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2023.11.07
ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25596007/東京高等裁判所 令和 5年 9月20日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第1538号
被告人が、Aに対する恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的で、Aから拒まれたにもかかわらず、令和3年7月4日頃から同月29日頃までの間、11回にわたり、A方宛てに、愛しているなどと記載されたはがき合計11通を発送し、同月5日頃から同月30日頃までの間、これらをA方に到達させ、その頃、これらをAに閲覧させ、連続して文書を送付し、もってAに対し、つきまとい等を反復して行い、ストーカー行為をしたとして、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪で起訴され、原審が犯罪の事実を認定したところ、被告人が控訴した事案で、原判決の「罪となるべき事実」においては、はがき合計11通の各送付行為について、1つの「連続して」行った行為であると認定したのか、各行為間の日数の多寡等を踏まえて、複数の「連続して」行った行為であると認定したのかが判然とせず、仮に前者であれば、「ストーカー行為」の判断に必要な複数の「つきまとい等」、すなわち、構成要件に該当する事実を認定していないことになるし、後者であるとしても、個々の「つきまとい等」の内容を明確に区別して示しておらず、「罪となるべき事実」の認定として不十分であるところ、原判決は、「罪となるべき事実」において、「反復して」行うことが必要な複数の「つきまとい等」の個々の内容を明示していないといわざるを得ず、「ストーカー行為」に該当する具体的事実の記載を欠いており、この点において、原判決には理由不備の違法があるとして、原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2023.11.07
殺人、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、逮捕監禁被告事件(遺体なき殺人事件) 
LEX/DB25573085/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 7月 3日 判決 (上告審)/令和3年(あ)第855号
被告人が、いずれも共犯者の指示を受け、約2年の間に、殺人2件、逮捕監禁致死・生命身体加害略取1件、逮捕監禁2件の各犯罪を、時に並行しながら、連続的に犯したとする、殺人、生命身体加害略取、逮捕監禁致死、逮捕監禁の罪で起訴され、第1審判決は、被告人に死刑を言い渡したため、被告人が控訴し、原判決も控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人は、首謀者である共犯者の犯行計画に沿った準備や他の共犯者への指示等を中心となって行い、また、各殺人の実行行為やA及びCの遺体の焼却処分は専ら被告人が担ったものであるとし、本件各犯行を立案し、被告人らに実行させた首謀者は別の共犯者であることを踏まえても、被告人は、首謀者の共犯者の指示の下で動く実行役の中では中核的な存在で、その果たした役割は重要かつ不可欠なものであり、被告人の刑事責任は極めて重大であるとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.31
損害賠償請求事件 
LEX/DB25573103/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月16日 判決 (上告審)/令和4年(受)第648号 
交通事故によって死亡したAの配偶者又は子である上告人らが、加害車両の運転者である被上告人らに対し、民法709条、719条等に基づき、損害賠償を求め、原審は、上告人X1の民法709条、719条に基づく請求を357万9854円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容すべきものとし、上告人子らの各請求をそれぞれ105万0761円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容したため、上告人らが上告した事案で、人身傷害保険の保険会社(参加人)が上告人らに対して人身傷害保険金額に相当する額を支払った場合において、上告人らの被上告人に対する損害賠償請求権の額から上記の支払額を全額控除することはできないとして、原判決を一部変更し、その余の上告人らの請求を棄却した事例。
2023.10.31
選挙無効請求事件 
LEX/DB25573096/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月12日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第55号
