2023.09.05
国家賠償請求控訴事件
LEX/DB25595642/札幌高等裁判所 令和 5年 6月22日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第202号
被控訴人らが、札幌市内で実施された第25回参議院議員通常選挙の候補者のための街頭応援演説に対し、路上等から「P1辞めろ」、「増税反対」などと声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕などをつかまれて移動させられ、あるいは長時間にわたって付きまとわれるなどしたと主張して、北海道警察を設置する地方公共団体である控訴人に対し、それぞれ国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金330万円等の支払を求め、原審は、警察官らが被控訴人らに対して違法な有形力の行使等を行ったものと認め、警察官らによるこれらの違法行為によって、被控訴人らの表現の自由のほか、被控訴人2の移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権が侵害されたとして、被控訴人らの請求のうち、被控訴人1につき33万円、被控訴人2につき55万円の各損害賠償金等の支払を求める限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないとして棄却したため、控訴人が控訴した事案において、被控訴人1の控訴人に対する請求は理由がなく棄却すべきであるから、被控訴人1の請求を一部認容した原判決は一部失当であり、控訴人の被控訴人1に対する控訴は理由があるから、原判決主文第1項を取消し、同部分につき被控訴人1の請求を棄却することとし、被控訴人2の控訴人に対する請求を一部認容した原判決は相当であり、控訴人の被控訴人2に対する控訴を棄却した事例。
2023.08.29
受刑者選挙権確認等請求事件
★「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年10月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25595549/東京地方裁判所 令和 5年 7月20日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第369号
令和元年以来懲役刑の執行を受けている原告が、「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」(受刑者)の選挙権等を一律に制限している公職選挙法11条1項(2号に係る部分に限る。)の規定は国民の選挙権等を保障した憲法の諸規定に違反し無効であるとして、被告に対し、〔1〕主位的に、憲法15条1項及び3項、79条2項及び3項、公職選挙法9条並びに最高裁判所裁判官国民審査法4条に基づき、原告が次回の衆議院議員の総選挙及び最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査並びに参議院議員の通常選挙において投票をすることができる地位にあることの確認を求め、予備的に、憲法15条1項及び3項、43条1項、44条ただし書並びに79条2項及び3項に基づき、次回の国政選挙等において原告に投票をさせないことが違法であることの確認を求めるとともに、〔2〕本件規定の改廃等を怠った違法な立法不作為により原告が既に行われた国政選挙等において投票をすることができず、精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、3万円及びうち2万円に対する令和3年10月31日(衆議院議員の総選挙及び国民審査が実施された日)から、うち1万円に対する令和4年7月10日(参議院議員の通常選挙が実施された日)から、各支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案で、本件規定は、憲法15条1項及び3項、43条1項、44条ただし書並びに79条2項及び3項に違反するものではないから、受刑者は、本件規定により、選挙権及び国民審査権を有しないとし、国会が本件規定の改廃等をしなかったことが違法な立法不作為に当たるものということはできないとし、本件各確認請求に係る訴えのうち違法確認請求に係る訴えは、不適法であるから却下し、その余の請求をいずれも棄却した事例。
2023.08.29
懲罰決議取消等請求事件
LEX/DB25595611/大阪地方裁判所 令和 5年 7月14日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第154号
市議会は、議員である原告に対し、原告の市議会の定例会の一般質問における発言について謝罪及び反省を求める旨の決議をしたことについて、原告は、〔1〕本件決議は違法な処分であるとして、被告を相手に、本件決議の取消しを求めるとともに、〔2〕本件決議並びに市議会の広報誌への本件決議の掲載及び同広報誌の頒布により原告の名誉が毀損されるなどしたとして、被告市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害金等の支払を求めた事案において、本件決議は、地方自治法135条1項1号の「公開の議場における戒告」に当たらず、また、本件決議は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に当たらないとし、本件取消しの訴えは、処分の取消しの訴えの対象とならない本件決議を対象として、処分の取消しの訴えを提起するものであるから不適法であるとして却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。
