電子インボイスとデジタルインボイス、そしてペポルインボイス その違いとは?

第4回 ペポルでの送受信の仕組みとペポルインボイスについて

更新日 2024.01.15

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株式会社TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長 富永 倫教

株式会社TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長

富永 倫教

当コラムでは、電子インボイスとデジタルインボイスとの違い、そしてペポルインボイスの全体像やメリットなどをできる限り平易に解説します。

当コラムのポイント

  • 電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは?
  • ペポルインボイスとは?
  • ペポルインボイスのメリットと導入の手順について
目次

前回の記事 : 第3回 電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは(2)

 第4回ではペポルでの送受信の仕組みとペポルインボイスについて、概略を説明します。

1.ペポルでの送受信の仕組みとは

 「Peppol(ペポル)」については、デジタル庁のホームページに以下の説明があります。

(参考)「Peppol」とは、電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「ネットワーク」「運用ルール」に関するグローバルな標準仕様です。国際的な非営利組織である「OpenPeppol」という団体により管理されています。デジタル庁は、20219月より、OpenPeppolのメンバーとして活動しています。

出典:デジタル庁のホームページ「JP PINT

 また、「標準化・全体最適化され、現行の制度・仕組みからの移行可能性に配慮されたデジタルインボイス・システムの構築・普及を通じて、商取引全体のデジタル化と生産性向上に貢献することを目指し、活動」しているデジタルインボイス推進協議会(システムベンダーを中心とした199社が加盟:202311月時点)のホームページには、次の説明があります。

PeppolPan European Public Procurement Online)とは、請求書(インボイス)などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様であり、Open Peppol(ベルギーの国際的非営利組織)がその管理等を行っています。
現在、欧州各国のみならず、オーストラリア、ニュージーランドやシンガポールなどの欧州域外の国も含め30か国以上で利用が進んでいます。
Peppolは、「4コーナーモデル」と呼ばれるアーキテクチャを採用しています。
ユーザー(売り手(C1))は、自らのアクセスポイント(C2)を通じ、Peppolネットワークに接続し、買い手のアクセスポイント(C3)にインボイスデータを送信し、それが買い手(C4)に届くという仕組みです。Peppolユーザーは、アクセスポイントを経て、ネットワークに接続することで、Peppolネットワークに参加する全てのユーザーとデジタルインボイスをやり取りすることができます。この仕組みは、例えば、メーラー(アプリケーション)からインターネットプロバイダーを介して相手先に届くという電子メールの仕組みに似ています。

出典:デジタルインボイス推進協議会のホームページ「デジタルインボイスとは」

 ペポルでは4コーナーモデルが採用されており、電子メールと同様、異なるアクセスポイントユーザにもデジタルインボイスを送信できます。皆様も普段から仕事、プライベートにかかわらず電子メールを当たり前に利用していると思われますが、送受信している電子メールがどのアクセスポイントを経由して、具体的にどのようなデータの構造なのか、など把握せずとも普通にメールを送受信しているはずです。そのため、利用者がこのペポルでの4コーナーモデルなどを理解する必要はない、と筆者は考えています。コラムの性質上デジタル庁やデジタルインボイス推進協議会のホームページ上の説明を引用しましたが、よく理解できないという方であっても、まったく心配することはありません。ペポルでの送受信の仕組みを詳細に理解していなくても、デジタルインボイスの利活用に支障がないと捉えてください。

 それでは、ここからは、ペポルでの送受信の仕組みの概要についてできるだけ簡単に理解できるように、紙と電子メールの場合と比較しながら、説明を加えます。

(1) アクセスポイントを経由

 図にあるとおり、

  • 紙で請求書を送受信する場合は郵便局を経由しており
  • またPDFや閲覧サイトのURLで請求書を発行している場合は、電子メールでの送受信となり、メールサーバを経由していることが分かります。

 ペポルインボイスの場合は、郵便局やメールサーバの位置づけでアクセスポイントを経由している、と捉えてください。
 また、同じアクセスポイントであれば送受信できることはもちろんのこと、送信側はアクセスポイントが異なるペポルIDにも送信でき、受信側はアクセスポイントが異なるペポルIDからも受信できることから、ペポルインボイスに対応したシステムであればメーカーが異なるシステム間でも送受信できます。
 次の図でイメージを確認してください。

 ここで「ペポルID」という新たな単語が出てきました。

(2) ペポルIDを利用

 ペポルIDとは、ペポルネットワークで相手先を特定するためのIDであり、公的な番号である法人番号または適格請求書発行事業者の登録番号等を指定します。そしてペポルIDの取得にはペポルサービスプロバイダーとの契約が必要となります。
 こちらについても、紙と電子メールの場合と比較して確認してみます。

 紙の場合には、郵送時に住所を使用します。指定した相手先の住所に対して郵便物が届きます。
 次に電子メールの場合には、メール送信時に相手先のメールアドレスが必要になります。送信する側もメールアドレスが必要ですので、送信側と受信側双方でメールアドレスの取得のためプロバイダーとの契約が必要になります。
 これらと同じように、ペポルインボイスの場合、相手先を特定するために相手先のペポルIDが必要になります。
 以下のイメージでご確認ください。

 さて、ペポルでの送受信の仕組みについての説明のあとは、ペポルネットワークで送受信するペポルインボイスについて説明します。

2.デジタルインボイスとペポルインボイスの違いとは

 第3回目までのコラムで、「構造化され、標準化された、JP PINTに基づく」電子インボイスがデジタルインボイスであることを確認しました。ペポルインボイスはデジタルインボイスの一部であり、デジタルインボイスのうち、

  • (1)ペポルネットワークを通して授受を行うデジタルインボイス
  • (2) 送信時に検証(Validation)が行われるデジタルインボイス

をペポルインボイスとして弊社では定義しています。次の図のような関係になりますので、ご確認ください。

 (1)については、ペポルネットワークを通して授受を行うデジタルインボイスを、ペポルインボイスと呼んでいるのだな、と理解しておいてください。
 細かな内容になりますが、図にあるとおり、ペポルインボイスでないデジタルインボイスとしては、

  • JP PINTのデータを独自のサイトに表示して提供
  • JP PINTのデータが格納されたPDF

があげられます。

 また、(2)の「送信時の検証」については、次の第5回目の「ペポルインボイス利用のメリット」で説明します。

 さて、今回はペポルにおける送受信の仕組みとペポルインボイスとは、について説明しました。
 次回以降のコラムでは、ペポルインボイス利用のメリット、ペポルインボイス採用の手順などについて、説明したいと考えています。

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プロフィール

株式会社TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長 富永 倫教

富永 倫教(とみなが とものり)

株式会社TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長

略歴
平成14年度の連結納税制度創設当初から、TKC連結納税システム(eConsoliTax)のコンサルティング業務に従事し、以来一貫して20年超にわたり中堅・大企業の税務部門に対する税務システムのマーケティングやコンサルティング業務を行っている。現在、消費税のインボイス制度への対応をきっかけにデジタル化を通じた事業者のバックオフィス業務の効率化を実現することを目的に誕生したデジタルインボイス推進協議会(EIPA)幹事法人のメンバーとして活動している。

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