更新日 2024.11.25
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
税理士 畑中 孝介
令和6年度の税制改正において、「交際費等の損金不算入制度」の見直しが行われ、交際費等の範囲から除外される「飲食費」の金額が、これまでの(令和6年3月31日支出分まで)1人5,000円から「10,000円以下」に引き上げられました。
このコラムでは交際費等の基本から実務上の留意点、隣接費用との関係、そして実務上の間違いが多い控除対象外消費税との関係についても解説します。
当コラムのポイント
- 交際費等の概要と飲食接待費50%特例の概要
- 隣接費用との関係(株主総会等の関連含む)
- 控除対象外消費税(インボイスの免税事業者等の論点含む)
- 目次
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1.交際費課税制度の概要
(1) 交際費等の定義
交際費とは、法人が事業に関係のある者(仕入先、得意先、株主、社員など)に対して、接待、供応、慰安、贈答等ために支出する費用をいいます。
定義としてはかなり広く、社内旅行の費用、会議の弁当代、残業時の食事代などもすべて交際費等に含まれる可能性がありますが、税法では、その支出の目的・性格・金額などによって、交際費等に該当するものと、そうではないもの(隣接費用)との区分が設けられています。隣接費用との区分については第2回のコラムで解説します。
(出典:経済産業省「平成26年度経済産業関係 税制改正について」、一部改変)
(2) 交際費等は原則全額損金不算入
交際費等の額は、一部の例外を除き、原則として「全額損金不算入」とされています。
例外として損金算入できるものは下記のとおりです。
- ① 1人10,000円※までの飲食費 (社内飲食費を除く)
- 全額損金算入できます。
※令和6年3月31日までの支出(飲食が行われた日)は「5,000円」です。 - ② 中小法人(資本金1億円以下の法人)の場合
- 交際費等の額が「年800万円(定額控除限度額)まで」損金算入できます。
- ③ 資本金1億円超~100億円以下の法人等の場合
- 交際費等の額のうち「接待飲食費の額の50%相当額以下の金額」は損金算入できます。
- ① 飲食費に係る飲食等(飲食その他これに類する行為をいいます)のあった年月日
- ② 飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
- ③ 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
- ④ その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
- ① 飲食等のあった年月日
- ② 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
- ③ 飲食等に参加した者の数
- ④ その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地
(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等) - ⑤ その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
(出典:「Q&A知っておきたい交際費の基本」TKC出版)
(3) 飲食費とは
飲食費とは「飲食その他これに類する行為のために要する費用」とされています。
それに類する費用として、弁当代、飲食店での手土産、飲食店へのサービス料などが該当します。
一方で、単なる飲食物の贈答、飲食店への送迎費、社内飲食費については飲食費に該当せず、通常の交際費等に該当することになります。
また、親会社の役員等との飲食費は、あくまでも社外に該当するので社内飲食費には含まれません。
(4) 接待飲食費の帳簿への記載事項
接待飲食費は、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く)で、かつ、法人税法上で整理・保存が義務付けられている帳簿書類(総勘定元帳や飲食店等から受け取った領収書、請求書等)に飲食費であることを明らかにするため、以下の事項が記載されている必要があります。
「接待飲食費」に関する書類の記載事項
このうち、②は社内飲食費でないことを明らかにするためのものであり、原則として、飲食等を行った相手方である社外の得意先等に関する事項を「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)、卸売先」として、相手方の氏名や名称をすべて記載する必要があります。
【記載事項の一部が不明の場合】
相手方の氏名について、その一部が不明の場合や多数参加した場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「○○会社・□□部、△△◇◇(氏名)部長他10名、卸売先」と記載しても差し支えありません(氏名の一部又は全部が相当の理由により明らかでない場合には、記載を省略して差し支えありません)。
(5) 少額飲食費
1人当たり10,000 円以下の飲食費で、以下の書類の保存要件を満たしているものについては、交際費等に該当しないこととされています。
なお、上記「接待飲食費に関する書類の保存要件」との違いは、「③飲食等に参加した者の数」を記載することです。
「少額飲食費」に関する書類の保存要件
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第1回 交際費の概要と飲食接待費50%特例の概要
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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