令和4年7月10日に行われた参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙に関し、いわゆる特定枠制度を定める公職選挙法の規定は憲法43条1項に違反するとし、また、本件選挙と同日に行われた参議院の選挙区選出議員の選挙は同法が定める定数配分規定が憲法に違反するため無効であるとして、被上告人(原審被告)に対し、選挙無効請求をしたところ、原判決は、上告人(原審原告)の請求を棄却したため、これに不服の上告人が上告をした事案において、参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙について特定枠制度を定める公職選挙法の規定が憲法43条1項等に違反しないとし、また、参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙の無効を求める訴訟において選挙区選出議員の選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることができないことは、平成11年大法廷判決の趣旨に徴して明らかであるとし、原審の判断は正当として是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.31
住居侵入、殺人、死体遺棄被告事件 
LEX/DB25573097/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月11日 決定 (第二次上告審)/令和4年(あ)第655号
被告人が、A及びBを殺害する目的で、両名方に侵入し、A及びBをいずれも頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した上、両名の死体を遺棄したとして起訴され、第1次第1審判決は、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であると認定する一方、侵入時にはAを殺害する目的を有していたにとどまり、Bを殺害する目的もあったとは認められないとした上で、被告人を懲役23年に処したため、検察官及び被告人の双方が控訴し、検察官はB殺害の計画性等に関する事実誤認及び量刑不当を、被告人は訴訟手続の法令違反及び被告人の犯人性に関する事実誤認をそれぞれ主張したところ、第1次控訴審判決は、検察官の事実誤認の控訴趣意並びに被告人の訴訟手続の法令違反及び事実誤認の控訴趣意をいずれも排斥した上で,第1次第1審判決は、不適切な量刑資料を用いたため、量刑傾向の把握を誤り、その結果、不合理な量刑判断をしたものであって、検察官の量刑不当の控訴趣意はこの限度で理由があるとして、同判決を破棄し、事件を第1審裁判所に差戻しを命じたため、被告人が上告の申立てをしたが上告棄却の決定がされた。差戻後の第2次第1審判決は、第1次控訴審判決の拘束力が、量刑に関する消極的否定的判断に加えて、少なくとも犯人性に関する判断に及んでいるとの見解に立って審理を行い、量刑判断の論理的前提となっている各殺人及び死体遺棄の犯人性について第1次控訴審判決の拘束力が及んでいるから、これに抵触する判断は許されないと判示した上で、被告人が、Aを殺害する目的で、A及びB方に侵入し、、A及びBをいずれも頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した上、両名の死体を遺棄したとの事実を認定し、被告人を無期懲役に処した。これに対し、被告人が控訴し、法令適用の誤り、訴訟手続の法令違反、量刑不当を主張し、原判決(第2次第一審判決)は、第1次控訴審判決の拘束力について、同判決は、第1次第1審判決の量刑判断が不合理であるとしてこれを破棄しているところ、被告人が各殺人及び死体遺棄の犯人であるなどとした第1次第1審判決に事実誤認がないという判断部分についても、上記破棄の判断の論理的な前提となっている以上、当然に拘束力を有するものと解され、第2次第1審判決の判断に不相当なところはないなどと判示して、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、第1審判決について、被告人の犯人性を認定した点に事実誤認はないと判断した上で、量刑不当を理由としてこれを破棄し、事件を第1審裁判所に差し戻した控訴審判決は、第1審判決を破棄すべき理由となった量刑不当の点のみならず、刑の量定の前提として被告人の犯人性を認定した同判決に事実誤認はないとした点においても、その事件について下級審の裁判所を拘束するとし、同旨の原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.24
仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25573090/最高裁判所第三小法廷 令和 5年10月 6日 決定 (許可抗告審)/令和5年(許)第9号 
抗告人が、いずれも1筆である本件各土地について、その各一部分の所有権を時効により取得したなどと主張して、本件各土地の所有権の登記名義人である相手方らに対し、当該各一部分についての所有権移転登記請求権を被保全権利として本件各土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立て等をしたところ、原審は、本件申立てをいずれも却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が登記請求権を被保全権利として土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において当該一部分について分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部についてのものであることをもって直ちに保全の必要性を欠くものではないと解するのが相当であるとし、これと異なる見解に立ち、本件各土地の分筆の登記に関する登記官の回答を記載した抗告代理人の報告書が提出されているにもかかわらず、当該回答を裏付ける資料による疎明を求めるなどして抗告人が地積測量図等の分筆の登記の申請に必要な事項としての情報を提供することの障害となる客観的事情があるか否かを検討せず、特段の事情が認められるか否かについて審理を尽くさないまま、保全の必要性があるとはいえないとして、本件申立てをいずれも却下すべきものとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原決定を破棄し、特段の事情の有無、本件登記請求権の存在や内容、相手方らの不利益の内容や程度等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2023.10.24
