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2018.06.05
婚姻費用分担審判に対する抗告事件
LEX/DB25560120/東京高等裁判所 平成30年 4月19日 決定 (抗告審)/平成30年(ラ)第125号
妻である相手方(原審申立人)が、夫である抗告人(原審相手方)に対し、婚姻費用分担金の支払を求める調停を申し立てたが、不調により審判手続に移行し、原審は、抗告人に対し、平成28年8月分から平成29年10月分までの未払婚姻費用分担金合計90万円及び同年11月から当事者の同居又は婚姻解消に至るまで毎月6万円の各支払を命じる旨の審判をしたため、抗告人は、これを不服として、本件抗告を申し立てた事案において、原審判を一部変更し、抗告人は、本件調停が申し立てられた平成28年8月から、毎月4万7000円を支払うべきところ、これを全く支払っていないから、平成28年8月から平成30年3月まで、20か月分合計94万円を直ちに支払うべきであり、平成30年4月1日以降は、当事者の同居又は婚姻解消に至るまで、毎月末日限り、月額4万7000円を支払うべきであるとした事例。
2018.06.05
固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 7月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560133/那覇地方裁判所 平成30年 4月13日 判決 (差戻第一審)/平成29年(行ウ)第9号
那覇市の住民である原告が、当時の那覇市長が補助参加人(一般社団法人)に対して都市公園である松山公園の敷地内に久米至聖廟(本件施設)を設置することを許可し、その使用料を全額免除したことは政教分離原則(憲法20条1項後段、3項、89条)に違反し、本件免除は無効であるにもかかわらず、被告(那覇市長)は、違法に上記使用料の徴収を怠っているなどと主張して、〔1〕地方自治法242条の2第1項3号に基づき、被告が、松山公園の使用料を請求しないことが違法であることの確認を求めた差戻後第一審の事案において、本件設置許可等のうちの本件免除は、那覇市と本件施設とのかかわり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法89条の禁止する公の財産の利用提供に当たり、ひいては憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権の付与にも該当すると解するのが相当であるとし、また、本件免除は、憲法20条3項の禁止する国の機関たる地方公共団体による宗教的活動にも該当すると解するのが相当であるとして、被告が使用料のうち181万7063円を補助参加人に対し請求しないことの違法確認を求める原告の請求は全部理由があるとし、原告の請求を認容した事例。
2018.06.05
間接強制申立却下決定に対する執行抗告事件
LEX/DB25560121/東京高等裁判所 平成30年 3月26日 決定 (抗告審(執行抗告))/平成30年(ラ)第216号
抗告人(死刑確定者として拘置所に収容されている者)が、平成26年4月17日及び平成28年3月30日、相手方(国)に対し、再審請求の打合せを目的とする弁護士との面会につき、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条に基づき、職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分をすることの仮の差止め等を申し立てたところ、東京地方裁判所は、平成28年12月14日、各基本事件について、再審請求の打合せを目的とする抗告人と弁護士との面会につき、仮に,職員を立ち会わせる措置を執る旨の処分をしてはならない旨の決定をしたが、本件は、抗告人が、東京拘置所長において、前記決定が相手方に送達された後である平成28年12月16日、同月22日、平成29年2月15日、同年3月2日、同月27日及び同年4月3日、同決定に反して、抗告人と再審請求の打合せを目的とする弁護士との面会につき、職員を立ち会わせる措置を執った旨主張して、間接強制の裁判を求める旨の申立てをしたところ、原審は、抗告人の本件申立てを不適法であるとして却下したことから、これに不服の抗告人が抗告をした事案において、抗告人の本件申立ては不適法であるからこれを却下すべきであるところ、これと同旨の原決定は相当であるとして、抗告を棄却した事例。
2018.06.05
(「性同一性障害」の被害者の胸触った男 控訴棄却)
