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2020.03.03
原爆症認定申請却下処分取消等請求事件
LEX/DB25570733/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 2月25日 判決 (上告審)/平成30年(行ヒ)第215号
長崎市に投下された原子爆弾の被爆者である被上告人(原告・控訴人)が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく認定(原爆症認定)の申請をしたところ、厚生労働大臣からこれを却下する旨の処分(本件処分)を受けたため、上告人(被告・被控訴人)国を相手に、その取消し等を求め、被上告人が申請疾病である慢性甲状腺炎に対して投薬治療等を伴わない経過観察を受けていることをもって要医療性が認められるか否かが争点となった事案の上告審で、本件処分に係る申請において申請疾病とされた被上告人の慢性甲状腺炎につき、要医療性が認められるとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中、被上告人に関する部分を破棄し、被上告人による本件処分の取消請求を棄却した第1審判決は正当であり、上記の部分につき被上告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2020.03.03
原爆症認定申請却下処分取消等請求事件 
LEX/DB25570734/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 2月25日 判決 (上告審)/平成30年(行ヒ)第191号
広島市に投下された原子爆弾の被爆者である被上告人(第1審原告)が、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく認定(原爆症認定)の申請をしたところ、厚生労働大臣からこれを却下する旨の処分(本件処分)を受けたため、上告人(第1審被告)国を相手に、その取消し等を求め、被上告人が申請疾病である放射線白内障に対してカリーユニ点眼液の処方を伴う経過観察を受けていることをもって要医療性が認められるか否かが争点となった事案の上告審で、本件処分に係る申請において申請疾病とされた被上告人の放射線白内障につき、要医療性が認められるとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、同部分につき第1審判決を取消し、同部分の被上告人の請求を棄却した事例。
2020.03.03
傷害致死被告事件
LEX/DB25564820/東京地方裁判所立川支部 令和 2年 2月 7日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第1077号
被害児の父親である被告人が、自宅で、被害児(当時:生後約1か月)に対し、その頭部を揺さぶるなどの暴行を加え、蘇生後脳症の後遺症を伴う急性硬膜下血腫、脳浮腫、左眼網膜出血、多発性肋骨骨折等の傷害を負わせ、前記傷害に起因する肺炎により死亡させたとして傷害致死の罪で懲役8年を求刑された事案において、本件各傷害を個別にみれば、いずれも揺さぶる暴行のみにより生じたものであると断定することはできず、いずれの傷害についても、別の機序による医学的に合理的な説明が可能であり、被告人が被害児に揺さぶる暴行を加えた結果、本件各傷害を負ったと認めるには合理的な疑いが残ると言わざるを得ないとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2020.02.25
傷害被告事件 
LEX/DB25564778/大阪高等裁判所 令和 2年 2月 6日 判決 (控訴審)/平成30年(う)第387号
母親である被告人が、その実子である被害児(犯行当時:生後約1か月半)に対し、その身体を揺さぶるなどの方法により、同人の頭部に衝撃を与える暴行を加え、回復見込みのない遷延性意識障害を伴う急性硬膜下血腫等の傷害を負わせたとし、原審が、被告人を懲役3年、執行猶予5年を言い渡したため、被告人が控訴した事案において、訴訟記録及び原審で取り調べた証拠に基づく調査の結果から考察しても、また、当審における事実取調べの結果を併せた検討結果から考察してみても、公訴事実にいうとおりの、被害児の身体を揺さぶるなどの方法によりその頭部に衝撃を与える暴行が加えられた事実を認定することはできず、その暴行を被告人が加えたとの事実を認定することはできないのに、これらを認めて有罪の結論を示した原判決の事実認定は、論理則、経験則等に照らし不合理なものといわざるを得ず、是認することができないとし、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。
2020.02.25
免責条項等使用差止請求事件(モバゲー規約一部差し止め判決) 
LEX/DB25564780/さいたま地方裁判所 令和 2年 2月 5日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第1642号
適格消費者団体である原告が、被告(ゲームのポータルサイト運営会社)が不特定かつ多数の消費者との間で本件ポータルサイトに関するサービス提供契約を締結するに当たり、消費者契約法8条1項に規定する消費者契約の条項に該当する条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を現に行い、又は行うおそれがあると主張して、被告に対し、消費者契約法12条3項に基づき、契約の申込み又は承諾の意思表示の停止を求めるとともに、これらの行為の停止又は予防に必要な措置として、上記意思表示を行うための事務を行わないことを被告の従業員らに指示するよう求めた事案において、被告は、不特定かつ多数の消費者との間で、免責条項に当たる本件ポータルサイト会員規約7条3項を含む「消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれ」(消費者契約法12条3項)があると認め、原告の請求を一部認容した事例。
