2024.05.21
勾留の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25573490/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 4月24日 決定 (特別抗告審)/令和6年(し)第262号
刑事訴訟法207条の2の規定について、被疑者を勾留するに当たり、その理由を被疑事件を特定して告げるものとはいえず、また、被疑者が弁護人に依頼する権利を侵害するとして、憲法34条違反の主張につき、前提を欠き、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとして、抗告を棄却した事例。
2024.05.14
各株券引渡請求及び独立当事者参加事件
LEX/DB25573475/最高裁判所第二小法廷 令和 6年 4月19日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1266号
上告人が、被上告人会社に対し、株式会社U社の設立に当たり、その株式200株(本件株式1)を有する株主であることの確認等を求め、また、被上告人Y1に対し、上告人が株式会社U社の募集株式310株のうち240株(本件株式2)を有する株主であることの確認等を求めた事案の上告審において、本件株券1及び2につき、それぞれA及びCに交付されたことをもって、本件株式1及び2に係る株券としての効力を有しないということはできないから、上記両名から本件株券1及び2の交付を受けた上告人は、本件株式1及び2に係る株券の交付を受けたと認められる余地があるとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2024.05.14
死刑の執行告知と同日の死刑執行受忍義務不存在確認等請求事件
LEX/DB25599034/大阪地方裁判所 令和 6年 4月15日 判決 (第一審)/令和3年(行ウ)第122号
死刑確定者である原告らが、被告に対し、死刑執行告知と同日にされる死刑執行が違法である旨主張して、〔1〕行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟として、死刑執行告知と同日にされる死刑執行を受忍する義務がないことの確認を求める(本件確認の訴え)とともに、〔2〕死刑執行に関わる公務員らは、死刑確定者に対し、死刑執行告知と同日に死刑執行を行うという執行方法による死刑執行をしてはならない義務を負うにもかかわらず、同義務に違反し、このような死刑執行方法を維持していることにより原告らが精神的苦痛を被っている旨主張して、国家賠償法1条1項に基づき、損害金各1100万円(慰謝料各1000万円及び弁護士費用各100万円)等の支払を求めた(本件各賠償請求)事案で、本件確認の訴えは不適法であるとして却下し、また、本件各賠償請求は理由がないとして棄却した事例。
2024.05.07
損害賠償等請求本訴、損害賠償請求反訴事件
LEX/DB25573468/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 4月16日 判決 (上告審)/令和5年(受)第365号
本訴請求は、上告人(外国人の技能実習に係る監理団体)に雇用されていた被上告人(監理団体の指導員)が、上告人に対し、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する賃金の支払を求め、上告人は、被上告人が事業場外で従事した業務の一部(本件業務)については、労働基準法38条の2第1項(本件規定)にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるため、被上告人は所定労働時間労働したものとみなされるなどと主張し、これを争っている事案の上告審において、原審は、業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情を十分に検討することなく、業務日報による報告のみを重視して、本件業務につき本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとしたものであり、このような原審の判断には、本件規定の解釈適用を誤った違法があるとし、原判決中、本件本訴請求に関する上告人敗訴部分は破棄し、本件業務につき本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるといえるか否か等に関し更に審理を尽くさせるため、上記部分につき、本件を原審に差し戻すこととした事例(補足意見がある)。
2024.05.07
消費税等更正処分等取消請求事件
LEX/DB25598781/広島地方裁判所 令和 6年 1月10日 判決 (第一審)/令和5年(行ウ)第3号
パチンコ店を営む原告は、本件課税期間(平成31年1月1日から令和元年12月31日までの課税期間)の消費税及び地方消費税に係る確定申告をする際、B社から受け取った2億円(本件金銭)は、原告がC社との賃貸借契約を解除し、目的不動産から退去撤退することに伴い支払われた損失補償金であるとして、本件金銭を課税標準額に含めなかったことに対し、処分行政庁は、本件金銭は、原告の賃借人としての地位をB社に譲渡したことへの対価であり、消費税法2条1項9号の「課税資産の譲渡等」の対価の額に該当するとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、原告が、被告(国)に対して本件各処分の取消しを求めた事案において、本件金銭は、本件原契約上の地位という資産が消滅することに対する対価として支払われたものといえ、「資産の譲渡等」の対価とはいえないと判示し、本件更正処分によって新たに納付すべき税額は存在しないこととなるから、本件賦課決定処分は、課税要件を欠く違法なものであるとして、原告の請求を認容した事例。
