「LEX/DBインターネット」の「新着判例」コーナー
から、実務・研究上重要と思われる「注目の判例」を
ピックアップしてご紹介します。

その他の最新収録判例は、「LEX/DBインターネット」
ログイン後のデータベース選択画面にあります
「新着判例」コーナーでご確認いただけます。

「LEX/DBインターネット」の詳細は、こちらからご確認いただけます。

2019.02.05
文書提出命令申立てについてした決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
LEX/DB25449935/最高裁判所第三小法廷 平成31年 1月22日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第7号
抗告人が、大阪府警察の違法な捜査により傷害事件の被疑者として逮捕されたなどとして、相手方に対し国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた訴訟で、相手方が所持する本件傷害事件の捜査に関する報告書等の各写し(本件文書1、本件文書2)、並びに上記の逮捕に係る逮捕状請求書、逮捕状請求の疎明資料及び逮捕状の各写し(本件文書3)について、民訴法220条1号ないし3号に基づき、文書提出命令の申立てをした事件で、本件傷害事件の捜査は大阪府警察が担当し、抗告人は、平成27年1月に本件傷害事件の被疑者として逮捕された。その後、抗告人は、本件傷害事件について起訴され、有罪判決を受け、同判決は平成29年12月に確定した。本件各文書も、その元となる各文書(本件各原本)も、本件傷害事件の公判に提出されなかったため、原審は、本件文書1については、民訴法220条1号所定の「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき」に、本件文書2及び本件文書3については、同条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に、それぞれ該当するとした上で、本件申立てを却下したため、抗告人が抗告した事案で、本件各原本及びその写しである本件各文書は、本件傷害事件の捜査に関して作成された書類であり,公判に提出されなかったものであるところ、本件各文書は、本件傷害事件の捜査を担当した大阪府警察を置く相手方が所持し、これらについて本件申立てがされているのであるから、本件各原本を大阪地方検察庁の検察官が保管しているとしても、引用文書又は法律関係文書に該当するものとされている本件各文書の提出を拒否した相手方の判断が、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるときは、裁判所は、その提出を命ずることができることになると判示し、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2019.01.29
執行判決請求事件
LEX/DB25449919/最高裁判所第二小法廷 平成31年 1月18日 判決 (上告審)/平成29年(受)第2177号
上告人らが、被上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニア州の裁判所の判決について、民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求める訴えを起こしたところ、原審は、上告人らの請求を棄却したため、これに対し、上告人が上告した事案で、外国判決に係る訴訟手続において、当該外国判決の内容を了知させることが可能であったにもかかわらず、実際には訴訟当事者にこれが了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより、不服申立ての機会が与えられないまま当該外国判決が確定した場合、その訴訟手続は、我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものとして、民訴法118条3号にいう公の秩序に反するということができると判示し、本件外国判決の内容を被上告人に了知させることが可能であったことがうかがわれる事情の下で、被上告人がその内容を了知し又は了知する機会が実質的に与えられることにより不服申立ての機会を与えられていたか否かについて検討することなく、その訴訟手続が民訴法118条3号にいう公の秩序に反するとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2019.01.29
建築確認取消請求事件
LEX/DB25561910/東京地方裁判所 平成30年12月21日 判決 (第一審)/平成30年(行ウ)第75号
建築基準法77条の21第1項の指定確認検査機関である被告は,有限会社T社(本件会社)に対し、〔1〕平成28年8月10日付けで,新築しようとする本件建築計画について、同法6条の2第1項に基づく確認の処分(建築確認処分)をし、〔2〕平成29年2月20日付けで、本件建築計画について、同項に基づく確認の処分(本件変更処分)をした。本件は、本件建物の近隣の住戸に居住し、又はこれを所有若しくは共有する原告らが、本件建物の敷地となるべき本件土地が建築基準法43条及び東京都建築安全条例10条の3が規定する敷地等と道路との関係を満たしておらず、上記の法令の規定に違反しているから、本件変更処分は違法にされたものであるなどとして、本件変更処分の取消しを求めた事案で、本件変更処分は、本件建築計画が建築基準関係規定である建築基準法43条の規定する要件を満たさない建築物の計画であることを看過してされた違法な処分であって、同法6条の2第1項の要件を満たさないから、その余の点について判断するまでもなく、取消しを免れないと判示し、原告らの請求を認容した事例。
