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2019.06.18
殺人被告事件
LEX/DB25570289/東京高等裁判所 平成31年 4月24日 判決 (控訴審)/平成30年(う)第1882号
被告人は、かつて覚せい剤を使用したことにより30代頃から覚せい剤精神病にり患し、自分の頭の中に年配の男性がいるとの妄想や、同男性から自殺や殺人を命ぜられる幻聴を生じ、入退院を繰り返していた状況の中、被告人の自宅で、同男性から「人を殺せ。」と命ぜられる妄想・幻聴を何度も体験し、同妄想・幻聴によって、隣室に、家事手伝いに来ていた被害者(当時73歳)を殺害しようと決意し、被害者が1人であることを確認した後、ビニール手袋を着用し、ビニール袋で両足を覆った上、毛染め用ガウンを着て、ペティナイフを持ち、隣室に赴き、被害者に対し、本件ナイフで、その左前胸部と前頸部を突き刺し、その頸部と左手首を複数回切り付け、被害者を前頸部と左前胸部の刺突に基づく右上甲状腺動脈の完全切断と左鎖骨下静脈の損傷による失血により死亡させて殺害した事件で、原判決は、本件犯行当時、覚せい剤精神病の影響により、心神耗弱の状態にあった、という事実認定をし、懲役8年6月に処したため、弁護人が、原判決には事実の誤認があるとして控訴した事案において、被告人に、妄想・幻聴以外に犯行の原因が全くない事案であるところ、原判決は、論理則、経験則等に反して、被告人の精神障害の本件犯行への影響の強さについては過少に評価し、行動制御能力については、犯行発覚防止行為を二重の意味で過大に評価しているといわざるを得ず、被告人の精神障害が本件犯行に及ぼした影響が圧倒的なもので、被告人が、本件犯行当時、行動制御能力が失われ、心神喪失であったことの合理的疑いは残り、原判決には事実誤認があるとして、原判決を破棄し、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2019.06.18
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570190/大津地方裁判所 平成31年 2月19日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第121号
中学2年生で自殺した亡Xの両親である原告らが、亡Xの自殺の原因は、同学年の生徒であった被告少年らから受けたいじめにあるとして、被告少年らの親又はその配偶者である被告父母らに対し、被告少年らに責任能力がなかった場合には民法714条1項に基づくなどして、連帯して、損害賠償の支払をそれぞれ求め、選択的に、被告少年らに対し、責任能力があった場合には、民法709条に基づき、被告父母らと連帯して、損害賠償金の支払等を求めた事案において、被告A1及び被告B1の亡Xに対する度重なる本件加害行為は、亡Xに対し、希死念慮を抱かせるに足りる程度の孤立感・無価値感を形成させ、さらに、被告少年らとの関係からの離脱が困難であるとの無力感・絶望感を形成させるに十分なものであったなどとして、同被告らの加害行為と亡Xの自殺との間に相当因果関係を認定して、同被告らに対する原告らの請求をそれぞれ一部認容した事例。
2019.06.11
道路交通法違反被告事件 
LEX/DB25570266/最高裁判所第一小法廷 令和 1年 6月 3日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第67号
被告人は、過失により、信号機の表示する赤色の灯火信号を看過してこれに従わないで、停止線を越えて普通乗用自動車を運転して進行したとして、第1審判決は、公訴事実どおりの犯罪事実を認定し、被告人を罰金9000円に処した。被告人が、第1審判決に対して訴訟手続の法令違反、量刑不当を理由に控訴し、職権で、本件公訴の提起は、道路交通法130条各号に掲げる場合でないのに、同条に掲記された手続が行われることなくされたもので無効であるから、第1審裁判所は不法に公訴を受理したものであるとして、刑訴法397条1項、378条2号により第1審判決を破棄し、同法338条4号により本件公訴を棄却したため、検察官が上告した事案において、道路交通法130条2号に当たると解するのは信義に反するなどとして、同号該当性を否定した原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、法令違反及び量刑不当を主張する被告人の控訴は理由がないから、本件控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2019.06.11
株主総会決議不存在確認等請求事件(アドバネクス株主総会決議不存在確認請求事件)
「新・判例解説Watch」商法分野 7月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25562719/東京地方裁判所 平成31年 3月 8日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第27434号
被告の株主である原告らが、平成30年6月に開催された第70期定時株主総会(本件総会)において、被告提案の原告X1、Y2、G、H、D、E及びFを取締役に選任する旨の議案(本件会社提案)が可決し、Iが議長と称して行った原告X1、D、E及びFに代えてA、B及びCを取締役に選任するとの決議(本件決議)には重大な瑕疵があるから不存在であるとして、主位的に原告X1、D、E及びFが被告の取締役の地位を有することの確認及び本件決議の不存在確認を求めるとともに、予備的に本件決議に決議の方法が法令若しくは定款に違反し又は著しく不公正という会社法831条1項1号の取消事由があるとして本決決議の取消を求めた事案で、原告らの主位的請求についてはいずれも棄却し、予備的請求については、本件決議で、不存在であるとはいえないものの、取消事由があるといえ、本件会社提案については可決したとはいえないとし、本件総会におけるA、B及びCを取締役に選任するとの決議を取り消した事例。
