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2023.04.11
共有持分移転登記手続請求事件
LEX/DB25572742/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第324号
上告人は、被上告人に対し、遺留分減殺を原因とする不動産の所有権一部移転登記手続を求める訴えを提起したが、被上告人は、適式な呼出しを受けたにもかかわらず、第1審の第1回口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったため、第1審で、一人の裁判官によって審理されていたところ、同裁判官は、上記期日において口論弁論を終結し、判決言渡期日を指定し、上記の指定に係る判決言渡期日において、上記口頭弁論に関与していない裁判官が、民事訴訟法254条1項により、判決書の原本に基づかないで上告人の請求を全部認容する第1審判決を言い渡したが、上告人は、本件第1審判決には民事訴訟法249条1項に違反する判決手続の違法があり、これは再審事由(同法338条1項1号)にも当たるなどとして、本件第1審判決を取消し、改めて上告人の請求を全部認容する旨の判決を求めて控訴をし、原判決は、本件控訴は不適法であるとして却下したため、上告人が上告した事案で、第1審において、事件が一人の裁判官により審理された後、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が民事訴訟法254条1項により判決書の原本に基づかないで第1審判決を言い渡した場合、その判決手続は同法249条1項に違反するものであり、同判決には民事訴訟の根幹に関わる重大な違法があり、また、上記の違反は、訴訟記録により直ちに判明する事柄であり、同法338条1項1号に掲げる再審事由に該当するものであるから、上記の第1審判決によって紛争が最終的に解決されるということもできないとして、上告人は、本件第1審判決に対して控訴をすることができるとし、本件控訴を不適法であるとして却下した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、改めて審理をさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2023.04.11
死体遺棄被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和5年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572744/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第196号
被告人は、当時の被告人方において、被告人が出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、死体を遺棄したとして、第1審判決は、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処したが、これに対し被告人が控訴し、原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たるとし、第1審判決を破棄し、懲役3月、2年間の執行猶予を言い渡したため、被告人が上告をした事案で、被告人の行為は、死体を隠匿し、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したものであるが、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとし、原判決は、「遺棄」についての解釈を誤り、本件作為が「遺棄」に当たるか否かの判断をするに当たり必要なその態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点からの検討を欠いたため、重大な事実誤認をしたとし、本件作為について死体遺棄罪の成立を認めた原判決及び第1審判決は、いずれも判決に影響を及ぼすべき法令違反及び重大な事実誤認があるとして、原判決を破棄し、既に検察官による立証は尽くされているので、当審において自判し、被告人に無罪の言渡しをした事例。
2023.04.04
未払賃金等請求事件
LEX/DB25572682/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月10日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1019号
被上告人に雇用され、トラック運転手として勤務していた上告人が、被上告人に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金並びに付加金等の支払を求めたところ、原審は、上告人の各請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、被上告人の上告人に対する本件時間外手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたものとした原審の判断には、割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分を破棄し、上告人に支払われるべき賃金の額、付加金の支払を命ずることの当否及びその額等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2023.04.04
電子計算機使用詐欺被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 解説記事が掲載されました
LEX/DB25594479/山口地方裁判所 令和 5年 2月28日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第69号 等
被告人は、A銀行の支店に開設された自己名義の普通預金口座に、山口県B町が住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金として4630万円を誤って振込入金したこと(本件誤振込金)を利用して、電子計算機を使用し、被告人口座の預金からオンラインカジノサービスの決済代行業者にその利用料金の支払いをすることによりこれを利用し得る地位を得ようと考え、誤って振り込まれた被告人に無関係なものであることを認識しているものの、その旨をA銀行に告知していないため、本件誤振込金についてデビットカード情報を利用して決済代金の支払委託等をすることが許されないにもかかわらず、デビットカード情報を利用し、アメリカ合衆国2万4000ドル余り相当のオンラインカジノサービスを利用し得る地位を得て、財産上不法の利益を得た行為をしたとして、懲役4年6か月を求刑された事案において、被告人がインターネットに接続した携帯電話機からA銀行の電子計算機に情報を与える行為は正当な権利行使とはいえず、電子計算機使用詐欺罪が成立するとして、被告人に懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例。