2019.01.22
建築変更確認取消裁決取消請求控訴事件
LEX/DB25561882/東京高等裁判所 平成30年12月19日 判決 (控訴審)/平成30年(行コ)第199号
控訴人(原告)らが建築主となって建築する共同住宅(本件マンション)の建築計画について、指定確認検査機関である株式会社都市居住評価センター(原処分庁)が建築基準法6条1項前段に定める建築確認処分(原処分)をし、その後、同項後段に定める建築計画変更確認処分(本件処分)をし、被控訴人参加人を含む本件マンションの周辺住民(審査請求人ら)が本件処分の取消しを求めて審査請求をしたところ(26建審・請第1号審査請求事件)、東京都建築審査会(裁決行政庁)が、本件マンションの建築計画には条例違反の違法があるなどとして本件処分を取り消す旨の裁決(本件裁決)をしたことにより、控訴人らが本件裁決は違法であると主張して、被控訴人(被告。東京都)に対し、本件裁決の取消しを求め、原審が、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの請求は理由がないから棄却するのが相当であると判断し、本件控訴を棄却した事例。
2019.01.22
地位確認等請求事件
LEX/DB25561833/大阪地方裁判所 平成30年11月14日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第8491号
被告西日本電信電話株式会社との間で期間の定めのない雇用契約を締結し、60歳を迎えて同被告を定年退職となった原告らが、被告NTT西日本の就業規則には、定年退職前にグループ会社に転籍した場合には、定年退職後、当該グループ会社において再雇用される旨の定めがあるところ、同就業規則のうち、定年後再雇用の要件を定年前転籍の場合に限定する部分は、高齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項2号に違反し、合理性を欠くから労働契約法7条により無効であり、その結果、原告らにおいて、就業規則の定年後再雇用の規定が適用され、定年退職した後も雇用が継続されるものと期待することに合理的な理由が認められるから、被告M社ないし被告N社との間で、上記再雇用の規定に基づいて再雇用されたのと同様の労働契約が成立していると主張して、原告P1は被告M社に対し、原告P2及び原告P3は被告N社に対し、それぞれ〔1〕労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〔2〕労働契約に基づき、定年退職以後の月から満65歳に達した後の3月までの賃金及び遅延損害金の支払を求めるとともに、〔3〕被告NTT西日本が継続雇用制度その他の雇用確保措置を設けず、継続雇用を希望する原告らを自社又はグループ会社において雇用しなかったことは、故意に原告らの上記期待権を侵害するものであり不法行為に当たるとして、被告NTT西日本に対し、不法行為に基づく損害賠償請求金の支払を求めた事案で、原告らは、60歳の定年退職後、被告らのいずれかに雇用されるという法的保護に値する期待権を有しているとは認められず、また、被告NTT西日本について、原告らが主張するような同権利侵害に関する故意又は過失があるとも認められないとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2019.01.22
地位確認等、不当利得返還等反訴請求控訴事件
LEX/DB25561832/東京高等裁判所 平成30年11月 8日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第3244号
本件本訴は、一審被告会社に雇用されていた一審原告が、一審被告から懲戒解雇され退職金の支払を受けられなかったことについて、一審被告に対し、〔1〕主位的に、懲戒解雇は無効であると主張して、雇用契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金の支払を、〔2〕予備的に、仮に懲戒解雇が有効であるとしても、退職金を不支給とすることは許されないと主張して、雇用契約上の退職金規程に基づき、退職金の支払を求め、本件反訴は、一審被告が、一審原告は単身赴任手当等の各種手当を不正に受給し、入居資格を有していないにもかかわらず借上社宅に居住し続けていると主張して、一審原告に対し、不当利得に基づき、利得額等の支払を求めたところ、原審が、本件本訴の主位的請求については、懲戒解雇は有効であるとして棄却し、予備的請求については、決定退職金は、給付主体がKDDI企業年金基金であり一審被告ではないとして棄却し、一時金(加算金)は、一部支払を認容し、その余を棄却し、本件反訴については、不当利得返還請求は認容し、明渡請求等は、既に明渡し済みであるとし、また賃料相当損害金等の一部を認容したため、双方が控訴した事案で、一審原告は、3年以上の期間において、一審原告と一審被告が雇用関係を継続していく前提となる信頼関係を回復困難な程に毀損する背信行為を複数回にわたり行い、著しく信義に反する行為に当たるといわざるを得ないから、一時金を全額不支給とすることに合理性があるなどとして、一部支払を命じた原判決部分を取り消し、一審原告の控訴を棄却した事例。
2019.01.16
損害賠償請求事件
LEX/DB25449874/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月21日 判決 (差戻上告審)/平成29年(受)第1793号