2019.06.11
国家賠償請求事件
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 6月7日解説記事が掲載されました
LEX/DB25562664/秋田地方裁判所 平成31年 3月 1日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第140号
受刑者として秋田刑務所に収容されていた原告が、服役中、秋田刑務所長から、〔1〕原告代理人のO弁護士宛の信書の発信許否の判断を長期間留保されるなどしたこと、〔2〕O弁護士から原告宛の信書について内容の検査が行われたこと、〔3〕O弁護士に対する書類の宅下願いを不許可とされたことが違法であると主張して、国家賠償法1条に基づき,被告(国)に対し、慰謝料300万円の支払等を求めた事案において、原告の請求を損害賠償金5万円の支払限度で一部認容した事例。
2019.06.04
(刑事確定記録閲覧請求不許可処分準抗告事件)
LEX/DB25562806/東京地方裁判所 平成31年 4月23日 決定 (第一審)/平成29年(む)第83309号
逮捕監禁、爆発物取締罰則違反、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件の刑事確定訴訟記録について閲覧請求をしたところ、保管検察官がした閲覧不許可処分に対し、申立人が準抗告の申立てをした事案において、本件準抗告は、第3回公判前整理手続調書2頁13行目から3頁1行目までに関する閲覧不許可処分を取消し、検察官は、本件閲覧不許可処分を取り消した部分を、申立人に閲覧させるよう命じた事例。
2019.06.04
配転命令無効による地位確認等請求事件
LEX/DB25562769/津地方裁判所 平成31年 4月12日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第273号
原告は、被告会社(レンタカー会社)との間で、反復継続して労働契約を更新してきており、被告会社のD店に勤務してきたが、雇止めがされたことから、雇止めが合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとして、〔1〕労働者の地位確認及びそれに伴う賃金の支払を求めるとともに、〔2〕被告会社には、社会保険の加入手続を取っていなかった不法行為責任があるとして、それに基づく損害の支払、〔3〕未払割増賃金の支払並びに〔4〕付加金の支払を求める訴訟を提起したところ、控訴審において、〔1〕を認容し、〔2〕ないし〔4〕を一部認容する判決(〔2〕については,以上に加え,控訴審における拡張請求を一部認容する判決)がなされ,同判決は,平成29年6月3日確定した。被告会社は、原告に対し、同月26日付けで就業場所をC店とする旨の配転命令(本件配転命令)を出したが、原告は、本件配転命令が無効であると主張して、被告会社に対し、C店において勤労する労働契約上の義務がないことの確認を求めるとともに、被告会社が社会保険の加入手続をとっていなかったことが債務不履行に当たるとして、被告会社に対しては債務不履行に基づき、被告Bに対しては会社法429条1項に基づき、連帯して損害賠償金の支払等を求めた事案で、原告が、被告会社に対し、原告がC店において勤労する労働契約上の義務がないことの確認を求めること、損害賠償の金員の支払については、請求を認容したが、被告Bに対しては、請求を棄却した事例。
2019.05.28
否認請求事件の排除決定に対する即時抗告事件
「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 7月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25562764/福岡高等裁判所那覇支部 平成31年 4月10日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成31年(ラ)第15号
U企画(平成28年11月11日解散)を債務者とする破産手続開始申立事件(基本事件)において、同年10月5日にされた破産手続開始決定に伴って選任された破産管財人である相手方が、U企画から抗告人に対してされた本件金銭交付について、破産法に基づき否認する旨を主張して、抗告人に対し、同金員の返還を求める否認請求事件(本件事件)を申し立てたところ、弁護士Aらが抗告人の代理人として本件事件の手続に関与し、本件は、弁護士Aらは破産手続開始決定以前にU企画との間で委任契約を締結していたが、同契約に基づく委任事務と本件事件は同一の事件であるから、同弁護士らの代理行為は弁護士法25条1号に違反すると主張する相手方が、本件事件における弁護士Aらの代理行為の排除を求め、原審は、本件事件が弁護士Aらにおいて「相手方の(略)依頼を承諾した事件」(弁護士法25条1号)に該当するとして、弁護士Aらの代理行為を排除する旨の決定をしたため、抗告人が即時抗告した事案で、相手方の申立ては理由があり、これを認容した原決定は正当であるとして、本件抗告をら棄却した事例。
2019.05.28
虚偽診断書作成、同行使被告事件
LEX/DB25570215/京都地方裁判所 平成31年 3月19日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第421号