2020.02.25
解雇無効確認等請求事件 
LEX/DB25564694/佐賀地方裁判所武雄支部 令和 1年11月 8日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第32号
新興宗教の信者であった原告が、同じ新興宗教の信者である被告らに対し、被告らが原告にした排斥の処分は無効であると主張して、その排斥が無効であることの確認を求めるとともに、そのような無効な排斥をしたことなどは不法行為に該当すると主張して、共同不法行為に基づき、各自慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案で、不法行為の成否は、実質において法令の適用による終局的解決に適しないといえ、本件訴えは、いずれも、法律上の争訟に該当せず、不適法であるから、却下した事例。
2020.02.18
公務執行妨害被告事件
LEX/DB25570684/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 1月31日 判決 (上告審)/令和1年(あ)第1987号
公務執行妨害被告事件の上告審の事案で、原審の公判審理に関与していない裁判官が原審の判決書に判決をした裁判官として署名押印したことが認められ、原審の公判審理に関与していない裁判官が原判決に関与したこととなり、これは判決に影響を及ぼすべき法令の違反であって、かつ、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから、当事者双方の意見を聴いた上、刑事訴訟法411条1号、413条本文により、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻すこととした。なお、上告裁判所が原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻す旨の判決をするに当たり、刑事訴訟法408条の趣旨に照らし、必ずしも口頭弁論を経ることを要しないというべきであるとした事例。
2020.02.18
(不動産業者敗訴確定:仲介手数料、上限は半月分)
LEX/DB25580356/東京高等裁判所 令和 2年 1月14日 判決 (上告審)/令和1年(ツ)第120号
被上告人(原告・控訴人)が、本件建物の賃貸借契約の締結を媒介した上告人(被告・被控訴人)が、媒介の依頼を受けるに当たって被上告人の承諾を得ていないにもかかわらず、宅地建物取引業法46条1項及び「宅地建物取引業法の規定により宅地建物取引業者が受けることのできる報酬の額」(昭和45年10月23日建設省告示第1552号。本件賃貸借契約が締結された当時のものは、平成16年2月18日国土交通省告示第100号による改正後のもの)の規制を超える額の媒介報酬を被上告人から受領したものであり、上記規制を超える額の受領は宅建業法46条2項に違反し無効であると主張して、上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、上告人が受領した媒介報酬のうち上記規制を超える11万8125円の支払等を求め、第1審は、被上告人は上告人との間の本件賃貸借契約のための媒介契約が成立した際に上告人から媒介報酬額の承諾を得ていたと認められ、宅建業法46条2項に違反しないとして被上告人の請求を全部棄却したため、被上告人がこれを不服として控訴し、控訴審は、第1審判決を取消し、宅建業法46条1項、2項及び報酬告示所定の最高額を超える契約部分は無効であり、本件において同条項の最高額を超える部分である11万8125円の媒介報酬の支払については無効であるから、上告人は、被上告人に対し、不当利得に基づく利得金返還を命じたため、上告人が上告した事案で、控訴審の認定判断は、正当として是認することができるとして、上告を棄却した事例。
2020.02.18
損害賠償請求事件
LEX/DB25564685/東京地方裁判所 令和 1年12月20日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第6203号
原告が、株式会社S社に対し、原告が運営するインターネット上の通販サイトにおけるクレジットカードによる決済の機能を利用して商品を購入することができるシステム全体について、セキュリティ対策を含めたシステムの運用、保守管理を委託し、その一環としてハートブリードというセキュリティ上の脆弱性への対策を依頼したにもかかわらず、S社が対策を講じなかったことから、原告の顧客のクレジットカード情報が漏えいし、原告において顧客への対応のための費用等の支出を余儀なくされ、これにより損害を被ったとして、S社を吸収合併した被告に対し、委託契約の債務不履行に基づく損害賠償金の支払を求めた事案において、本件契約に基づき委託される業務にシステム全体のセキュリティ対策を講じることが含まれていたことを根拠付けるものということはできないし、S社における本件契約の担当者が本件情報漏えいの原因について考察しS社の担当者のメールアドレスから送信されたメールも、自らがS社の業務として本件システム全体のセキュリティ対策をしていた旨を明確に示したものということはできないし、そのメールアドレスがS社のものであるからといって、担当者の対応がS社の業務として提供された業務であったことを示すことにはならないとし、請求を棄却した事例。
2020.02.18
