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2021.09.07
各覚醒剤取締法違反、関税法違反被告事件
LEX/DB25590270/東京高等裁判所 令和 3年 7月13日 判決 (控訴審)/令和2年(う)第1596号
被告人両名が、国際的な密輸組織による覚せい剤密輸に被告人両名が運び屋として関与したとして、各覚せい剤取締法違反、関税法違反の罪で起訴され、原審が、被告人両名につき、それぞれ罪となるべき事実を認定し、被告人両名をそれぞれ懲役6年及び罰金200万円に処し、被告人両名から、それぞれ保管中の覚せい剤及び現金のうち4万円に相当する部分を没収する旨判決したところ、被告人両名がそれぞれ控訴した事案で、被告人両名が、日本への渡航時に、運搬する荷物の中に違法薬物等が含まれているとの具体的、現実的な可能性を認識していたとの事実は、原審証拠に照らして検討しても、合理的な疑いを容れない程度に証明されているとはいえず、被告人両名に覚せい剤輸入の故意があったと認めるには合理的疑いが残るのに、これがあったと認定した原判決には事実の誤認があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決は破棄を免れないとして、刑事訴訟法397条1項、382条により原判決を破棄し、被告人両名に対しいずれも無罪を言い渡した事例。
2021.09.07
損害賠償(国賠)請求控訴事件
LEX/DB25590468/東京高等裁判所 令和 3年 6月 3日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第4120号
一審原告が、一審被告千葉市の設置する本件小学校の5年生に在学中に、一審被告D及び一審被告Eの子であるHからいじめを受け、かつ,、審原告及びHが在籍していたクラスの学級担任であったJ教諭を始めとする本件小学校の校長及び教員がHの言動に関して適切な措置をとらなかったことにより肉体的、精神的苦痛を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと主張して、一審被告らに対し、当時Hの監督義務者であった一審被告Dらについては民法714条1項に基づき、一審被告千葉市については国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償として1404万5820円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、一審原告の請求を一審被告Dらに対し33万円及びこれに対する上記遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容し、一審被告Dらに対するその余の請求及び一審被告千葉市に対する請求をいずれも棄却したところ、一審原告及び一審被告Dらは、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した事案で、原判決を変更し、一審原告の請求は一審被告らに対し388万5778円及びこれに対する上記遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容し、その余の請求はいずれも棄却した事例。
2021.08.31
損害賠償請求事件 
LEX/DB25590341/東京地方裁判所 令和 3年 6月16日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第12521号
損害保険会社である原告が、株式会社ユニソクとの間で締結した貨物海上保険契約の目的物である貨物を英国から日本まで航空運送した被告に対し、ユニソクの被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権を保険代位により取得したこと、または、実行運送契約の荷受人である日本通運株式会社の被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権を譲り受けたことに基づき、保険金支払額相当の損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、原告の主張する本件貨物のうち1個の木箱の側面に破損した(本件木割れ)及びそれに起因する科学研究用機器の損傷が、被告による航空運送中に生じたとは認められないとして、原告の請求を棄却した事例。
2021.08.31
(東京電力福島第一原発群馬訴訟第2審判決) 
LEX/DB25571648/東京高等裁判所 令和 3年 1月21日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第2620号
一審原告らが、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波により、一審被告東電が設置し運営する福島第一原子力発電所(本件原発)から放射性物質が放出される事故が発生したことにつき、一審被告東電は、本件原発の敷地高を超える津波の発生等を予見しながら、本件原発の安全対策を怠り、また、経済産業大臣は、一審被告東電に対して平成24年法律第47号による改正前の電気事業法に基づく規制権限を行使すべきであったにもかかわらずこれを行使しなかった結果、本件事故が発生したと主張し、一審被告東電に対し、主位的に民法709条に基づき、予備的に原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、一審被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する損害賠償として、一人当たり2000万円及び弁護士費用200万円のうち,慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円並びにこれに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審が、一審原告らの一部について請求を一部認容し、その余の請求をいずれも棄却したため、一審原告らは、敗訴部分を不服として控訴し、一審原告らは、不服の範囲を330万円及びこれに対する遅延損害金の部分に限定して控訴し、(なお、原告番号79、80は、当審において請求を拡張した。)