更新日 2012.10.15
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 藤井 規生
制度創設から10年が経過し、繰越欠損金の持ち込み制限の緩和や復興特別税の創設等、連結納税制度の適用を検討するためのポイントも変遷しています。
そのため、このコラムでは、連結納税制度の適用を検討するにあたり必要となる制度の基礎的な理解や制度創設時とは変わった点について、わかりやすく解説します。
連結納税を始めると申告・納付はどうなるのか?が気になるところです。申告については、連結納税グループ全体の連結所得金額や連結法人税額等を記載した「連結確定申告書」を作成し、親法人が親法人の納税地の所轄税務署長へ、連結事業年度(親法人の事業年度です。)終了の日の翌日から2月以内に提出することになっています。次に納付についてですが、これも親法人が納付することとなっています。
では、申告と納付を親法人がやってしまうので子法人は何もしなくていいのか?というと、そうはいかないのです。各子法人は、連結確定申告書の提出期限までに、連結所得金額のうち、その子法人に帰属する金額(個別所得帰属額といいます。)や、連結法人税額のうち、その子法人に帰属する金額(連結法人税の個別帰属額といいます。)等を記載した「個別帰属額等の届出書」を、各子法人がその子法人の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
連結確定申告書と個別帰属額等の届出書の提出期限については、申請を条件に延長が認められています。単体申告の場合には、会計監査人の監査を受けなければならないこと等の理由で、1月の延長が認められています(要申請)。連結納税の場合でも、上記理由に加えて、子法人が多数に上る等の理由で、2月の延長が認められています(要申請)。ただし、この提出期限の延長申請書の提出のタイミングは単体申告のときと違い、連結事業年度終了日の翌日から45日以内に行うことになっていますので注意が必要です。
1.連結確定申告書
親法人が提出する連結確定申告書に記載すべき事項は下記のとおりです。
- (1)
- その連結事業年度の課税標準である連結所得の金額または連結欠損金額
- (2)
- 連結所得の金額につき計算した法人税の額
- (3)
- 連結事業年度における所得税額等の控除をされるべき金額で、法人税の額の計算上控除しきれなかったものがある場合には、その控除しきれなかった金額
- (4)
- その他の添付書類(子法人分も添付する必要があります。)
① 連結事業年度の貸借対照表及び損益計算書
② 連結事業年度の株主資本等変動計算書
③ ①に係る勘定科目内訳書
④ 連結親法人の事業等の概況に関する書類
連結確定申告書の添付書類を提出する際の並び順は下記のイメージのとおりです。
2.個別帰属額等の届出書
子法人が提出する個別帰属額等の届出書に記載すべき事項は下記のとおりです。
- (1)
- その連結事業年度に係る連結法人税の個別帰属額の計算により法人税の負担額として支出すべき金額または法人税の減少額として収入すべき金額
- (2)
- その計算の基礎等を記載した書類
- (3)
- その他の添付書類
① 連結事業年度の貸借対照表及び損益計算書
② 連結事業年度の株主資本等変動計算書
③ ①に係る勘定科目内訳書
個別帰属額等届出書の添付書類を提出する際の並び順は下記のイメージのとおりです。
3.納付・還付
連結納税の場合の法人税は、連結親法人が納付し、または還付を受けることになり、連結子法人は連結親法人に連帯して納付義務を負います。
連結子法人は、連結法人税の個別帰属額について支出すべき金額または収入すべき金額について、親法人とのあいだで資金移動をすることになります(資金移動は義務ではありませんが。)。
ここで、簡単な設例によりグループ各社の仕訳を見てみましょう。
連結納税グループ各社 | 所得金額 | 法人税(25.5%) |
---|---|---|
親法人P | 5,000 | 1,275 |
子法人S1 | 1,000 | 255 |
子法人S2 | -2,000 | -510 |
子法人S3 | 1,000 | 255 |
グループ合計 | 5,000 | 1,275 |
上記の様に、親法人Pの損益計算書には法人税等1,275が計上され、連結納税グループの一員として親法人Pが負担すべき連結法人税の個別帰属額が表示されることになります。
4.中間申告
連結納税においても、単体申告と同様に中間申告制度があります。連結親法人は、その連結事業年度が6月を超える場合には、その連結事業年度開始の日以後6月を経過した日から2月以内に、税務署長に対し連結中間申告書を提出し、かつ、連結中間法人税を納付する必要があります。もちろん中間仮決算に基づく申告も可能ですが、単体申告に同じく前年度基準の連結中間税額が10万円以下である場合や連結中間税額がない場合には、連結中間申告書を提出する必要はありません。
なお、連結納税の場合の注意点としては、中間仮決算に基づく連結中間申告は法人税のみ可能であり、地方税に関しては前年度基準の中間申告しかできないことになっています。
5.電子申告
連結納税の場合には、上記の申告書・届出書のイメージのとおり税務申告に際して提出する書類が増加します。特に子法人が多数に上る連結グループの親法人では膨大な提出枚数になり、単体申告と比較して事務負担が懸念されます。また、連結グループ全体での計算を迅速に行うためには、親法人と子法人との情報のやり取りを確実に、しかも瞬時に行える仕組みの構築が欠かせません。よって、連結納税を選択した企業グループのほとんどが連結納税システムを導入し、単体申告として行う地方税の申告を含めて電子申告をすることで事務の合理化を図っています。
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