連結納税制度の見直し

第7回 適用時期と経過措置

更新日 2020.03.23

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 足立好幸

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 足立 好幸

令和2年度税制改正大綱では、連結納税制度の見直しと新たな制度(グループ通算制度)の創設が明記されました。当コラムでは、連結納税制度の見直しと新しいグループ通算制度について、大綱と執筆時点で公表された法案をもとに解説します。

 第7回は、法人税率や地方税などその他の取扱いと適用時期及び経過措置について解説したい。
 なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

1.法人税率

 法人税率は、通算グループ内の各法人の適用税率による。
 なお、中小法人の軽減税率の適用対象所得金額は、年800万円を所得法人の所得の金額の比で配分した金額とする。
 この配分は、所得の金額に修正・更正があった場合も原則として当初申告した所得の金額により配分する。

2.税効果相当額の授受

 内国法人が他の内国法人との間で通算税効果額を授受する場合には、その授受する金額は、益金の額及び損金の額に算入しない。
 「通算税効果額」とは、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として内国法人間で授受される金額をいう。
 この点、現行制度と同様に、税務上は、グループ内で税金精算をするかどうかは任意であることがわかる。
 一方、現行制度と同様に、他の所得法人に移転した欠損金額や繰越欠損金額に対応する税額(所得法人における税負担の減少額)をグループ内で精算する実務を想定していることがわかる。
 ただし、グループ内の税金精算について、連結納税制度では連結法人税の個別帰属額を親法人と子法人との間でやり取りしているが、グループ通算制度では通算税効果額を別途計算する必要があり、その点で事務負担が増えることになろう(今後、通算税効果額の計算方法について法令等や会計基準で明示されるか確認する必要がある)。

3.申告及び納付(電子申告)

 グループ通算制度の適用法人には法人税の電子申告義務を課すことにする。
 また、親法人の電子署名により子法人の申告及び申請、届出等を行うことができることとするほか、ダイレクト納付についても所要の措置を講ずる。
 その他に、仮決算による中間申告は通算グループ内の全ての法人が行い、申告期限の延長は現行制度と同様に原則2か月間とする。
 なお、現行制度と同様に、親法人及び各子法人には、通算グループ内の他の法人の法人税について連帯納付責任が生じる。

4.地方税の取扱い

 グループ通算制度においても、事業税(所得割)及び住民税(法人税割)については、引き続き、企業グループ内の法人の損益通算の影響が及ばないようにする等の所要の措置を講じる。

(1) 事業税
 事業税の計算の仕組みは現行制度と変わらない。
 連結納税制度と同様に、開始・加入前の繰越欠損金の切り捨て、損益通算、欠損金の通算を適用しない場合の所得の金額に基づいて事業税(所得割)を計算する。
 付加価値割の単年度損益の計算についても同様となる。
 また、事業税の繰越欠損金について、法人税の繰越欠損金とは区別して計算すること及び計算方法は法人税の単体納税の計算方法(法法57)に準ずることも現行制度と同様となる。
(2) 住民税
 開始・加入前の繰越欠損金の切り捨て、損益通算及び欠損金の通算等の影響を生じさせないために調整計算を行う点で現行制度と同様の仕組みである。
 但し、損益通算及び欠損金の通算がプロラタ計算になることによって、法人税割の課税標準(法人税額)の計算過程が大きく変わる。
 詳細は割愛するが、その計算方法、用語、調整項目数など現行制度と比べても非常に複雑な仕組みになっている。

5.適用関係

 グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
 したがって、今期を含めてあと3回は、連結納税制度の申告を行うことになる。

6.経過措置

 連結納税制度からの移行に伴う経過措置は次のとおりとなる。

  • ① 連結法人は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から自動的にグループ通算制度に移行する。
  • ② 連結法人は、連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができる。
  • ③ 連結納税制度における連結欠損金個別帰属額を、グループ通算制度における繰越欠損金とみなす。この場合、連結納税制度における特定連結欠損金個別帰属額をグループ通算制度における特定欠損金額とみなし、連結納税制度における非特定連結欠損金個別帰属額をグループ通算制度における非特定欠損金額とみなす。
  • ④ 連結法人について、グループ通算制度の移行時に開始に伴う取扱い(時価評価、繰越欠損金の切り捨て、含み損等の損金算入又は損益通算の制限)は適用されない。

 上記①②については、既に連結納税制度を採用している企業はグループ通算制度に移行するか、単体納税制度に戻るか、を検討する必要があることを意味している。
 また、上記③について、グループ通算制度では親法人の開始前の繰越欠損金にSRLYルールが適用されるが、グループ通算制度の移行前に連結納税制度を採用した場合、親法人の開始前の繰越欠損金(現行制度の非特定連結欠損金個別帰属額)はグループ通算制度では非特定欠損金(SRLYルールが適用されない欠損金)として持ち込めることになる。
 そのため、親法人に繰越欠損金がある場合は、連結納税制度の駆け込み採用も検討する必要があろう。

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