郵便事業株式会社に対して弁護士法23条の2第2項に基づき、本件照会(23条照会)をした弁護士会である被上告人(一審原告)が、上記会社を吸収合併した上告人(一審被告)に対し、本件照会についての報告義務があることの確認を求めた差戻上告審の事案において、23条照会をした弁護士会が、その相手方に対し、当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であるとして、本件確認請求に係る訴えは却下すべきであり、原審の判断のうち本件確認請求の一部を認容した部分には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、また、原審の判断のうち本件確認請求の一部を棄却した部分にも、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決の全部を破棄し、本件報告義務確認請求に係る訴えを却下した事例。
2019.01.16
請求異議事件
LEX/DB25449875/最高裁判所第三小法廷 平成30年12月18日 決定 (上告審)/平成29年(オ)第1725号
債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合、当該申立てに係る差押えによる時効中断の効力が民法154条により初めから生じなかったことになると解するのは相当でなく、このような法令解釈に関する意見(本件意見)は、最高裁平成8年(オ)第2422号同11年9月9日第一小法廷判決・裁判集民事193号685頁(平成11年判決)と相反するから、民訴規則203条所定の事由があるとして、高等裁判所が、民訴法324条に基づき、本件を最高裁判所に移送する旨の本件決定をしたが、平成11年判決は、担保不動産競売の申立てをした債権者が当該競売の手続において請求債権の一部又は全部の満足を得ることなく当該申立てを取り下げた場合について判断したものであって、債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合についての本件意見とは前提を異にしているというべきであるとし、本件意見は平成11年判決と相反するものではなく、本件決定に係る民訴規則203条所定の事由はないと認められるとして、本件を最高裁判所に移送する旨の本件決定を取り消した事例。
2019.01.16
仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25561705/大阪高等裁判所 平成30年11月28日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(ラ)第656号
抗告人(債権者)は、インターネット上の口コミサイトにされた書込によって信用を毀損されたとして、その書込をした者にインターネット接続サービスを提供した相手方(債務者)に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項の発信者情報開示請求権を被保全権利として、同書込の発信者情報の開示を命ずる仮処分命令を申立て、相手方は、本件では、被保全権利が存在せず、また、保全の必要性もないと主張して,本件申立ての却下を求めたところ、原審は、本件申立てについて、被保全権利の存在を認めることはできないとして、これを却下する決定(原決定)をしたため、抗告人は、原決定の取消し及び本件申立ての認容を求めて、即時抗告をした事案で、抗告人の本件申立ては却下すべきであり、これと同旨の原決定は相当であるとして、本件即時抗告を棄却した事例。
2019.01.16
面会交流審判に対する抗告事件
LEX/DB25561709/東京高等裁判所 平成30年11月20日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(ラ)第1661号
別居中の夫婦間で、未成年者の実父である相手方が、未成年者を監護養育している実母である抗告人に対し、相手方と未成年者が面会交流する時期、方法等につき定めることを求めたところ、原審は、抗告人に対し、面会交流をさせなければならない旨を命じる審判をしたため、抗告人が、原審判を不服として即時抗告をし、本件申立てを却下するとの審判に代わる裁判を求めた事案において、原審判と同様の頻度、時間、引渡方法、代替日の定めにより相手方と未成年者の面会交流を行うのが相当であるが、その際には、抗告人が面会交流に立ち会うことができる旨を併せて定めるのが相当であると判断し、原審判を変更した事例。
2019.01.08
選挙無効請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 3月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449871/最高裁判所大法廷 平成30年12月19日 判決 (上告審)/平成30年(行ツ)第153号
平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙について、東京都第2区、同第5区、同第8区、同第9区、同第18区及び神奈川県第15区の選挙人である上告人らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟の上告審において、本件選挙当時、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないとし、本件上告を棄却した事例(意見及び反対意見がある)。
2019.01.08