2024.04.30
「結婚の自由をすべての人に」訴訟事件
LEX/DB25598385/東京地方裁判所 令和 6年 3月14日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第7645号
法律上同性の者同士の婚姻を希望する原告らが、現行の法律婚制度を利用できる者を法律上異性の者同士の婚姻に限定している民法及び戸籍法の本件諸規定が、憲法14条1項、24条1項及び同条2項に違反するにもかかわらず、被告(国)が、正当な理由なく長期にわたって、同性カップル等の婚姻を可能とする立法措置を講ずるべき義務を怠っているなどと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案で、同性カップル等が、現状、人格的利益の享受について大きな不利益を被っており、また、昨今の国際的な潮流や、日本における国民の意思の変容を踏まえれば、婚姻の主体を、法律上の男性と法律上の女性という異性カップルのみにすべきであるといった伝統的価値観は、揺らいでいるといえる状況にあるにもかかわらず、本件諸規定が、同性カップル等の婚姻を認めず、また、法律上、同性カップル等が婚姻による法的利益と同様の法的利益を享受したり、社会的に公証を受ける利益を享受したりするための制度も何ら設けられていないのは、同性カップル等が、自己の性自認及び性的指向に即した生活を送るという重要な人格的利益を、同性カップル等から剥奪するものにほかならないのであるから、本件諸規定及び立法がされていない状況は、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理的な理由があるとは認められず、憲法24条2項に違反する状態にあるとしたが、憲法24条1項、憲法14条1項に違反するとはいえないとし、本件諸規定を改廃していないことについて、被告に国家賠償法1条1項の違法があるということはできないとして、原告らの請求を棄却した事例。
2024.04.30
損害賠償請求控訴事件
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LEX/DB25573456/東京高等裁判所 令和 6年 1月19日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第3422号
焼き肉チェーン店を運営する第1審原告が、〔1〕第1審被告において、その運営する飲食店ポータルサイト(食べログ)において飲食店ごとに掲載される評点を算出するためのアルゴリズムについて、令和元年5月21日(本件基準日)、第1審被告が運営する飲食店を含むチェーン店の評点を下方修正するような変更を実施し、現在までこれを継続しているところ、本件アルゴリズムを変更する上記行為(本件変更等)は独占禁止法に違反する行為に当たり、これにより著しい損害を生ずるおそれがあるなどと主張して、第1審被告に対し、独禁法24条に基づき、本件アルゴリズムにおいて、第1審原告が運営するチェーン店の評点を算出するに当たり、チェーン店であることを理由に当該評点を、非チェーン店の評点に比して下方修正して設定するアルゴリズムを使用することの差止めを求めるとともに、〔2〕第1審被告の本件行為は不法行為を構成し、これによって、第1審原告が運営する飲食店の食べログにおける評点が下落し、来店者数及び売上げが減少するなどの損害を被ったと主張して、第1審被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として9億3195万6952円の一部である6億3905万4422円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審は、第1審被告の本件行為が優越的地位の濫用に該当し、独禁法違反行為に当たると認められるなどとして、第1審原告の各請求のうち不法行為に基づく損害賠償請求については、3840万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容してその余の請求を棄却したが、独禁法24条所定の要件があるとは認められないとして同条に基づく差止請求については棄却する判決をしたところ、当事者双方がいずれも敗訴部分を不服として各控訴をした事案(なお、第1審原告は、当審で、第1審被告の本件行為が第1審原告に対する債務の不履行に当たるとして、債務不履行に基づく損害賠償請求に係る訴えを、不法行為に基づく損害賠償請求とは選択的併合の関係に立つ請求として追加したほか、独禁法違反行為に当たる第1審被告の本件行為の内容について、当審における第1審被告の主張を踏まえた主張を予備的に追加した。)で、本件変更等は、「取引条件等の差別取扱い」(独禁法2条9項6号イ、一般指定4項)にも「優越的地位の濫用」(同法2条9項5号ハ)にも当たるとは認められないから、第1審被告に独禁法違反行為を認めることはできないとし、独禁法違反行為以外を理由とする不法行為及び債務不履行に基づく各損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく、いずれも理由がないとし、第1審原告の各請求(当審で追加された選択的請求を含む。)はいずれも理由がないから、これを棄却すべきところ、これと異なり、独禁法違反行為を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容した原判決は失当であるとして、第1審原告の控訴を棄却し、当審で追加された債務不履行に基づく損害賠償請求を棄却し、第1審被告の控訴は、原判決中第1審被告敗訴部分を取消し、上記取消部分につき、第1審原告の請求を棄却した事例。