2023.08.22
保全命令申立却下決定に対する即時抗告事件
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LEX/DB25595689/知的財産高等裁判所 令和 5年 3月31日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和5年(ラ)第10001号
抗告人(原審債権者)が、相手方(原審債務者。町田市)に対し、工芸美術館新築工事等の一部である本件各工事の実施により、版画美術館及びその敷地であり芹ヶ谷公園の一部を構成する本件庭園に係る抗告人の著作者人格権(同一性保持権)が侵害されるおそれがあると主張して、著作権法112条1項に基づき、本件各工事の差止めを求めたところ、原審は、版画美術館は、抗告人がその著作者である「建築の著作物」(著作権法10条1項5号)に該当し、本件各工事によって版画美術館に加えられる変更は抗告人の意に反する改変に当たるが、「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」(著作権法20条2項2号)に該当すると判断し、また、本件庭園は、上記「建築の著作物」に該当するとは認められないとして、本件申立てをいずれも却下したため、これに対し、抗告人が即時抗告をした事案において、原決定は相当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.08.22
出資金払戻請求事件
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LEX/DB25595640/大阪地方裁判所 令和 4年11月24日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第5695号
協同組合である被告の組合員であった原告会社が、民事再生手続開始の決定を受けて、被告を脱退する旨の意思表示をしたところ、原告が、原告の被告に対する出資金501万円に係る返戻請求権は、脱退の効力が発生する事業年度の終了日において組合財産が存在することが被告の総代会において確認されたことにより停止条件が成就した旨主張して、被告に対し、本件出資金返戻請求権に基づき、上記出資金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、被告は、原告に対し、事業年度の終了に係る停止条件成就の機会を放棄して、本件再生債権を自働債権とし、出資に係る原告の被告に対する出資金払戻請求権501万円を受働債権として、対当額で相殺する旨の意思表示をしたが、本件再生手続開始当時同債権に係る債務が発生していない場合はもちろん、既に発生していた場合であっても、停止条件付債務に過ぎない以上、民事再生法92条1項の要件に該当しないから、本件相殺は、同項によっては許容されず、ほかに民事再生法上本件相殺が許容される根拠はないところ、原告の請求は理由があるとして認容した事例。
2023.08.15
損害賠償請求事件(那須雪崩事故遺族側勝訴判決)
LEX/DB25595542/宇都宮地方裁判所 令和 5年 6月28日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第83号
被告高体連主催の平成28年度春山安全登山講習会において、平成29年3月27日雪崩が発生し、県立高等学校の部活動の一環として参加していた生徒及び教師が死亡した雪崩事故について、被告県の公務員であり、かつ、本件講習会の講師であった被告P1、被告P2及び被告P3並びに被告高体連が、雪崩の発生を予見し、本件講習会を中止すべき義務があったのにこれを怠ったことによって生じたものであるとして、本件被災者らの遺族である原告らが、被告三講師及び被告高体連に対しては民法709条に基づき、被告県に対しては国家賠償法1条1項に基づき、各損害賠償金等の連帯支払を求めた事案で、被告県及び被告高体連に対する請求について、本件事故により各原告らに対し、別紙認容額一覧表の記載額の範囲内で賠償責任を負うとして認容し、原告らの被告県及び被告高体連に対するその余の請求並びに被告三講師に対する請求については、いずれも棄却した事例。
2023.08.15
マイナンバー離脱等請求控訴事件(マイナンバー制度からの離脱等請求訴訟控訴審判決)
LEX/DB25595303/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 5年 5月15日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第109号
控訴人(原告)らが、被控訴人(被告。国)において、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定に基づいて、個人番号を付された控訴人らの同意なく個人番号を含む個人情報を収集、保存、利用及び提供する制度を構築、運用していることは、控訴人らのプライバシー権(自己情報コントロール権)を侵害し、憲法13条及び41条に違反するものであると主張して、被控訴人に対し、〔1〕プライバシー権等に基づき、控訴人らの個人番号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに被控訴人が保存する控訴人らの個人番号の削除を求めるとともに、〔2〕国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求め、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らがこれを不服として控訴した事案において、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.08.08