選挙無効請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 3月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449872/最高裁判所大法廷 平成30年12月19日 判決 (上告審)/平成30年(行ツ)第109号 等
平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙について、各選挙区(東京都第1区ほか264選挙区)の選挙人である上告人らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙の選挙区割りに関する公職選挙法の規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟の上告審において、本件選挙当時、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできないとし、本件上告を棄却した事例(意見及び反対意見がある)。
2019.01.08
生活保護変更決定取消等請求事件 
LEX/DB25449866/最高裁判所第三小法廷 平成30年12月18日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第292号
生活保護法に基づく保護を受けていた被上告人が、同一世帯の構成員である長男の勤労収入について同法61条所定の届出をせずに不正に保護を受けたことを理由として、門真市長から権限の委任を受けた門真市福祉事務所長から、同法78条に基づき、勤労収入に係る額(源泉徴収に係る所得税の額を控除した後のもの)等を徴収する旨の費用徴収額決定を受けるなどしたため、上告人を相手に、その取消し等を求めた上告審の事案において、被上告人は、同一世帯の構成員である長男の勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けたのであるから、門真市福祉事務所長が、本件徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり、本件基礎控除額に相当する額を控除しなかったことが違法であるということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、他に本件徴収額決定のうち本件基礎控除額に相当する額を徴収する部分を違法とすべき事情は見当たらず、同部分は適法というべきであるから、同部分に係る取消請求は棄却し、これと異なる原判決主文第1項を変更した事例。
2019.01.08
損害賠償請求事件 
LEX/DB25449864/最高裁判所第一小法廷 平成30年12月17日 判決 (上告審)/平成30年(受)第16号 等
Aが所有し運転する普通乗用自動車(本件自動車)に追突されて傷害を負った上告人らが、本件自動車の名義上の所有者兼使用者である被上告人に対し、自動車損害賠償保障法3条に基づき、損害賠償を求めた上告審において、被上告人は、Aからの名義貸与の依頼を承諾して、本件自動車の名義上の所有者兼使用者となり、Aは、上記の承諾の下で所有していた本件自動車を運転して、本件事故を起こしたもので、Aは、当時、生活保護を受けており、自己の名義で本件自動車を所有すると生活保護を受けることができなくなるおそれがあると考え、本件自動車を購入する際に、弟である被上告人に名義貸与を依頼したというのであり、被上告人のAに対する名義貸与は、事実上困難であったAによる本件自動車の所有及び使用を可能にし、自動車の運転に伴う危険の発生に寄与するものといえ、被上告人とAとが住居及び生計を別にしていたなどの事情があったとしても、被上告人は、Aによる本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあり、被上告人は、本件自動車の運行について、運行供用者に当たると判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、上告人らの被った損害について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2018.12.25
旧取締役に対する損害賠償、詐害行為取消請求事件
LEX/DB25449860/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月14日 判決 (上告審)/平成30年(受)第44号 等
Aに対して約37億6000万円の損害賠償債権を有する被上告人が、詐害行為取消権に基づき、上告人Y1に対しては、Aが上告人Y1から株式を代金1億6250万円で購入する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記代金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求め、上告人Y2に対しては、Aが上告人Y2に1億2000万円を贈与する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記贈与金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求め、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は、詐害行為の取消しを命ずる判決の確定により生ずるから、その確定前に履行遅滞に陥ることはないのに、上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務につき各訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがあるなどとし、上告人が上告した事案で、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当であるとし、被上告人は、上告人らに対し、訴状をもって、各詐害行為の取消しとともに、各受領済みの金員相当額の支払を請求したのであるから、上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務についての遅延損害金の起算日は、各訴状送達の日の翌日ということになるとし、上告を棄却した事例。