「新・判例解説Watch」刑法分野 9月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25549755/大阪高等裁判所 平成30年 1月31日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1032号
被告人が、深夜、神戸市内の飲食店で、一人で飲食していたところ、被害者(戸籍上は男性であるが、性同一性障害との診断を受け、本件時も長髪で女性用の衣服を身に着けるなど一見すると女性に見える姿をしていた。)も被告人の知人女性に連れられて同店を訪れ、はじめは被告人とは離れた席に座ったが、知人女性のすすめもあって被告人の隣の席に座り、被告人と被害者は話をするなどし、その際、被告人が、被害者の膨らんだ胸部を着衣の上からつかんだか否かが問題となっている兵庫県迷惑防止条例違反の事件で、原判決は、被告人に対し、同条例違反の成立を認めたため、被告人が事実誤認及び法令適用の誤りであるとして控訴した事案において、原判決は、基本的に被害者の証言の信用性を認め、これと整合しない被告人供述は採用できないとしてその信用性を否定しており、そのような原判決の判断や判断方法に誤りはないから、被告人の供述が信用できないという結論は揺るがないとした上で事実誤認はないとし、また、原判示の被告人の行為が、「人に対して、不安を覚えさせるような」行為に該当するのは明らかであり、原判決の法令の適用に誤りはないとして、控訴を棄却した事例。
2018.05.29
審決取消請求事件(第1事件、第2事件)
LEX/DB25449408/知的財産高等裁判所 平成30年 4月13日 判決 (第一審)/平成28年(行ケ)第10182号 等
原告らの発明の名称を「ピリミジン誘導体」に係る特許の無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟で、訴えの利益、進歩性の有無等が争点の事案において、訴えの利益を認めた上、本件特許が進歩性の要件等を充足することを認め、原告らの請求を棄却した事例。
2018.05.29
遺族補償給付不支給処分取消請求控訴事件
LEX/DB25560098/名古屋高等裁判所 平成30年 4月11日 判決 (控訴審)/平成28年(行コ)第91号
学園に勤務していた被災者が肺がん及び胸膜中皮腫(本件疾病)により死亡したことについて、被災者の妻である控訴人(原告)が、労働基準監督署長に対し、被災者の本件疾病の発症は,学園でアスベスト(石綿)にばく露したためであり、業務に起因するとして、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付の支給を請求したところ、同署長から、被災者の本件疾病の発症は業務に起因するものとは認められないとして、遺族補償給付を支給しない旨の処分(本件不支給処分)を受けたため、控訴人が、被控訴人(被告。国)に対し、本件不支給処分の取消しを求め、原審は、控訴人の請求を棄却したため、これを不服とする控訴人が控訴した事案において、被災者の死因となった胸膜中皮腫は、被災者が学園における業務を行う際に石綿粉塵にばく露したことによって発症したものであり、被災者の業務に内在する危険が現実化したものとして、業務起因性が認められるとし、原判決を取消し、控訴人の請求を認容した事例。
2018.05.29
原子力発電所設置許可処分取消等請求事件、大間原子力発電所建設・運転差止等請求事件、原子力発電所建設・運転差止等請求事件
LEX/DB25449377/函館地方裁判所 平成30年 3月19日 判決 (第一審)/平成22年(行ウ)第2号
被告電源開発が経済産業大臣の設置許可処分に基づき青森県下北郡大間町に建設に着手した大間原子力発電所(本件原発)について、原告66名が、被告電源開発に対し、人格権に基づく侵害予防として,本件原発の建設及び運転の差止めを求めるとともに、原告ら1164名が、被告らに対し、本件原発の危険性に対する不安のため甚大な精神的苦痛を受けているなどとして、被告電源開発に対しては不法行為に基づき、被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料各1000万円の一部請求として各3万円の連帯支払を求めた事案で、原告らが、規制委員会が本件原発の安全審査に用いる具体的審査基準に不合理な点があると主張するいずれの事項についても、不合理であるとは認められず、未だ規制委員会の判断がなされておらず、本件原発の運転開始の目途も立っていない現時点(本件口頭弁論終結時)においては、本件原発の重大な事故発生に伴う放射性物質の放出等の具体的危険があるとは認められないとし、原告らの被告電源開発に対する本件原発の建設及び運転の差止請求を棄却し、また、本件原発の運転開始の目途も立っていない現時点においては、本件原発の重大な事故発生に伴う放射性物質の放出等に対する原告らの不安感は抽象的なものにとどまると認められ、原告らの主張する法益侵害が生じているとはいえず、原告らの被告らに対する各慰謝料請求も棄却した事例。