、一審被告国及び一審被告東電は、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した事案で、一審原告らの一審被告国に対する請求及び一審被告東電に対する主位的請求はいずれも理由がないから棄却し、一審被告東電に対する予備的請求は別紙認容額一覧表の「当審における認容額」欄記載の各金額の限度で理由があるから認容し、その余の予備的請求は理由がないから棄却するのが相当であるとし、原判決を一部変更した事例。
2021.08.24
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25590021/千葉地方裁判所 令和 3年 6月22日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第10号
抗告人・日本放送協会が、相手方が遅くとも平成25年10月21日までに抗告人のテレビジョン放送を受信できる受信機を設置したと主張して、相手方に対し、〔1〕相手方には抗告人の放送受信契約の申込みに対する承諾義務があるとして、同申込みに対する承諾の意思表示をすることを求めるとともに、〔2〕〔1〕の判決確定を条件として、同意思表示により成立する放送受信契約に基づき、未払放送受信料の支払を求めた基本事件について、原決定が、民事訴訟法18条に基づき、基本事件を千葉簡易裁判所から千葉地方裁判所に職権で移送したところ、抗告人がこれを不服として抗告した事案で、本件において、現時点で基本事件を地方裁判所で審理することが相当であるとうかがわせる事情は認められず、基本事件を地方裁判所に移送した原決定は、簡易裁判所に与えられた合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ないとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.24
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25590022/千葉地方裁判所 令和 3年 6月22日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第14号
抗告人・日本放送協会が、相手方が遅くとも平成26年10月までに抗告人のテレビジョン放送を受信できる受信機を設置したと主張して、相手方に対し、〔1〕相手方には抗告人の放送受信契約の申込みに対する承諾義務があるとして、同申込みに対する承諾の意思表示をすることを求めるとともに、〔2〕〔1〕の判決確定を条件として、同意思表示により成立する放送受信契約に基づき、未払放送受信料の支払を求めた基本事件について、原決定が、民事訴訟法18条に基づき、基本事件を千葉簡易裁判所から千葉地方裁判所に職権で移送したところ、抗告人がこれを不服として抗告した事案で、本件において、現時点で基本事件を地方裁判所で審理することが相当であるとうかがわせる事情は認められず、基本事件を地方裁判所に移送した原決定は、簡易裁判所に与えられた合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ないとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.24
行政措置要求判定取消、国家賠償請求控訴事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和3年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25569720/東京高等裁判所 令和 3年 5月27日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第45号
一審原告は、国家公務員で、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律2条に定める性同一性障害者で、性別適合手術を受けておらず、戸籍上の性別変更をしていないトランスジェンダーで、一審原告は外見上女性と同様であるのに、本件トイレに係る処遇によって省庁舎内の女性用トイレを自由に使用することができず、性別適合手術を受けて戸籍上の性別変更をしない限り、将来の異動先で女性トイレを使用するには性自認についての説明会を要するなどと言われたなどとして、人事院に対し戸籍上の性別及び性別適合手術を受けたかどうかに関わらず、他の一般的な女性職員との公平処遇を求める要求をし、人事院から本件各措置要求はいずれも認められない旨の判定を受けたことから、一審原告が、本件判定はいずれも違法である旨を主張し、本件判定に係る処分の取消しを求め(第1事件)、また、一審原告が上記各制限を受けていることは、職員らがその職務上尽くすべき注意義務を怠ったもので、一審原告はこれにより精神的損害を受けたと主張して、一審被告・国に対し、慰謝料等及び遅延損害金の支払を求め(第2事件)、原審は、第1事件につき、本件判定のうち、一審原告が女性トイレを使用するためには性同一性障害者である旨を女性職員に告知して理解を求める必要があるとの当局による条件を撤廃し、一審原告に職場の女性トイレを自由に使用させることとの要求を認めないとした部分を取り消すとともに、第2事件につき、一審被告に対し、132万円及び年5パーセントの割合による金員の支払を命じた。このため、原審の判断を不服とする一審原告及び一審被告がそれぞれ控訴をし、一審原告が当審において、A調査官が一審原告のプライバシー情報を暴露したと主張して、慰謝料請求額を50万円増額し、全体の請求額を拡張した事案で、原判決を変更して、第1事件に係る一審原告の請求を棄却し,第2事件に係る一審被告の請求を11万円及びこれに対する遅延損害金の支払を認める限度で一部認容し、その余の請求については棄却し、一審原告の控訴を棄却し、また、一審原告の当審における国家賠償請求に係る拡張請求も棄却した事例。