「結婚の自由をすべての人に」訴訟事件
LEX/DB25595450/福岡地方裁判所 令和 5年 6月 8日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第2827号 等
同性の者との婚姻届を提出したが受理されなかった原告らが、同性同士の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(本件諸規定)は、同性同士の婚姻が認められない法的状態を生じさせており、憲法13条、14条1項及び24条に違反するにも関わらず、被告が必要な立法措置を怠ったことが国家賠償法1条1項の適用上違法であると主張して、被告に対し、慰謝料等の支払を求めた事案において、同性間の婚姻を認めていない本件諸規定が立法府たる国会の裁量権の範囲を逸脱したものとして憲法24条2項に反するとまでは認めることができないとし、本件諸規定を改廃していないことが、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないというべきであるとして、原告らの請求を棄却した事例。
2023.08.08
損害賠償(株主代表訴訟)請求控訴事件(世紀東急工業株主代表訴訟控訴審)
LEX/DB25595301/東京高等裁判所 令和 5年 1月26日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第2134号
E(控訴人ら補助参加人)の株主である被控訴人が、Eにおいて遅くとも平成23年3月から平成27年1月27日までの間、同業他社8社との間で共同してアスファルト合材の販売価格の引上げを行っていく旨の合意をすることにより、公共の利益に反して、我が国における合材の販売分野における競争を実質的に制限していた行為が独占禁止法2条6項に規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金28億9781万円の納付命令を受け、上記課徴金の納付を余儀なくされたことについて、Eの当時の取締役又は代表取締役であった控訴人らには善管注意義務違反があり、そのためにEは納付した上記課徴金の一部である18億3417万円相当の損害を被ったと主張して、会社法423条1項に基づく損害賠償請求として、控訴人Bに対しては18億3417万円、控訴人Aに対しては17億3227万円、控訴人C及び同Dに対しては各15億7942万円、各控訴人の上記責任金額の限度で連帯してEに支払うことを求め、原審は、被控訴人の請求をいずれも認容したところ、控訴人らがこれを不服として控訴した事案(なお、Eは、当審において、控訴人らを被参加人として補助参加した。)で、被控訴人の請求をいずれも認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.08.01
地位確認等請求事件
★「新・判例解説Watch」労働法分野 令和5年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25572945/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 7月20日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1293号
上告人(一審被告。自動車学校)を定年退職した後に、上告人と有期労働契約を締結して勤務していた被上告人(一審原告)らが、上告人と無期労働契約を締結している労働者との間における基本給、賞与等の相違は労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条に違反するものであったと主張して、上告人に対し、不法行為等に基づき、上記相違に係る差額について損害賠償等を求め、原判決は、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求を一部認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法があるなどとして、原判決中、被上告人らの基本給及び賞与に係る損害賠償請求に関する上告人敗訴部分は破棄し、被上告人らが主張する基本給及び賞与に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否か等について、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻すこととし、上告人のその余の上告については却下した事例。
2023.08.01
産業廃棄物処理施設設置許可処分取消請求事件
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LEX/DB25595453/広島地方裁判所 令和 5年 7月 4日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第24号
原告らにおいて、本件土地を設置場所とする産業廃棄物最終処分場につき、訴外組合の申請に対して広島県知事(処分行政庁)が令和2年4月23日付けでした廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条1項に基づく産業廃棄物処理施設設置許可処分には、(1)本件申請が廃棄物処理法15条の2第1項各号に適合していないのにこれを許可した違法性、(2)廃棄物処理法15条3項に違反してこれを許可した違法性、(3)廃棄物処理法15条の2第3項に違反してこれを許可した違法性、(4)廃棄物処理法15条5項、6項に違反してこれを許可した違法性がある旨主張して、被告(広島県)に対し、本件許可処分の取消しを求めた事案で、原告番号1、7、8及び12には本件許可処分の取消しを求める法律上の利益を欠き、原告適格が認められず、同原告らの訴えは不適法であるとして却下し、その余の原告らの請求については、生活環境影響調査項目の一つである地下水と水質の2点をめぐる処分行政庁の調査や審査及び判断の過程には看過しがたい過誤、欠落があると認められるから、処分行政庁の判断に不合理な点があり、その判断に基づく本件許可処分は違法であるとして、認容した事例。