2018.05.22
邸宅侵入、公然わいせつ被告事件
LEX/DB25449452/最高裁判所第一小法廷 平成30年 5月10日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第882号
被告人は、正当な理由がないのに、他人が看守するマンションに、1階オートロック式の出入口から住人に追従して侵入し、1階通路で、不特定多数の者が容易に認識し得る状態で、自己の陰茎を露出して手淫し、引き続き、2階通路で、同様の状態で、自己の陰茎を露出して手淫した上、射精し、公然とわいせつな行為をしたとした事件で、被告人は犯人との同一性を争ったが、第1審判決は、本件現場で採取された精液様の遺留物(本件資料)について実施されたDNA型鑑定(鈴木鑑定)を踏まえ、以下のとおり被告人を犯人と認めて、公訴事実どおりの犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、被告人と犯人との同一性については合理的疑いが残るとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡し、検察官が上告した事案において、原判決が、本件資料は1人分のDNAに由来し、被告人のDNA型と一致する旨の鈴木鑑定の信用性には疑問があるとし、被告人と犯人との同一性を否定したのは、証拠の評価を誤り、ひいては重大な事実の誤認をしたというべきであり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。
2018.05.22
賃金請求控訴事件(国際自動車(差戻)事件)
LEX/DB25549459/東京高等裁判所 平成30年 2月15日 判決 (差戻控訴審)/平成29年(ネ)第1026号
一審被告(控訴人兼被控訴人、上告人)との間で労働契約を締結し、タクシー乗務員として勤務していた一審原告ら(被控訴人兼控訴人、被上告人)が、一審被告に対し、一審被告の定める就業規則中の本件賃金規制における歩合給の支給規定について、労働基準法37条1項に違反するなどと主張して、未払賃金の支払を求めた事案の差戻控訴審において、歩合給の算定過程で、割増金相当額を控除したことをもって、実際に支給される割増金の経済的効果がいわば減殺されると見られるものとしても、実質的に割増金の支払がなされていないとは直ちに評価することはできず、本件規定による歩合給の算定方法は、業務の実態に即した賃金制度として合理性を認めることができるとし、原判決中、一審被告の敗訴部分を取り消し、上記部分につき、一審原告らの請求を棄却した事例。
2018.05.15
損害賠償請求控訴事件
(平成29年 6月13日那覇地方裁判所(平成27年(ワ)第745号)の控訴審)
LEX/DB25549792/福岡高等裁判所那覇支部 平成29年12月 7日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第90号
控訴人(原告)らの子であるdを相続した控訴人らが、それぞれ被控訴人(被告。社会医療法人)に対し、dが救急搬送されていた被控訴人病院で飛び降り自殺を図り、死亡したのは、被控訴人病院の医師ないし看護師の過失ないし注意義務違反によるものであるとして、主位的には不法行為に基づき、予備的には診療契約上の債務不履行に基づき、dの損害賠償金の支払等を求め、原審は、被控訴人病院の医師及び看護師には、dが自殺に及ぶ具体的危険を認識できたとは認められず、控訴人ら主張の過失ないし注意義務が存するとは認められないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した事案において、被控訴人病院の医師及び看護師には、dが自殺に及ぶ具体的危険を認識できたとは認められず、原判決は相当であるとし、控訴人らの請求を棄却した事例。
2018.05.15
損害賠償請求事件
(平成29年12月 7日福岡高等裁判所那覇支部(平成29年(ネ)第90号)の原審)
LEX/DB25549791/那覇地方裁判所 平成29年 6月13日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第745号
