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2018.09.18
住居侵入、強盗致傷被告事件
LEX/DB25560107/東京高等裁判所 平成29年11月 2日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第651号
被告人が、妻の母である被害者方に押し入って、同人(当時78歳)に暴行脅迫を加えて、同人の犯行を抑圧し、同人所有又は管理の現金等を強取したなどとされた、住居侵入、強盗致傷被告事件の控訴審において、本件の証拠構造上、犯人と被告人の同一性に関する最も重要な証拠であると認められるP8鑑定の科学的原理やその理論的正当性、更に具体的な分析内容の客観性・信頼性に関する判断材料が不十分であることからすると、原審としては、P8鑑定及びP8証言の信用性を判断するために、検察官に対してその信用性に関して釈明を求めたり、必要な証拠調べを実施したりして、専門的な知見を得る必要があったというべきであるとして、原審の手続には審理不尽の違法があり、その点が判決に影響を及ぼす蓋然性があることを直ちに否定することはできないなどとして、原判決を破棄して、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2018.09.11
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」財産法分野 9月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560273/京都地方裁判所 平成30年 2月20日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第1230号 等
分離前相被告Y社と被告F社が製造し販売した化粧石鹸にアレルギー感作を生じさせる成分が含まれていたため、同石鹸を使用した原告(女性17名)らが小麦依存性運動誘発性アレルギーとなり、小麦摂取後の運動で、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック症状を起こすなどし、生命の危険にさらされ、小麦摂取の困難、制限、摂取後の安静など日常生活、就労において各種制限を受けることとなったとして、石鹸を製造販売したY社、被告F社及びアレルギー感作を生じさせる成分を製造した被告K社に対して、製造物責任法に基づき、上記一切の損害を包括する慰謝料等として、1人550万円から880万円の損害賠償を請求した事案(提訴後、原告らはいずれもY社と和解。このため、Y社に対する原告らの訴訟はすべて終了。原告らとともに提訴した者は、被告F社との間でも和解し、被告K社に対する訴えを取り下げたので、これらの者の訴訟は終了。原告らは、Y社から和解金を受領したことを理由として、請求を一部減縮した。Y社と原告らの訴訟は終了したが、その後Y社は、被告らに補助参加した。Y社は、補助参加人として、本件石鹸の欠陥の有無、同欠陥に係る開発危険の抗弁の成否並びに原告らの損害の有無及び範囲について主張し、被告らはこれらを明示的ないし黙示的に援用したが、Y社は弁論終結後の平成30年2月1日補助参加の申出を取り下げた。)において、原告らの被告F社への請求のうち、本件石鹸引渡当時、重篤なアレルギーを回避するための経験知は存在していたと考えられ、また、本件石鹸外箱の表示を警告したことをもって、本件石鹸に欠陥がなかったということはできないとして、請求額を減額したうえで一部認容し、原告らの被告F社に対するその余の請求及び被告K社に対する請求を棄却した事例。
2018.09.11
法人税更正処分取消請求事件 
LEX/DB25550515/東京地方裁判所 平成29年11月24日 判決 (第一審)/平成25年(行ウ)第263号
所轄税務署長(処分行政庁)が、原告(めっき薬品の製造販売等を業とする会社)に対し、原告が租税特別措置法66条の4第1項(平成18年法律第10号による改正前のもの)に規定する国外関連者との間でしためっき薬品の製造・販売に係る技術やノウハウ等の無形資産の使用許諾及び役務提供の取引について、原告が当該国外関連者から支払を受けた対価の額が、同条2項2号ロ、租税特別措置法施行令39条の12第8項(平成16年政令第105号による改正前のもの)所定の方法(利益分割法)のうちの残余利益分割法と同等の方法によって算定した独立企業間価格に満たないとして、その独立企業間価格によって当該取引が行われたものとみなして所得金額を計算し、平成12年3月期ないし平成16年3月期の法人税に係る本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をしたところ、原告が、上記取引の独立企業間価格の算定方法として残余利益分割法と同等の方法を採用するのは不相当であり、その算定過程にも誤りがあるなどとして、被告(国)に対し、本件各更正処分等(ただし、法人税の減額更正処分、過少申告加算税の変更決定処分及び国税不服審判所長の裁決による一部取消し後のもの)のうち申告額等を超える部分の取消しを求めた事案において、本件各事業年度の原告の所得金額及び納付すべき法人税額並びに過少申告加算税額を計算すると、予備的主張額の通りとなり、いずれも本件各更正処分等におけるこれらの金額を上回るから、本件各更正処分等は、いずれも適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。