2021.08.24
株主総会決議取消請求事件(第1事件、第2事件)(乾汽船の株主総会決議取消請求事件)
LEX/DB25590307/東京地方裁判所 令和 3年 4月 8日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第24145号 等
被告の株主である原告が、被告に対し、令和元年6月開催の定時株主総会における取締役選任議案、買収防衛策導入議案等を可決する各決議には、無効な委任状に基づく議決権行使、違法な投票用紙に基づく議決権行使、招集通知等における虚偽記載ないし重要事項の不記載、議決権行使書面の不適切集計等の瑕疵があり、招集手続又は決議方法に法令違反若しくは著しい不公正があるとして、会社法831条1項1号(平成17年法律第86号)に基づき、各決議の取消しを求めた事案(第1事件)、原告が、被告に対し、令和2年6月の定時株主総会における取締役選任議案、情報提供要請承認議案等の各議案を可決する各決議には、招集通知の発送日の期間制限違反、招集通知等における虚偽記載ないし重要事項の不記載、議決権行使書面の不適切集計の瑕疵があり、招集手続又は決議方法に法令違反若しくは著しい不公正があるとして、同法831条1項1号に基づき、各決議の取消しを求め、また、情報提供要請承認議案については特別利害関係人による議決権行使によって著しく不公正な決議がされたとして、同項3号に基づき、当該決議の取消しを求めた事案(第2事件)において、本件訴えのうち、令和元年総会の取締役選任議案の取消しを求める部分はその利益を欠くから却下し、その余の請求についてはいずれも棄却した事例。
2021.08.17
住居侵入被告事件
LEX/DB25590287/大阪高等裁判所 令和 3年 7月16日 判決 (控訴審)/令和2年(う)第1303号
被告人が、正当な理由がないのに、平成30年10月18日午後9時57分頃から同日午後10時10分頃までの間に、神戸市内に所在する被害者方敷地内に同敷地北西側駐車場出入口から同人方浴室付近外側まで侵入したとして被告人を有罪としたため、被告人が控訴した事案で、原判決は、長方形をなす被害者方敷地の1辺の一部にしか囲障が存在しないにもかかわらず、これをもって敷地全体について被害者方の利用のために供されている土地であることが明示されていると認めているが、その理由は実質的には何ら示されておらず、その趣旨を本件駐車スペースに限って上記のとおり認められるというものと理解したとしても、その理由は不合理なものであって是認できないとし、また、被告人が立ち入った場所に限ってみても、囲障によって被害者方の利用に供し、部外者の立入りを禁止するという居住者の意思が明示されている場所であるとは認められないとし、被告人が立ち入った場所が被害者方住居に当たると認めて被告人を住居侵入罪で有罪とした原判決には、事実の誤認があり、それが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡した事例。
2021.08.17
損害賠償等請求控訴、同附帯控訴事件
LEX/DB25590268/福岡高等裁判所 令和 3年 7月12日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第16号 等
(1)一審被告鳥栖市の設置した中学校の生徒であった一審原告P1が、〔1〕同じ学校の一審被告生徒らが、一連一体となって一審原告P1に対するいじめを行い、これにより一審原告P1は精神的苦痛を受け、後遺障害が生じ、かつ、金銭を喝取されたことなどによって経済的損害を被った、〔2〕当時一審被告生徒らの親権者であった一審被告保護者らは、一審被告生徒らが上記いじめ行為に及んだことに関して監督義務違反があり、また、仮に一審被告生徒らの中に、上記いじめ行為に及んだ時点で責任無能力者であった者がいる場合、その生徒の親権者は民法714条1項本文に基づく責任を負う、〔3〕一審被告生徒らによる上記いじめ行為が発生したこと及び発生後の対応に関し、上記中学校の教諭及び校長並びに鳥栖市教育委員会に安全配慮義務違反等の義務違反があり、これらの義務違反と一審原告P1が上記いじめ行為により被った損害との間には相当因果関係があるから、一審被告鳥栖市は国家賠償法1条1項に基づき損害賠償責任を負うと主張し、一審被告生徒らに対しては民法719条1項、709条に基づき、一審被告保護者らに対しては同法709条又は714条1項本文に基づき、一審被告鳥栖市に対しては国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、損害の一部である1億1123万6078円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、(2)一審原告P1の父である一審原告家族が、それぞれ、一審原告P1がいじめを受けたことにより、独自の損害を被ったと主張し、被告生徒らに対しては民法719条1項、709条に基づき、一審被告保護者らに対しては同法709条又は714条1項本文に基づき、一審被告鳥栖市に対しては国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、各賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を、それぞれ求め、(3)一審原告らが、一審被告生徒ら及び一審被告保護者らに対し、一審原告P1の人格権に基づき一審原告らへの接触等の行為の禁止を求め、原判決は、一審原告P1の請求のうち、一審被告生徒らに対し、原判決別紙認容額一覧表の総額欄記載の金額及びうち原判決別紙遅延損害金起算日一覧表記載の金員に対する同一覧表の遅延損害金起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で請求を認容し、一審原告P1のその余の請求並びに一審原告家族の請求をいずれも棄却した。