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2019.10.01
請求異議事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 2月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570459/最高裁判所第一小法廷 令和 1年 9月19日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1137号
被上告人が、本件貸金債権はその弁済期から10年が経過したことにより時効消滅していると主張して、本件公正証書の執行力の排除を求める請求異議の訴えであり、本件差押えによる消滅時効の中断の効力が生ずるか否かが争われ、原審は、本件貸金債権は時効消滅したとして、被上告人の請求を認容すべきものとしたため、上告人が、上告した事案において、債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためには、その債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることを要しないと判示し、本件差押えによる本件貸金債権の消滅時効は中断しているというべきであり、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、被上告人の請求を棄却した事例。
2019.10.01
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25563805/東京高等裁判所 令和 1年 6月27日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第1296号
被控訴人(被告)に個人情報を提供した選定者らが、控訴人(原告)を選定当事者として、被控訴人がS社にその管理を委託し、S社が更に外部業者に再委託し、再委託先の従業員が当該個人情報を外部に漏えいさせたことにつき、〔1〕被控訴人らにおいて控訴人らの個人情報の管理に注意義務違反があった、〔2〕S社は再委託先の従業員の使用者であり、上記従業員の行為はS社の事業の執行についてされたものであるところ、被控訴人はS社の使用者であり、S社の注意義務違反は被控訴人の事業の執行についてされたものであり、本件漏えいにより控訴人らは精神的苦痛を被ったと主張して、被控訴人に対し、不法行為に基づき、慰謝料として控訴人及び選定者Bについてそれぞれ5万円、選定者Cについて10万円の支払等を求めたところ、原審は、被控訴人に委託元の個人情報取扱業者として個人データの漏えいについて過失があったことを認めるに足りる具体的事実の主張・立証がないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、原判決を変更し、控訴人の請求は、被控訴人に対し、控訴人らそれぞれに2000円及びこれらに対する遅延損害金の支払を命じる限度で一部認容した事例。
2019.10.01
株主提案議題等記載仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
(ヨロズ株主提案議題等記載仮処分申立事件)
「新・判例解説Watch」会社法分野 11月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25563564/東京高等裁判所 令和 1年 5月27日 決定 (抗告審)/令和1年(ラ)第986号
抗告人(原審債権者)が、相手方(原審債務者)に対し、令和元年6月17日に開催予定の相手方の定時株主総会に関し、会社法303条2項に基づく本件議題に係る議題提案権及び会社法305条1項に基づく本件議題に係る議案要領通知請求権を被保全権利として、本件株主総会の招集通知及び株主総会参考書類に別紙記載の本件議題並びに本件議題に係る議案の要領及び提案の理由の全文を記載することを命じる旨の満足的仮処分を申し立てたところ、原審は、本件申立てについては保全の必要性を認めることができないなどとして、これを却下する旨の決定をしたため、抗告人が、これを不服として抗告した事案で、原決定は結論において相当であるとし、本件抗告を棄却した事例。
2019.09.24
請求異議事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570454/最高裁判所第二小法廷 令和 1年 9月13日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1874号
国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業を行う被上告人(控訴人・原告。国)が、佐賀地裁及び福岡高裁の各確定判決において諫早湾干拓地潮受堤防の北部及び南部各排水門の開放を求める請求が一部認容された上告人(被控訴人・被告)らに対し、本件各確定判決による強制執行の不許を求めた請求異議訴訟で、原審が、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案において、本件各確定判決に係る請求権は、本件各漁業権1から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権のみならず、本件各漁業権2から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権をも包含するものと解されるから、前者の開門請求権が消滅したことは、それのみでは本件各確定判決についての異議の事由とはならないとし、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人らに関する部分を破棄し、本件各確定判決が、飽くまでも将来予測に基づくものであり、開門の時期に判決確定の日から3年という猶予期間を設けた上、開門期間を5年間に限って請求を認容するという特殊な主文を採った暫定的な性格を有する債務名義であること、前訴の口頭弁論終結日から既に長期間が経過していることなどを踏まえ、前訴の口頭弁論終結後の事情の変動により、本件各確定判決に基づく強制執行が権利の濫用となるかなど、本件各確定判決についての他の異議の事由の有無について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例(補足意見、及び、意見がある)。