2018.09.04
株主総会決議取消請求控訴事件(山根標板製作所株主総会決議取消請求控訴事件)
「新・判例解説Watch」商法分野 8月24日 解説記事が掲載されました
LEX/DB25560219/広島高等裁判所松江支部 平成30年 3月14日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第78号
被控訴人(190号事件及び34号事件1審原告)X1が、特例有限会社である控訴人(190号事件、34号事件及び35号事件1審被告)の株主として(190号事件)、更に控訴人の取締役として(34号事件)、被控訴人X2(35号事件1審原告)が控訴人の取締役として(35号事件)、控訴人の株主総会における故Bの相続人らに対し同人らが有する控訴人の株式1800株を控訴人に売り渡すことを請求する旨の決議が特別決議の要件を満たさないものであったと主張して、会社法831条1項1号に基づき、その取消しを求めたところ、原判決は、被控訴人らの本訴請求を認容したため、控訴人補助参加人が、これを不服として控訴した事案において、被控訴人X1の本件各訴えのうち34号事件に係る部分は不適法であるとして却下し、本件決議の取消しについては認容すべきところ、これと異なる原判決を変更した事例。
2018.09.04
損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25560858/東京高等裁判所 平成30年 6月28日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第3038号
第1審原告(貨物自動車運送事業等を営む株式会社)が、本件土地及び建物を所有していた第1審被告(風水力機械等の製造及び販売等を目的とする株式会社)に対し、第1審被告から物流ターミナル等の建設を目的として本件土地及び本件建物を代金848億円で売買契約を締結し買い受けたが、本件土地から広範囲にわたって発見されたスレート片が石綿を含有していたと主張して、本件売買契約に基づく瑕疵除去義務の不履行又は本件売買契約上の瑕疵担保責任に基づく損害賠償として、本件スレート片の撤去及び処分費用、物流ターミナルの建設工事が遅れたことに伴う追加費用、逸失利益、弁護士費用の支払等を求めたところ、原判決は、第1審原告の請求額を減額したうえで一部認容したため、第1審原告及び第1審被告の双方が、それぞれ原判決のうち敗訴部分を不服として、本件各控訴した事案において、約56億1000万円の支払いを命じた原判決に続き契約上の過失を認め、賠償額を約59億5000万円に増額した内容で変更した事例。
2018.08.28
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25560842/東京高等裁判所 平成30年 1月18日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第4886号
認知症の要介護者が、被控訴人との間の訪問介護契約に基づき在宅介護を受け、被控訴人が派遣したヘルパーが昼食の副食として調理、提供したシュウマイを摂食した際、誤嚥を起こし、シュウマイを喉に詰まらせる事故を起こし、それにより低酸素脳症に陥り、嚥下性(誤嚥性)肺炎が原因で死亡したことについて、亡き要介護者の兄弟姉妹で相続人である控訴人らは、ヘルパーが、(1)要介護者の介護に当たり、食事時の誤嚥リスクを十分に理解していたにもかかわらず、ア 食品の調理を刻み食にするなどせず、シュウマイを4分割しただけで、かつ適切な調理を怠って提供し、イ 食事中も要介護者を見守り、声をかけるに止まり、食事方法について適切な指示、介助をしなかったことにより、本件事故を発生させ、(2)その後も直ちに救急車の出動を要請するなど適切な応急措置を執らなかったことから、要介護者は、低酸素脳症に陥り、嚥下性肺炎により死亡したと主張して、使用者責任による損害賠償請求権に基づき、被控訴人に対し、控訴人につき慰謝料及び弁護士費用、その余の兄弟姉妹らにつき各慰謝料及び各弁護士費用の支払等を求めたところ、原判決は、ヘルパーについて上記(1)ア及びイの注意義務違反を認めることができず、上記(2)のような救命措置についての注意義務違反もなかったとして、控訴人らの本件各請求をいずれも棄却した。このため、第1審で訴えを取り下げた者を除く兄弟姉妹らは控訴人を選定当事者として控訴をし(控訴人以外の者については控訴を取り下げた)、また、控訴人は、当審において、使用者責任(不法行為)に加えて、債務不履行(契約及びそれに付随する安全配慮義務違反)による損害賠償請求も追加した事案において、ヘルパーには、不法行為上並びに本件契約上あるいは本件契約に付随する、食事の調理、提供に関する注意義務(結果回避義務)違反、摂食中の注意義務(結果回避義務)違反及び誤嚥後の注意義務違反はないから、本件控訴及び当審における控訴人の追加請求はいずれも理由がないものと判断し、本件控訴を棄却し、当審における追加請求も棄却した事例。