被告人は、病院のセンター所長を務める医師であり、指定暴力団総長Eの診療を担当していたものであるが、Eの病状等に関する高等検察庁検察官からの平成28年1月27日付け裁判執行関係事項照会書に対し、同月29日頃から同年2月5日までの間に、同病院で、真実はEがその当時に重篤な心室性不整脈であるなどの事実はなかったのに、『当院での現在の病状については、継続して起こる心室性の不整脈であり、その出現頻度は日によって異なるが概ね7,000回から10,000回は出現していると思われ、時間帯によって多く出現する時間帯が認められ、時には2連発までの出現が確認されている。』、『E氏の心室性不整脈は…かなり重篤な状況であるといえる。』、『特に最近については強い自覚症状を訴えて時間外に受診されることもあり』、『現在の症状から、今後、心室性不整脈が頻発し、症状が重篤化することが安易に予測できる。』などと虚偽の事実を記載して同年2月5日付け同検察官宛ての回答書を作成し、もって公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をした上、高等検察庁に郵送し、同月8日、同検察庁執行係職員に対し、同回答書を真正な内容のものであるように装い提出して行使したもので、本件では,被告人が作成・行使した本件回答書の記載内容が虚偽であるかどうか、すなわち、被告人が、客観的真実に反する診断内容を、自己の認識又は判断に反して記載したかどうかが争われた事案において、被告人が作成した本件回答書の記載内容が、医学的・客観的にみて真実に反するというには合理的な疑いが残り、本件回答書の記載内容が虚偽であると認めることはできないとして、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2019.05.28
損害賠償等請求控訴事件 
LEX/DB25562588/東京高等裁判所 平成31年 2月21日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第4535号
被控訴人が提供しているスマートフォンアプリ(本件ゲーム)のプレイヤーである控訴人ら及び、A、Bが、本件ゲーム内における本件表示は、ピックアップそうび以外のそうびが低い確率で排出される場合があることを示しているにもかかわらず、実際には、ピックアップそうびが極めて低い確率でしか提供されなかったとして、〔1〕控訴人ら及びAらは、被控訴人が、ピックアップそうび以外のそうびを低い確率で提供する義務があったにもかかわらず、これを怠ったとして、控訴人ら及びAらと被控訴人との間の本件ふくびき契約、並びに控訴人ら及びAらと被控訴人との間のジェム購入契約を債務不履行により解除した、〔2〕本件ふくびきに係る契約の締結に関する控訴人ら及びAらの意思表示は、ピックアップそうびの出現率に関し、要素の錯誤があるため無効である、〔3〕本件表示は詐欺であるから、控訴人ら及びAらは、詐欺を理由に、ジェムの購入に係る契約を取り消した、〔4〕本件表示は、消費者契約法上の「契約の目的となるものの質」について誤認させる表示であるから、控訴人ら及びAらは、同法4条1号により、ジェムの購入に係る契約を取消した、〔5〕本件表示は、景表法5条1号又は同条2号に反する違法な表示であるから、控訴人ら及びAらに対する不法行為を構成するとして、〔1〕については解除を原因とする原状回復請求権に基づき、〔2〕ないし〔4〕についてはいずれも不当利得返還請求権に基づき、〔5〕については不法行為を原因とする損害賠償請求権に基づき、被控訴人に対し、それぞれ、損害賠償金の支払を求め、原審は、控訴人ら及びAらの各請求をいずれも棄却した。そこで、これを不服とする控訴人らが本件控訴をした事案(Aらは、控訴をしなかったので、Aらの請求部分に関する原判決は確定した。)において、控訴人らの被控訴人に対する請求を棄却すべきであるところ、これと同旨の原判決は相当であるとし、本件各控訴を棄却した事例。
2019.05.21
間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25570221/最高裁判所第三小法廷 平成31年 4月26日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第13号
相手方(妻)が、抗告人(夫)に対し、両名の長男の引渡しを命ずる審判を債務名義として、間接強制の申立てをし、原決定は、抗告人に対し、長男を相手方に引き渡すよう命ずるとともに、これを履行しないときは1日につき1万円の割合による金員を相手方に支払うよう命ずる間接強制決定をしたため、抗告人が許可抗告した事案で、現時点において、長男の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長男の引渡しを実現するため合理的に必要と考えられる抗告人の行為は、具体的に想定することが困難というべきであり、本件審判を債務名義とする間接強制決定により、抗告人に対して金銭の支払を命じて心理的に圧迫することによって長男の引渡しを強制することは、過酷な執行として許されず、権利の濫用に当たるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消し、相手方の本件申立てを却下した事例(補足意見がある)。
2019.05.21
排除措置命令取消請求事件
LEX/DB25562718/東京地方裁判所 平成31年 3月28日 判決 (第一審)/平成29年(行ウ)第196号
