更新日 2015.03.23
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
平成27年度の税制改正では、昨年度に引き続き、アベノミクス税制として法人の成長支援における税制、財源確保のための改正が行われます。当コラムでは、平成27年度税制改正の概要から、法人実効税率の引き下げ、欠損金制度の変更など影響の大きい改正点を中心に解説します。
前回(第2回)では、収益力の向上・賃上げ等への取り組みを促すための税制改革としての法人実効税率の引き下げについて解説しましたが、今回は、財源確保のための欠損金制度の変更や受取配当等の益金不算入制度の改正の概要を解説します。
1.欠損金の利用制限と繰越期間の延長の概要
今回の税制改正で、法人税率の引下げの財源確保の観点から繰越控除限度額は大企業に関しては所得の80%→65%→50%と段階的に縮小されます。一方で繰越欠損金の控除期限が9年から10年に延長されることとなりました。なお、中小法人等については現行の全額控除に変更はありません。欠損金の控除限度額の減少による税効果会計への影響については留意すべきでしょう。
(1) 欠損金の利用制限の概要
繰越欠損金の控除限度額が下記の通り段階的に縮小されることとなります。
繰越控除前の所得の金額または連結所得の金額に対し
改正前 | ・・・80% |
---|---|
H27.4.1-29.3.31開始事業年度 | ・・・65% |
H29.4.1以後開始事業年度 | ・・・50% |
(2) 欠損金の繰越期間の延長
欠損金の繰越期間は現行の9年から10年に延長されます。
帳簿書類の保存期間及び欠損金額にかかる更正の請求期間についても同様です。
平成29年4月1日以後開始事業年度に生じた欠損金から適用されます。
(3) 中小法人・新設法人・再生法人の取扱い
- ①中小法人等については従来の全額控除制度が継続されます。
- ②設立の日から7年を経過する日までの期間内の事業年度については全額控除が可能となります(上場日等以後に終了する事業年度は対象外)。
※資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人の100%子法人(間接保有を含む)については対象外となります。
- ③更生手続開始決定、再生手続開始決定等があった場合には、決定日から7年を経過する日までの期間内の事業年度については全額控除が可能となります(上場日等以後に終了する事業年度は対象外)。
2.受取配当等益金不算入制度見直しの概要
受取配当等の益金不算入制度は、株式の保有割合に応じて不算入割合が決められていますが、その株式の保有割合が見直され、株式の保有比率が25%~1/3及び5%以下の銘柄を保有している場合には不算入割合が縮減するため税負担が増加する可能性があります。特に、保有割合5%以下の非支配目的株式等については、益金不算入割合が20%に縮小され、金融機関等に大きな影響が出るといわれています。
(1) 完全子法人株式(100%)
現行のまま100%益金不算入とされます。
(2) 関連法人株式等
名称が関係法人株式から関連法人株式に変更され、株式等の保有割合が25%以上から1/3超に改正されました。そのため株式等の保有割合が1/3以下の企業については益金不算入割合が100%→50%に引き下げとなります。
(3) 非支配目的株式等
新たに5%以下の保有割合の企業については、非支配目的株式等の区分が設けられ、益金不算入割合が20%に引き下げられます(保険会社については特例として益金不算入割合40%)。
(4) その他の株式等
上記以外の株式等がその他の株式等に名称が変更されていますが、益金不算入割合50%に変更はありません。
(5) 負債利子控除
上記(3)非支配目的株式等及び(4)その他の株式等については負債利子控除の対象から除外されます。
その他の主な法人税関連の改正点
(1) 試験研究費減税の控除限度額の圧縮
研究開発税制は恒久措置としての総額型および上乗せ措置としての増加型・高水準型(選択制)の枠組みは残りますが、増額型を重視した制度とし、特にその中でもオープンイノベーション型といわれる共同研究などの特別研究について大幅な拡充が行われることになります。
一方で通常の試験研究減税は縮減されることとなります。
(2) 所得拡大促進税制の拡充
個人の所得を増加させる目的で、従業員に対する給与・賞与を増加させた場合に税額控除を受けられる制度(所得拡大促進税制)ができましたが、増加要件については昨年の改正に加えH28年度の増加要件が5%から引き下げられます。
増加要件 | 現行 | 改正後 | |
---|---|---|---|
平成25・26年度・・・ | 2% | → | 改正なし |
平成27年度・・・ | 3% | → | 改正なし |
平成28年度・・・ | 5% | → | 4%(中小法人3%) |
平成29年度・・・ | 5% | → | 5%(中小法人3%) |
(3) 付加価値割への所得拡大促進税制の導入
所得拡大税制の適用を受ける企業については、事業税付加価値割の算定に際し、雇用者給与等支給増加額が付加価値割の課税標準から控除されます。
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プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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