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2024.10.01
債権処分禁止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25620832/東京高等裁判所  令和 5年 1月25日 決定 (抗告審)/令和4年(ラ)第2326号
本件金等を氏名不詳者に詐取された抗告人が、本件金を氏名不詳者から預かり、本件金を警察に任意提出した相手方に対し、所有権に基づく本件金の引渡請求権を被保全権利として、本件金を押収物として保管する第三債務者から本件金の引渡しを受け、又は相手方が第三債務者に対して有する上記目録記載の引渡請求権(本件押収物引渡請求権)の処分をすることを禁止するとともに、第三債務者に対し、相手方に対して本件金を引き渡したり、相手方の指図に従って処分することを仮に禁止することを求めたところ、原審が、抗告人が相手方に対して本件引渡請求権を有することは一応認められるものの、抗告人が本件引渡請求権を被保全権利として本件申立てに係る債権の処分禁止等の仮処分命令を求めることは不適法であるとして、本件申立てを却下したことから、抗告人が抗告した事案で、本件金については、相手方が第三債務者から還付処分を受けた場合、抗告人が相手方を被告として、本件引渡請求権に基づき、本件金の引渡しを求める本案訴訟を提起し、その請求が認容された場合には、第三債務者は、相手方に対して本件金を引き渡す義務を負うため、民事執行法170条1項により、執行裁判所が相手方の第三債務者に対する本件押収物引渡請求権を差し押さえ、その行使を抗告人に許す旨の命令を発する方法により本件金の引渡しの執行がされることになり、抗告人は、第三債務者に対し、本件金を直接抗告人に引き渡すよう請求することができるのであるから、本件仮処分は、本案請求の範囲を超えるものとはいえず、また、第三債務者は、その禁止が解かれるまでの間、第三債務者が相手方に対して本件金を引き渡すことなどを禁止されたとしても、第三債務者が本来負っている上記保管義務が継続することになるに過ぎず、第三債務者に対して不利益を課すものともいえないとして、抗告人に300万円の担保を立てさせて本件申立てを認容した事例。
2024.09.24
出席停止処分差止め請求控訴事件、同附帯控訴事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年12月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620823/大阪高等裁判所  令和6年 8月28日 判決 (控訴審)/令和6年(行コ)第24号 他
市議会は、市議会議員である被控訴人(附帯控訴人・原告)の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、被控訴人に対して陳謝の懲罰を科したが、被控訴人は、陳謝文の朗読を拒否したため、市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに被控訴人に陳謝の懲罰を科し、これに対し被控訴人が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に被控訴人に陳謝の懲罰を科すということが繰り返され、市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を被控訴人に科した後、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、被控訴人に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をしたところ、被控訴人が、本件処分が違法であると主張して、控訴人(附帯被控訴人・被告)香芝市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料及び弁護士費用並びに遅延損害金の支払を求め、原審が被控訴人の請求を一部認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した事案で、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるかの評価をするうえで、本件処分に至る経緯の中でされた陳謝処分についての適法性、相当性の検討は避けられないというべきであって、本件処分は違法との評価を避けられないとし、また、本件処分の内容、程度等に鑑み、被控訴人が指摘する事情を踏まえても、被控訴人が被った議員としての責務に対する侵害、名誉、信頼の棄損等による精神的苦痛の慰謝料は30万円をもって相当と認めるとして、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した事例。
2024.09.24
地位確認等請求事件(AGCグリーンテック事件) 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和6年11月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620058/東京地方裁判所  令和 6年 5月13日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第20432号
