移転価格税制と寄附金課税の論点解説~両制度の線引基準と適合事例~

第2回 寄附金課税の概要

更新日 2026.07.27

TKC税務研究所 特別研究員 御園生 渉

TKC税務研究所 特別研究員

御園生 渉

本コラムは、移転価格税制と寄附金課税について、制度の仕組みと相違点を整理し、実務上の適用区分(線引き基準)を検討します。両制度は課税構造が類似しますが、適用の違いにより企業グループとしての税負担や国際的二重課税リスクに差異が生じる点が重要です。本稿では「贈与の意図」と「対価性の有無」を軸に整理するとともに、証拠に基づく事実認定や税務調査上の留意点を具体例により解説します。

当コラムのポイント

  • 「移転価格税制」と「寄附金課税」の共通点および相違点
  • 両制度の線引きが税負担や二重課税リスクに影響する重要な実務上の論点であること
  • 「贈与の意図」と「対価性の有無」に基づく線引きの判断基準
目次

前回の記事 : 第1回 移転価格税制の概要

1.寄附金課税とは

 法人税法上の収益の認識及び測定については、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」とされ、また、「内国法人の各事業年度の資産の販売等に係る収益の額として益金の額に算入する金額は、その販売等をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とする。」とされています(法法22②、22の2④)。
 したがって、無償による資産の譲渡、役務の提供、資産の譲受等のいわゆる無償取引や時価と異なる対価による低廉譲渡等の取引についても、法人税法上は、時価に基づいて収益を認識する必要があります。
 また、法人税法上の寄附金の額は、「内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合(純粋な民法上の贈与)における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額による(法法37⑦)」とされ、更に、「資産の譲渡又は経済的な利益の供与の対価の額がそれらの譲渡時又は供与時の価額に比して低いとき(条文上は、事例の多い低廉譲渡等のみが規定されていますが、高価買入等も含まれると解されます。)は、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額(実質贈与)は、寄附金の額に含まれる(法法37⑧)」とされています。この寄附金の額からは、広告宣伝費、交際費等及び福利厚生費とされるべきものは除かれています。
 寄附金とその他の事業経費の区分については、一般に、寄附金とは、反対給付のない一方的な行為による金銭等の贈与と解されることから、事業活動との関連性が希薄なものです。これに対し、その他の広告宣伝費や交際費等の事業経費は、事業遂行上直接必要な経費に該当します。したがって、両者の区分は、事業との関連性の有無や程度により判断されます。
 そして、法人がこれらの寄附金の額を支出した場合には、支出した寄附金の額の合計額のうち一定の損金算入限度額を超える部分の金額は、損金の額に算入されないものとされています(法法37①)。
 したがって、例えば、法人が資産の販売等を無償又は時価を下回る低い対価により行った場合には、その資産の販売等に係る収益(貸方)は時価により認識されるとともに、時価と対価(無償取引の場合はゼロ)との差額(借方)は、寄附金と認定されます。この場合、当該寄附金については、一定の損金算入限度額を超える部分は損金不算入となり、課税関係が生じます。これを一般に「寄附金課税」などと呼んでいます。
 また、逆に、法人が資産の購入等を時価を超える高い対価により行った高価買入等の場合も、資産の取得価額等(借方)は時価により認識されるとともに(法令32①三、54①六他)、時価と対価との差額(借方)は、寄附金と認定されます。この場合も、当該寄附金については、一定の損金算入限度額を超える部分は損金不算入となります。

2.国外関連者寄附金の損金不算入制度

 移転価格税制の対象となる国外関連者に対する寄附金については、租税特別措置法66条の4③項において、一般の寄附金とは異なる取扱いが定められています。
 すなわち、法人が各事業年度において支出した法人税法37条⑦項に規定する寄附金の額(同条⑧項に規定する低廉譲渡等による実質贈与もこの寄附金の額に含まれます。)のうち、当該法人に係る国外関連者に対するものについては、当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされています(措法66の4③)。したがって、この国外関連者に対する寄附金については、その支出額の全額が損金不算入とされ、一般の寄附金の損金算入限度額の規定(法法37条)は適用されません。
 この国外関連者寄附金の損金不算入規定は、平成3年度の税制改正において、移転価格税制を規定する租税特別措置法66条の4の中に設けられたものです。制度創設時の「平成3年度 改正税法のすべて」(287頁)では、「改正の趣旨及び内容」について、次のように説明されています。
 「これまで、企業が支出した一般的な寄付金は、海外の関係会社に対するものも含め、一定の限度内で損金に算入することが認められていました。したがって、海外の関係会社との取引を通じる所得の移転については移転価格税制によって規制されますが、関係会社に対する単なる金銭の贈与や債務の免除については一定の限度内で損金算入が認められるため、同じ所得の海外移転でありながら両者の課税上の取扱いにアンバランスが生じるという問題がありました。そこで今回の改正では、この問題を是正するため、関係会社に対する寄付金についてはその全額を損金に算入しないこととされました。」

  • X
  • Facebook

この連載の記事

テーマ

プロフィール

TKC税務研究所 特別研究員 御園生 渉

御園生 渉(みそのう わたる)

TKC税務研究所 特別研究員

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。