農業協同組合が、自ら以外の者になすを出荷することを制限する条件を付けて、その組合員から、なすの販売を受託しており、これは不公正な取引方法に該当し、独占禁止法19条に違反するとして、同組合に対し、同法20条2項に基づき、公正取引委員会が、当該行為を行っていない旨を確認することなどを命ずる排除措置命令(本件命令)をしたところ、農業協同組合を吸収合併した原告が、本件命令には違反行為をした主体の認定に誤りがあり違法であるなどと主張して、被告(公正取引員会)に対し、本件命令の取消しを求めた事案において、上記行為が排除されたことを取引の相手方に確実に認識させる必要があると判断して本件命令をしたことが、合理性を欠き、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったとはいえないとし、本件命令は「特に必要があると認めるとき」(独禁法20条2項、7条2項本文)に当たるとして、原告の請求を棄却した事例。
2019.05.21
準強制性交等被告事件(性的犯罪 父親に無罪)
LEX/DB25562770/名古屋地方裁判所岡崎支部 平成31年 3月26日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第549号 等
被告人は、同居の実子であるA(当時19歳)が、かねてから被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活しており、抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて、Aと性交しようと考え、会議室で、同人と性交し、もって人の抗拒不能に乗じて性交をした(平成29年11月7日付け起訴状記載の公訴事実)、及び、被告人は、同居の実子であるA(当時19歳)が、かねてから被告人による暴力や性的虐待等により被告人に抵抗できない精神状態で生活しており、抗拒不能の状態に陥っていることに乗じて、Aと性交しようと考え、ホテルで、同人と性交し、もって人の抗拒不能に乗じて性交をした(平成29年10月11日付け起訴状記載の公訴事実(但し,同年11月7日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの))事案において、Aが本件各性交当時に抗拒不能の状態にあったと認定することはできず、本件各公訴事実について、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪を言い渡した事例。
2019.05.14
不当利得返還請求事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 6月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25562586/宇都宮地方裁判所 平成31年 3月 7日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第403号
地方公共団体である原告が,被告(国)から補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にいう補助金等を交付された後に、被告から当該補助金相当額である1億9659万0956円の納付を命じられ(本件納付命令)、同金員を被告に支払った(本件返納)ところ、本件納付命令は無効であるから、被告は本件返納により法律上の原因なく1億9659万0956円を利得し、原告は同額の損失を被ったものであると主張して、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき1億9659万0956円の返還の支払等を求めた事案において、本件返納は、本件納付命令を根拠にするものと認められず、返還合意を根拠にするものとも認められないから、法律上の原因がないものと認められるとして、原告の請求を全て認容した事例。
2019.05.14
未払賃金等、地位確認等請求事件
LEX/DB25570206/最高裁判所第一小法廷 平成31年 4月25日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1889号
被上告人(貨物自動車運送等を業とする株式会社)に雇用され、全日本建設交運一般労働組合関西支部(建交労組)に所属していた上告人が、被上告人に対し、労働協約により減額して支払うものとされていた賃金につき,当該減額分の賃金(平成25年8月から同26年11月までの支給分のもの)及びこれに対する遅延損害金の支払等を求めたところ、原審は、上告人の本件各未払賃金に係る請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、被上告人と建交労組との間でされた本件合意により上告人の賃金債権が放棄されたというためには、本件合意の効果が上告人に帰属することを基礎付ける事情を要するところ、本件においては、この点について何ら主張立証はなく、建交労組が上告人を代理して具体的に発生した賃金債権を放棄する旨の本件合意をしたなど、本件合意の効果が上告人に帰属することを基礎付ける事情はうかがわれないため、本件合意によって上告人の本件各未払賃金に係る債権が放棄されたものということはできないとし、原判決中、本件各未払賃金に係る請求及びこれに対する遅延損害金の請求に関する部分を破棄し、当該賃金の請求に関する部分に係る第1審判決を取り消し、上告人の請求のうち、本件各未払賃金の元本221万2720円を請求する部分を認容した。また、上告人の請求のうち、本件各未払賃金に対する遅延損害金を請求する部分については、その遅延損害金の起算日について更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻しを命じ、上告人のその余の上告を棄却した事例。
2019.05.07
強制わいせつ致傷、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(千葉県)違反、建造物侵入、傷害被告事件