2019.09.24
投稿動画削除等の仮処分命令申立事件
LEX/DB25563840/徳島地方裁判所 令和 1年 8月 8日 決定 (第一審)/平成30年(ヨ)第24号
動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿された動画で製品や職場環境を中傷され、社会的信用が損なわれる恐れがあるとして、日亜化学工業(債権者)がユーチューブ社(債務者)に動画の削除などを求めた事案で、債務者に各動画のタイトル及び各動画の紹介記事の削除と、投稿者の情報開示を求める仮処分命令を出した事例。
2019.09.24
「新・判例解説Watch」財産法分野 11月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570419/東京高等裁判所 令和 1年 6月27日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第3597号
被控訴人(被告)B社に個人情報を提供した控訴人(原告)らが、被控訴人B社が被控訴人S社にその管理を委託し、被控訴人(被告)S社が更に外部業者に再委託し、再委託先の従業員が当該個人情報を漏えいさせたこと(本件漏えい)につき、被控訴人らにおいて控訴人らの個人情報の管理に注意義務違反があった、被控訴人S社は上記従業員の使用者であり、上記従業員の行為は被控訴人S社の事業の執行についてされたなどして、本件漏えいにより控訴人らは精神的苦痛を被ったと主張して、被控訴人らにおいて、共同不法行為に基づき、連帯して損害賠償をすることを求めた事案の控訴審において、控訴人らにおいて慰謝料の支払によって慰藉すべき精神的損害が発生したことを認定しつつ、本件漏えいの発覚後、被控訴人B社及びその持株会社において、直ちに被害の拡大防止措置が嵩じられたことなど、本件にあらわれた一切の事情を総合して、控訴人らの請求をそれぞれ一部認容し、原判決を変更した事例。
2019.09.17
損害賠償請求事件
LEX/DB25570439/最高裁判所第二小法廷 令和 1年 9月 6日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1730号
交通事故の被害者に対して高齢者の医療の確保に関する法律による給付(後期高齢者医療給付)を行った後期高齢者医療広域連合である上告人が、上記事故の加害者である被上告人に対し、同法58条により上記被害者の被上告人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を代位取得したとして、損害賠償金及び遅延損害金の支払を求め、遅延損害金の起算日が争われた事案の上告審において、高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合は、その給付事由が第三者の不法行為によって生じた場合、当該第三者に対し、当該後期高齢者医療給付により代位取得した当該不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務について、当該後期高齢者医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を求めることができると判示したうえで、上告人は、被上告人に対し、本件医療給付の価額の合計額である287万7298円について、本件医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を求めることができるとし、原判決中287万7298円に対する平成22年8月25日から平成30年1月26日までの遅延損害金の支払請求を棄却すべきものとした部分を破棄し、この部分については、本件医療給付が行われた日等について更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻し、その余の上告は棄却した事例(意見がある)。
2019.09.17
建物明渡等請求控訴事件
LEX/DB25563566/東京高等裁判所 令和 1年 7月17日 判決 (控訴審)/平成31年(ネ)第842号
控訴人(原告・相模原市)が訴外甲に市営住宅を賃貸し、甲の母である被控訴人が甲の賃貸借契約上の債務を連帯保証したところ、甲が賃料を滞納していると主張して、控訴人が被控訴人(被告)に対し、連帯保証契約に基づいて、甲に対する訴状送達の日である平成30年2月20日までの滞納賃料217万4500円及びこれに対する原審口頭弁論終結日である同年12月14日までの確定違約金30万7400円並びに滞納賃料に対する同月15日から支払済みまで約定の年8.9パーセントの割合による違約金、平成30年2月21日からCが明渡しを完了した日である同年5月25日までの賃料相当損害金である84万2100円の支払を求め、原判決は、控訴人の請求のうち、45万8300円(平成28年5月31日までの滞納賃料38万7200円及び確定違約金7万1100円)並びにこれに対する同年6月1日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による違約金のみ認容し、その余は棄却したため、控訴人は、原判決を不服として控訴した事案で、控訴人の請求は、87万1900円(滞納賃料71万4200円、確定違約金15万7700円)及びうち71万4200円に対する平成30年12月15日から支払済みまで年8.9パーセントの割合による違約金の支払を求める限度で一部認容した事例。