2024.04.23
臨時社員総会招集許可申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25573446/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月27日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第18号
医療法人の社員である抗告人らが、当該医療法人の理事長に対して社員総会の招集を請求したが、その後招集の手続が行われないと主張して、裁判所に対し、社員総会を招集することの許可を求めた事案の許可抗告審において、医療法人の社員が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできないとして、本件抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2024.04.23
損害賠償請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件)
LEX/DB25598472/東京地方裁判所 令和 5年12月21日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第20446号 等
被告会社の発行済株式を証券取引所において売買したと主張する原告会社らが、〔1〕被告が提出した有価証券報告書及び四半期報告書に、被告の不適切な会計処理に起因する重要な事項についての虚偽記載があったこと、〔2〕上記〔1〕のとおり虚偽記載があったにもかかわらず、被告が提出した内部統制報告書に、被告の財務報告に係る内部統制は有効であると判断したと記載され、重要な事項についての虚偽記載があったこと、〔3〕被告が、同社の連結子会社において減損損失を計上したことの開示を怠り、適時開示義務違反があったことから、被告株式の株価が下落する損害を被ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、また、上記〔1〕及び〔2〕については、選択的に金融商品取引法21条の2第1項に基づき、各原告がそれぞれ損害賠償金等の支払を求めた事案で、原告らのうち、非名義株主原告による損害賠償請求は認められないとしたうえで、被告は、有価証券報告書等の提出にあたり、その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠ったものとして、本件名義株主原告らに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うというべきであり、原告らの請求は、本件虚偽記載部分と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容し、その余を棄却した事例。
2024.04.16
犯罪被害者給付金不支給裁定取消請求事件
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LEX/DB25573429/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月26日 判決 (上告審)/令和4年(行ツ)第318号 等
上告人(昭和50年生まれの男性)が、平成6年頃に本件被害者(昭和37年生まれの男性)と交際を開始し、同居生活をしていたところ、同人は、平成26年12月22日、第三者の犯罪行為により死亡した。そこで、上告人は、平成28年12月22日、本件被害者の死亡について、上告人は犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯給法)5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当すると主張して、遺族給付金の支給の裁定を申請した。愛知県公安委員会から、平成29年12月22日付けで、上告人は上記の者に該当しないなどとして、遺族給付金を支給しない旨の裁定を受けたたため、上告人が、被上告人(愛知県)を相手に、上記裁定の取消しを求め、原審は、犯給法5条1項1号が憲法14条1項等に反するとはいえないとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、犯罪被害者と同性の者は、犯給法5条1項1号括弧書きにいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当し得るとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、上告人が本件被害者との間において「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」に該当するか否かについて、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例(反対意見及び補足意見がある)。
2024.04.16
損害賠償請求控訴事件
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LEX/DB25598384/札幌高等裁判所 令和 6年 3月14日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第194号