被告の女性従業員である原告が、被告に対して、(1)被告が総合職に対してのみ社宅制度の利用を認めているのが、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律6条2号、同法7条及び民法90条に違反すると主張して、〔1〕原告が社宅管理規程に基づき月額負担を求める権利を有する地位にあることの確認、〔2〕社宅制度の男女差別に係る不法行為に基づく損害賠償、〔3〕社宅制度に基づく賃料負担義務の不履行を理由とする損害賠償を求め、(2)男性の一般職と原告との間にある賃金格差が労働基準法4条に違反すると主張して、〔4〕原告が基本給月額の支給を受ける権利を有する地位にあることの確認、〔5〕労働契約による賃金請求権に基づき、各賃金の差額の支払〔6〕上記〔5〕に対応する弁護士費用等の支払を求め、(3)社宅制度の男女差別及び男女賃金差別が違法であると主張して、〔7〕不法行為ないし債務不履行に基づく慰謝料等の支払を求め、(4)被告による違法な業務外しをされたと主張して、〔8〕不法行為に基づく損害賠償を求め、(5)被告による違法な査定により低い人事考課をされたと主張して、〔9〕不法行為に基づく損害賠償を求め、(6)上記(1)〔3〕が認容されない場合に備え、〔10〕社宅制度の男女差別による不法行為に基づく損害賠償を、上記(2)〔5〕及び〔6〕が認容されない場合に、〔11〕男性一般職との男女賃金差別による不法行為に基づく損害賠償を予備的に求めた事案で、社宅制度という福利厚生の措置の適用を受ける男性及び女性の比率という観点からは、男性の割合が圧倒的に高く、女性の割合が極めて低いこと、措置の具体的な内容として、社宅制度を利用し得る従業員と利用し得ない従業員との間で、享受する経済的恩恵の格差はかなり大きいことが認められる。他方で、転勤の事実やその現実的可能性の有無を問わず社宅制度の適用を認めている運用等に照らすと、営業職のキャリアシステム上の必要性や有用性、営業職の採用競争における優位性の確保という観点から、社宅制度の利用を総合職に限定する必要性や合理性を根拠づけることは困難であることからすると、被告が社宅管理規程に基づき、社宅制度の利用を、住居の移転を伴う配置転換に応じることができる従業員、すなわち総合職に限って認め、一般職に対して認めていないことにより、事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められず、被告が上記のような社宅制度の運用を続けていることは、雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当するというべきであるなどとして、原告の請求を一部認容した事例。
2024.09.17
保護責任者遺棄被告事件 
LEX/DB25620818/東京高等裁判所 令和 6年 8月20日 判決 (第一審)/令和4年(刑わ)第1727号
被告人は、b、分離前の相被告人c(本件後に婚姻し「d」姓となり、令和5年4月9日に死亡)及び同eとともに、令和3年6月10日から東京都豊島区内の本件ホテルの一室にg(当時38歳)と宿泊滞在し、同室において同人らとともに複数種類の薬剤を摂取し、その効果を味わうなどしていたものであるが、前記gが薬剤を過剰に摂取して同月11日午前8時過ぎ頃には身体をゆするなどしても全く反応しない昏睡状態に陥っているのを認めたのであるから、直ちに救急車の派遣を求めて医師による専門的診察・治療を受けさせ、同人の生命、身体の安全のために必要な保護をなすべき責任があったにもかかわらず、b、c及びeと共謀の上、その頃から同日午後4時14分頃までの間、同所において、救急車の派遣を求めることなく同人を放置し、もって同人の生存に必要な保護をしなかったとして、保護責任者遺棄の罪で、懲役2年を求刑された事案で、gが、6月11日午前8時過ぎ頃から同日午前9時24分頃までの間に要保護状態に陥っていたと認めるには合理的な疑いが残り、また、同日午前8時過ぎ頃より後の同日午前9時24分頃までの間については、被告人がgの状態を見て把握していたことにも疑問が残るとして、本件公訴事実については犯罪の証明がないとし、被告人に対し、無罪を言い渡した事例。
2024.09.17
首都圏建設アスベスト損害賠償神奈川訴訟(第2陣)請求控訴事件 
LEX/DB25620211/東京高等裁判所 令和 6年 5月29日 判決 (差戻控訴審)/令和4年(ネ)第3245号
原告ら(控訴人ら)は、築炉工としての作業等(炉の設置等)に従事し、石綿粉じんにばく露したことにより石綿肺にり患して死亡したと主張する故人(承継前の原告)の承継人として、石綿含有建材の製造販売をしていた建材メーカーである被告ら(被控訴人ら)に対し、被告らが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺を含む石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務(警告義務)を負っていたにもかかわらず、これを履行しなかったことにより、築炉工として石綿含有建材を使用する建設作業に従事した故人が石綿肺にり患して死亡したと主張し、民法719条1項後段の類推適用に基づく損害賠償として、損害金等の連帯支払を求めた事案で、差戻前の訴訟経過において原告の請求が