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和5年12月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573070/札幌地方裁判所 令和 5年 9月11日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第1175号
被告北海道の職員であった原告が、在職中、同性パートナーであるAが北海道職員の給与に関する条例9条2項1号の「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同号の「配偶者」に該当し、また、地方公務員等共済組合法2条4項の「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として同条1項2号イの「配偶者」に該当するとして、被告道に対し、Aを扶養親族とする扶養手当に係る届出及び寒冷地手当に係る世帯等の区分の変更の届出を行うとともに、被告共済組合に対し、Aを被扶養者とする届出を行ったが、北海道知事及び被告共済組合の北海道支部長が、Aが原告と同性であることを理由に、上記各「配偶者」に該当しないとして、上記各届出に係る扶養親族又は被扶養者の認定を不可としたことはいずれも違法であると主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被告道及び被告共済組合に対し、それぞれ損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」には、同性間の関係は含まれないと解するのが現行民法の定める婚姻法秩序と整合する一般的な解釈であるところ、扶養手当の支給や共済組合法の各種給付等は公的財源を基盤としていることからすると、婚姻制度や同性間の関係に対する権利保障の在り方等について様々な議論がされている状況であることや、一部の地方公共団体において、柔軟な解釈や運用を試みる例があることを踏まえても、本件各規定における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に同性間の関係を含むと解釈しなければならないという職務上の注意義務を個別の公務員に課すことはできないというべきであるとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.10.17
移送決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件  
LEX/DB25573079/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 9月27日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第21号 
大阪拘置所に収容されている死刑確定者である相手方は、抗告人の執筆した雑誌記事により名誉が毀損されたなどとして、抗告人に対し、不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求めた本件訴訟を大阪地方裁判所へ提起したが、当事者双方が、口頭弁論期日に連続して出頭しなかった場合に、原審は、本件口頭弁論期日において、審理を継続することが必要であるとして、期日の延期とともに新たな口頭弁論期日の指定がされたので、本件口頭弁論期日は民事訴訟法263条後段の「期日」に当たらず、同条後段の規定にかかわらず本件訴訟について訴えの取下げがあったものとはみなされないと解すべきであると判断した上、本件移送申立てに基づき、本件訴訟を東京地方裁判所に移送すべきものとしたため、抗告人が許可抗告した事案で、本件口頭弁論期日において、審理を継続することが必要であるとして、期日の延期とともに新たな口頭弁論期日の指定がされたのであるから、本件口頭弁論期日は民事訴訟法263条後段の適用が否定されると解することはできないというべきであり、本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされないとした原審の判断には同条後段の解釈適用を誤った違法があるとして、原決定を破棄し、本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされ、本件移送申立ては不適法であるから、原々決定を取消し、相手方の本件移送申立てを却下した事例(補足意見がある)。
2023.10.17
琉球民族遺骨返還等請求控訴事件  
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年1月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596046/大阪高等裁判所 令和 5年 9月22日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第1261号
沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する控訴人らが、昭和初期に京都帝国大学(当時)の研究者が沖縄県α村βに所在する第一尚氏の王族等を祀る墳墓から遺骨を持ち去り、京都帝国大学を承継した被控訴人がその遺骨の一部である原判決別紙2遺骨目録記載の各遺骨を現在まで占有保管していることについて、(1)本件遺骨の引渡請求、(2)不法行為に基づく損害賠償請求等をしたところ、原審が、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らがこれを不服として控訴し、また、控訴人A及び控訴人Bは、当審において、本件遺骨の引渡しを求める根拠として、被控訴人との間の寄託契約類似の無名契約に基づく返還請求権を選択的に追加した事案において、控訴人らの請求は理由がないとし、これと同旨の原判決は相当であるとし、また、控訴人A及び控訴人Bの当審における追加請求はいずれも理由がないとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.10.10
わいせつ電磁的記録等送信頒布被告事件  
LEX/DB25573074/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月26日 決定 (上告審)/令和4年(あ)第1407号 
刑法175条1項の規定が、憲法21条1項に違反するものでないことは、当裁判所の累次の判例(最高裁昭和28年(あ)第1713号同32年3月13日大法廷判決・刑集11巻3号997頁、最高裁昭和39年(あ)第305号同44年10月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁等参照)により極めて明らかであり、刑法175条1項にいう「わいせつ」の概念は、所論のように不明確であるとはいえないから、いずれも前提を欠き、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2023.10.10
損害賠償請求事件  
LEX/DB25595973/那覇地方裁判所 令和 5年 8月23日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第899号 
企業向けの衣類クリーニング業を営む原告が、被告会社から購入した本件システムの使用中に事故が発生して損害を被ったなどと主張して、被告会社に対し、製造物責任又は債務不履行責任に基づく損害賠償請求として(選択的請求)、被告会社の取締役であるその余の被告らに対し、会社法429条1項に基づく損害賠償請求として、連帯して、賠償金等の支払を求めた事案において、原告は、各被告に対して、それぞれ請求する損害額全額を請求することができ、このうち被告B、被告C及び被告Dが負う各債務は連帯債務となり(会社法430条)、もっとも、被告Bら3名の責任は、特別の法定責任と解するのが相当であって、被告会社の責任について、不法行為責任の特則と解される製造物責任法3条に基づく製造物責任を選択しても、債務不履行責任を選択しても、被告会社と被告Bら3名が不真正連帯債務を負うことにはならないとした事例。
2023.10.03
傷害致死、傷害、証拠隠滅教唆被告事件  
LEX/DB25573051/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月13日 決定 (上告審)/令和5年(あ)第134号 
犯人が他人を教唆して自己の刑事事件に関する証拠を隠滅させたときは、刑法104条の証拠隠滅罪の教唆犯が成立すると解するのが相当であり、被告人について同罪の教唆犯の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとした事例(反対意見がある)。
2023.10.03
審決取消請求事件(福野段ボール工業(株)による審決取消請求事件) 
「新・判例解説Watch」経済法分野 令和5年10月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595929/東京高等裁判所 令和 5年 6月16日 判決 (第一審)/令和3年(行ケ)第10号 
段ボール製品の製造業者による特定段ボールシートの販売に係る不当な取引制限(第1事件)及び特定段ボールケースの販売に係る不当な取引制限(第2事件)があったとして、被告・公正取引委員会が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律に基づいて行った各排除措置命令及び各課徴金納付命令について、原告が他の事業者とともに、これらの命令を不服として取消しを求めて審判請求をしたところ、被告がこれら審判請求に対して行った本件審決に対し、原告が、原告の審判請求を棄却する部分の取消しを求めた事案で、本件審決がその基礎として認定した事実にはいずれも実質的証拠があると認められ、また、本件審決が採用した解釈が独占禁止法に違反するものとも認められないので、本件審決に取消事由は認められないとして、原告の請求を棄却した事例。
2023.09.26
憲法53条違憲国家賠償等請求事件  
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年12月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573040/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 9月12日 判決 (上告審)/令和4年(行ツ)第144号 等 
