEX/DB25571273/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 2月 1日 決定 (上告審)/平成30年(あ)第1381号
インターネットのサイトに投稿されたわいせつ画像データを、サーバに記憶、蔵置させて視聴者が閲覧可能な状態を設定し、又は、映像配信システムを利用して視聴者に配信して閲覧させたとして、同サイトの管理者らに投稿者との共謀によるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪や公然わいせつ罪が成立するか否かが争われた事案の上告審において、電磁的記録を保管した記録媒体がサイバー犯罪に関する条約の締約国に所在し、同記録を開示する正当な権限を有する者の合法的かつ任意の同意がある場合に、国際捜査共助によることなく同記録媒体へのリモートアクセス及び同記録の複写を行うことは許されると解すべきであるとした上で、被告人両名について、サイト会社代表者及び本件各投稿者らとの共謀を認め、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪及び公然わいせつ罪の各共同正犯が成立するとした原判断は正当であるとし、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2021.02.16
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25568416/名古屋高等裁判所 令和 3年 1月13日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第664号
控訴人が、被控訴人(国)に対し、入国管理局の職員が、難民不認定処分に対する取消訴訟等の意向を示していた控訴人を集団送還の対象者に選定した上、本件異議棄却決定の後、上記訴訟等の提起を妨害するために、上記決定の告知をその40日後まであえて遅らせ、同告知後に弁護士との連絡ができないようにしたほか、帰国後に訴訟ができるとの虚偽の説明をするなどして、本件送還をしたことにより、控訴人の裁判を受ける権利を侵害したなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金の支払を求め、原審は、入管法上、在留資格未取得外国人について難民不認定処分に対する異議申立てについての決定があるまで送還を停止する旨の規定以外に送還を停止すべき旨の規定がなく、被退去強制者については裁判所による執行停止決定がない限り送還が法令上停止されるものでなく、これらに当たる場合でなければ入管職員に送還を停止すべき義務が生ずるものではないから、本件異議棄却決定がされ執行停止決定を得ていない控訴人を送還対象者に選定し、強制送還を中止しなかったことにつき、国賠法1条1項の適用上違法があるとはいえないとしつつ、本件異議棄却決定の告知に際して、控訴人が送還された後も難民不認定処分に対する取消訴訟が可能であるかのような誤った教示をしたことは、同項の適用上違法であるとして、控訴人の請求につき合計8万8000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却したところ、控訴人がその敗訴部分を不服として控訴した事案で、控訴人の請求は、44万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却すべきところ、これと異なる原判決は一部不当であるとし、原判決を変更した事例。