2023.07.25
行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件
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LEX/DB25572932/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 7月11日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第285号
一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている上告人(一審原告)が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のトイレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定を受けたことから、被上告人(一審被告。国)を相手に、本件判定の取消し等を求め、第1審判決は、上告人の請求を一部認容したが、原判決は、本件判定部分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ないとし、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとして、原判決中、人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2023.07.25
審決取消請求事件(ダイレックス(株)による審決取消請求事件)
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LEX/DB25595467/東京高等裁判所 令和 5年 5月26日 判決 (第一審)/令和2年(行ケ)第5号
原告は、被告(公正取引委員会)が原告に対してした排除措置命令及び課徴金納付命令について、それぞれその全部の取消しを求める審判請求をし、被告は、本件排除措置命令を変更し、本件課徴金納付命令を一部取り消す旨の審決をした。本件は、原告が、本件審決について、原告の審判請求を棄却した部分につき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律82条1項各号所定の取消事由がある旨を主張して、同項に基づき、その取消しを求めた事案で、本件各命令(本件審決後において、なお効力を有するもの)はいずれも適法であり、本件審決に独占禁止法82条1項各号所定の取消事由があるとは認められないとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.07.18
威力業務妨害被告事件
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LEX/DB25506582/大阪高等裁判所 令和 5年 6月14日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第427号
旧P6総合センターの施設管理業務のために大阪府が大阪労働局と共同で管理していた防犯カメラにゴム手袋や白色ビニール袋を被せて、そのレンズを塞ぎ、2度にわたり威力を用いて人の業務を妨害したとして、原判決は、各公訴事実と同旨の原判示第1及び第2の各事実を認定し、これらが威力業務妨害罪に該当すると認めて被告人3名を有罪とした上(ただし、P4被告人については、原判示第2のみ)、P1被告人を罰金50万円に、P2被告人を罰金30万円に、P4被告人を罰金10万円に、それぞれ処したため、これに不服の被告人が控訴した事案で、本件カメラの角度変更の目的に関する事実誤認の主張、業務の要保護性に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張、威力該当性に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張、正当防衛の成否に関する事実誤認及び法令適用の誤りの主張はいずれも理由があり、その余の主張を判断するまでもなく、被告人3名は無罪であることが明らかであり、また、被告人3名は、いずれも無罪の判決を求める主張をするほか、本件公訴の提起自体が違法であり、あるいは、原裁判所は、不法に公訴を受理したものとして公訴棄却の判決を求める旨の本案前の主張もしているが、当裁判所は、本案前の主張について検討、判断するまでもなく、無罪の判断に至ったものであり、被告人3名にとってより有利であり、かつ、同人らが求めている無罪判決をするに熟している以上、本案前の主張の当否を判断するまでもなく、原判決を破棄し、無罪を言い渡した事例。
2023.07.18
ウイルス性肝炎患者の救済を求める全国B型肝炎訴訟広島訴訟損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25594965/広島高等裁判所 令和 5年 3月17日 判決 (控訴審)/令和2年(ネ)第221号