労災保険遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
LEX/DB25564683/福岡高等裁判所 令和 1年12月 5日 判決 (控訴審)/令和1年(行コ)第28号
被控訴人(原告)が、その夫であり養殖業者に対する魚薬の営業販売等の業務に従事していたDが心室細動を原因とする急性心不全を発症し、これにより死亡したのは、取引先からのストレスにさらされながらの長時間の過重労働や海上での過酷な消毒作業に従事したことによるものであるとして、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付等の請求をしたところ、処分行政庁がいずれも不支給とする決定をしたため、同決定は違法である旨主張して、控訴人(被告、国)に対し、同不支給決定の取消しを求め、原審は、被控訴人の請求を認めて、処分行政庁による不支給決定をいずれも取り消したため、控訴人が、これを不服として控訴した事案において、亡Dの業務と急性心不全の発症との間に相当因果関係があると認めることはできないとして、控訴人の控訴を棄却した事例。
2020.02.12
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25570677/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 1月27日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第242号
被告人は、昭和57年から同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(本件各写真)を素材とし、画像編集ソフトを用いて、コンピュータグラフィックスである画像データ3点(本件各CG)を作成した上、不特定又は多数の者に提供する目的で、本件各CGを含むファイルをハードディスクに記憶、蔵置させているところ、本件各写真は、実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり、本件各CGは、本件各写真に表現された児童の姿態を描写したとした事案の上告審において、被告人が本件各CGを含むファイルを記憶、蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり、本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した控訴審の判断は正当であり、児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪が成立するためには、同条4項に掲げる行為の目的で、同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り、当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しないというべきであるとした事例(補足意見がある)。
2020.02.12
婚姻費用分担審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」家族法分野 7月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570671/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 1月23日 決定 (許可抗告審)/平成31年(許)第1号
妻である抗告人は、夫である相手方に対し、婚姻費用分担調停の申立てをし、離婚の調停が成立したが、同調停において、財産分与に関する合意はされず、いわゆる清算条項も定められなかった。上記婚姻費用分担調停事件は、離婚調停成立の日と同日、不成立により終了したため、上記申立ての時に婚姻費用分担審判の申立てがあったものとみなされて、審判に移行し、原決定は、抗告人の相手方に対する婚姻費用分担請求権は消滅したから、離婚時までの婚姻費用の分担を求める本件申立ては不適法であるとして、これを却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないとし、本件申立てを却下した原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2020.02.12
行政措置要求判定取消請求事件(第1事件)、国家賠償請求事件(第2事件) 
(性同一性障害訴訟:トイレ使用制限は「違法」)
LEX/DB25580421/東京地方裁判所 令和 1年12月12日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第667号 等
トランスジェンダーで国家公務員の原告が、その所属する経済産業省で女性用トイレの使用に関する制限を設けないこと等を要求事項として国家公務員法86条の規定に基づいて人事院に対してした勤務条件に関する行政措置の各要求に関し、本件各措置要求がいずれも認められない旨の判定を受けたことから、本件判定がいずれも違法である旨を主張して、被告国に対し、本件判定に係る処分の取消しを求めた事案(第1事件)、また、上記の原告が、経済産業省において女性用トイレの使用についての制限を受けていること等に関し、経済産業省の職員らがその職務上尽くすべき注意義務を怠ったものであり、これによって損害を被った旨を主張して、国家賠償法1条1項の規定に基づく損害賠償請求として、被告国に対し、慰謝料等の支払を求めた事案(第2事件)において、第1事件に係る本件判定のうち原告が女性トイレを使用するためには性同一性障害者である旨を女性職員に告知して理解を求める必要があるとの経済産業省当局による条件を撤廃し、原告に職場の女性トイレを自由に使用させることとの要求を認めないとした部分を取り消す内容で一部認容し、第2事件に係る慰謝料等の支払を一部認容した事例。