原告らの子であるdが、早朝、練炭自殺を図り、被告病院に搬送された後,同日の夕方に被告病院の建物から落下して死亡したことについて、dの相続人である原告らが、被告の従業員である医師ないし看護師には、dが観察室から無断で離室したことが発覚した時刻以降、〔1〕dの病室を施錠設備のある個室に移動させるべき義務に違反した過失ないし注意義務違反及び〔2〕dの病室内に看護師を常在させるべき義務に違反した過失ないし注意義務違反があったと主張して、被告(社会医療法人)に対し、主位的に、不法行為に基づき、相続したdの損害及び原告ら固有の損害の一部の賠償金の支払等を、予備的に、診療契約上の債務不履行に基づき、上記損害の一部の賠償金の支払等を、それぞれ求めた事案において、被告病院の医師ないし看護師が、dが本件無断離室に及んだことを発見した以降、dが自殺に及ぶ具体的危険を認識することができたとは認められず、被告病院の医師ないし看護師に、dを施錠設備のある個室に移動させなかった過失ないし注意義務違反があるとする原告らの主張を採用することはできないとし、また、被告病院の医師ないし看護師に、dが自殺に及ぶ具体的危険を認識することはできなかったのであるから、被告病院の医師ないし看護師にdの病室内に看護師を常在させるべき注意義務があるとする原告らの主張を採用することができないとし、原告らの請求を棄却した事例。
2018.05.15
子の引渡し仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
(平成29年12月 5日最高裁判所第三小法廷(平成29年(許)第17号)(LEX/DB 25449093)の原審)
LEX/DB25549514/福岡高等裁判所那覇支部 平成29年 6月 6日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第21号
抗告人が、長男の親権に基づく妨害排除請求として、相手方に対し、長男の仮の引渡しを求めた事案の即時抗告審において、長男の親権者を抗告人と定めた上で協議離婚がされたが、実際には親権者で父である抗告人と別居後長男を監護してきた母である相手方との間で、長男の監護に関し、いずれが長男の監護をするにふさわしいかをめぐる紛争が存在しているのであるから、長男を抗告人に引き渡すべきか否かの判断を行うに当たっては、父又は母のいずれの監護に服することが子の福祉に沿うかという観点からの検討を加えることが必要不可欠であり、その判断は、本件では親権者変更の調停の審理の経過及び経過を踏まえてされることが望ましいものであるから、本件の本案については、子の監護に関する処分として、家事審判事項に該当するというべきであり、地方裁判所に対してされた家事審判事項を本案とする本件申立ては不適法であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2018.05.15
子の引渡し仮処分申立事件
(平成29年12月 5日最高裁判所第三小法廷(平成29年(許)第17号)(LEX/DB 25449093)の原原審)
LEX/DB25549513/那覇地方裁判所 平成29年 4月26日 決定 (第一審)/平成29年(ヨ)第31号
債権者が、長男の親権に基づく妨害排除請求として、債務者に対し、長男の仮の引渡しを求めた事案において、本件の本案は、家事審判事項であり、地方裁判所に管轄がない不適法なものであり、そして、家事審判事項については、審判又は調停が係属する家庭裁判所が審判前の保全処分をすることができるとした家事審判法105条、157条1項3号の趣旨に照らすと、本件申立ても、やはり地方裁判所に管轄がない不適法なものというべきであるとして、本件申立ては、審尋を経るまでもなく、却下するほかないと示し、なお書きにおいて、本件申立ての趣旨及び理由に照らし、本件を家事事件手続法に基づく審判前の保全処分の申立てと見る余地はないから、本件を家事事件手続法9条1項により家庭裁判所に移送することもできないと示した事例。
2018.05.08
議場における発言取消命令取消請求事件
LEX/DB25449432/最高裁判所第一小法廷 平成30年 4月26日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第216号
