更新日 2024.11.28
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 足立 直之
減価償却について、会計上と税務上の基本的な考え方から応用論点まで網羅的にわかりやすく解説します。
当コラムのポイント
- 減価償却の基本的な考え方と各種減価償却方法を解説します。
- 減価償却の例外的な取扱いについて解説します。
- 資本的支出の税法改正に基づく解説と中古資産の取扱いについて解説します。
- 目次
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今回は減価償却における以下の2つの論点について解説します。
- 1.減価償却方法の変更
- 2.法定耐用年数と中古資産の取扱い
1.減価償却方法の変更
固定資産の減価償却方法について、何らかの理由により定率法から定額法に変更するなど「減価償却方法の変更」を行う場合があります。
「減価償却方法の変更」は、財務会計と税務会計で取扱いが異なることから、それぞれについて解説します。
(1) 財務会計の取扱い
財務会計上、減価償却方法の変更は、「会計方針の変更」に該当し、変更に当たっては「正当な理由」が必要となります。
通常、会計方針の変更を行った場合には、過年度に遡及してその会計方針を適用する処理を行います。
しかし、減価償却方法の変更は「会計方針の変更」となるものの、その変更は「会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合」に該当するとされており、減価償却方法を変更した際には、会計上の見積りの変更と同様に取り扱うこととされているため、会計上の見積りの変更時の処理と同じく、過年度への遡及は行いません。
また、企業がいったん採用した減価償却方法は、会計基準等の変更に伴うものでない限り、「変更するための正当な理由」が必要になり、開示において、注記事項に「変更の内容・正当な理由・影響額」を記載する必要があります。
(2) 税務会計上の取扱い
税務会計上は、所轄の税務署長宛てに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出し、承認を得る必要があります。なお、現状の償却方法を採用してから相当の期間(3年)を経過していることが必要で、変更しようとする償却方法によっては各事業年度の所得の金額の計算が適正に行われ難いと認められるときには承認されません。
このことから、償却方法の変更が財務会計上認められても、税務会計上認められないという事象が生じる可能性があります。その際には、確定申告時に別表による調整が必要となります。
2.法定耐用年数と中古資産の耐用年数について
ここでは法定耐用年数について解説した後、中古資産との関連について解説します。
まず、法定耐用年数ですが、減価償却資産が使用可能な年数と税法上定められた年数のことで、資産の種別ごとに細かく規定されています。法定耐用年数とは別に資産ごとに耐用年数を見積り、減価償却を行うことは可能ですが、税法で定められた法定耐用年数に基づかない場合、税法上の償却限度額を超えた際には確定申告時に別表での調整が必要となります。実際には、税法で定められた法定耐用年数に従って減価償却を行うことで、別表による調整が不要となるため、ほとんどの場合、税法の法定耐用年数が採用されています。
次に中古資産の耐用年数について解説します。
中古資産も減価償却資産であるため、原則として法定耐用年数に基づいて減価償却計算を行います。
しかし、使用されていた期間があるため、中古資産の耐用年数は新品と比較して短くなると考えられます。そのため、「見積法」・「簡便法」といった方法で耐用年数を短縮し、減価償却を行うことも可能です。
これらについて以下に解説していきます。
(1) 見積法
中古資産として取得した以降の使用可能期間を合理的に見積った期間
(2) 簡便法
「見積法」による使用可能期間の見積りが困難な場合に適用可能であり、以下の算式により算出します。
- ①簡便法の計算方法
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- 1)法定耐用年数の全部を経過した資産を取得した場合
中古資産の法定耐用年数=当該資産の法定耐用年数 × 20% - 2)法定耐用年数の一部を経過した資産を取得した場合
中古資産の法定耐用年数=(法定耐用年数-経過年数) +経過年数× 20%
- 1)法定耐用年数の全部を経過した資産を取得した場合
なお、1年未満の端数がある場合、その端数は切り捨てられ、2年未満と計算される場合でも、耐用年数は最低2年となります。
(計算例)
資産種類:車両運搬具
取得価額:100万円
法定耐用年数:6年
- 7年経過の中古車を購入(法定耐用年数の全部を経過)
中古車の法定耐用年数=6年×20% =1.2年
計算結果が2年に満たないため、2年となります。 - 4年経過の中古車を購入(法定耐用年数の一部を経過)
中古車の法定耐用年数=(6年-4年)+4年×20% =2.8年
1年未満の端数切捨てにより2年となります。
中古資産の法定耐用年数の例外
中古資産に対して支出した資本的支出の金額が、その中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額)の50%を超える場合、「見積法」及び「簡便法」による耐用年数の適用は認められず、法定耐用年数を適用することになります。
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プロフィール
税理士・公認会計士 足立 直之(あだち なおゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
- 略歴
- Big4系の監査法人で財務諸表監査、内部統制監査に携わり、IT統制を含めた内部統体制の構築支援、連結会計システムの導入コンサルティングを実施。その後、グローバル企業に出向し、公認会計士監査の監査対象の重要性から外れる国内外の子会社の会計監査を実施。現在は、税務業務、法定監査、会計コンサルティングに携わる。
- ホームページURL
- デルソーレ税理士法人 三鷹支店
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