2019.09.10
不当利得返還請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 11月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25563646/東京地方裁判所 令和 1年 8月 7日 判決 (控訴審)/平成30年(レ)第818号
控訴人(原告)が、本件建物の賃貸借契約の締結を媒介した被控訴人(被告)が、媒介の依頼を受けるに当たって控訴人の承諾を得ていないにもかかわらず、宅地建物取引業法46条1項及び「宅地建物取引業法の規定により宅地建物取引業者が受けることのできる報酬の額」(昭和45年10月23日建設省告示第1552号。本件賃貸借契約が締結された当時のものは,平成16年2月18日国土交通省告示第100号による改正後のもの)の規制を超える額の媒介報酬を控訴人から受領したものであり、上記規制を超える額の受領は宅建業法46条2項に違反し無効であると主張して、被控訴人に対し、不当利得返還請求権に基づき、被控訴人が受領した媒介報酬のうち上記規制を超える11万8125円の支払等を求め、原審は、控訴人は被控訴人との間の本件賃貸借契約のための媒介契約が成立した際に被控訴人から媒介報酬額の承諾を得ていたと認められ、宅建業法46条2項に違反しないとして控訴人の請求を全部棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、原判決を取消し、宅建業法46条1項、2項及び報酬告示所定の最高額を超える契約部分は無効であり、本件において同条項の最高額を超える部分である11万8125円の媒介報酬の支払については無効であるから、被控訴人は、控訴人に対し、不当利得に基づく利得金返還を命じた事例。
2019.09.10
損害賠償請求事件
LEX/DB25563675/東京地方裁判所 令和 1年 6月18日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第26013号
弁護士である原告が、被告に対し、被告が原告につき東京弁護士会に申し立てた懲戒請求が不法行為に当たり、これによって弁護士としての名誉・信用を害され、また、いわゆる在日コリアンという属性に基づく人種差別を受けるなどして精神的苦痛を被った旨主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料及び弁護士費用の合計55万円の支払等を求めた事案において、本件懲戒請求は弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められ、不法行為を構成するとして、原告の請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2019.09.03
審決取消請求事件
LEX/DB25570428/最高裁判所第三小法廷 令和 1年 8月27日 判決 (上告審)/平成30年(行ヒ)第69号
被上告人(原告)が、ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤に係る特許(特許第3068858号)につき、その特許権を共有する上告人(被告)らを被請求人として特許無効審判を請求したところ、同請求は成り立たない旨の審決を受けたため、同審決の取消しを求め、原審が、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案において、本件各発明の効果、取り分けその程度が、予測できない顕著なものであるかについて、優先日当時本件各発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か、当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から十分に検討することなく、本件化合物を本件各発明に係る用途に適用することを容易に想到することができたことを前提として、本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみから直ちに、本件各発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定して本件審決を取消したものとみるほかなく、このような原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決を破棄し、本件各発明についての予測できない顕著な効果の有無等につき更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻した事例。
2019.09.03
遺産分割後の価額支払請求事件 
LEX/DB25570429/最高裁判所第三小法廷 令和 1年 8月27日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1583号