2023.03.28
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対する異議申立て事件
LEX/DB25572679/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 7日 決定 (異議審)/令和5年(す)第14号
強制性交等致傷、強制わいせつ被告事件についてした上告棄却決定に対し、被告人が弁護人を介して被告人本人作成の上告趣意書を提出したはずであり、原決定には被告人本人の上告趣意について判断遺脱があるとして、異議申立てをした事案で、弁護人が上告棄却決定後に、被告人作成の上告趣意書を裁判所に提出した事実につき、原審がした上告棄却決定に何ら判断遺脱はないとして、本件申立てを棄却した事例。
2023.03.28
(日野町事件第2次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25594460/大阪高等裁判所 令和 5年 2月27日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成30年(く)第251号
P3(平成23年3月18日死亡。事件本人)に対する強盗殺人被告事件について、同人を犯人と認め、無期懲役に処した大津地方裁判所の確定判決につき再審の開始を認めた原決定に対し、弁護人が提出した証拠等の証明力を検討しないまま、新規性のある新証拠である限り、その証明力にかかわらず全て旧証拠との総合評価に立ち入った点、及び旧証拠に対する再評価を各証拠の立証命題とは関係なく行った点において、その判断は極めて違法・不当であり、確定判決の心証形成にみだりに介入した違法があるから、これを取消し、請求人らの再審請求を棄却する旨の裁判を求め、検察官の抗告人が、即時抗告をした事案で、事件本人を本件の犯人と認めた確定判決等の事実認定には合理的な疑いが生じており、原審で取り調べられた各新証拠は、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠に当たり、無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠があらたに発見されたとし、刑事訴訟法435条6号、448条1項により、事件本人について再審を開始した原決定の結論は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.03.22
マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年6月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572676/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 9日 判決 (上告審)/令和4年(オ)第39号
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号利用法。令和3年法律第36号による改正前のもの)により個人番号を付番された上告人(原告・控訴人)らが、被上告人(被告・被控訴人。国)が番号利用法に基づき上告人らの特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)の収集、保管、利用又は提供をする行為は、憲法13条の保障する上告人らのプライバシー権を違法に侵害するものであると主張して、被上告人に対し、プライバシー権に基づく妨害予防請求又は妨害排除請求として、上告人らの個人番号の利用、提供等の差止め及び保存されている上告人らの個人番号の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、第1審は、上告人らの請求を棄却したため、上告人らが控訴し、控訴審も棄却したため、上告人らが上告した事案で、行政機関等が番号利用法に基づき特定個人情報の利用、提供等をする行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできないとし、上記行為は、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではないと解するのが相当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.03.22
消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25572659/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 6日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第10号
不動産の売買等を目的とする株式会社である上告人(原告・被控訴人)が、本件各課税期間において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物の購入(本件各課税仕入れ)をし、これに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税の確定申告をしたところ、麹町税務署長から、その全額を控除することはできないとして本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を受けたことから、被上告人(被告・控訴人。国)を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求め、第1審判決は、上告人の請求を全部認容したため、被上告人が控訴し、原判決は、本件各課税仕入れは共通対応課税仕入れに区分されるべきものであり、〔2〕本件各更正処分は平等取扱原則に違反するものではなく、〔3〕本件各確定申告において消費税の申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとはいえないから、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分はいずれも適法であるとして、第1審判決を取消し、上告人の請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、本件各課税仕入れに係る控除対象仕入税額は、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額となるというべきであるとし、また、本件各申告において、上告人が本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとし、原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.03.22
