更新日 2024.12.05
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
税理士 畑中 孝介
令和6年度の税制改正において、「交際費等の損金不算入制度」の見直しが行われ、交際費等の範囲から除外される「飲食費」の金額が、これまでの(令和6年3月31日支出分まで)1人5,000円から「10,000円以下」に引き上げられました。
このコラムでは交際費等の基本から実務上の留意点、隣接費用との関係、そして実務上の間違いが多い控除対象外消費税との関係についても解説します。
当コラムのポイント
- 交際費等の概要と飲食接待費50%特例の概要
- 隣接費用との関係(株主総会等の関連含む)
- 控除対象外消費税(インボイスの免税事業者等の論点含む)
- 目次
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1.控除対象外消費税額等の概要
課税売上高が5億円超の事業者については95%ルールの適用が除外され、「課税売上げにのみ要する課税仕入れ」しか控除できないことになり、控除できない消費税額等(控除対象外消費税額等)が発生することになります。また、インボイス制度の導入によっても、免税事業者等からの課税仕入れについては、仕入税額控除が制限されるため、控除対象外消費税等が発生することになります。インボイス制度による仕入税額控除の制限の影響は徐々に増加するため、控除対象外消費税額等については一層の留意が必要です。
2.控除対象外消費税額等の税務処理
控除対象外消費税額等は、「資産に係る控除対象外消費税額等」と「資産に係るもの以外の控除対象外消費税額等」の2つに分けて処理をすることとなります。
(1) 資産に係る控除対象外消費税額等
資産に係る控除対象外消費税額等は、次のいずれかの方法によって、損金の額に算入します。
- ① その資産の取得価額に算入し、それ以後の事業年度において償却費などとして損金の額に算入します。
- ② 次のいずれかに該当する場合には、損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に算入します。
- 1)その事業年度又は年分の課税売上割合が80%以上であること。
- 2)棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること。
- 3)一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること。
- ③ 上記①②に該当しない場合には、「繰延消費税額等」として資産計上し、繰延消費税額等/60×事業年度の月数(資産取得年度はその1/2)の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。
(2) 控除対象外消費税額等が資産に係るもの以外である場合
一般的には雑損失や租税公課等の科目で処理をし、全額をその事業年度の損金の額に算入します。
(3) 税込経理の場合の控除対象外消費税の処理
そもそも税込経理方式を採用している場合には、消費税額は資産の取得価額又は経費の額に含まれますので、特別な処理は要しないこととなります。
(4) 交際費に係る控除対象外消費税
仕入税額控除の対象外となった仕入税額は、資産に係るもの以外については、その年度の損金として処理できますが、交際費等に係る部分については交際費等の額として別表での加算が必要となります。
消費税の申告では改正に気づいていても、法人税申告にまで影響することに気づかれていないことが多いようです。改正の影響は消費税にとどまらず法人税申告にも影響しますのでご注意ください。特に、交際費等に係る部分については注意が必要です。
また、インボイス制度の導入により免税事業者からの課税仕入れに関しては法人税別表での加算額が徐々に増加することになりますので一層留意が必要です。(詳細は下記参照)
3.インボイス制度による法人税別表への影響
インボイス制度により、免税事業者などの適格請求書発行事業者でないものからはインボイスがもらえないために、消費税の控除対象外となります。
(控除対象額)
- R5.10.1~R8.9.30
- 仕入れ税額×80%
- R9.10.1~R11.9.30
- 仕入れ税額×50%
- R11.10.1~
- 仕入税額控除不可
(注)帳簿にはこの経過措置の適用を受けたものである旨の記載が必要です。
この控除対象外となる消費税部分については新経理通達14の2において「適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る取引について税抜経理方式で経理をしている場合であっても、その取引の対価の額と区分して経理をした消費税等の額に相当する金額を当該課税仕入れに係る取引の対価の額に含めて法人税の課税所得金額を計算する。」とされており、控除対象外消費税額等となるのではなく、対価の額に含めて経理することとされていますので、費用または資産の対価の額として処理する必要があります。ただし、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間に行われた適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、課税仕入れに係る消費税額の80%相当額について仕入税額控除の適用を受けることができます(平成28年改正法附則52① )。そのため、残り20%相当額については、飲食費に含めたうえで判定することになります。
今後、免税事業者からの課税仕入れについては、徐々に控除税額が減少し、控除対象外消費税も減少することになりますので、資産に係るものについては対価の額として含めるとともに、交際費等についても対価の額に含めて認識をする必要があります。
了
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2024.12.05
第3回(最終回) ミスの多い控除対象外消費税の処理
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第2回 交際費と隣接費用との関係
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2024.11.25
第1回 交際費の概要と飲食接待費50%特例の概要
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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