認容されたが、上告審では、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し警告義務を負っていたということはできないとして、差戻し前の控訴審判決中の被告ら敗訴部分を破棄し、故人が石綿含有建材を使用する建設作業に従事していた時期があることから、損害の額等について更に審理を尽くさせる必要があるとして、本件を東京高等裁判所に差戻し、当審での審理判断の対象は、民法719条1項後段の類推適用に基づく各損害賠償請求権の存否及びその額(差戻し前の控訴審が認容した範囲に限る)であり、主として、故人が築炉工としての作業(炉の設置等)に従事した際、被告らが製造販売した石綿含有建材の石綿粉じんにばく露したと認められるか、これにより故人が石綿肺にり患して死亡したとされる場合の被告らの損害賠償責任の範囲等が争点であったところ、故人が築炉工としての作業に従事した現場に被告らの製造販売に係る保温材が相当回数にわたり到達した事実を認めることはできないから、原告らの被告らに対する民法719条1項後段の類推適用に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がないとして、請求を棄却した事例。
2024.09.10
株主総会決議不存在等確認請求控訴事件 
LEX/DB25620549/東京高等裁判所 令和 5年 1月18日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第3531号
特例有限会社である控訴人の株主である被控訴人が、控訴人に対し、控訴人の本件株主総会において、被控訴人を取締役から解任すること(本件議題〔1〕)及び後任取締役を1名選任すること(本件議題〔2〕)を内容としてされた本件株主総会決議につき、選択的に、その不存在確認、又は会社法831条1項1号に基づきその取消しを求め、控訴人の株主で本件株主総会の議長を務めた松野弁護士を代理人に選任していた補助参加人C及び本件議題〔2〕によって取締役に選任された補助参加人Bが、控訴人を補助するため、訴訟に参加したところ、原審が、松野弁護士が議長の選任手続を経ずに議長となり、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案の採決を行ったこと並びに松野弁護士が議長として本件仮処分決定の内容と異なる議決権数の算定を行い、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案を可決させたことにつき、いずれも同号に定める瑕疵に当たるから、本件株主総会決議の取消しを求める請求には理由があるとして、被控訴人の同請求を認容したことから、補助参加人らが控訴した事案で、松野弁護士が議長の選任手続を経ずに議長となり、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案の採決を行ったことは本件株主総会決議の瑕疵に当たり、また、松野弁護士が議長として本件仮処分決定の内容と異なる議決権数の算定を行い、本件議題〔1〕及び〔2〕に係る各議案を可決させたことは本件株主総会決議の瑕疵に当たるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.09.10
盗品等有償譲受け、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25620264/神戸地方裁判所 令和 6年 5月30日 判決 (第一審)/令和5年(わ)第300号
被告人が、法定の除外事由がないのに、氏名不詳者と共謀のうえ、(第1)P2らが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたVJAギフトカード5000円券30枚(時価合計15万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「P3」から代金約13万5000円で買い受け、(第2)P2らが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたVJAギフトカード5000円券80枚(時価合計40万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「P3」から代金約36万円で買い受け、(第3)P2らが窃取し、同人が配達業者を介して同所に配送してきたUCギフトカード5000円券20枚(時価10万円相当)を、それらが財産に対する罪に当たる行為によって領得された物であることを知りながら、「P3」から代金約9万円で買い受け、もって財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を有償で譲り受けるとともに、犯罪収益等を収受したとして、盗品等有償譲受け、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で、懲役3年及び罰金50万円を求刑された事案で、検察官が主張する各事実関係は、いずれもそれ自体から直ちに被告人の知情性を推認させるものではなく、そして、これらの事実関係を総合考慮しても、被告人の知情性を未必的にも認定することはできず、「P3」からのギフトカードの仕入れを担当していたのは、被告人ではなく主としてP5であり、被告人がどの程度「P3」との取引について把握していたかは証拠上明らかでなく、また、関係各証拠を精査しても、その他に被告人の知情性を推認することのできる事実も認められないから、被告人が本件の知情性を有していたと認定するには、合理的な疑いが残るというべきであるとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2024.09.03