2018.08.28
不当利得返還等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 10月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560652/東京高等裁判所 平成29年 3月 9日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第2611号
訴外A社に対して金属スクラップを継続・反復して売却する取引を行い、A社が代金を完済するまで売買目的物の所有権を留保する旨を合意していた被控訴人(被告)が、A社の支払停止に伴い、被控訴人がA社に売却し、同時点で同社の工場内に保管されていた金属スクラップ等についての動産引渡断行の仮処分命令に基づき上記動産を当該工場から引き揚げ、処分したところ、A社に対する融資を担保するため、A社が同社の工場内で保管する在庫製品等に対して集合動産譲渡担保を設定していた控訴人(原告)が、上記動産について、控訴人と被控訴人とは対抗関係に立ち、対抗要件を具備しない被告による処分行為は不法行為を構成し、又は、これにより得た利益は不当利得に当たると主張して、被控訴人に対し、上記動産の価格に相当する金額及び遅延損害金又は民法704条所定の利息の支払を求めたところ、原判決は控訴人の請求を棄却したため、これを不服として控訴した事案において、本件動産譲渡担保の範囲は、目的物の種類(非鉄金属製品の在庫製品等)、数量(全部)及び保管場所(本件工場)により特定されており、被控訴人自認超過部分(一部の各品目を除いたもの)について留保所有権の消滅が認められる以上、その品目及び数量に係る損害が発生したものと認め、控訴人に対する不法行為を構成するとして、原判決を変更し、控訴人の請求を一部認容した事例。
2018.08.28
納税告知取消請求控訴事件
LEX/DB25560843/東京高等裁判所 平成29年 1月19日 判決 (控訴審)
破産会社が、本件匿名組合を組織し、破産会社を営業者として匿名組合員との間で締結した匿名組合契約において、これを締結した匿名組合員に対して利益の分配として支払った金員につき、所轄税務署長から源泉所得税の納税の告知及び不納付加算税の賦課決定を受けたことに関し、破産会社の破産管財人である控訴人(原告)が、被控訴人(被告。国)に対し、本件匿名組合員に対する上記各支払は出資の払戻しであって「匿名組合契約に基づく利益の分配」に該当せず、源泉所得税の納付義務を負わないと主張して、(1)ア 平成26年10月1日付け納税の告知の取消し、イ 上記アの告知処分に係る納付済みの源泉所得税1億1241万円につき、国税通則法56条1項に基づく還付及びこれに対する同法58条に基づく還付加算金の支払、(2)ア 平成26年10月1日付け納税の告知のうち、匿名組合利益の分配金に対する源泉所得税合計2327万円及びこれに対する不納付加算税合計232万7000円の取消し、イ 上記アの納税の告知記載の租税債務のうち、匿名組合利益の分配金に対する源泉所得税合計2327万円及び不納付加算税合計232万7000円につき、それぞれ支払義務が存在しないことの確認を求め、原判決は、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案において、原判決は相当であるとし、本件控訴を棄却した事例。
2018.08.21
発信者情報開示仮処分命令申立事件
LEX/DB25560844/東京地方裁判所 平成30年 6月12日 決定 (第一審)/平成30年(ヨ)第1076号
債権者(歯科医院を開設・運営する医療法人)が、債務者(地図及び位置情報を提供するほか、地図上に表示される店舗・施設等に対する評価(口コミ)の投稿・閲覧ができるウェブサイトを管理・運営する法人)に対し、債務者が管理・運営するウェブサイトに投稿された記事によって債権者の名誉権が侵害されたと主張し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項に基づき、発信者情報を仮に開示することを求めた事案において、本件発信者が意見・感想を述べる表現方法も穏当で、社会的に相当な範囲内であり、社会的評価の低下は受忍限度の範囲内であるとして、本件申立てを却下した事例。
2018.08.21
情報開示仮処分申立事件 
LEX/DB25560846/神戸地方裁判所尼崎支部 平成30年 5月25日 決定 (第一審)/平成29年(ヨ)第88号