2018.12.25
詐欺,覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25449862/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月14日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1808号
第1審判決は、覚せい剤取締法違反の罪(使用)のほか,詐欺罪の犯罪事実を認定し、被告人を懲役2年6月に処したため、被告人が、第1審判決に対して量刑不当を理由に控訴し、原判決は、詐欺の事実につき、職権で判示し、詐欺の故意は認められないとして第1審判決を破棄し、無罪を言い渡したことにより、検察官が上告した事案で、被告人は、捜査段階から、荷物の中身について現金とは思わなかった、インゴット(金地金)、宝石類、他人名義の預金通帳,他人や架空名義で契約された携帯電話機等の可能性を考えたなどと供述するとともに、荷物の中身が詐欺の被害品である可能性を認識していたという趣旨の供述もしており、第1審及び原審で詐欺の公訴事実を認め、被告人の供述全体をみても、自白供述の信用性を疑わせる事情はない。それ以外に詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情も見当たらないとし、被告人は自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められる。それにもかかわらず、これらを認めた第1審判決に事実誤認があるとしてこれを破棄した原判決は、詐欺の故意を推認させる外形的事実及び被告人の供述の信用性に関する評価を誤り、重大な事実誤認をしたというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められ、原判決を破棄し、訴訟記録に基づいて検討すると、被告人を懲役2年6月に処した量刑判断を含め、第1審判決を維持し、被告人の控訴を棄却した事例。
2018.12.25
覚せい剤取締法違反、詐欺未遂、詐欺被告事件 
LEX/DB25449854/最高裁判所第三小法廷 平成30年12月11日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第44号
覚せい剤取締法違反の罪(使用・所持)、詐欺並びに詐欺未遂事件につき、第1審判決は、被告人を懲役4年6月に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、第1審判決を破棄し、無罪を言い渡した。このため、検察官が上告した事案で、被告人は、Gの指示を受けてマンションの空室に赴き,そこに配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に渡すなどし、加えて、被告人は、異なる場所で異なる名宛人になりすまして同様の受領行為を多数回繰り返し、1回につき約1万円の報酬等を受け取っており、被告人自身、犯罪行為に加担していると認識していたことを自認していることから、荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり、本件の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無にかかわらず、それ自体から、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるものといえ、原判決のいうような能力がなければ詐欺の可能性を想起できないとするのは不合理であって是認できないとし、原判決が第1審判決を不当とする理由として指摘する論理則、経験則等は、いずれも本件詐欺の故意を推認するについて必要なものとはいえず、また、適切なものともいい難いとし、そして、被告人は、荷物の中身が拳銃や薬物だと思っていた旨供述するが、荷物の中身が拳銃や薬物であることを確認したわけでもなく、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらず、被告人は、自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められ、原判決が第1審判決の故意の推認過程に飛躍があり、被告人の詐欺の故意を認定することができないとした点には、第1審判決が摘示した間接事実相互の関係や故意の推認過程に関する判断を誤ったことによる事実誤認があるとして、原判決を破棄し、第1審判決の事実誤認を主張する被告人の控訴は理由がないことに帰するとして、控訴を棄却した事例。
2018.12.25
傷害致死被告事件
LEX/DB25561710/大阪地方裁判所 平成30年11月20日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第3167号