消費税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25572660/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 6日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第260号
不動産の買取再販売等を行う株式会社である被上告人(原告・控訴人)が、本件各課税期間において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物の購入(本件各課税仕入れ)をし、これに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税の確定申告をするなどしたところ、日本橋税務署長から、その全額を控除することはできないとして本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を受けるなどしたことから、上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消し等を求め、原判決は、本件各建物は転売まで住宅として賃貸されることが見込まれていたから、本件各課税仕入れは、個別対応方式による用途区分において共通対応課税仕入れに区分されるべきであり、本件各更正処分は適法であるなどとした上で、本件各賦課決定処分は違法であるとして、その取消請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件各申告において、被上告人が本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとし、これと異なる原審の判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、第1審判決は正当であるから、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.03.14
動産引渡等請求事件
LEX/DB25572655/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 3月 2日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1176号
被上告人が、被上告人を債務者とする動産執行事件において物資搬送装置一式(本件動産)を買受けた上告人に対し、本件動産の売却は無効であるなどと主張して、所有権に基づき、本件動産の引渡し等を求めたところ、原審は、本件動産の引渡しを求める被上告人の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、執行処分が弁済受領文書(民事執行法39条1項8号)の提出による強制執行の停止の期間中にされたものであったとしても、そのことにより当該執行処分が当然に無効となるものではないというべきであり、本件売却は、弁済受領文書の提出による強制執行の停止の期間中にされたことにより当然に無効となるものではないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、所有権に基づき本件動産の引渡しを求める被上告人の請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.03.14
法人税更正処分等取消請求控訴事件
LEX/DB25572529/東京高等裁判所 令和 4年 9月14日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第36号
連結納税の承認を受けた内国法人である控訴人(原告)が、法人税及び地方法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、英領バミューダ諸島において設立された控訴人の子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料は、租税特別措置法施行令(平成28年政令第159号による改正前のもの)39条の117第8項5号括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のうちいわゆる非関連者基準を満たさないなどとして、本件法人税再更正処分及び本件地方法人税再更正処分並びに本件法人税当初賦課決定処分及び本件地方法人税当初賦課決定各処分をしたため、被控訴人(被告。国)に対し各処分について、控訴人主張額を超える各部分の取消しを求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が控訴した事案で、本件再保険契約に係る収入保険料は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に当たるものとし、処分行政庁の判断は誤りであるとして、原判決を取り消し、控訴人の請求をいずれも認容した事例。
2023.03.07
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年5月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572633/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月21日 判決 (上告審)/令和3年(オ)第1617号
上告人(原告・控訴人。憲法を守ることを目的として設立された権利能力なき社団)が、金沢市長の管理に属する金沢市庁舎前広場において「憲法施行70周年集会」を開催するため、金沢市庁舎等管理規則6条1項(平成23年金沢市規則第55号)所定の許可を申請したところ、同市長から不許可処分を受けたことについて、上告人及びその関係者であるその余の上告人らが、被上告人(金沢市)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めたところ、第一審判決は上告人らの請求を棄却し、原判決も上告人らの控訴を棄却したため、上告人らが上告した事案で、金沢市庁舎前広場における集会に係る行為に対し金沢市庁舎等管理規則5条12号を適用することが憲法21条1項に違反するものということはできないなどとして、本件上告を棄却した事例(反対意見がある)。