債権者が、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項による開示請求権に基づき、債務者(インターネットの地図情報サービス上に表示される口コミ投稿機能を管理・運営もしているウェブサイト検索システムの運用等サービス提供会社)に対し、前記口コミ投稿機能を利用して、何者かが行った本件書込における発信者情報の開示を命ずる仮処分命令を申し立てた事案において、本件書込が債権者に対する信用毀損に当たらないとして、本件申立てを却下した事例。
2018.08.21
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 10月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560627/高松地方裁判所 平成30年 4月27日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第86号
被告の経営するホームセンターにおいてカラーボックス6個を購入した原告が、カラーボックスに使用されている有機系塗料から放散されたホルムアルデヒド等の化学物質により化学物質過敏症を発症し後遺障害を負ったと主張して、被告に対し、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償として、治療費等の合計7897万3750円のうち7021万9000円の支払等を求めた事案において、被告には、多量のホルムアルデヒドを放散する本件カラーボックスを原告に販売したことにつき過失があり、このような本件カラーボックスの販売は、不完全履行に当たると認め、原告の請求を一部認容した事例。
2018.08.15
人身保護請求事件(ハーグ条約 米国在住の父へ息子引き渡し認める)
LEX/DB25560800/名古屋高等裁判所 平成30年 7月17日 判決 (差戻第一審)/平成30年(人ナ)第4号
米国に居住する請求者(被拘束者の父。日本人)が、日本に居住する拘束者(被拘束者の母。日本人)に対し、被拘束者(請求者と拘束者の二男。アメリカ合衆国で出生し、日本との二重国籍を保有)は、法律上正当な手続によらないで拘束者により身体の自由を拘束されていると主張して、人身保護法に基づき、被拘束者を釈放することを求め、差戻前第1審は、請求者の請求を棄却し、請求者が上記第1審判決に対し上告受理の申立てをし、最高裁は、拘束者の被拘束者に対する監護は、人身保護法及び同規則にいう拘束に当たり、本件請求は、被拘束者の自由に表示した意思に反してされたものとは認められず、また、拘束者による被拘束者に対する拘束には顕著な違法性がある旨を判示し、上記原判決を破棄し、高裁に差し戻しを命じ、差戻後第1審の事案において、拘束者は、本件返還決定に基づいて子の返還の代替執行の手続がされたにもかかわらずこれに抵抗し、本件返還決定に従わないまま被拘束者を監護していることが明らかであるとし、米国への返還のために拘束者の被拘束者に対する監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情が認められない限り、拘束者による被拘束者に対する拘束には、顕著な違法性があるとして、被拘束者を釈放し、請求者に引き渡すこととした事例。
2018.08.15
人身保護請求事件
(平成30年7月17日名古屋高等裁判所(平成30年(人ナ)第4号)の第一審)
LEX/DB25560799/名古屋高等裁判所金沢支部 平成29年11月 7日 判決 (第一審)/平成29年(人ナ)第1号
米国に居住する請求者(被拘束者の父。日本人)が、日本に居住する拘束者(被拘束者の母。日本人)に対し、人身保護法に基づき、被拘束者(請求者と拘束者の二男。アメリカ合衆国で出生し、日本との二重国籍を保有)の釈放を求めた事案において、被拘束者が拘束者によって身体の自由を拘束されているとは認められず、請求者の本件請求は被拘束者の自由に表示した意思に反するから、被拘束者の監護権の帰属が問題となることはないのであり、請求者の主張するように別件米国裁判によって拘束者が被拘束者の監護権を失い、請求者が監護権を有するとしても、本件の結論は左右されないとし、また、拘束者による監護状況や13歳という年齢(自己の置かれた状況を理解してその意思を表明し得る年齢)にある被拘束者の意向などを考え、拘束者による監護が被拘束者の福祉に反するとはいえず、監護(拘束)の違法性が顕著であるとも解せられないとして、本件請求を棄却した事例。
2018.08.15
損害賠償請求控訴事件(プロデュースに対する粉飾決算損害賠償請求控訴事件)
「新・判例解説Watch」商法分野 10月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560526/東京高等裁判所 平成30年 3月19日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第3882号
