更新日 2023.12.28
株式会社TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長
富永 倫教
当コラムでは、電子インボイスとデジタルインボイスとの違い、そしてペポルインボイスの全体像やメリットなどをできる限り平易に解説します。
当コラムのポイント
- 電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは?
- ペポルインボイスとは?
- ペポルインボイスのメリットと導入の手順について
- 目次
-
前回の記事 : 第2回 電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは(1)
第3回では第2回に引き続き、電子インボイスとデジタルインボイスの違いについて、「標準化」のところから説明を続けます。
2.電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは
(2) 標準化とは
経済産業省のホームページ「一般の方へ(METI/経済産業省)」で、標準化に関する解説テキストなどが掲載されていますので、興味のある方は是非ご確認ください。
この中で、
標準化とは、「もの」や「事柄」の単純化、秩序化、試験・評価方法の統一により、製品やサービスの互換性・品質・性能・安全性の確保、利便性を向上するものです。
出典:経済産業省のホームページ「一般の方へ(METI/経済産業省)」
とされており、電子インボイスで考えると、電子インボイスの中身のデジタルデータが標準化されているため、発行元システムを問わず同じフォーマットで送信されるということになります。
先ほどの、会計システムで仕訳ファイルとして読み込みができるCSVファイルで考えると次のようになります。
図をご確認いただけるとお分かりになると思いますが、上の図では会計システムAと会計システムBで求められるデータのフォーマットが異なっている(2列目が会計システムAでは「伝票番号」で、会計システムBでは「税区分」)ため、会計システムA用のCSVファイルは当然会計システムAでは読み込みできますが、そのままの状態では会計システムBに読み込むことができません。下の「構造化」+「標準化」の図では、CSVファイルは標準化されており、フォーマットが統一されているため、システムを問わず同じ処理が可能になることが分かるでしょう。
デジタルインボイスでは、標準化された電子インボイスのデータであるため、送信側のシステム、受信側のシステムを問わずデータの送受信が可能であると理解してください。
インボイスの発行会社と受領会社それぞれで、今までの「構造化」「標準化」を確認してみると次のとおりとなります。
Ⅰでは、発行会社でPDFの請求書を作成し、メールや閲覧サイトなどにより受領会社が当該PDFを受け取るパターンになります。この場合、発行会社では請求書の電子化が実現できていますが、受領会社では受け取ったPDFのデータをそのまま請求管理や会計などのシステムで読み込むことはできないので、データを手入力する必要があります。OCRで読み取りという方法もありますが、OCRで読み取ったデータをチェック、補正する必要があることは多くの方がご存じのことと思われます。
次にⅡでは請求書のデータが構造化されているパターンです。このパターンでも、発行会社では請求書の電子化が実現できています。一方で、受領会社では受け取った構造化されたデータが運よく自社の請求管理や会計システムにそのまま読み込みができるレイアウトであれば工数なく読み込みができますが、あまりそのような話は聞きません。構造化されたデータを受け取っても自社のシステムに読み込むことができないレイアウトであることが一般的で、結果として自社のシステムに読み込むことができるレイアウトに変換して読み込んだり、Ⅰと同様に手入力している、というのが実情ではと推測しています。
そしてⅢでは、請求書のデータが構造化されかつ標準化されているため、フォーマットが統一されておりシステムを問わず同じ処理が可能になります。デジタルインボイスが目指している世界をここで理解していただけると幸いです。
(3) JP PINTに基づく電子インボイスとは
次にJP PINTに基づく電子インボイスについてですが、こちらについては日本のPeppol Authority(PA)として、グローバルな標準仕様である「Peppol(ペポル)」をベースとした日本におけるデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)の管理等を行っているデジタル庁のホームページに詳細な説明があります。
ここでは細かな説明は割愛しますが、JP PINTとは
- 日本におけるデジタルインボイスの標準仕様で
- グローバルな標準仕様である「Peppol(ペポル)」をベースとしている
さて、ここで「Peppol(ペポル)」という新たな単語が出てきました。
ペポルについては、次の第4回のコラムで説明します。
ペポルについて説明することで、ペポルネットワークでやり取りするデジタルインボイス(ペポルインボイス)を理解していただけるとインボイスの類型についてひととおり把握できることとなります。以下に全体像を示しますので、今までの復習と第4回の予習として見ておいてください。
この連載の記事
-
2024.01.22
第6回(最終回) ペポルインボイス採用の手順
-
2024.01.15
第5回 ペポルインボイス利用のメリット
-
2024.01.15
第4回 ペポルでの送受信の仕組みとペポルインボイスについて
-
2023.12.28
第3回 電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは(2)
-
2023.12.28
第2回 電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは(1)
-
2023.12.18
第1回 インボイスと電子インボイスの違いとは
プロフィール
富永 倫教(とみなが とものり)
株式会社TKC 執行役員 企業情報営業本部 本部長
- 略歴
- 平成14年度の連結納税制度創設当初から、TKC連結納税システム(eConsoliTax)のコンサルティング業務に従事し、以来一貫して20年超にわたり中堅・大企業の税務部門に対する税務システムのマーケティングやコンサルティング業務を行っている。現在、消費税のインボイス制度への対応をきっかけにデジタル化を通じた事業者のバックオフィス業務の効率化を実現することを目的に誕生したデジタルインボイス推進協議会(EIPA)幹事法人のメンバーとして活動している。
免責事項
- 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
- 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
- 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。