2023.03.07
貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件
LEX/DB25572636/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月20日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第288号
東京都内に事務所を設け、株式会社Aの名称で、「給料ファクタリング」と称する取引を行っていた被告人が、(1)都知事の登録を受けないで、業として、約4か月間、969回にわたり、合計504名の顧客に対し、口座に振込送金する方法により、貸付名目額合計2790万9500円(実交付額合計2734万2120円)を貸し付け、もって登録を受けないで貸金業を営んだという貸金業法違反(同法47条2号、11条1項、3条1項)、(2)業として金銭の貸付けを行うに当たり、約4か月間、33回にわたり、前記株式会社A名義の普通預金口座に振込送金で受け取る方法により、前記顧客のうち8名から、法定の1日当たり0.3パーセントの割合による利息合計11万8074円を101万7816円超える合計113万5890円の利息を受領したという出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反(同法5条3項後段)から成る事案の上告審において、本件取引に基づく金銭の交付は、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たるとして、被告人について、(1)貸金業法違反及び(2)出資法違反の各罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は相当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.02.28
仮処分命令申立事件
「新・判例解説Watch」知的財産法分野 令和5年6月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572503/東京地方裁判所 令和 4年11月25日 決定 (第一審)/令和3年(ヨ)第22075号
債権者が、工芸美術館新築工事、一体化工事及び公園整備工事と称する各工事の実施を計画する債務者に対し、債務者が、これらの工事の一部である本件各工事を行うことにより、版画美術館と称する建物及びその敷地であって芹ヶ谷公園の一部を構成する本件庭園に係る債権者の著作者人格権が侵害されるおそれがあると主張して、著作権法112条1項に基づき、本件各工事の差止めを求めた事案において、版画美術館は、全体として、「美術」の「範囲に属するもの」であると認められ、かつ、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であると認められるから、「建築の著作物」として保護されると示しつつ、本件工事1の1ないし4については、「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」として、著作権法20条2項2号が適用されるから版画美術館に係る債権者の同一性保持権が侵害されたとは認められないなどとして、本件申立てをいずれも却下した事例。
2023.02.28
仮の地位を定める仮処分申立事件(面会交流)
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和5年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25594097/福岡家庭裁判所 令和 4年 6月28日 審判 (第一審)/令和3年(家ロ)第1045号
別居中の夫婦間において、父である申立人が、母であり、未成年者らを現に監護している相手方に対し、未成年者らとの面会交流を求め、その時期、方法等を定めるよう申し立てた事件を本案として、仮に面会交流を認めることを求めた事案(なお、相手方は、未成年者の長男が申立人の行為に起因してPTSD再燃との診断を受けていること、申立人から生活の監視や精神的いじめ等のDVを受け、別居後も非開示を希望していた住所を探索されるなどし、当事者間に面会交流を実施するための協力関係を築くことが困難であること等を理由に、申立人と未成年者らの面会交流を認めるべきでない旨の意向を有している。)において、実施された申立人と未成年者らとの面会交流の状況を踏まえると、その後の未成年者らに関する診療経過等をもって、面会交流の実施が未成年者の利益に反するものということはできないから、申立人と未成年者らの面会交流を実施するのが相当であるとして、相手方は、申立人に対し、申立人が未成年者らと面会交流することを仮に許さなければならないと命じた事例。
2023.02.21
根抵当権実行禁止等仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25572582/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 2月 1日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第16号
抗告人所有の不動産について相手方を根抵当権者とする根抵当権の実行としての競売の開始決定がされたところ、抗告人が、上記根抵当権の被担保債権が時効によって消滅したことにより上記根抵当権は消滅したと主張して、相手方に対し、上記競売手続の停止及び上記根抵当権における実行禁止の仮処分命令の申立てをしたところ、原審は、本件破産管財人がした認識の表示は本件各被担保債権についての債務の承認(民法147条3号(平成29年法律第44号による改正前のもの))に当たり、本件各被担保債権の消滅時効を中断する効力を有するから、本件各被担保債権の消滅時効は完成していないとして、原審は、本件申立ての却下決定に対する抗告棄却決定をしたため、抗告人が許可抗告をした事案において、破産管財人が、別除権の目的である不動産の受戻しについて上記別除権を有する者との間で交渉し、又は、上記不動産につき権利の放棄をする前後に上記の者に対してその旨を通知するに際し、上記の者に対して破産者を債務者とする上記別除権に係る担保権の被担保債権についての債務の承認をしたときは、その承認は上記被担保債権の消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当であるとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.02.21