亡Aの妻であるB及びAの子である上告人がAの遺産について分割の協議を成立させた後、被上告人がAの子であることを認知する旨の判決が確定し、被上告人が、上告人に対し、民法910条に基づく価額の支払を求めた事案の上告審で、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は、当該分割の対象とされた積極財産の価額であるとし、相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や、他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合であっても、異なるものではないと判示したうえで、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができるとし、上告を棄却した事例。
2019.08.27
措置取消等請求事件
LEX/DB25570407/最高裁判所第二小法廷 令和 1年 8月 9日 判決 (上告審)/平成30年(行ヒ)第299号
死刑確定者である被上告人(控訴人・原告)が、被上告人宛ての信書の一部について受信を許さないこととして当該部分を削除した拘置所長の措置は違法であると主張して、上告人(被控訴人・被告)を相手に、同措置の取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、原審は、被上告人の本件処分の取消請求を認容し、損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、拘置所は、被収容者と外部との間で日常的に多数の信書の発受が行われており、被収容者が外部から受ける信書の一部を抹消する作業には相当の負担を伴うものであること等に照らせば、所長が、本件記述部分の発受を許さないこととするに当たり、これを削除したことについて、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとはいえず、本件処分は適法であり、所長が本件処分をしたことは国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の請求を棄却した第1審判決は正当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2019.08.27
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25563320/東京高等裁判所 令和 1年 7月16日 判決 (控訴審)/平成30年(う)第1849号
被告人が、平成29年11月上旬頃から同月15日までの間に、東京都内又はその周辺において、覚せい剤を自己の身体に摂取したとし、原審は、有罪判決を言い渡したため、被告人が控訴した事案で、本件鑑定書は、違法収集証拠として証拠能力を否定すべきであって、原裁判所がこれを証拠として採用したことは、刑事訴訟法317条に違反するものであり、本件鑑定書を証拠として採用しなければ、原判示の覚せい剤使用の事実を認めるに足りる証拠はないから、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2019.08.27
各取締役に対する損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
LEX/DB25570365/東京高等裁判所 令和 1年 5月16日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第2968号 等
一審原告会社及び一審原告株主が、巨額の金融資産の損失の計上を避けるために、ファンド等に金融資産を買い取らせるなどして損失を分離した上、それを解消するために企業を買収するなどした結果、金利及びファンド運用手数料等の支払を余儀なくされ、虚偽の記載のある有価証券報告書等の提出により、罰金の納付を余儀なくされたなどとして、取締役らに対し損害賠償を請求するなどした事案の控訴審において、本件罰則等が科されたのは、一審被告A5らが取締役として判断、意思決定をして虚偽記載がある本件有価証券報告書等を提出した結果であって、承継前一審被告A1及び一審被告A2による本件善管注意義務違反と本件罰則等の損害との間に相当因果関係を認めることはできないとし、請求を一部認容した原判決を一部取り消し、一部変更した事例。
2019.08.20
執行文付与に対する異議事件
LEX/DB25570406/最高裁判所第二小法廷 令和 1年 8月 9日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1626号
被上告人が、上告人に対し、本件相続放棄を異議の事由として、執行文の付与された本件債務名義に基づく被上告人に対する強制執行を許さないことを求める執行文付与に対する異議の訴えで、甲が死亡し、その相続人である乙が甲からの相続について承認又は放棄をしないで死亡し、丙が乙の相続人となったいわゆる再転相続に関し、民法916条は、同法915条1項の規定する相続の承認又は放棄をすべき3箇月の期間(熟慮期間)は、「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算する旨を規定しているところ、本件では、Aからの相続に係る被上告人の熟慮期間がいつから起算されるかが争われた事案の上告審において、民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時をいうものであるとし、原審の判断に、民法916条の解釈適用を誤った違法があるが、本件相続放棄が熟慮期間内にされたものとして有効であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2019.08.20
文書提出命令申立についてした決定に対する抗告事件
LEX/DB25563340/大阪高等裁判所 令和 1年 7月 3日 決定 (抗告審)/令和1年(ラ)第620号