法人税更正処分等取消請求事件 
「新・判例解説Watch」租税法分野 令和6年11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573661/最高裁判所第一小法廷  令和 6年 7月18日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第373号
連結納税の承認を受けた内国法人である被上告人(第一審原告、控訴審控訴人)が、法人税及び地方法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、英領バミューダ諸島において設立された被上告人の子会社が非関連者である保険会社との間で締結した再保険契約に係る収入保険料は、租税特別措置法施行令(平成28年政令第159号による改正前)39条の117第8項5号括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険に係る収入保険料」に該当せず、外国子会社合算税制の適用除外要件のうちいわゆる非関連者基準を満たさないなどとして、本件法人税再更正処分及び本件地方法人税再更正処分並びに本件法人税当初賦課決定処分及び本件地方法人税当初賦課決定各処分をしたため、上告人(第一審被告、控訴審被控訴人)国に対し、各処分について控訴人主張額を超える各部分の取消しを求め、第一審が被上告人の請求をいずれも棄却したところ、被上告人が控訴し、控訴審が第一審判決を取り消し、被上告人の請求をいずれも認容したことから、上告人が上告した事案で、本件元受保険契約の実質に照らせば、本件再保険契約に係る保険は、本件NGRE事業年度におけるNGREに係る関連者に当たるNRFMが有する資産である本件クレジット債権に係る経済的不利益を担保するものであるということができるから、上記保険は、本件括弧書きにいう「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」には当たらず、NGREは本件NGRE事業年度において非関連者基準を満たさないから、措置法68条の90第1項の適用が除外されることとはならないところ、原審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄するとともに、被上告人の控訴を棄却した事例。
2024.09.03
株主権確認等請求控訴事件 
LEX/DB25620467/大阪高等裁判所  令和 6年 7月12日 判決 (控訴審)/令和6年(ネ)第149号
〔1〕控訴人(原告)T社が、被控訴人(被告)P2が被控訴人会社に対して控訴人T社の無議決権株式40株を譲渡する本件売買契約は、通謀虚偽表示又は弁護士法72条若しくは73条違反に当たり無効であると主張して、被控訴人P2に対し、控訴人T社と被控訴人P2との間において、被控訴人P2が従前から保有している株式を含む控訴人T社の無議決権株式52株を有する株主であることの確認を求め、〔2〕上記の株式譲渡が控訴人T社によって承認されなかったことにより指定買取人に指定された控訴人C社が、被控訴人会社に対し、控訴人C社と被控訴人会社との間において、控訴人C社の被控訴人会社に対する株式売買代金支払債務が存在しないことの確認を求め、原審が、本件売買契約は無効とはいえないとして、〔1〕控訴人T社の請求を被控訴人P2が控訴人T社の無議決権株式12株を保有する株主であることの確認を求める限度で認容し、その余を棄却し、〔2〕控訴人C社の請求を棄却したところ、控訴人らが控訴した事案で、被控訴人会社が本件事業の業として行った本件売買契約の締結は、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとは認められず、本件売買契約は弁護士法73条に違反して無効であると認められるから、被控訴人P2は控訴人T社の無議決権株式52株を有する株主であり、控訴人C社と被控訴人会社との間の売買契約に基づく控訴人C社の被控訴人会社に対する代金債務は存在しないと認められるところ、控訴人らの請求はいずれも理由があるとして、原判決を変更し、控訴人らの請求〔1〕〔2〕をいずれも認容した事例。
2024.08.27
損害賠償請求事件(国家賠償請求) 
LEX/DB25620432/東京地方裁判所  令和 6年 7月18日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第5542号