憲法53条後段の規定により、内閣に対し、国会の臨時会の召集を決定を要求した参議院議員の一人である上告人(原告・控訴人)が、被上告人(被告・被控訴人。国)に対し、〔1〕主位的に、上告人が次に参議院の総議員の4分の1以上の議員の一人として国会法3条所定の手続により臨時会召集決定の要求をした場合に、内閣において、20日以内に臨時会が召集されるよう臨時会召集決定をする義務を負うことの確認を、予備的に、上記場合に、上告人が20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの確認を求めるとともに、〔2〕内閣が臨時会召集決定の要求から92日後まで臨時会召集決定をしなかったことが違憲、違法であり、これにより、上告人が自らの国会議員としての権利を行使することができなかったなどとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審判決は、確認訴訟部分に係る各訴えを不適法として却下し、国賠請求部分に係る請求を棄却したため、上告人が控訴し、原判決も控訴を棄却したため、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、上告理由(憲法53条後段の解釈の誤りをいう部分に限る。)及び上告受理申立て理由中、本件各確認の訴えの適否に係る部分、及び、本件損害賠償請求に係る部分については、原審の判断は是認することができるとし、その余の上告理由については、民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しないとして、上告を棄却した事例(反対意見がある)。
2023.09.26
入院決定に対する抗告申立事件  
LEX/DB25595824/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 5年 8月 8日 決定 (抗告審)/令和5年(医ほ)第2号 
対象者が、道路で普通乗用自動車を運転中、大麻使用による幻覚、妄想から、普通自動二輪車の運転手は悪魔であると思い込み、そのまま進めば同車に衝突することを認識したうえで自車前部を上記二輪車後部に衝突させ、同車もろとも上記運転手を路上に転倒させて、同運転手に全治約3か月を要する見込みの傷害を負わせたことについて、原審が、本件行為は刑法204条に規定する傷害の行為に当たる旨判断し、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に基づき、本件対象者に対し入院決定をしたところ、これに対し抗告がされた事案で、原決定が最高裁決定(最高裁平成20年(医へ)第1号同年6月18日第三小法廷決定・刑集62巻6号1812頁)の示した判断手法を採用した点に誤りはなく、さらに、その判断方法に則り、本件対象行為が傷害行為に当たるとした原決定の認定、判断にも、論理則、経験則等に照らして不合理なところはないとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.09.19
脅迫、強要未遂被告事件  
LEX/DB25573036/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月11日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第125号 
C労働組合D支部執行委員である被告人A及び同組合員である被告人Bは、E社取締役のF(当時58歳)を脅迫して、同社が日雇運転手であるD支部組合員のGを雇用している旨の就労証明書を同社に作成・交付させようなどと考え、共謀の上、京都府木津川市所在のE社の事務所において、Fが高血圧緊急症によって体調不良を呈した後もなお、そのような状態のFに対し、同社がGを雇用している旨の就労証明書を作成等することを執ように求め、さらに、D支部執行委員であるHと共謀の上、4回にわたって事務所に押し掛け、Fに対し、同社がGを雇用している旨の就労証明書を作成等することを執ように求めた上、事務所周辺にD支部組合員をたむろさせて同社従業員らの動静を監視させ、被告人A及びHが事務所に押し掛け、Fに対し、被告人Aが怒号しながら、Fに示していた就労証明書の用紙を机にたたき付け、Hが怒号して、Gを雇用している旨の就労証明書の作成等を要求し、もしこの要求に応じなければ、F及びその親族の身体、自由、財産等に危害を加えかねない旨の気勢を示して怖がらせ、もってFをして義務のないことを行わせようとしたが、Fがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかったとした事件で、第1審判決は、被告人両名について強要未遂罪の共同正犯を認定し、被告人Aを懲役1年、3年間執行猶予に、被告人Bを懲役8月、3年間執行猶予にそれぞれ処したため、被告人両名が控訴し、原判決は、第1審判決が、強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したとして、被告人両名について第1審判決を破棄し、HがFに対して怒号したことに関し、被告人Aについて脅迫罪の共同正犯を認定し、被告人Aを罰金30万円に処し、被告人Bに対して無罪を言い渡したため、検察官及び被告人Aが上告した事案で、第1審判決が強要未遂罪の解釈適用を誤り、ひいては事実を誤認したと説示しつつ、第1審判決が前提とする事実のうち、就労証明書を作成等すべき義務の有無について事実の誤認を指摘しただけで、強要罪の成立を基礎付けるその余の事実関係について、その認定の不合理性を検討しないまま、強要未遂罪の成立を認めた第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできず、刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2023.09.19
地方自治法第251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件  
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和5年11月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573025/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第143号 