強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ、準強制わいせつ被告事件
「新・判例解説Watch」刑法分野 解説記事が掲載されました
LEX/DB25594258/大阪高等裁判所 令和 5年 1月24日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第758号
かつて発達障害児を対象とする施設の児童指導員であった被告人が、約8か月間で、同施設で知り合った発達障害のある男子児童5名を自宅で寝泊まりさせた際、Bと口腔性交をし、あるいは就寝中のAの陰茎を被告人の口腔に入れて口腔性交をし、就寝中のC、DやEの陰茎を手指で触るわいせつ行為をし、それらの機会にその様子をスマートフォンで動画撮影するなどして児童ポルノを作成し、その動画データの一部を他人に提供し、それ以外の児童ポルノである動画データをSNSに投稿して公然陳列したとして起訴され、原審は、被告人を懲役15年に処したため、被告人が控訴した事案で、原判決には、検察官が、本来、上記各事実をいずれも姿態をとらせ製造罪として起訴すべきところを、誤ってひそかに製造罪が成立すると解し、同一機会の各事実と合わせると姿態をとらせたこととなる事実を記載しながら、「ひそかに」との文言を付して公訴事実を構成し、罰条には児童買春・児童ポルノ処罰法7条5項を上げた起訴状を提出し、原判決もその誤りを看過して、同様の事実認定をしたことによる法令適用の誤り、さらには、訴訟手続の法令違反があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役13年に処した事例。
2023.02.14
検察官がした刑事確定訴訟記録の閲覧申出一部不許可処分に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25572567/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 1月30日 決定 (特別抗告審)/令和4年(し)第594号
申立人が、東京簡易裁判所の略式命令により終結した政治資金規正法違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録(本件保管記録)の閲覧請求をしたのに対し、本件保管記録の保管検察官が、閲覧を一部不許可とした(本件閲覧一部不許可処分)ため、申立人が東京簡易裁判所に準抗告を申し立てたという事案の特別抗告審において、本件閲覧一部不許可処分は、検察庁法12条、関係通達に基づき、東京地方検察庁に属する検察官が東京区検察庁の検察官の事務を取り扱ってしたものであると認められ、地方検察庁に属する検察官が区検察庁の検察官の事務取扱いとして保管記録の閲覧に関する処分をした場合、当該区検察庁の対応する簡易裁判所は、刑事確定訴訟記録法8条1項にいう「保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所」に当たるというべきであり、東京簡易裁判所は本件準抗告の管轄裁判所でないとして、本件閲覧一部不許可処分の当否を審査しないまま、本件準抗告を棄却した原決定を取消し、本件を東京簡易裁判所に差し戻すことを命じた事例。
2023.02.14
発信者情報開示請求事件
LEX/DB25572563/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 1月30日 判決 (上告審)/令和3年(受)第2050号
インターネット上の電子掲示板に原判決別紙2投稿記事目録記載の本件記事が投稿されたことによって自己の権利を侵害されたとする上告人が、本件記事を投稿した者にインターネット接続サービスを提供した経由プロバイダである被上告人に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項(令和3年法律第27号による改正前のもの)に基づき、上記権利の侵害に係る発信者情報として、被上告人の保有する原判決別紙1発信者情報目録記載〔5〕の本件情報(発信者の電話番号)等の開示を請求したところ、原審は、本件情報の開示を求める上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該権利の侵害が改正省令の施行前にされたものであったとしても、プロバイダー責任制限法4条1項に基づき、当該権利の侵害に係る発信者情報として、上記施行後に発信者の電話番号の開示を請求することができるとして、上告人は、上記施行前に本件記事の投稿によってされた自己の権利の侵害に係る発信者情報として、発信者の電話番号の開示を請求することができるとして、原判決中、上告人の原審における追加請求に関する部分は破棄し、原審の確定した事実関係の下においては、上記部分に関する上告人の請求は理由があるから、上記請求を認容した事例。
2023.02.14
損害賠償請求事件
LEX/DB25572561/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 1月27日 判決 (上告審)/令和3年(受)第968号
統合失調症の治療のため、上告人(被告・被控訴人。香川県)の設置する本件病院に入院した患者が、入院中に無断離院をして自殺したことについて、患者の相続人である被上告人(原告・控訴人)が、上告人には、診療契約に基づき、本件病院においては無断離院の防止策が十分に講じられていないことを患者に対して説明すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った説明義務違反があるなどと主張して、上告人に対し、債務不履行に基づく損害賠償を求め、原審は、平日の日中は敷地の出入口である門扉が開放され、通行者を監視する者がおらず、任意入院者に徘徊センサーを装着するなどの対策も講じていないため、単独での院内外出を許可されている任意入院者は無断離院をして自殺する危険性があることを負っていたとし、これをを怠った説明義務違反を理由とする被上告人の損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、上告人が、患者に対し、本件病院と他の病院の無断離院の防止策を比較した上で入院する病院を選択する機会を保障すべきであったということはできず、これを保障するため、上告人が、患者に対し、本件病院の医師を通じて、説明をすべき義務があったということはできないとし、本件病院の医師が、本件患者に対し、説明をしなかったことをもって、上告人に説明義務違反があったということはできないとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、上記部分に関する被上告人の請求を棄却した事例。