更新日 2024.12.05
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
税理士 畑中 孝介
令和6年度の税制改正において、「交際費等の損金不算入制度」の見直しが行われ、交際費等の範囲から除外される「飲食費」の金額が、これまでの(令和6年3月31日支出分まで)1人5,000円から「10,000円以下」に引き上げられました。
このコラムでは交際費等の基本から実務上の留意点、隣接費用との関係、そして実務上の間違いが多い控除対象外消費税との関係についても解説します。
当コラムのポイント
- 交際費等の概要と飲食接待費50%特例の概要
- 隣接費用との関係(株主総会等の関連含む)
- 控除対象外消費税(インボイスの免税事業者等の論点含む)
- 目次
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1.交際費等の定義
前回のコラムで解説しましたが、交際費とは、法人が事業に関係のある者等(仕入先、得意先、株主、社員など)に対する接待、供応、慰安、贈答等のために支出する費用をいいます。
定義としてはかなり広く、社内旅行の費用や、会議の弁当代、残業時の食事代などもすべて交際費に入ってしまいそうですが、税法では、その支出の目的・性格・金領などによって、交際費になるものと、そうではないもの(隣接費用)との区分を設けています。交際費の理解に当たっては、交際費と交際費から除かれるもの=隣接費用との区分が重要になりますので今回解説していきます。
2.交際費等から除かれるもの
次に掲げる費用は交際費等から除かれ、隣接費用などになります。
(1) 従業員の慰安
もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用。
(2) 1人1万円以下の飲食費
飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」)のために要する費用であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が1万円以下である費用。一定の事項を記載した書類を保存しておく必要があります。
なお、社内飲食費はここに含まれていません(第1回のコラムを参照・隣接費用や交際費等になります)。
(3) その他の費用
- ① カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
- ② 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
- ③ 新聞、雑誌等の出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用
3.隣接費用の基本的な考え方
交際費と隣接費用についての区分は支出の目的、内容等で判断することになります。
例えば、取引先との飲食等に要した費用であっても、会議に関連した弁当であれば、飲食費というよりは会議が目的のため会議費となります。
これら隣接費用は会議費のほか、広告宣伝費、福利厚生費、給与(役員なら役員賞与、従業員なら従業員賞与となる場合が多い)、売上値引き・割戻し、販売促進費等があります。
4.主な隣接費用
(1) 寄附金
寄附金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。一般的に寄附金、拠出金、見舞金などと呼ばれるものは寄附金に含まれます。ただし、これらの名義の支出であっても交際費等、広告宣伝費、福利厚生費などとされるものは寄附金から除かれます。したがって、金銭や物品などを贈与した場合に、それが寄附金になるのかそれとも交際費等になるのかは、個々の実態をよく検討した上で判定する必要があります。次のような事業に直接関係のない者に対する金銭贈与は、原則として寄附金になります。
- ① 社会事業団体、政治団体に対する拠金
- ② 神社の祭礼等の寄贈金
(2) 売上割戻し
- ① 得意先である事業者に対し、売上高若しくは売掛金の回収高に比例して、又は売上高の一定額ごとに金銭で支出する売上割戻しの費用
- ② 得意先の営業地域の特殊事情、協力度合い等を勘案して金銭で支出する費用
- ③ 上記の売上割戻し等と同様の基準で事業用資産を交付する費用
- ④ 上記の売上割戻し等と同様の基準で購入単価が少額(おおむね3,000 円以下)である物品(少額物品)を交付する費用
※得意先に対して上記の事業用資産・少額物品以外の物品を交付するために要する費用や得意先を旅行、観劇等に招待するために要する費用については交際費に該当するものとされています。
(3) 広告宣伝費
- ① カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手拭いその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
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② 製造業者又は卸売業者が支出する以下のイ~ニの費用
- イ 抽選により、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用又は一般消費者を旅行、観劇等に招待するために要する費用
- ロ 金品引換券付販売に伴い、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用
- ハ 一定の商品等を購入する一般消費者を旅行、観劇等に招待することをあらかじめ広告宣伝し、その購入した者を旅行、観劇等に招待する場合のその招待のために要する費用
- 二 自己の製品又はその取扱商品に関し、これらの者の依頼に基づき、継続的に試用を行った一般消費者又は消費動向調査に協力した一般消費者に対しその謝礼として金品を交付するために通常要する費用
- ③ 小売業者が商品の購入をした一般消費者に対し景品を交付するために要する費用
- ④ 一般の工場見学者等に製品の試飲、試食をさせる費用(これらの者に対する通常の茶菓等の接待に要する費用を含む。)
(4) 福利厚生費等
- ① 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
- ② 創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し、従業員等におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用
- ③ 従業員等(従業員等であった者を含む)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用(結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなど)
(5) 雑費等
- ① 会社の記念式典における従業員以外に提供する飲食の費用で1人当たり10,000円以下のもの
- ② 進水式、起工式、落成式等の式典の祭事のために通常要する費用
- ③ 災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等
- ④ 取引先に対する災害見舞金等
- ⑤ 不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用
(6) 給与等
- ① 従業員等に対して常時給与される昼食等の費用
- ② 自社の製品、商品等を原価以下で従業員等に販売した場合の原価に達するまでの費用
- ③ 従業員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
(7) 会議費等
- ① 会議、来客との商談、打合せ等に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
- ② 会議、来客との商談、打合せ等に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用
- ③ 特約店等を旅行、観劇等に招待し、併せて新製品の説明、販売技術の研究等の会議を開催した場合の、会議に通常要すると認められる費用の金額(その会議が会議としての実体を備えていると認められるとき)
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第3回(最終回) ミスの多い控除対象外消費税の処理
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第1回 交際費の概要と飲食接待費50%特例の概要
プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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