一審原告P1及び一審被告P8がそれぞれ原判決中敗訴部分を不服として控訴し、一審原告家族が原判決を不服として控訴し、一審被告P9が原判決中敗訴部分を不服として附帯控訴した事案で、一審原告P1の一審被告生徒らに対する請求については、別紙2認容額一覧表の各一審被告の「総額」欄記載の金額及びこれに対する不法行為の後である平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却すべきであるところ、これと異なる原判決は一部不当であり、一審原告P1の一審被告P2、一審被告P3、一審被告P4、一審被告P5、一審被告P6及び一審被告P7に対する控訴並びに一審被告P8の控訴及び一審被告P9の附帯控訴は一部理由があり、一審原告P1の一審被告P8及び一審被告P9に対する控訴は理由がなく、一審原告P1の一審被告鳥栖市及び一審被告保護者らに対する請求並びに一審原告家族の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであるところ、これと同旨の原判決は相当であるとした事例。
2021.08.10
覚醒剤取締法違反,大麻取締法違反,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25571667/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 7月30日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1763号
第1審裁判所は、本件ビニール袋が本件車両内にはもともとなかったものであるとの疑いは払拭できないから、警察官が、本件ビニール袋は本件車両内にもともとなかったにもかかわらず、これがあることが確認された旨の疎明資料を作成して本件車両に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求した事実があったというべきであり、本件薬物並びに本件薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書(本件各証拠)の収集手続には重大な違法がある旨の判断を示した上、本件各証拠の証拠能力を否定した。これに対し、原判決は、本件各証拠の証拠能力を否定した第1審裁判所の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある旨の検察官の控訴趣意をいれ、第1審判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻しを言い渡したため、被告人が上告した事案で、本件各証拠の証拠能力を判断するためには、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断する必要があるというべきであり、原判決は、本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかった疑いは残るとしつつ、その疑いがそれほど濃厚ではないなどと判示するのみであって、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断したものと解することはできないとし、本件各証拠の証拠能力の判断において本件事実の持つ重要性に鑑みると、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例(補足意見がある)。
2021.08.10
損害賠償請求事件
LEX/DB25590217/東京地方裁判所 令和 3年 6月30日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第31895号
原告が、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140文字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)において被告がしたツイートにより名誉を毀損され、また、名誉感情を侵害された旨主張して、不法行為に基づく損害賠償金220万円の一部である60万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、本件各ツイートの記載内容に加えて、本件各ツイートの前提となる原告のツイートにおいて、原告自身が過去の自らの「炎上」について記載していることなどに照らすと、本件各ツイートの投稿が、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認めるに足りず、原告の人格的利益としての名誉感情を違法に侵害するものということはできないとして、請求を棄却した事例。
2021.08.03
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25569781/千葉地方裁判所 令和 3年 6月21日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第13号
