更新日 2020.03.16

連結納税制度の見直し

第6回 外国税額控除、研究開発税制、受取配当金等の見直し

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 足立好幸

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 足立 好幸

令和2年度税制改正大綱では、連結納税制度の見直しと新たな制度(グループ通算制度)の創設が明記されました。当コラムでは、連結納税制度の見直しと新しいグループ通算制度について、大綱と執筆時点で公表された法案をもとに解説します。

 第6回は、外国税額控除、研究開発税制、受取配当金の益金不算入制度など個別項目について解説したい。
 なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

1.外国税額控除と研究開発税制

 連結納税制度の専門家会合では、外国税額控除及び研究開発税制について、個別計算に変更することも検討されていたが、結果的に、連結納税制度と同様に通算グループ全体で税額控除額を計算することになった。
 なお、外国税額控除額が修正・更正により当初申告額と異なる場合、原則として、進行年度に調整を行うことになる。
 つまり、外国税額控除額に誤りがあった場合、グループ全体で再計算はするが、差額は進行年度の法人税額に加算又は法人税額から控除する、という仕組みとなり、損益通算など他の遮断方式と取扱いが異なることになる。
 研究開発税制については、自社の試験研究費の額又は調整前法人税額に修正・更正が生じた場合でも、原則として、通算グループ内の他の法人の税額控除額に影響させない仕組みとする。
 この場合もグループ全体で再計算は行い、グループ全体の税額控除額が過大となっていた場合は修正・更正をする法人で追徴され、過少となっていた場合は還付されないことになる。つまり、赤字の法人において試験研究費の額が修正・更正された場合は、その赤字の法人において追徴されることを意味する。

2.受取配当金の益金不算入制度

 連結納税制度では、グループ全体で益金不算入額を計算するが、グループ通算制度では次の取扱いに見直される。
 この場合、負債利子控除額の上限額の計算について、通算グループ全体で計算をする仕組みとすることが予定されている(政令で明らかになる)。

  • 1.関連法人株式等に係る負債利子控除額を、関連法人株式等に係る配当等の額の4%(その事業年度において支払う負債利子の額の10%を上限とする)とする。
  • 2.関連法人株式等又は非支配目的株式等に該当するかどうかの判定については、100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人全体の保有株式数等により行う。
  • 3.短期保有株式等の判定については、 各法人で行う。

 グループ通算制度への移行によって、税務調査及び修正・更正の事務負担は減り、申告書の別表も単体納税制度と統一されるものが多いことが予想される。
 そのため、事務負担が軽減されるイメージは生じるだろう。
 しかし、結局のところ、グループ通算制度に移行後も、損益通算、欠損金の通算、外国税額控除、研究開発税制、受取配当金の益金不算入、軽減税率の適用対象所得金額について、グループ調整計算が行われることになるため、現行制度と比較して、決算・申告の事務負担は大きく減らないのではないかと思われる。

3.その他の個別制度の取扱い

 寄附金の損金不算入制度、所得税額控除、特定同族会社の留保金課税等は個別計算を行うことになる。

  • 1.外国子会社配当等の益金不算入制度
     外国子会社の判定については、 連結納税制度と同様とする。
  • 2.寄附金の損金不算入制度
    • 寄附金の損金算入限度額の計算の基礎となる資本金等の額について、資本金の額及び資本準備金の額の合計額とする。
    • 寄附金の損金不算入額は、 各法人において計算する。
  • 3.貸倒引当金
     100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人間の金銭債権を貸倒引当金の対象となる金銭債権から除外する。
  • 4.中小判定
     中小法人の判定について、 通算グループ内のいずれかの法人が中小法人に該当しない場合には、 通算グループ内の全ての法人が中小法人に該当しないこととする。
     なお、中小企業者についても同様とする。
  • 5.所得税額控除
     所得税額控除額は、 各法人において計算する。
  • 6.特定同族会社の特別税率
     特定同族会社の特別税率については、 各法人において計算する。
  • 7.欠損金の繰戻しによる還付制度
     通算グループ内の各法人の繰戻しの対象となる欠損金額は、 各法人の欠損金額の合計額を還付所得事業年度の所得の金額の比で配分した金額とする。損益通算の対象外とされる欠損金額は、配分の対象としない。
  • 8.適用除外事業者
     通算グループ内のいずれかの法人の平均所得金額(前3事業年度の所得の金額の平均)が年 15 億円を超える場合には、 通算グループ内の全ての法人が適用除外事業者に該当することとする。

4.単体納税制度の見直し

 グループ通算制度への移行にあわせて、単体納税制度における受取配当金の益金不算入制度、寄附金の損金不算入制度、貸倒引当金等の見直しが行われる。
 具体的には、上記2・3の下線部分の取扱いに見直しが行われる。
 つまり、グループ通算制度の創設によって、単体納税法人にも影響が生じることになる。

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