株式会社P社の株式を取得した1審原告らが、P社が関東財務局長に提出した有価証券届出書及び有価証券報告書につき、重要な事項に虚偽の記載等があったため損害を被ったとして、旧証券取引法21条、22条、24条の4又は金融商品取引法21条、22条、24条の4に基づき、当該有価証券届出書及び有価証券報告書に係る財務計算書類について監査証明をしたD監査法人を吸収合併した被告に対し、損害賠償及び遅延損害金の支払を求めたところ、原判決は、第1審原告らの請求を全部棄却したので、これを不服とする第1審原告らが控訴した事案において、第1審原告らの請求をいずれも全部棄却した原判決は失当であり、本件控訴の一部は理由があるから、原判決を変更することとし、訴訟費用については第1審原告らの第1審における請求額がほとんど全額認容されるべきものであったことや、第1審被告の訴訟活動の内容その他本件訴訟の全経過に照らしてこれを全部第1審被告に負担させることとした事例。
2018.08.07
再審請求事件(日野町事件第2次再審請求開始決定)
LEX/DB25560764/大津地方裁判所 平成30年 7月11日 決定 (再審請求審)/平成24年(た)第1号
被告人が、かねて客として出入りしていた酒類小売販売店経営者(当時69歳)を殺害して金品を強取しようと企て、同店内で、客として飲酒した際、応対していた同女の背後からいきなり頸部を両手で絞め付け、頸部圧迫に基づく窒息により即死させて殺害した上、同女所有の現金5万円及び手提金庫等を強取したとして起訴され、第1審判決は無期懲役を言い渡し、第2審判決も第1審判決に違法はないとして控訴を棄却し、上告審でも上告棄却したことで、有罪を確定した強盗殺人事件で、被告人である申立人が再審請求をしたが、申立人の自白は、その任意性に疑いはなく、信用性も十分あり、さらに、申立人が犯人であることを示すいくつかの間接事実が存在し、また、申立人のアリバイは成立せず、その他、申立人が犯人ではないことを示す事情は存在せず、確定判決の認定した犯罪事実は優に認められ、その他、弁護人の主張をすべて検討しても、これを覆すことはできないとして、再審の請求を棄却したため、申立人が抗告したが、申立人の死亡により終了した。その後、再度、申立人の遺族が請求人として再審請求をした事案において、当審で取り調べた各新証拠が確定審の審理中に提出されていたならば、被告人を本件犯行について有罪と認定するには、合理的な疑いが生じたものと認められ、本件再審請求は、刑事訴訟法435条6号所定の有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したときに該当するとして、再審を開始する決定をした事例。
2018.08.07
建築確認処分取消等請求事件
LEX/DB25560531/大阪地方裁判所 平成30年 3月22日 判決 (第一審)/平成29年(行ウ)第126号
本件建築主は、大阪市の一部である別紙図面のA区画(本件土地)に地上5階建ての賃貸マンション(本件建物)の建築を計画し、平成28年7月15日付けで建築確認申請をしたところ、大阪市建築主事は、同年8月8日付けで、本件計画につき建築確認をしたが、本件土地の周辺に居住する原告らが、本件土地につき都市計画法29条1項の開発許可を経ていないから本件建築確認は違法であるなどと主張して、被告(大阪市)に対し、その取消しを求めるとともに、本件建築確認に係る原告らの審査請求を棄却した裁決の取消しを求めた事案で、本件建築確認取消請求において、本件建築確認の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するとし、本件土地につき開発許可は不要であるとした本件不要判定は適法であり、本件計画は都市計画法29条1項に違反しないとし、他に本件建築確認を違法とすべき事由も見当たらないから、本件建築確認は適法であるとし、これを適法として原告らの審査請求を棄却した本件裁決はその結論において正当であり,本件裁決にこれを取り消すべき瑕疵があるとはいえないとし、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.08.07
シリア難民不認定処分無効確認等請求事件(第1事件~第4事件)、訴えの追加的併合請求事件(第5事件)
「新・判例解説Watch」国際公法分野 10月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560659/東京地方裁判所 平成30年 3月20日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第158号 等
