更新日 2015.03.09
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介
平成27年度の税制改正では、昨年度に引き続き、アベノミクス税制として法人の成長支援における税制、財源確保のための改正が行われます。当コラムでは、平成27年度税制改正の概要から、法人実効税率の引き下げ、欠損金制度の変更など影響の大きい改正点を中心に解説します。
1.法人実効税率の引き下げ
(1) 税率引き下げの概要
日本の実効税率はここ数年で40.69%→38.01%→35.64%と約5%段階的に引き下げられてきましたが、各国の税率引き下げもあり依然として諸外国と比べても高い水準にあります。
アベノミクスの成長戦略として、法人税についても成長志向に舵を切り、デフレ脱却、経済再生を確実にするため、収益力の向上・賃上げ等への取り組みを促すための税制改革が実施され、まず当初2年間で3.29%引き下げ、その後20%台まで引き下げを目指すこととなります。
実効税率の引下げになりますので、税効果会計にも影響を与えることになります。また、従来のような税率の変更が1回にとどまらず複数年度にわたっての税率変更になりますので、税効果計算ロジックがかなり複雑化することになります。
(2) 法人実効税率の段階的引き下げ
現行の法定実効税率(標準税率)34.62%が順次引き下げられます。
法人税率の引き下げ及び法人事業税所得割を段階的に引き下げることで法定実効税率は平成27年度、平成28年度で順次引き下げられ平成28年度の実効税率は31.33%へと3.29%の引き下げとなり、平成29年度以降については、20%台へのさらなる引き下げを検討することとされています。
年度 | H26年度 | H27年度 | H28年度 | H29年度以降 |
---|---|---|---|---|
実効税率 | 34.62% | 32.11% | 31.33% | 20%台 |
(注)実効税率は、超過税率が未公表のため、東京都の場合ではなく標準税率を使用した場合としています。
2.法人税率の改正
25.5%→23.9%に変更されます。
※地方法人税(基準法人税額の4.4%)については変更されません。
3.中小軽減税率の見直しの見送り
中小法人(資本金1億円以下)や公益法人等・協同組合等の軽減税率の見直しについては今後の検討課題とされ、2年間延長されます。
4.法人事業税・地方法人特別税率の改正
外形標準課税対象法人への法人事業税の税率が以下の通り改正されます。
法人税及び全都道府県の事業税・地方特別法人税が複数年度にわたり変更されることから大きな事務負担となるのでご留意ください。
5.住民税均等割への無償増減資等の金額の調整措置
住民税均等割の課税標準の資本金等の額に無償増減資等の金額を加減算する措置が講じられます。
6.資本割・均等割の課税標準の見直し
資本割及び均等割の課税標準が、以下の通り変更となります。自己株式の取得等で資本金等の額がマイナスになっている企業は税負担が大幅に増加します。
- (改正前)
- 資本金等の額(資本金+資本積立金)
- (改正後)
- 原則:「資本金等の額」。ただし、「資本金等の額」<「資本金+資本準備金」の場合には「資本金+資本準備金」
7.中堅企業に対する経過措置
資本金1億円超の普通法人のうち、改正後事業年度の付加価値額が40億円未満の法人については、事業税額が前年度末の計算額を超える場合には2年間最大1/2が減算されます。
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プロフィール
税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
- 略歴
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ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。 - 著書等
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- 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
- 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
- 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
- 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
- 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
- システム・コンサルティング事例
- ホームページURL
- ビジネス・ブレイン税理士事務所
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