弁護士であった原告が、犯人隠避教唆の被疑者として検察官から受けた取調べに違法があり、精神的苦痛を受けたと主張して、被告・国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件取調べにおけるP4検察官の言動は、事案の内容・性質、嫌疑の程度及び取調べの必要性を考慮しても、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものといわざるを得ず、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであり、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえるところ、原告の請求は、被告に対し、違法な本件取調べと相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2024.08.27
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25573652/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 7月16日 判決 (上告審)/ 令和4年(あ)第1460号
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件の上告審の事案で、弁護人らの上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとしたうえで、本件の事情の下では、氏名不詳者が、不正に入手したA社のNEMの秘密鍵で署名した上で本件移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットワークに送信した行為は、正規に秘密鍵を保有するA社がNEMの取引をするものであるとの「虚偽の情報」をNEMのネットワークを構成するNISノードに与えたものというべきであるから、本件移転行為が電子計算機使用詐欺罪に該当し、本件NEMが組織的犯罪処罰法2条2項1号にいう「犯罪行為により得た財産」に当たるとして、その一部を収受した被告人について、犯罪収益等収受罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見あり)。
2024.08.27
難民不認定処分取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年12月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620544/大阪地方裁判所  令和 6年 7月 4日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第112号
チュニジア国籍を有する外国人男性である原告は、チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に家族から暴力を受け、警察官に助けを求めても逮捕を示唆され保護を受けられなかったことなどから、帰国すると同性愛者であることを理由に迫害を受けるおそれがあるとして、出入国管理及び難民認定法(令和5年法律第56号による改正前のもの)61条の2第1項に基づき難民認定申請をしたが、大阪出入国在留管理局長から、難民の認定をしない処分を受けた。原告は、本件不認定処分につき審査請求をしたが、法務大臣から、本件審査請求を棄却する旨の裁決を受けたため、原告が、被告(国)を相手に、原告は難民に該当するなどと主張して、本件不認定処分及び本件裁決の取消しを求めた事案において、原告は、チュニジアに帰国した場合に、同性愛者であることを理由に迫害を受ける主観的恐怖を有しており、かつ、通常人が原告の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していると認められるから、原告は、本件不認定処分の時点で、難民に該当するとし、原告を難民と認定しなかった本件不認定処分は違法であるとして、本件不認定処分を取消し、本件訴えのうち本件裁決の取消しを求める部分を却下した事例。
2024.08.20
退職慰労金等請求事件 
LEX/DB25573635/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月 8日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1780号
上告人(第一審被告、控訴審控訴人)会社の代表取締役社長を退任した被上告人(第一審原告、控訴審被控訴人)が、上告人会社の株主総会において上告人会社の取締役退任慰労金内規に基づいて取締役会が決議した退任慰労金を被上告人に支払うことを委任する旨決議されたのに、上告人会社の代表取締役である上告人Bが故意又は過失によってこの委任の範囲又は本件内規の解釈・適用を誤ったため、上告人会社の取締役会においてこの委任の範囲を超える減額を行う旨の決議がされ、弁護士に委任して訴訟を提起することを余儀なくされたと主張して、上告人らに対し、〔1〕会社法361条1項に基づく退任慰労金請求等及び〔2〕会社法350条又は不法行為に基づく損害賠償請求等の支払を求め、第一審が請求を一部認容したところ、上告人らが控訴し、控訴審が、本件取締役会決議は、本件株主総会決議の委任の範囲を誤り、与えられた裁量を逸脱ないし濫用したものであるとして、控訴を棄却したことから、上告人らが上告した事案で、本件行為1及び本件行為2を上告人会社に多大な損害を及ぼす性質のものと評価することは相応の合理的根拠に基づくものといえ、本件行為3が上告人会社に損害を与えるものであったか否かにかかわらず、被上告人が本件減額規定にいう「在任中特に重大な損害を与えたもの」に当たるとして減額をし、その結果として被上告人の退職慰労金の額を5700万円とした取締役会の判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理であるということはできず、本件取締役会決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできないとして、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、被上告人の請求をいずれも棄却した事例。
