2015.01.13
関税法違反被告事件
LEX/DB25446834/最高裁判所第二小法廷 平成26年11月7日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第1334号
被告人は、D、B、E、A、C及び氏名不詳者と共謀の上、税関長の許可を受けないで、うなぎの稚魚を中華人民共和国に不正に輸出しようと考え、成田国際空港第2旅客ターミナルにおいて、航空機の搭乗手続を行うに当たり、税関長に何ら申告しないまま、うなぎの稚魚合計約59.22kg在中のスーツケース6個を機内持込手荷物である旨偽って同所に設置されたエックス線装置による検査を受けずに国際線チェックインカウンターエリア内に持ち込み、あらかじめ入手した保安検査済シールを各スーツケースに貼付するなどした上、同カウンター係員に本件スーツケース6個を機内預託手荷物として運送委託することにより、税関長の許可を受けないでうなぎの稚魚を輸出しようとしたが、税関職員の検査により本件スーツケース内のうなぎの稚魚を発見された無許可輸出の未遂罪の事実につき、第一審判決は、被告人らが運送委託を企図したということを示したものと理解するのが相当であるとして、被告人を罰金88万円に処したところ、被告人は、第一審判決に対して量刑不当を理由に控訴し、原判決は、無許可輸出罪の実行の着手時期に関し、「検査済みシールを本件スーツケース6個に貼付するなどした」までの事実をもって、無許可輸出の未遂罪が成立するとはいえず、単に無許可輸出の予備罪が成立するにとどまるというべきであり、第一審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるとして、第一審判決を破棄し、被告人を罰金50万円に処したところ、双方が上告した事案において、本件スーツケース6個を、機内預託手荷物として搭乗予約済みの航空機に積載させる意図の下、機内持込手荷物と偽って保安検査を回避して同エリア内に持ち込み、不正に入手した検査済みシールを貼付した時点では、既に航空機に積載するに至る客観的な危険性が明らかに認められるから、関税法111条3項、1項1号の無許可輸出罪の実行の着手があったものと解するのが相当であるとし、無許可輸出の予備罪にとどまるとして第一審判決を破棄した原判決には法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、第一審判決は、被告人に対し罰金88万円に処した量刑判断を含め、これを維持するのが相当であるとした事例(補足意見がある)。