2024.02.20
再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件(名張毒ぶどう酒殺人事件第10次再審請求特別抗告棄却決定)
LEX/DB25573300/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 1月29日 決定 (特別抗告審)/令4年(し)第206号
申立人の兄である被告人(当時35歳。事件本人)は、妻(当時34歳)と愛人(当時36歳)との三角関係の処置に窮し、両名を殺害してその関係を清算しようと考え、昭和36年3月28日、事件本人及び両名らが所属する生活改善クラブの年次総会と懇親会が開催される三重県名張市内の公民館に女子会員用のぶどう酒を運び入れた上、公民館に誰もいなくなった隙に、女子会員らが死亡するかもしれないことを十分認識しながら、本件ぶどう酒を開栓して、竹筒に入れて忍ばせて持参していた有機燐テップ製剤である農薬ニッカリンTを4ないし5cc注入し、替栓(内蓋)を元どおりかぶせるなどし、同日午後8時頃、懇親会に出席した女子会員20名に提供させ、これを飲んだ17名につき、有機燐中毒により、妻と愛人を含む5名を死亡させて殺害し、12名に傷害を負わせ、3名については飲ませるに至らなかったとする殺人、殺人未遂事件につき、事件本人は、確定審において、犯人ではないと主張したが、確定判決は、事件本人に対し無罪を言い渡した第1審判決を破棄し、事件本人が犯人であると認定して、事件本人を死刑に処した。事件本人が上告を申し立てたが棄却され、上記確定判決は確定した。事件本人は、これまで9回にわたり再審請求に及んだが、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生じさせるものではないと判断され、いずれの再審請求も棄却された。本件は、事件本人(平成27年10月4日死亡)の妹を申立人とする第10次再審請求で、再審請求棄却決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告した事案で、本件再審請求において提出された各新証拠を併せ考慮してみても、確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないというべきであり、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原々決定を是認した原決定は正当であるとして、本件抗告を棄却した事例(反対意見がある)。