同性愛者である控訴人らが、民法及び戸籍法が同性者間の婚姻を許容していないのは憲法24条、13条、14条1項に違反すること、国会は必要な立法措置を講じるべき義務があるのにこれを怠っていること(立法不作為)、これにより控訴人らは婚姻することができず、精神的苦痛を被っていることを主張して、被控訴人に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、各人につき100万円等の支払を求めたところ、原審は、民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定(本件規定)が同性者間の婚姻を許容していないことは、憲法24条と13条には違反しないものの、憲法14条1項には違反するとしたが、そのことを国会において直ちに認識することは容易ではなかったから、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないとして、控訴人らの請求を棄却したため、控訴人らは、これを不服として控訴をした事案で、本件規定は、異性間の婚姻のみを定め、同性間の婚姻を許さず、これに代わる措置についても一切規定していないことから、個人の尊厳に立脚し、性的指向と同性間の婚姻の自由を保障するものと解される憲法24条の規定に照らして、合理性を欠く制度であり、少なくとも現時点においては、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っていると認め、本件規定は、憲法24条に違反するとし、また、国会が立法裁量を有することを考慮するとしても、本件規定が、異性愛者に対しては婚姻を定めているにもかかわらず、同性愛者に対しては婚姻を許していないことは、現時点においては合理的な根拠を欠くものであって、本件規定が定める本件区別取扱いは、差別的取扱いに当たり、本件規定は、憲法14条1項に違反するとしたうえで、同性婚立法の在り方には多種多様な方法が考えられ、設けるべき制度内容が一義的に明確であるとはいい難いこと、同性婚に対する法的保護に否定的な意見や価値観を有する国民も存在し、議論の過程を経る必要があること等から、国会が正当な理由なく長期にわたって本件規定の改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできないとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.04.09
遺言無効確認等請求事件
LEX/DB25573418/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月19日 判決 (上告審)/令4年(受)第2332号
被上告人が、上告人らに対し、本件不動産について、上告人らの被上告人に対する上告人Y1及び原審控訴人Aへの持分移転登記請求権が存在しないことの確認等を求めた事案の上告審において、相続回復請求の相手方である表見相続人は、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、当該真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができるものと解するのが相当であり、このことは、包括受遺者が相続回復請求権を有する場合であっても異なるものではないとして、被上告人は、本件不動産に係る上告人Y1及びAの各共有持分権を時効により取得することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2024.04.09
預金払戻控訴事件
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LEX/DB25598133/東京高等裁判所 令和 5年 5月17日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第5851号
破産者Z株式会社(破産会社)の破産管財人である控訴人(原告)が、金融機関である被控訴人(被告)に対し、破産会社と被控訴人との間の預金契約に係る預金払戻請求権に基づき、破産会社の預金等としての金員及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審が控訴人の請求を棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、本件合意が財産処分契約に該当すると解したとしても、本件別段預金は顧客からの振込入金によって被控訴人が負担した本件普通預金債務の取引条件等が変更されたものに過ぎないから、被控訴人が本件合意をすることにより破産会社に対して債務を負担したものとみることはできず、本件合意については、破産法71条1項2号に規定する場合には当たらないというべきであって、本件相殺は有効であると認められるところ、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.04.02
共通義務確認請求事件
LEX/DB25573400/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 3月12日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1041号