2024.08.20
死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件(飯塚事件第2次再審請求棄却決定) 
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和6年11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620263/福岡地方裁判所 令和 6年 6月 5日 決定 (再審請求審)/令和3年(た)第3号
亡死刑囚に対する死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件(いわゆる飯塚事件)について、同人は死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定した。死刑を執行された後、再審請求人が、再審を請求(第一次再審請求)したが、弁護人が提出した証拠を確定記録中の全証拠と併せて総合評価した結果、同人が犯人であると認めた確定判決における事実認定について合理的な疑いは生じず、弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められないとして、第1次再審請求を棄却し、即時抗告、特別抗告も棄却決定となったが、新証拠をもとに請求人から第2次再審請求をした事案で、P16及びP15の各証言を中心に、本件再審請求において提出された新証拠について検討してきたが、P16証言や本件報告書によって本件各調書の信用性が減殺されることはなく、P15証言を踏まえても、事件本人とは別の人物が犯人である合理的疑いは生じず、弁護人はその他縷々主張するが、これを踏まえて検討しても、本件再審請求において提出された新証拠が、確定審及び第1次再審請求審において取り調べられた他の証拠の証明力に影響することはなく、情況事実の総合評価の結論を左右することもなく、事件本人が犯人であることについて合理的な疑いを超えた高度の立証がなされているという結論は揺らがず、本件再審請求において提出された新証拠は、いずれも明白性が認められないとして、本件再審請求を棄却した事例。
2024.08.13
公有水面埋立撤回処分に対し国土交通大臣がなした裁決の取消請求控訴事件
LEX/DB25620049/福岡高等裁判所那覇支部 令和 6年 5月15日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第7号
沖縄防衛局は、沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市内に所在する辺野古崎地区及びこれに隣接する本件埋立海域に設置するための公有水面の埋立てにつき、同県知事から公有水面埋立法42条1項の承認を受けていたが、事後に判明した事情等を理由として本件埋立承認を取り消す旨の処分(本件撤回処分)がされたことから、これを不服として国土交通大臣に対し行政不服審査法に基づく審査請求をしたところ、国土交通大臣は、本件撤回処分を取り消す旨の裁決をしたことから、本件埋立海域の周辺に居住する住民であると主張する控訴人(原告)らが、国土交通大臣の所属する被控訴人・国を相手方として、本件裁決の取消しを求め、原審が控訴人らの訴えをいずれも却下したため、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの主張するその余の観点から原告適格の有無について検討するまでもなく、控訴人らは、本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものということができるとし、控訴人らの本件訴えはいずれも適法であり、これを不適法として却下した原判決は取消しを免れないところ、本件訴訟の経過とその内容等に照らすと、本件については、原告適格に係る上記判断内容を踏まえて原審において更に弁論をする必要があると認められるとして、原判決を取り消し、本件を那覇地方裁判所に差し戻した事例。
2024.08.13
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25620053/名古屋高等裁判所 令和 6年 4月18日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第426号