シリア国籍を有する外国人である原告らが、それぞれ出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づき難民認定の申請をしたが、処分行政庁から難民の認定をしない旨の処分を受けたため、被告(国)に対し、原告P3においては同処分の取消しを求めるとともに、難民認定の義務付けを求め、その余の原告らにおいてはそれぞれ同処分の無効確認を求めるとともに、難民認定の義務付けを求めた事案において、原告P1及び原告P2の訴え並びに原告P3及び原告P4の義務付けの訴えは不適法であるとして、これらをいずれも却下し、原告P3及び原告P4のその余の請求を棄却した事例。
2018.08.07
損害賠償請求事件
LEX/DB25551060/東京地方裁判所 平成29年12月13日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第32019号
総合病院の副院長であった原告が、厚生労働省の官僚による不当な圧力等について記載した厚生労働大臣宛の文書案を厚生労働大臣政務官に送付したところ、当時厚生労働省の課長であった被告Bがこれを入手し、千葉県の医療整備課の課長である被告Cに送付するとともに、同文書案を総合病院を経営する医療法人の理事長に送付して原告を懲戒解雇するよう求めることを指示し、被告Cにおいて同理事長に同文書案を送付して原告を懲戒解雇するように求めて、原告の言論活動を妨害しようとしたため、精神的損害を被ったと主張して、被告らに対し、共同不法行為に基づき、損害賠償金等の連帯支払を求めた事案において、本件文書の内容は、国家公務員法100条1項にいう「秘密」に当たるものではないから、仮に、被告Bが被告Cに本件文書を送付したとしても、その行為が不法行為を構成するものということはできず、また、被告CがD理事長に本件文書を送付した行為も不法行為を構成するものということはできないとして、請求をいずれも棄却した事例。
2018.07.31
未払賃金請求控訴,同附帯控訴事件
LEX/DB25449586/最高裁判所第一小法廷 平成30年 7月19日 判決 (上告審)/平成29年(受)第842号
保険調剤薬局の運営を主たる業務とする上告人に雇用され、薬剤師として勤務していた被上告人が、上告人に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金並びに付加金等の支払を求め、原審は、被上告人の賃金及び付加金の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、本件業務手当の支払により被上告人に対して労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、被上告人に支払われるべき賃金の額、付加金の支払を命ずることの当否及びその額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2018.07.31
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法・行政法分野 10月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449587/最高裁判所第一小法廷 平成30年 7月19日 判決 (上告審)/平成28年(受)第563号
都立高校の教職員であった被上告人(原告・被控訴人)ら又はその被承継人らは、その在職中、各所属校の卒業式又は入学式において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令に従わなかったところ、東京都教育委員会(都教委)は、このことを理由として、東京都公立学校の再任用職員、再雇用職員又は非常勤教員の採用候補者選考において、上記の者らを不合格とし、又はその合格を取り消して、定年又は勧奨による退職後に再任用職員等に採用しなかったことを踏まえ、都教委が上記の者らを不合格とし、又はその合格を取り消したことについて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるなどとして、被上告人らが上告人(被告・控訴人。東京都)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審判決は、東京都教育委員会の裁量権の範囲の逸脱又は濫用を認め、被上告人らの請求を一部認容したため、上告人が控訴し、控訴審判決も第1審判決を維持しため、上告人が上告した事案において、任命権者である東京都教育委員会が、再任用職員等の採用候補者選考に当たり、従前の勤務成績の内容として本件職務命令に違反したことを被上告人らに不利益に考慮し、これを他の個別事情のいかんにかかわらず特に重視すべき要素であると評価し、そのような評価に基づいて本件不合格等の判断をすることが、その当時の再任用制度等の下で、著しく合理性を欠くものではなく、本件不合格等は、いずれも、都教委の裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとして、原判決を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分につき被上告人らの請求をいずれも棄却した事例。