補助参加人において分譲マンション用地を購入するに際していわゆる地面師詐欺被害に遭い、購入代金55億円余を支払ったにもかかわらず所有権移転登記を受けることができなかったことにつき、株主である原告が、当時の役員である被告ら各自に善管注意義務違反ないし忠実義務違反があったとして、補助参加人のために前記購入代金相当額の損害賠償等を求めた株主代表訴訟の基本事件に対し、本件は、原告が上記の各義務違反を基礎付ける事実等を立証するために必要があるとして、補助参加人が所持する本件調査報告書外について文書提出命令を申し立てたところ、原決定は、補助参加人に対し、「本決定確定後14日以内に」本件調査報告書を受訴裁判所に提出するよう命ずる決定をしたため、これに不服の抗告人(本案被告ら補助参加人)が抗告した事案で、本件調査報告書は自己利用文書に該当するとは認められないとし、原決定は相当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2019.08.13
在外日本人国民審査権確認等請求事件(第1事件)、国家賠償請求事件(第2事件)
「新・判例解説Watch」憲法分野 10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25570333/東京地方裁判所 令和 1年 5月28日 判決 (第一審)/平成30年(行ウ)第143号 等
日本国外に住所を有する日本国民である原告らが、〔1〕主位的に、次回の最高裁判所裁判官国民審査において審査権を行使することができる地位にあることの確認を求め、予備的に、次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求め、また、〔2〕平成29年10月22日執行の前回国民審査において審査権を行使することができなかったことについて、国家賠償を求めた事案において、前回国民審査において在外国民が審査権を行使することを認めないことについて、やむを得ない事由があったとは到底いうことができないから、最高裁判所裁判官国民審査法が、前回国民審査当時、在外国民であった原告らの審査権の行使を認めていなかったことは、国民に対して審査権を認めた憲法15条1項並びに79条2項及び3項に違反するものであったとして、〔1〕に係る訴えをいずれも却下し、〔2〕の国家賠償請求を一部認容した事例。
2019.08.13
選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
LEX/DB25563149/東京地方裁判所 令和 1年 5月24日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第17007号
原告が、第47回衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙に立候補しようとしたところ、公職選挙法92条1項1号が立候補のために必要と定める300万円又は同額の国債証書を供託することができず、上記選挙に立候補することが許されなかったが、同選挙に立候補するために供託が必要と定める公選法92条1項1号は、憲法15条1項により保障される立候補の自由を侵害し、立候補者資格について財産又は収入による差別を禁止する憲法44条ただし書、市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)25条に違反することが明らかであり、国会は、公選法を改正して供託の定めを廃止し又は供託金の額を減額することが必要不可欠であるにもかかわらず、正当な理由なく、長期にわたり立法措置を怠ったというべきであるから、当該立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けると主張して、被告(国)に対し、慰謝料の支払を求めた事案において、選挙供託金制度は、憲法15条1項、憲法44条ただし書及びB規約25条のいずれにも違反するものではなく、国会が選挙供託金制度を廃止し又は供託金の額を減額する立法行為をしなかったことが国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとして、原告の請求を棄却した事例。
2019.08.13
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25563247/東京高等裁判所 令和 1年 5月16日 判決 (控訴審)/平成31年(ネ)第272号
中国で腎臓移植手術を受けた控訴人が、同手術後の継続治療(フォローアップ治療)を受けるため、被控訴人(国立大学法人)が開設、運営する被控訴人病院を受診したところ、診療を拒否されたことが不法行為ないし債務不履行に当たるとして、被控訴人に対し,使用者責任(民法715条)若しくは不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求又は債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)として、損害賠償金の支払等を求め、原審が控訴人の請求を棄却したため、これに不服の控訴人が控訴した事案において、本件対応の時点で、控訴人に対して緊急の診療の必要性があったとはいえないこと、通院の利便性が劣る面はあったにせよ、紹介元での診療が確実に見込まれていたし、その他の医療機関で診療を受けることも十分可能であったこと、本件申合せに基づく本件対応は、イスタンブール宣言に則っての大学病院の対応として、相応の合理性のあるものであったことが認められ、応招義務に関する医師法19条1項の規定の趣旨を十分考慮しても、被控訴人担当医師が控訴人の診療を拒否したことは、社会通念上正当として是認できるものであり、不法行為が成立するとは認められないとし、また、本件対応について、被控訴人に債務不履行責任が成立するとは認められないとし、本件控訴を棄却した事例。