被上告人(原告・控訴人。愛知県議会議員)が、県議会議長から、地方自治法129条1項に基づき、県議会の一般質問における県知事に対する発言の一部を取り消すよう命じられたため、上記発言は社会通念上相当な内容のものであるなどとして、上告人(被告・被控訴人。愛知県)を相手に、本件命令の取消しを求め、原審は、本件訴えを適法とし、本件命令の適否が司法審査の対象とならないとした第1審判決を取消し、本件を第1審に差し戻しを言い渡したため、上告人が上告した事案において、県議会議長の県議会議員に対する発言の取消命令の適否は、司法審査の対象とはならないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件訴えは不適法であり、これを却下した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2018.05.08
株式差押命令取消決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449418/最高裁判所第二小法廷 平成30年 4月18日 決定 (許可抗告審)/平成29年(許)第13号
株券が発行されていない株式である債務者保有の株式に対する差押命令を得て、上記株式につき売却命令による売却がされた後、配当表記載の抗告人外1名の配当額について配当異議の訴えが提起され、そのため、上記配当額に相当する金銭の供託がされたが、その供託の事由が消滅する前に債務者が破産手続開始の決定を受け、その破産管財人が執行裁判所に本件差押命令の取消しを求める旨の上申書を提出したところ、執行裁判所が、本件差押命令に係る強制執行の手続が破産法42条2項本文により破産財団に対してはその効力を失うことを前提として、職権により本件差押命令を取り消す旨の決定をしたため、本件強制執行手続に同項本文の適用があるか否かが争われた事案の許可抗告審において、本件強制執行手続には破産法42条2項本文の適用があるとし、これと同旨の見解に基づき、執行裁判所が職権により本件差押命令を取り消すことができるとした原審の判断は、正当として是認できるとし、本件抗告を棄却した事例。
2018.05.01
不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25449412/最高裁判所第三小法廷 平成30年 4月17日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第3号
抵当権者に対抗することができない賃借権が設定された建物が担保不動産競売により売却された場合、その競売手続の開始前から当該賃借権により建物の使用又は収益をする者は、当該賃借権が滞納処分による差押えがされた後に設定されたときであっても、民法395条1項1号に掲げる「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」に当たるとし、抗告人の相手方に対する引渡命令の申立てを却下した原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2018.05.01
補償協定上の地位確認請求控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 解説記事が掲載されました
LEX/DB25549794/大阪高等裁判所 平成30年 3月28日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第1602号
公害健康被害補償法に基づく水俣病の認定を受けた亡P4の相続人である被控訴人(原告)P2及び亡P5の相続人である被控訴人(原告)P3が、水俣病を発生させた企業である控訴人(被告。化学製品製造会社)と水俣病の患者団体の一つである水俣病患者東京本社交渉団との間で、昭和48年7月9日に締結された水俣病補償協定に基づき、控訴人に対し、本件協定に基づく補償を受けられる等の、本件協定上の権利を有する地位にあることの確認を求め、原判決は、被控訴人らの本件各請求をいずれも認容したことから、控訴人が控訴した事案において、P4らは、本件協定の本文第三項にいう「協定締結以降認定された患者」として、本件協定の適用を求め得る地位にあるとはいえないといわざるを得ないとし、被控訴人らの本件請求は、いずれも理由がないことに帰着するから、これを棄却すべきであり、これと異なる原判決は相当でないとし、原判決を取消し、被控訴人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.04.24
公務外認定処分取消請求控訴事件
(家庭訪問の教師、訪問先で犬に噛まれ 「公務災害」 逆転勝訴)
LEX/DB25549680/東京高等裁判所 平成30年 2月28日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第295号