B型慢性肝炎の患者である控訴人らが、乳幼児期に被控訴人・国が実施した集団予防接種又は集団ツベルクリン反応検査を受けた際、注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、その後、成人になって慢性肝炎を発症し、いったんは沈静化した後に、更に慢性肝炎(HBe抗原陰性慢性肝炎)を再発したとして、従前の慢性肝炎の発症による損害とは区別される別個の損害が発生した旨主張して、上記再発後に発生した損害の包括一律請求として、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金等の各支払を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らが控訴した事案で、本件においては、被控訴人の集団予防接種等と控訴人らのHBV感染との間の因果関係を肯定するのが相当であり、控訴人らのHBe抗原陰性慢性肝炎の発症に係る肉体的・経済的損害及び精神的損害は甚大なものがあるというべきであるから、控訴人らの請求は、本件の同法上の違法行為と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、原判決を取り消し、控訴人らの請求をいずれも認容した事例。
2023.07.11
懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件
LEX/DB25572914/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 6月27日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第274号
上告人(一審被告。宮城県)の公立学校教員であった被上告人(一審原告)が、酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、職員の退職手当に関する条例12条1項1号の規定により、退職手当管理機関である宮城県教育委員会から、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けたため、上告人を相手に、上記各処分の取消しを求め、原審は、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、本件全部支給制限処分の取消請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、本件全部支給制限処分に係る県教委の判断は、被上告人が管理職ではなく、本件懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間にわたって誠実に勤務してきており、反省の情を示していること等を勘案しても、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、本件全部支給制限処分にその他の違法事由も見当たらず、その取消請求は理由がなく、上告人の控訴に基づき、第1審判決中、上告人敗訴部分を取消し、同部分につき被上告人の請求を棄却する内容で、原判決を変更した事例(反対意見がある)。
2023.07.11
(大崎事件第4次再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25595222/福岡高等裁判所宮崎支部 令和 5年 6月 5日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和4年(く)第25号
請求人の母親であるAに対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日鹿児島地方裁判所が言い渡した有罪判決(Aに対する確定判決)及び請求人の父親であるB(平成5年10月2日死亡)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日同裁判所が言い渡した有罪判決(Bに対する確定判決)に関し、A及びBに対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したから、請求人は、刑事訴訟法439条1項4号に該当する者として、同法435条6号により各再審開始請求(いわゆる大崎事件第4次再審請求)をしたところ、各再審請求を棄却したため、請求人が即時抗告した事案で、S鑑定及びQ・R鑑定はH及びIの各供述を減殺するものとはいえず、また、N鑑定は、各確定判決が証拠の標目に掲げたJ旧鑑定の信用性を減殺するものではあるが、各確定判決の事実認定においてJ旧鑑定が占める重要性からすれば、各確定判決の事実認定に合理的疑いを生じさせるものとはいえず、H及びIの各供述の信用性、B、C及びFの各自白並びにGの供述の信用性を減殺するものとはいえないとし、弁護人の提出する新証拠は、確定判決の事実認定に合理的疑いを差し挟むものとはいえないと判断した原決定に誤りはないとして、本件各即時抗告を棄却した事例。
2023.07.04
窃盗未遂被告事件
LEX/DB25572908/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 6月20日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第680号