出生後間もなく喉頭軟化症と診断され、気管切開術を受けて人工呼吸器管理となっていたP1の相続人である控訴人(原告)らが、〔1〕P1の入院していた被控訴人病院の医師において、P1が退院して自宅療養させるに際しての療養指導義務を怠り、また、〔2〕P1の訪問看護を担っていた原審相被告T社において、P1が気管に装着していた気管切開カニューレと人工呼吸器回路との接続方法を誤って勧めたために、P1の装着していたカニューレに事故が起こって呼吸不能又は呼吸困難な状態となり、さらに、〔3〕臨場した消防署所属の救急隊員や搬送先である被控訴人(被告)病院の医師において、直ちにカニューレを引き抜くなどして気道を確保しなかったために、P1が心肺停止状態となり、その後P1が死亡するに至ったなどと主張して、T社に対しては、不法行為又は債務不履行に基づいて、入院先及び搬送先の病院である被控訴人病院を開設し、かつ、臨場した救急隊員が所属する消防署を開設する被控訴人・一宮市に対しては、医師の各注意義務違反につき不法行為又は債務不履行に基づき、救急隊員の注意義務違反につき国家賠償法1条1項に基づいて、P1に生じた損害の相続分及び自らの固有の損害に当たる損害賠償金等の連帯支払を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことから、控訴人らが被控訴人に対して控訴した事案で、被控訴人病院医師としては、退院後もP1に多様な原因・態様によるカニューレ事故が発生し得る蓋然性が高いことを当然に予見できたものと認められ、控訴人らに対して、想定される多様な事態に即した指導をする医師としての注意義務があったところ、P8医師が行った説明指導等は、到底本件療養指導義務を履行したといえるものではないから、前記療養指導義務を怠った過失があるものといわざるを得ないうえ、療養指導義務を果たしていれば、上記のような事態は生じなかったものと認められ、被控訴人病院医師の過失とP1の死亡との間には相当因果関係があるといえるところ、控訴人らの請求は一部について理由があり、それと異なる原判決中、被控訴人に関する部分は相当でないとして、原判決を変更した事例。
2024.08.06
損害賠償請求事件 
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LEX/DB25573641/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月11日 判決 (上告審)/令和4年(受)第2281号
被上告人宗教法人の信者であった亡Aが被上告人宗教法人に献金をしたことについて、上告人(亡Aは原審係属中に死亡し、同人の長女である上告人が亡Aの訴訟上の地位を承継した。)が、被上告人らに対し、上記献金は被上告人Y1を含む被上告人宗教法人の信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求め、原審は、上告人の被上告人宗教法人に対する損害賠償請求(ただし、亡Aの承継人として請求する部分に限る。)に係る訴えを却下し、被上告人Y1に対する請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、亡Aと被上告人宗教法人との間に念書による本件不起訴合意は、亡Aがこれを締結するかどうかを合理的に判断することが困難な状態にあることを利用して、亡Aに対して一方的に大きな不利益を与えるものであったと認められ、公序良俗に反し、無効であるとし、また、被上告人宗教法人の信者らによる献金の勧誘した行為が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法があるとして、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分は破棄し、被上告人らの不法行為責任の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2024.08.06
療養補償給付支給処分(不支給決定の変更決定)の取消、休業補償給付支給処分の取消請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年9月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573630/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第108号
被上告人・法人の支局に勤務していた上告補助参加人が精神疾患を発症したことについて、札幌中央労働基準監督署長が、労働者災害補償保険法に基づき、療養補償給付及び休業補償給付の各支給処分をしたことにつき、被上告人が、メリット制の適用を受ける特定事業主は、自らの事業について業務災害保険給付等に係る支給処分(業務災害支給処分)がされた場合、同処分の法的効果により労働保険の保険料の納付義務の範囲が増大して直接具体的な不利益を被るおそれがあり、同処分の取消しを求めるにつき、法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)に当たると主張して、本件各処分の取消しを求めたところ、差戻し前第一審が、被上告人は本件各処分の取消訴訟の原告適格を有しないから、本件訴えは不適法であるとしてこれをいずれも却下したため、被上告人が控訴し、差戻し前控訴審が、被上告人はその特定事業についてされた本件各処分の取消しを求める原告適格を有するとして、第一審判決を取り消し、本件を第一審に差し戻したことから、上告人・国が上告した事案で、特定事業の事業主は、上記労災支給処分の取消訴訟の原告適格を有しないというべきであるとしたうえで、特定事業の事業主は、自己に対する保険料認定処分についての不服申立て又はその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張することができるから、上記事業主の手続保障に欠けるところはなく、以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、第1審判決は結論において正当であるとして、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した事例。