2020.02.04
詐欺、窃盗、詐欺未遂被告事件
LEX/DB25570664/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 1月23日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第2073号
被告人が知人女性から預かった鞄の中にあった財布内からクレジットカードを窃取した上、さらに同人になりすまして同カードを使用して商品を詐取し、あるいは詐取しようとしたが未遂に終わったとして起訴され、クレジット機能付きポイントカードを詐取し、さらにこれを使用して財布等を詐取した犯行については、被告人が犯人である可能性が高いとは言えるものの、被告人以外の人物が各犯行を行ったことを否定できるほどの事情は認められないとして、無罪を言い渡し、その余の犯行については犯人と認め、第1審判決は懲役2年6月、執行猶予4年を言い渡したため、双方が控訴し、控訴審判決は、一切事実の取調べをしていないが、直ちに判決をすることができるとして自判し、被告人を本件公訴事実についても有罪として、懲役2年6月に処したため、双方が上告した事案で、控訴審判決は、本件公訴事実の存在を確定せず無罪を言い渡した第1審判決を事実誤認で破棄し、およそ何らの事実の取調べもしないまま本件公訴事実を認定して有罪の自判をしたのであって、控訴審判決は、最高裁判例(昭和31年7月18日最高裁大法廷判決、昭和31年9月26日最高裁大法廷判決)と相反する判断をしたものであるとして、控訴審判決を破棄し、高等裁判所に差し戻した事例。
2020.02.04
投稿記事削除請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25580335/東京地方裁判所 令和 1年10月11日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第66号 等
原告が、ツイッターに投稿された原告の過去の逮捕歴に係る本件各投稿記事により原告の前科等を公表されない利益や社会生活の平穏を害されない利益が侵害されていると主張して、同ウェブサイトを管理運営する被告に対し、前記各利益に係る人格権及び人格的利益に基づく妨害排除請求権に基づき、本件各投稿記事の削除を求めた事案において、本件各投稿記事がグーグルにおける検索結果では表示されず、ツイッターにおける検索結果においてのみ表示されるものであって、本件各投稿記事が伝達される範囲は一定程度限られたものであることを考慮したとしても、本件逮捕に関する事実を公表されない原告の法的利益は、本件各投稿記事により本件逮捕に関する事実の公表を継続する法的利益ないし必要性に優越するものと認められるとして、原告の請求を認容した事例。
2020.02.04
親子関係不存在確認事件
「新・判例解説Watch」国際私法分野 2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25580357/名古屋家庭裁判所豊橋支部 平成30年10月 2日 判決 (第一審)/平成30年(家ホ)第18号
原告が被告に対し、原告の母である原告法定代理人母は、被告と婚姻中に原告を懐胎したが、懐胎当時、母と被告が性交渉をもった可能性がなく、原告は被告の子ではないとして、原告と被告との間の親子関係が存在しないことの確認を求めた事案において、準拠法についての検討で、親子関係の成立という法律関係のうち嫡出性取得の問題を一個の独立した法律関係として規定している法の適用に関する通則法28条、29条の構造上、親子関係の成立が問題になる場合には、まず嫡出親子関係の成立についての準拠法により嫡出親子関係が成立するかどうかを見た上、そこで嫡出親子関係が否定された場合には、嫡出とされなかった子について嫡出以外の親子関係の成立の準拠法を別途見いだし、その準拠法を適用して親子関係の成立を判断すべきであるとし、本件の母(本国法:ルーマニア法)及び被告(本国法:日本法)は、日本で婚姻し、婚姻生活を送り、離婚していることから、離婚当時、婚姻の効力を規律した法律は日本法であるとし、法の適用に関する法律41条により、日本法が適用されることとなり、被告の本国法も日本法であることから、嫡出親子関係に係る準拠法は日本法となるとした上で、母と被告とは、母が原告を懐胎した頃には、事実上離婚状態にあり、また、科学的証拠により原告と交際相手eとの間に親子関係が存在することが認められるところ、翻って、原告と被告との間に親子関係が存在しないことが明らかであるから、原告は民法772条の推定を受けるものではなく、かつ、原告は、被告の子ではないことが明らかであるとし、原告と被告との間には、親子関係は存在しないとして、原告の請求を認容した事例。
2020.01.28
投稿記事削除仮処分命令申立事件
LEX/DB25580250/大阪地方裁判所堺支部 令和 1年12月27日 決定 (第一審)/令和1年(ヨ)第66号
債権者(歯科医院)が、債務者の管理・運営するウェブサイト上に投稿された記事により債権者の人格権(名誉権)が侵害されていると主張して、債務者に対し、人格権(名誉権)に基づき、上記記事の削除を求める仮処分命令の申立てをした事案において、本件記事の削除請求を基礎付ける被保全権利の存在について疎明があるとはいえないとして、債権者の申立てを却下した事例。
2020.01.28
相続税返還請求控訴事件
LEX/DB25564618/大阪高等裁判所 令和 1年10月10日 判決 (控訴審)/平成31年(行コ)第25号