特定適格消費者団体である上告人が、被上告人らが本件対象消費者に対して虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をして商品を販売するなどしたことが不法行為に該当すると主張して、被上告人らに対し、平成29年法律第45号による改正前の消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律3条1項5号又は同改正後の同項4号に基づき、被上告人らが本件対象消費者に対して上記商品の売買代金相当額等の損害賠償義務を負うべきことの確認を求め、同法2条4号所定の共通義務確認の訴えをしたところ、原審は、本件訴えを却下したため、上告人が上告した事案で、過失相殺及び因果関係に関する審理判断を理由として、本件について、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法があり、他に予想される当事者の主張等を考慮し、個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容等に照らしても、本件対象消費者ごとに相当程度の審理を要するとはいえないとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻した事例(補足意見がある)。
2024.04.02
損害賠償請求事件
LEX/DB25597024/神戸地方裁判所 令和 5年12月14日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第1804号
原告は、被告・兵庫県が設置運営する病院の整形外科において、同病院のd医師により診療を受けた者であるが、原告が、上記診療のために実施されたミエログラフィー(脊髄造影検査)により、原告に脊髄損傷に伴う左下肢麻痺等の障害が残存した事故に関して、d医師には、〔1〕本件ミエログラフィーの際に、脊髄損傷の高度の危険性がある第1腰椎第2腰椎間レベル(L1/2)の穿刺を行った過失がある、〔2〕脊髄損傷の高度の危険性があることについて説明することなく、L1/2の穿刺を行ったことにつき、説明義務違反があるなどと主張して、使用者責任又は診療契約の債務不履行に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案で、d医師は、L1/2の穿刺にあたって、本件ミエログラフィーの必要性と、L1/2の穿刺による危険性との衡量や代替手段の有無等について、熟慮することなく、その必要性についての判断を誤ったものであり、その判断に過失があったといえるうえ、当初予定していなかったL1/2に穿刺する前に、その方法による脊髄損傷のリスクなどに関する具体的な説明を何らしていないのであるから、説明義務を尽くしたということはできないところ、原告の請求は、本件事故と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2024.03.26
工作物の建築等の不許可処分取消請求事件
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LEX/DB25597844/高知地方裁判所 令和 6年 1月23日 判決 (第一審)/令和3年(行ウ)第10号
原告らが四万十川流域における太陽光発電設備の建築等の許可申請をしたところ、四万十市長(処分行政庁)が、原告らの許可申請をいずれも不許可とする旨の処分をしたため、原告らが、被告(四万十市)に対し、本件各不許可処分の取消しを求めた事案において、本件太陽光発電施設には、四万十川の本件土地が浸水した場合には、設備が流出するなどして、水害を発生させる具体的なおそれが存在しているとし、本件太陽光発電施設について高知県四万十川の保全及び流域の振興に関する基本条例13条2項に定めるおそれがあるとした処分行政庁がした判断に裁量の逸脱濫用があるとは認めることはできないとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2024.03.26
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25596756/札幌高等裁判所 令和 5年12月26日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第216号
賃貸物件の管理業務等を業とする控訴人(原告)会社が、元従業員である被控訴人(被告)に対し、退職後の競業禁止を合意していたところ、退職直後に競業会社に就職し、退職前後に顧客に虚偽の事実を述べるなどして、当該顧客と控訴人の管理委託契約を解約させ、競業会社との間で同契約を締結させたとし、競業避止義務違反の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、被控訴人は控訴人に対し、本件合意のうち、控訴人が本店を置く市内において、退職後6か月の間、競業会社に就職して控訴人在職時に担当していた顧客に対して営業活動を行わないとの範囲で競業避止義務を負っていたと認められるところ、被控訴人にはそれに違反する行為があったといえるから、控訴人の請求は、被控訴人の競業避止義務違反による債務不履行と相当因果関係のある損害賠償を求める限度で認容すべきであるとして、原判決を変更した事例。
2024.03.19
性別の取扱いの変更申立事件(性別の取扱いの変更申立て訴訟)
LEX/DB25597294/静岡家庭裁判所浜松支部 令和 5年10月11日 審判 (第一審)/令和3年(家)第335号