市立小学校の教諭である控訴人(原告)が、週休日(日曜日)に実施された地域防災訓練に参加するため、その会場に向かう途上、その経路の途中にある自らが担任する学級所属の児童の住居を訪問した際、その庭で同住居で飼育されている犬にかまれて傷害を負った災害について、地方公務員災害補償法1条所定の「公務上の災害」に当たるものとして、同法に基づく公務災害認定請求をしたところ、処分行政庁が公務外認定処分をしたことから、控訴人がこれを不服として、被控訴人(被告。地方公務員災害補償基金)に対し、本件処分の取消しを求めたが、原審は、本件災害は、「公務上の災害」には該当しないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、控訴人の任命権者の支配管理下にある状態において発生した災害に当たり、本件災害は、本件防災訓練への参加・移動の経路において発生したものであり、両者の間に相当因果関係の存在を肯定し、本件災害は「公務上の災害」に当たるものというべきであるとし、原判決を取消し、地方公務員災害補償基金山梨県支部長が控訴人に対して行った地方公務員災害補償法に基づく公務外認定処分を取り消し、控訴人の請求を認容した事例。
2018.04.24
損害賠償請求事件(東電に賠償命令 原発避難者 「ふるさと喪失分」認定)
LEX/DB25549758/東京地方裁判所 平成30年 2月 7日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第33633号
平成23年3月11日当時、福島県南相馬市小高区又は原町区に生活の本拠としての住居等を有していた者又はこれらの者の相続人である原告ら321名が、東日本大震災により発生した東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の放出及び避難指示等により、本訴提起時原告ら(合計335名)は、自らの本来の住まい以外の場所での生活を強いられ、従前の生活を送れないことによる甚大な損害を被り、また自身の人生と生活の拠点である小高を奪われてしまったことにより不可逆的な損害を被り、その共通する慰謝料等の額は少なくとも1人当たり合計3828万円を下らない等と主張して、本件原発について原子炉の運転等をしていた被告(東京電力)に対し、原賠法3条1項本文に基づき、慰謝料の一部請求として、訴訟承継を経ていない原告らについては被告が認める850万円を超える部分である1人当たり2978万円及び弁護士費用300万円の合計3278万円の支払等を、訴訟承継を経た原告らについては上記債権のうち相続した額の支払等をそれぞれ求めた事案において、憲法が保障する居住・移転の自由や人格権を侵害されたとし、請求を一部認容し、被告に総額約11億円の支払を命じた事例。
2018.04.17
放送受信契約締結義務不存在確認請求控訴事件
(ワンセグ付携帯 受信契約は義務 NHK逆転勝訴(第一審 さいたま地裁))
LEX/DB25549698/東京高等裁判所 平成30年 3月26日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第4426号
被控訴人(原告)は、自己の所有するワンセグ機能付き携帯電話を一定の場所に設置しておらず、携帯しているにすぎないから、被控訴人は放送法64条1項本文の「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に該当しない、仮に、該当するとしても、被控訴人は本件携帯電話を控訴人の放送を視聴する目的で所有してはいないから、本件携帯電話は同項ただし書きの「放送の受信を目的としない受信設備」に該当すると主張して、被控訴人が、控訴人(被告。NHK)に対し、被控訴人の放送受信契約締結義務が存在しないことの確認を求め、原審は、被控訴人が「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に該当するとは認められず、被控訴人の請求を認容したため、原判決を不服とする控訴人が控訴した事案で、被控訴人の請求のうち、被控訴人の住所地において、契約種別を衛星契約とする放送受信契約締結義務が存在しないことの確認を求める部分及び契約種別を特別契約とする放送受信契約締結義務が存在しないことの確認を求める部分については、確認の利益がないとし、訴えを却下し、その余の部分(契約種別を地上契約とする放送受信契約締結義務が存在しないことの確認を求める部分)は、理由がなく棄却すべきところ、これと異なる原判決は相当でないとし、取り消した事例。