沖縄防衛局は、普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請(本件変更申請)をしたところ、上告人(原告・沖縄県)は変更を承認しない旨の処分(本件変更不承認)をした。被上告人(被告・国土交通大臣)は、沖縄防衛局の審査請求を受けて、本件変更不承認を取り消す裁決をし、その後、地方自治法245条の7第1項に基づき、沖縄県に対し、本件変更申請に係る変更の承認(本件変更承認)をするよう是正の指示をした。上告人は、本件指示を不服として、国地方係争処理委員会に対し、地方自治法250条の13第1項に基づく審査の申出をしたが、本件指示は違法でないと認める旨の審査結果の通知を受けたたため、上告人は、これを不服として、同法251条の5第1項1号に基づき、本件訴えを提起し、原判決は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件裁決は本件変更不承認が本件各規定に違反することを理由として本件変更不承認を取消したものであるところ、上告人は本件変更不承認と同一の理由に基づいて本件変更承認をしないものといえるから、そのことは地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当するとし、本件指示は適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.09.12
殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、現住建造物等放火被告事件  
LEX/DB25573010/東京地方裁判所立川支部 令和 5年 7月31日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第244号 
自暴自棄になって自殺を決意した被告人が、確実に死ぬためには少なくとも二人以上殺害して死刑になるしかないと考え、不特定多数の者を殺害する目的でナイフや燃料を購入し、ナイフの刺突力を確認したり、燃焼実験を行ったりして周到に準備をした上で行った、殺人未遂、銃刀法違反の事案(判示第1、2)及び、殺人未遂、現住建造物等放火の事案(判示第3)の罪で、懲役25年、ナイフ1本(刃体の長さ約29.6cm)の没収を求刑された事案において、被害者DないしMについては、殺人未遂罪が成立することが認定できるものの、被害者B及びCについては、死亡結果が発生する具体的な危険性のある場所である特急電車両内で、被告人がライター用オイルを撒くなどした後、ジッポーライターを点火した時点で、5号車の優先座席前のおもいやりゾーン付近及び5号車と6号車の連結部分にいたことが証拠上明らかでないから、殺人未遂罪は成立しないと認定したうえで、被告人の刑事責任は極めて重大であり、社会的な影響の大きさも併せて考えると、単独で行われた通り魔無差別的な殺人未遂事件という同種事案の中でも特に重い部類に属する事案で、懲役23年に処し、ナイフ1本を没収した事例(裁判員裁判)。
2023.09.12
独立当事者参加、相続人たる地位にあること等の確認反訴請求控訴事件 
LEX/DB25595618/東京高等裁判所 令和 5年 7月18日 判決 (控訴審)/令和5年(ネ)第8号 
本件被相続人の子である控訴人(1審参加人・反訴被告)と本件被相続人の母である被控訴人(1審反訴原告)が、いずれも自身が本件被相続人の単独相続人であると主張して、控訴人と被控訴人との間において、〔1〕本件被相続人の相続人たる地位を有するのは自身のみであることの確認を求めるとともに、〔2〕本件被相続人の遺産に係る原判決別紙供託金目録記載の各供託金につき、自身がそれぞれその還付金請求権を有することの確認を求めたところ、原判決は、控訴人は父である本件被相続人を殺意をもって死亡させたものであるから、民法891条1号の類推適用により、本件被相続人の相続において相続人になることができないとして、第2順位の相続人である被控訴人の控訴人に対する請求をいずれも認容し、控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した事案で、控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がなく、被控訴人の控訴人に対する反訴請求はいずれも理由があると判断し、控訴人の請求をいずれも棄却し、被控訴人の反訴請求をいずれも認容した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.09.05
国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和5年10月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25595815/横浜地方裁判所川崎支部 令和 5年 7月11日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第343号 
亡aによる、デモ開催目的での公園内行為許可申請に対し、川崎市が行った、川崎市都市公園条例3条4項の規定に基づく不許可処分によって、亡a、原告b及び原告cの表現の自由や政治活動の自由が侵害されたとして、原告らが被告(川崎市)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案において、本件集会は、本件条例3条4項にいう「公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合」に該当しないといえるから、本件不許可処分は適法であるとして、原告らの請求を棄却した事例。