LEX/DB25570196/最高裁判所第二小法廷 平成31年 4月19日 判決 (上告審)/平成30年(あ)第1333号
平成28年法律第54号による改正前の刑訴法157条の3、157条の4の各規定が憲法37条1項、2項前段、82条1項に違反しないとし、本件上告を棄却した事例。
2019.05.07
損害賠償請求事件(夫婦別姓訴訟 請求棄却)
LEX/DB25562555/東京地方裁判所 平成31年 3月25日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第217号
原告らが、戸籍上の氏が民法上の氏とは別個に存在することを前提に、現行の戸籍法において、日本人同士の婚姻により配偶者の氏を民法上の氏として称することとした場合に、婚姻前の氏を戸籍法上の氏として称することを認める制度が設けられていないことについて、そのことが、遅くとも、離婚後も離婚の際に称していた氏を称することを認める制度が戸籍法に設けられた昭和51年の段階、又は、日本人が外国人との婚姻の際に自己の氏を配偶者の称している氏に変更することを認める制度や、日本人が外国人との離婚の際に自己の氏を当該変更の際に称していた氏に変更することを認める制度が戸籍法に設けられた昭和59年の段階において、憲法13条、14条1項及び24条に違反する状態となっていたのであるから、法律の規定が憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合に該当し、本件旧氏続称制度を設ける立法措置を執らないという国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるところ、原告らにおいて本件立法不作為により精神的苦痛を被った旨を主張して、被告(国)に対し、損害賠償として、原告ら各自に対し、それぞれ55万円(慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)の支払等を求めた事案で、本件旧氏続称制度の不存在が憲法に違反しないなどとして、原告らの請求を棄却した事例。
2019.04.23
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25562529/広島高等裁判所 平成31年 3月28日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第203号
弁護士である控訴人(原告)が、広島拘置所に勾留されていた被告人の弁護人として接見をした際、本件拘置所の職員の行為により控訴人の接見交通権が侵害されたと主張し、本件拘置所を設置・運営する被控訴人(被告・国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等144万円の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、被控訴人は、本件拘置所処遇部処遇部門の上席統括矯正処遇官(第二担当)看守長が、控訴人に対し音声の再生の中断を求めたことによって、控訴人が被った損害を賠償すべき責任を負うとして、原判決を変更し、控訴人の請求につき、被控訴人に対し22万円の支払を求める限度で一部認容した事例。
2019.04.23
損害賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」財産法分野 6月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25506542/東京地方裁判所 平成31年 3月22日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第4826号
知的障害者dが、被告の福祉型障害児入所施設を出て行方不明となり死亡するに至ったのは、被告の本件施設の利用契約上の債務不履行(入所利用者に対する安全配慮義務違反)又は被告自身若しくは被告の職員の過失によるものであると主張して、亡dの両親である原告らが、被告(社会福祉法人)に対し、債務不履行又は不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、包括的慰謝料の支払等を求めた事案で、自閉症で重度の知的障害者であるdにおいても、一般就労を前提とした平均賃金を得る蓋然性それ自体はあったものとして、その逸失利益算定の基礎となる収入としては、福祉的就労を前提とした賃金や最低賃金によるのではなく、一般就労を前提とする平均賃金によるのが相当であるとしたうえで、逸失利益を算定し、原告らの請求を一部認容した事例。
2019.04.23
窃盗被告事件 
LEX/DB25562495/千葉地方裁判所 平成31年 3月19日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第1545号
窃盗罪等により執行猶予付判決を受けていた被告人が、その猶予期間中に再度、窃盗した事件(カフェで店長管理のポーチ1個(販売価格200円)に及んだ万引き)で、実刑か再度の執行猶予かという量刑が争点となった事案において、被告人は、万引き自体に快感を覚えているわけではなく、相応の動機、目的で万引きを繰り返しているものと考えられ、食料品でもなく、換金価値もない本件ポーチを万引きしたという本件犯行の動機、目的について、被告人はよく分からない旨を供述するが、被告人の心情に照らせば、本件ポーチを欲しいと思ったものの、少しでも出費を減らして家計を助けたいという歪んだ動機、目的があったと考えるのがもっとも自然であるとし、被告人の行為責任が一定程度軽減されることに加え、諸事情についても酌むべき点が多々認められることも考慮し、懲役1年、保護観察付き執行猶予5年を言い渡した事例。