2024.08.06
賃料減額等請求事件 
LEX/DB25573601/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 6月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1744号
地方住宅供給公社法にいう地方住宅供給公社であり、神奈川県内において、多数の住宅を賃貸している被上告人は、上告人らに、それぞれ、一棟の建物の一室を賃貸し、おおむね3年ごとに、上告人らに対し、各室の家賃を改定する旨を通知していたところ、上告人らが、被上告人に対し、本件各家賃改定による家賃の変更のうち適正賃料を超える部分は効力を生じないなどと主張して、家賃の額の確認を求めるとともに、変更後の家賃を支払ってきたことを理由に不当利得返還請求権に基づいて過払家賃の返還等を求め、原審が、地方公社は、公社法24条の委任を受けた地方住宅供給公社法施行規則16条2項に基づき、その賃貸する住宅の家賃を変更することができ、同項は、借地借家法32条1項に対する特別の定めに当たるから、公社住宅の使用関係について、同項の適用はないなどとして、上告人らの請求を棄却したところ、上告人らが上告した事案で、公社法24条の趣旨は、その内容を国土交通省令に委ねることにあると解され、当該省令において、公社住宅の使用関係について、私法上の権利義務関係の変動を規律する借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に対し、同項所定の賃料増減請求権とは別の家賃の変更に係る形成権を付与する旨の定めをすることが、公社法24条の委任の範囲に含まれるとは解されず、同項は、地方公社が公社住宅の家賃を変更し得る場合において、他の法令による基準のほかに従うべき補完的、加重的な基準を示したものに過ぎず、公社住宅の家賃について借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に対して上記形成権を付与した規定ではないというべきであるから、公社住宅の使用関係については、借地借家法32条1項の適用があると解するのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事例。
2024.07.30
国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和6年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573621/最高裁判所大法廷 令和 6年 7月 3日 判決 (上告審)/令和5年(受)第1319号
旧優生保護法に基づく優生手術を受けさせられたとする一審原告らが、旧優生保護法は違憲無効であり、国会議員には旧優生保護法の規定を改廃しなかった立法不作為や偏見差別を解消する措置を講じなかったなどの立法不作為があると主張するとともに、厚生大臣が優生手術を推進したことは違法であるし、厚生大臣及び厚生労働大臣には旧優生保護法を廃止し優生政策を抜本的に転換すべき義務等があるのにこれを怠った不作為があるなどと主張して、国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金及び遅延損害金の支払を求め、第一審が請求をいずれも棄却する旨の判決をしたため、一審原告らの一部がそれぞれ控訴し、控訴審が、優生条項に基づき本件各手術を受けた一審原告らは、国に対し、同法1条1項に基づく損害賠償請求権を取得するとし、また、一審原告らの国に対する各損害賠償請求権は、除斥期間の経過によって消滅したとはいえないとして、第一審判決を変更し、一審原告らの請求を一部認容したため、国が上告した事案で、旧優生保護法の本件規定は、憲法13条及び14条1項に違反するものであったというべきであり、本件規定の内容は、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であったというべきであるから、本件規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けると解するのが相当であるとしたうえで、本件訴えが除斥期間の経過後に提起されたということの一事をもって、本件請求権が消滅したものとして上告人が第1審原告らに対する損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができないというべきであって、本件請求権が除斥期間の経過により消滅したとはいえないとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、意見あり)。