被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、市役所職員及び金融機関職員になりすましてキャッシュカードを窃取しようと考え、氏名不詳者らが、被害者方に電話をかけ、被害者(当時76歳)に対し、過払金を還付する金融機関口座のキャッシュカードが古く、使えないようにする必要があるので、同キャッシュカードを回収しに行く旨のうそを言い、さらに、金融機関職員になりすました被告人が、被害者名義等のキャッシュカード在中の封筒をすり替えて窃取するためのトランプカード在中の封筒を携帯し、同人方付近路上まで赴いたが、氏名不詳者らと通話中の被害者が不審に思って電話を切るなどしたため、その目的を遂げなかった窃盗未遂の事件で、第1審判決は、「被告事件が罪とならないとき」に当たるとして、刑事訴訟法336条により、被告人に対して無罪を言い渡したため、検察官が控訴し、原判決は、第1審判決に事実誤認はないが、窃盗未遂罪の成立を否定した点において刑法43条本文の解釈適用を誤った違法があるとして、法令適用の誤りにより第1審判決を破棄し、自らは何ら事実の取調べをすることなく、本件公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して、被告人を懲役3年、4年間執行猶予に処したため、被告人が上告した事案で、本件公訴事実記載の事実の存在については、第1審判決によって認定されており、原審において第1審の無罪判決を破棄して有罪判決をしたことは、第1審判決の法令の解釈適用の誤りを是正したにとどまるものというべきであるから、原審が事実の取調べをすることなく、訴訟記録及び第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって、直ちに本件公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して自ら有罪の判決をしたことは、刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとして、本件上告を棄却した事例。
2023.07.04
国家賠償請求事件
LEX/DB25595224/名古屋地方裁判所 令和 5年 5月30日 判決 (第一審)/平成31年(ワ)第597号
同性カップルである原告らが、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(本件諸規定)は、憲法24条及び14条1項に違反するにもかかわらず、被告が必要な立法措置を講じていないため、婚姻をすることができない状態にあると主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告(国)に対し、慰謝料等の支払を求めた事案で、本件諸規定が、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるというべきであるから、その限度で、憲法24条2項に違反すると同時に、憲法14条1項にも違反するものといわざるを得ないとしたうえで、本件諸規定の改廃を怠ったことは、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとはいえず、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2023.06.27
警察庁保有個人情報管理簿一部不開示決定取消等請求控訴事件
LEX/DB25595169/東京高等裁判所 令和 5年 5月17日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第31号
控訴人(原告)は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律4条1項に基づき、警察庁長官に対し、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律10条2項1号、2号又は11号に該当する個人情報ファイルの数及び名称、同ファイルに含まれる個人情報の概要等が分かる行政文書の開示請求をしたところ、同長官は、本件開示請求の対象となる文書を保有個人情報管理簿126通と特定した上で、そのうち同項11号に該当する個人情報ファイルに係る4通の管理簿を開示し、その余の122通の管理簿については、それぞれの項目を示す部分のみを開示し、各項目の内容を記載した部分はいずれも不開示とする旨の決定をしたことで、控訴人が、被控訴人(被告。国)に対し、本件処分の取消し及び本件各文書のうち本件不開示部分についての開示決定の義務付けを求め、原審は、原判決別表1の各記載欄に「○」を付していない部分は、情報公開法5条3号所定の情報(3号情報)又は同条4号所定の情報(4号情報)に該当すると認められる一方、その余の部分はこれらの該当性を認めることができず、情報公開法6条1項に基づいて開示されなければならないなどと判断して、本件処分のうち、原判決別表1記載の各部分は違法であるとしてこれを取消し、警察庁長官に対して同部分を開示する旨の決定をするよう命じ、本件処分のうちその余の取消請求については棄却し、本件訴えのうちその余の義務付け請求に係る部分は不適法として却下したため、これを不服とする控訴人が、控訴した事案において、本件不開示部分につき一律に不開示情報該当性を認めることはできず、本件各文書の記載欄ごとに不開示情報該当性を検討すべきところ、全10項目のうち3項目の記載欄についてはいずれも3号情報又は4号情報に該当すると認められ、7項目の記載欄については,そのうち分類A及び分類Bの情報については3号情報又は4号情報に該当すると認められる一方、分類Cの情報についてはこれらの該当性を認めることができないとし、7項目の記載欄のうち分類Cに係る部分は、情報公開法6条1項に基づき、開示しなければならないとして、原告の請求中、本件処分のうち本件各文書中別表1記載の各部分を不開示とした部分の取消しを求め、同部分につき開示決定の義務付けを求める部分については認容し、その余の取消請求については棄却し、本件訴えのうち、その余の義務付け請求に係る部分については却下した事例。