平成18年11月8日に死亡したCを相続し、その相続税に係る納税申告(平成20年12月19日)において相続財産である株式の価額を同申告当時の財産評価基本通達に従って評価して納税した控訴人(原告)らが、被控訴人(被告。国)に対し、同申告に係る納税額(控訴人Aにつき3億1872万7000円、控訴人Bにつき848万4200円)と同申告後に改正された同通達の関係部分に従って株式の価額を評価して算出した納税額との差額を被控訴人が保持することには法律上の原因がない旨主張して、不当利得返還請求権に基づき、控訴人Aにおいては6692万0300円及び法定利息の支払を、控訴人Bにおいては106万2800円及び法定利息の支払をそれぞれ求め、これと選択的に、国税庁長官には、上記相続に係る相続税の申告納付期限である平成19年9月10日までに上記通達を改正すべき職務上の注意義務があり、伊丹税務署長には、平成24年3月2日(後述する判決により改正前の通達の合理性を否定する地方裁判所の判断がされた日)までに上記相続税につき減額更正処分をすべき職務上の注意義務があったにもかかわらず、これらの注意義務に違反したことにより控訴人らは前同額の損害を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、前同額の金員及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めたところ、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、これを不服とする控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの本件各請求はいずれも理由がないとし、本件控訴を棄却した事例。
2020.01.21
地位確認等請求事件
LEX/DB25564433/東京地方裁判所 令和 1年 8月 7日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第23597号
被告の入社試験を受け、採用内定を得た原告が、その後、被告から内定を取り消されたが、本件内定取消しは、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないようなものであって、取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができない事実に基づきなされたものであるから無効であり、被告との労働契約は成立しているとして、被告に対する労働契約上の地位確認及び賃金の支払を求めた事案で、「本件採用内定が被告の錯誤により無効といえるか」について、本件全証拠に照らしても、原告が被告に対し、その経歴や能力を詐称したこと(原告による欺罔行為)を認定することはできず、また被告において、これらの事情が本件採用内定の判断の基礎とした事情となったことや、これらの事情に関する認識が真実に反すること等についての主張及び的確な立証はなされていないから、被告の主張を採用することはできないとする一方、遅くとも、試用期間満了後の時点では、原告の雇用状況は一応安定していたと認められ、原告の被告における就労意思は失われたと評価するのが相当であるところ、本件訴えのうち、原告の被告に対する労働契約上の地位確認を求める部分(請求1)については、もはや訴えの利益がなく、却下を免れないが、本件採用内定通知に定められた労働契約の始期(平成29年1月1日)から同年7月9日までの賃金(バックペイ)請求については、使用者たる被告の責めに帰すべき事由により、原告が労務の提供ができなかった期間に当たり、原告はその間の賃金請求権を失わないから(民法536条2項)、その限度において理由があるというべきであるとして、原告の確認請求を却下し、賃金請求を一部認容した事例。
2020.01.21
損害賠償請求事件
LEX/DB25563894/名古屋地方裁判所 令和 1年 7月30日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第3483号
他人名義の偽造旅券を行使して日本に入国したスリランカ国籍の原告が、退去強制令書の発付処分を受けた後、難民不認定処分を受け、その後前記処分に対する異議申立てをし、同申立てが棄却された場合は難民不認定処分に対して取消訴訟等をする意向を示していたにもかかわらず、入国警備官らが、前記異議申立棄却決定の後、原告による難民不認定処分に対する取消訴訟等の提起を妨害するために、同棄却決定の告知をあえて遅らせて原告を収容し、同棄却決定の告知後は弁護士との連絡もできなくしたほか、原告に対してスリランカ帰国後に訴訟ができるとの虚偽の説明をするなどして、原告を強制送還したという一連の違法な公権力行使により、原告の裁判を受ける権利が違法に侵害されたとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負っているわけではなく、裁判所における裁判を受ける権利が保障されていることを直接の根拠として、退去強制を受ける立場にあった原告について、本件不認定処分に対する取消訴訟を提起するまでの合理的期間、強制送還されない具体的権利が保障されていたと認めることはできないが、原告がスリランカに送還されてしまえば訴えの利益が失われることになるにもかかわらず、入国警備官らは、原告がスリランカに送還されてもなお前記訴訟を提起することが可能であるかのような誤った教示を行っており、これは、公務員たる入国警備官が職務上通常尽くすべき義務を尽くさなかったことにほかならないというべきであるから、国家賠償法上違法であると認めるのが相当であるところ、原告においては、裁判を受ける権利そのものが侵害されたのではなく、その前提となる適切な教示を受ける権利が侵害されていると認められ、原告の請求は、それによる慰謝料を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。