放送法により設立された法人である抗告人が、抗告人のテレビジョン放送を受信することのできる受信設備を設置した相手方に対し、放送受信契約の申込みに対して承諾する義務を負うとして、承諾の意思表示をすべきことを求めるとともに、当該承諾を命ずる判決の確定を条件として、平成26年11月分から令和3年3月分までの受信契約に基づく受信料合計の支払を求める基本事件を千葉簡易裁判所に提起したところ、同裁判所が、基本事件を民事訴訟法18条に基づき職権により千葉地方裁判所に移送するとの原決定をし、それに対して抗告人が抗告した事案で、現時点で、基本事件が複雑な争点を含む、あるいは審理に時間を要する見込みであり、社会に与える影響が大きいなどといった事情も認められず、加えて、原審は、職権で原決定をするに際し、当事者の意見聴取(民事訴訟規則8条2項)をしていないため、相手方が、地方裁判所における審理及び裁判を希望していることをうかがわせる事情もないから、基本事件について地方裁判所における審理及び裁判が相当であるといえる事情が認められない現時点において、基本事件を千葉地方裁判所に移送した原決定は、民事訴訟法18条に基づく移送をすべきかどうかの判断が簡易裁判所の合理的裁量に委ねられていることを前提としても、同判断の際に考慮すべき事情を考慮したものであるとはいえず、裁量の範囲を逸脱したものというべきであるとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.03
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25569780/千葉地方裁判所 令和 3年 6月18日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第12号
基本事件は、放送法に基づいて設立された抗告人が、相手方が衛星系によるテレビジョン放送を受信することができるテレビジョン受信機を設置したことにより、相手方は、抗告人に対し、受信契約を締結し、本件受信契約に基づき受信料を支払う義務を負うなどと主張して、相手方に対し、放送法64条1項に基づき、本件受信契約締結の申込みに対する承諾の意思表示を求めるとともに、当該意思表示により成立する本件受信契約に基づき、令和2年10月分から令和3年3月分までの受信料の合計の支払を求めたところ、原審簡易裁判所が、事案の性質に鑑み、地方裁判所における審理が相当であるとして、民事訴訟法18条に基づき、職権で基本事件を千葉地方裁判所に移送する旨の決定をしたことから、抗告人がこれを不服として、即時抗告申立てをした事案で、本件においては、原決定がされた当時、いまだ基本事件について第1回期日の指定も相手方に対する訴状の送達もされておらず、抗告人の請求に対する相手方の答弁も不明であって、相手方の答弁次第では、簡易裁判所における簡易かつ迅速な審理により終局することも十分想定し得るところであり、現時点で、地方裁判所において審理した方が適切な解決となるような複雑な事件であることはうかがわれず、その他、現時点で、基本事件を地方裁判所に移送するのが相当というべき事情は認めるに足りないとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.03
投稿記事削除仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25569760/東京高等裁判所 令和 3年 6月17日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ラ)第791号
強制わいせつの被疑事実により逮捕され、その後不起訴になった抗告人が、インターネット関連のサービスを提供・運営する相手方法人に対して、氏名不詳者が公開しているブログ上に投稿した本件逮捕事実に関する画像付きニュース記事が、抗告人の更生を妨げられない利益を侵害している旨主張して、人格権に基づき、本件各投稿記事を仮に削除するよう求め、原審が抗告人の申立てを却下したところ、抗告人が即時抗告した事案で、本件逮捕事実は、社会における正当な関心事として公共の利害に関する事項であり、本件各投稿記事の公益性を否定することはできないのであり、抗告人が、会社に迷惑が及ぶことを懸念して会社役員を辞任していること、被害者と示談し不起訴処分となっていることなどの事情を考慮しても、本件逮捕事実を公表されない利益が、本件逮捕事実を公表する理由に明らかに優越するというのは困難であるところ、抗告人の申立てを却下した原決定は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.08.03
地位確認等請求控訴事件
LEX/DB25569736/札幌高等裁判所 令和 3年 4月28日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第310号
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業所としての指定を受けた施設において勤務していた控訴人ら(従業員であるb及び同aと本件施設で勤務していた施設利用者ら8名)が、本件施設を運営していた被控訴人会社及びその代表取締役である被控訴人cによる控訴人らの解雇は無効であり、被控訴人らの不法行為に当たるほか、被控訴人cには任務懈怠があったなどと主張して、被控訴人らに対し、地位確認及び損害賠償金等の連帯支払を求め、原審が、被控訴人らに対し、施設利用者ら8名にそれぞれ1人につき損害賠償金の連帯支払を求める限度で請求を一部認容し、施設利用者らのその余の請求並びに控訴人b及び同aの請求をいずれも棄却したところ、控訴人b及び同a並びに施設利用者らのうち4名(控訴人利用者ら)が控訴した事案で、控訴人らに対する本件解雇については、本件施設の閉鎖、これに伴う人員削減の必要性及び人選の合理性については肯定することができるものの、控訴人利用者ら及び控訴人bらのいずれに対する解雇についても、その解雇手続は相当とはいえず、控訴人らに対する解雇は、いずれも客観的に合理的な理由を欠き、無効であると言わざるを得ず、本件解雇は控訴人らに対する不法行為に当たり、被控訴人らは、本件解雇によって控訴人らが受けた損害を賠償すべき責任を連帯して負担すべきであるとされるところ、これと異なる判断をした原判決は相当ではないとして、原判決を変更し、控訴人b及び同aの請求を一部認容し、控訴人利用者らへの支払額を増額した事例。