生物学的な性別は女性であるが心理的な性別は男性である申立人が、生殖腺除去手術を受けていないため、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の定める性別の取扱いの変更の要件のうち、同法3条1項4号の規定の定める要件(「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」)を満たさないものの、本件規定は、性同一性障害者(同法2条)が性別の取扱いの変更を認められるために、その意思に反する場合でも生殖腺除去手術を余儀なくされる点で、性同一性障害者について憲法13条の保障する性自認のとおり性別を尊重される権利、身体への侵襲を受けない権利、家族を維持形成する権利を侵害するほか、性自認と生物学的性が不一致の性同一性障害者をそれが一致している者に比して不合理に差別するものである点で、性同一性障害者について憲法14条1項の保障する平等権を侵害し、違憲無効であるなどと主張して、特例法に基づき、性別の取扱いを女性から男性に変更することを求めた事案で、本件規定の立法目的のうち親子関係等に関わる問題の発生とこれに伴い社会に混乱を生ずるおそれに配慮するという目的を踏まえても、本件規定の定める要件を不要とした場合に生じ得る親子関係に関わる問題発生の可能性や程度は限定的なものであって、それを理由に性同一性障害者の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を一律に制約することは、人権制約の手段・態様として必要かつ合理的なものとは言い難いこと、また、本件規定の立法目的のうち社会の急激な変化に配慮するという目的を踏まえても、社会的状況は、国内外の動向に沿って変化が進んできているところであって、現在、上記のような配慮の必要性は相当小さくなっているといえること等を総合較量すると、本件規定の目的を達成するために本件規定による制約を課すということは、もはやその必要性・合理性を欠くに至っているというべきであるから、本件規定は、憲法13条に違反し、違憲無効であると解するのが相当であるとして、申立人の性別の取扱いを女から男に変更するとした事例。
2024.03.19
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件
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LEX/DB25597541/横浜地方裁判所 令和 5年 7月11日 判決 (第一審)/令和2年(わ)第1424号 等
被告人P3(被告会社の実質的経営者で業務全般の統括管理者)及び被告人P2(被告会社の代表取締役で中間処理施設の業務の統括管理者)は、被告会社の業務に関し、被告会社の従業員であるP4、P5及びP6と共謀の上、中間処理施設において、同施設から公共下水道内に産業廃棄物である汚泥及び一般廃棄物である汚水合計約3万6849.58トンを放流させ、廃棄物を捨てた(判示第1)、被告人P3及び被告人P2は、被告会社の業務に関し、P4と共謀の上、中間処理施設において、被告会社が他社から中間処理の処分を受託した産業廃棄物である汚泥の運搬をP10有限会社ほか2社に委託し、同産業廃棄物を引き渡すに当たり、その都度、産業廃棄物管理票合計406通に虚偽の内容を記載し、同管理票を前記P10ほか2社に交付した(判示第2)、被告人P3及び被告人P2は、被告会社の業務に関し、P4と共謀の上、被告会社が社会福祉法人P13ほか1社から中間処理の処分を受託した産業廃棄物である汚泥につき、有限会社P14ほか1社から同汚泥の運搬を受けるとともに産業廃棄物管理票の回付を受けていたところ、同産業廃棄物である汚泥の中間処理の処分が終了していないのに、同産業廃棄物の中間処理の処分が終了した旨の内容が記載された産業廃棄物管理票写し合計81通を、前記P14ほか1社を介し、排出事業者であるP13ほか1社に送付した(判示第3)として、被告会社に対し罰金1億円、被告人P3に対し懲役4年及び罰金1000万円、被告人P2に対し懲役3年を求刑された事案で、不法投棄行為を3年半余りもの長期にわたって継続的に実行し、廃棄した廃棄物の量は合計で約3万6800トン余りと大量であるばかりか、適正に処理していないことを隠ぺいするために、産業廃棄物管理の柱となるマニフェストについて虚偽の内容を記載して関係業者に交付又は送付を継続したり(判示第2及び第3の犯行)、行政当局への発覚を免れるための種々の工作をしたりしていたのであって、巧妙かつ組織的な犯行で、廃棄物の適正な処理を図るという廃棄物処理法の趣旨を蔑ろにすること甚だしいというほかなく、犯情は相当悪質であるなどとして、被告会社を罰金5000万円に処し、被告人P3及び被告人P2をそれぞれ懲役3年に処し、被告人P3に対し5年間、被告人P2に対し4年間の刑の執行を猶予するとした事例。
2024.03.12
殺人被告事件(元警官妻子3人殺害事件)
LEX/DB25573352/最高裁判所第三小法廷 令和 5年12月 8日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第1399号
事件当時現職の警察官であった被告人が、自宅で、妻(当時38歳)、長男(当時9歳)及び長女(当時6歳)を、頚部圧迫又は絞頚により窒息死させて殺害したとして殺人の罪により、第1審判決は死刑に処し、原判決も死刑判決を維持したため、被告人が上告した事案において、被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ず、前科前歴がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして是認せざるを得ないとし、本件上告を棄却した事例。