被告人は、平成28年10月3日午後1時30分頃から同日午後1時59分頃までの間、被告人宅で、次男(当時生後約1か月半)が泣きやまないことにいら立ち、その頭部を複数回揺さぶるなどの暴行を加え、同人に急性硬膜下血腫、くも膜下出血及び左右多発性眼底出血等の傷害を負わせ、病院において、同月15日午後2時47分頃、前記傷害に基づく蘇生後脳症により死亡させたとして傷害致死罪で起訴された事案で、被告人が午後1時30分頃の妻の外出後の状況につき、公判廷で本件当日にした供述と異なる内容の供述をしていることなどその他の事情を踏まえても(なお、午後1時30分頃の妻の外出時までに受傷をうかがわせる事情がなかったといえるかについては、必ずしも明らかでないと判断した。)、被告人が公訴事実記載の犯行に及んだことについて、常識に照らして間違いないといえるほどの立証がされているとはいえないとし、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.12.18
不当利得返還等請求事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 2月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449849/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月 7日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1124号
上告人(控訴人・原告。中小企業等への融資等を主たる事業とする金融機関)が、被上告人(被控訴人・被告。自動車部品等の製造、販売等を主たる事業とする会社)に対し、金属スクラップ等の引揚げ及び売却が上告人に対する不法行為に当たるとして5000万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を請求し、選択的に、これによって被上告人が得た利益は不当利得に当たるとして同額の不当利得金の返還及び民法704条前段所定の利息の支払を請求し、上記の不法行為及び不当利得の成否に関して、本件動産につき、上告人が被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができるか否かが争われ、1審判決は上告人の請求を棄却したため、これを不服として上告人が控訴し、控訴審判決は、本件動産譲渡担保の範囲は、目的物の種類、数量及び保管場所により特定されており、被上告人自認超過部分(一部の各品目を除いたもの)について留保所有権の消滅が認められる以上、その品目及び数量に係る損害が発生したものと認め、上告人に対する不法行為を構成するとして、1審判決を変更し、上告人の請求を一部認容した。しかし、上告人は、本件売買契約で、目的物の所有権は、上記代金の完済をもって、被上告人からM社に移転するという本件条項に基づき被上告人が本件動産の所有権を留保することは本件動産の所有権を被上告人からM社に移転させた上でM社が被上告人のために担保権を設定したものとみるべきであるにもかかわらず、本件動産につき、その所有権が被上告人からM社に移転しておらず、上告人が被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができないとした原審の判断には、法令解釈の誤り、判例違反がある旨を主張し、上告した事案において、本件動産の所有権は、本件条項の定めどおり、その売買代金が完済されるまで被上告人からM社に移転しないものと解するのが相当であるとして、本件動産につき、上告人は、被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができないとし、本件上告を棄却した事例。
2018.12.18
不正競争防止法違反被告事件
LEX/DB25449846/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月 3日 決定 (上告審)/平成30年(あ)第582号
自動車の開発、製造、売買等を業とするA社(自動車の開発、製造、売買等を業とする会社)の商品企画部の従業員として勤務し、同社のサーバーコンピュータに保存された情報にアクセスするためのID及びパスワードを付与されて、同社が秘密として管理している同社の自動車の商品企画に関する情報等で公然と知られていないものを示されていた被告人が、同社が保有する自動車の商品企画等に関する営業秘密に当たるデータファイルを、不正の利益を得る目的で、あらかじめ同社のサーバーコンピュータにアクセスして、被告人が同社から貸与されていたパーソナルコンピュータに保存していた番号1から8までのデータファイル8件等が含まれたフォルダを、同パーソナルコンピュータから自己所有のハードディスクに転送させて、複製を作成(判示1)し、同パーソナルコンピュータを使用して同社サーバーコンピュータにアクセスして、番号9から12までのデータファイル4件等が含まれたフォルダを同サーバーコンピュータから自己所有のハードディスクに転送させて、複製を作成(判示2)し、その営業秘密の管理に係る任務に背き、それぞれ営業秘密を領得した不正競争防止法違反事件で、1審判決は、被告人に対し、判示1につき懲役1年(執行猶予3年)、判示2につき無罪を言い渡したため、双方が控訴し、控訴審判決は、1審判決を維持し、双方の控訴を棄却した。このため、被告人が上告した事案において、被告人は、当該複製が被告人自身又は転職先その他の勤務先以外の第三者のために退職後に利用することを目的としたものであったことは合理的に推認できるとし、被告人には不正競争防止法21条1項3号にいう「不正の利益を得る目的」があったとして、同旨の第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。