2021.08.03
措置命令取消請求事件
LEX/DB25590216/大阪地方裁判所 令和 3年 4月22日 判決 (第一審)/令和1年(行ウ)第73号
通信販売事業者である原告は、平成29年12月にお節料理である本件7商品の取引について、原告各ウェブサイトに歳末特別価格により販売する旨の本件各広告表示を掲載したところ、消費者庁長官は、本件各表示が不当景品類及び不当表示防止法5条2号(有利誤認表示)に該当するとして、景品表示法7条1項に基づき、原告に対し、平成31年3月6日付けで本件各表示が景品表示法に違反するものであることを一般消費者に周知徹底するなどの措置を講ずることを命ずる旨の措置命令をしたため、原告が本件命令の取消しを求めた事案において、本件各表示はいずれも景品表示法5条2号に該当するものであり、また、本件命令に平等原則、適正手続等に反する違法があるとはいえないから、本件命令は適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。
2021.07.27
損害賠償請求事件
LEX/DB25571651/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 7月19日 判決 (上告審)/令和1年(受)第1968号
株式会社である上告人が、その監査役であった被上告人に対し、被上告人がその任務を怠ったことにより、上告人の従業員による継続的な横領の発覚が遅れて損害が生じたと主張して、会社法423条1項に基づき、損害賠償を求めたところ、原審は、被上告人はその任務を怠ってはいないとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、会計限定監査役は、計算書類等の監査を行うに当たり、会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても、計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば、常にその任務を尽くしたといえるものではないと判示し、これと異なる見解に立って、被上告人はその任務を怠ってはいないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人が任務を怠ったと認められるか否かについては、上告人における本件口座に係る預金の重要性の程度、その管理状況等の諸事情に照らして被上告人が適切な方法により監査を行ったといえるか否かにつき更に審理を尽くして判断する必要があり、また、任務を怠ったと認められる場合にはそのことと相当因果関係のある損害の有無等についても審理をする必要があるから、本件を原審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2021.07.27
保全異議申立事件の決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告申立て事件
LEX/DB25569666/名古屋高等裁判所 令和 3年 5月14日 決定 (許可抗告審)/令和3年(ラ許)第33号
申立人・会社が、保全異議申立事件の決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告を申し立てた事案で、高等裁判所の決定に対しては、特別抗告のほか、最高裁判所の判例と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合であるとして、高等裁判所が許可したときに限り、最高裁判所に抗告をすることができるところ(民事訴訟法337条1項、2項)、申立人が本件抗告許可申立ての理由として主張するところを検討しても、申立人が差止めを求めていた本件新株予約権無償割当ての効力が既に発生していることは公知の事実であり、もはや当該無償割当てを差し止める余地はないから、結局、原決定についてその結論を左右するような許可抗告事由を含むものとは認められず、本件申立ては、民事訴訟法337条2項所定の抗告を許可すべき場合に該当しないとして、本件抗告を許可しなかった事例。
2021.07.27
窃盗被告事件
LEX/DB25569719/大阪高等裁判所 令和 3年 3月 3日 判決 (控訴審)/令和2年(う)第900号
被告人が、a株式会社b店において、アルコールチェッカー2点等4点(販売価格合計1万6156円)を窃取したとして、窃盗の罪で懲役3年を求刑され、原審が、京都府警察本部刑事部科学捜査研究所職員dによる鑑定は十分信用でき、それによれば、犯人と被告人の同一性が相応に強く推認され、合理的な疑いを差し挟むことのない程度に犯人と被告人の同一性を強く推認することができるとして、被告人を懲役1年10か月に処したところ、事実誤認を主張して被告人が控訴した事案で、d鑑定の信用性に関する原判決の証拠評価は不合理であり、d鑑定により犯人と被告人の同一性が相当に強く推認できるという原判決の判断は不合理であること、d鑑定及び他の証拠により認められる類似点は犯人と被告人の同一性を推認させる力が高いものとはいえず、また質店における売却の事実の推認力が限定的なものに過ぎず、そして、推認力の高くない上記2つの事実を総合しても、被告人が犯人でないとしたならば合理的な説明が極めて困難な事実関係があるとまではいえず、被告人が犯人であると認定することには合理的な疑いを差し挟む余地があるというべきであるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。