更新日 2010.08.02
TKCシステム・コンサルタント
税理士 畑中 孝介
平成22年度税制改正においてグループ法人税制が創設されました。そこで、皆さんが気になる制度の概要や連結納税制度との相違点、比較検討のポイントなどを全10回にわたって連載いたします。
2010年8月2日掲載
今回は、連結納税制度導入に向けた準備ステップとして、具体的にどのような点に注意して導入すべきかについてご説明します。
「連結納税制度を導入すると、親法人の負担が増加し、決算の遅延や、現状の人員でこなせないような事態になってしまうのではないか」という声を多く聞きます。
はたして、本当にこのような事態になってしまっているのでしょうか?
答えは、YESでありNOでもあり、どちらもあり得るのではないかと思います。
では、その分岐点はどこになるのでしょうか。
私は「子法人の教育・レベルアップ」だと思います。
連結納税制度はグループ全体で申告をします。単体申告の場合には、その法人の修正で済んでいたミスが、連結納税の場合には、グループ全体に波及することが考えられます。また、申告スケジュールの遅延も同様に全体に波及することになります。
そのため、子法人の申告業務の状況把握や、教育研修といった取り組みをしないまま連結納税制度を導入した場合、「親法人の負担が増加し、決算の遅延や、現状の人員でこなせないような事態になってしまう」「修正更正が頻繁に起きる」のような事態になりかねません。
では、親法人が自分の申告を行いながら、子法人の指導に十分な時間が割くことは可能でしょうか。
それを解決するポイントは「子法人の事前のレベルの把握」、「事前の研修」、「本番での効率的な検証体制の確立」の3点にあると思います。
- 子法人の事前のレベルの把握
「申告書の精度がどれくらいなのか」「本番においてスケジュール等に遅延がないような体制ができているか」を検証します。場合によっては、子法人での申告をあきらめ、親法人や税理士等を使ったサポート体制の構築に切り替えるケースも検討すべきでしょう。 - 事前の研修
決算・申告の本番で戸惑わないよう、連結納税制度の内容や、システムの研修により、システム入力への習熟を図ります。また、申告で一番多い間違いは「租税公課の調理」です。間違いを未然に防ぐための会計処理の統一や、別表調理に関するマニュアルを整備することも重要です。 - 本番での効率的な検証体制の確立
たとえば、租税公課は原則納税充当金処理するとした場合、損金経理欄に入力されていた場合には会計処理か別表調理のいずれかが間違っているため、一目で間違いが判別できるなど、検証体制を確立することで、大幅な時間の短縮につながります。また、別表の項目名の統一やマニュアルやチェックリストの作成なども効果的な検証体制の確立につながります。
我々が過去に申告書のレビューなどを行った場合、どれくらい間違った申告書があったと思いますか?
答えは15-20%程度です。これを放置したまま連結納税を導入すると、大変な負荷が発生すると思われます。
やはり、「子法人の事前のレベルの把握」、「事前の研修」、「本番での効率的な検証体制の確立」こそが、正確性の向上、決算・申告スピードの向上(修正の手間の削減)につながるのだと実感しています。
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第1回 グループ法人税制と連結納税制度の比較検討のポイント
テーマ
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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