更新日 2025.04.21
TKC税務研究所 特別研究員
鈴木 久志
近年、益々、法人事業税において外形標準課税の重要性が増している現状において、その基本的な仕組みを理解しておくことは非常に意義のあることと考えます。本稿では、外形標準課税制度についての理解を深めていただくベースとして、その仕組みなどをできるだけ分かりやすく解説したいと思います。本稿が外形標準課税の理解の一助となれば幸いです。
当コラムのポイント
- 外形標準課税の基本的な仕組み
- 税制改正の影響
- 分割基準の概要
- 目次
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おわりに
平成15年度の税制改正における外形標準課税の創設時には、事業税の総額は外形標準課税の導入前と変わらないようにし、事業税に占める外形標準課税の税収ベースでのウエイトを全体の25%程度になるようにすることとした設計をし、スタートしたといわれています。その後、外形標準課税のウエイトは、平成27年度に37.5%、平成28年度からは62.5%とどんどんと高まってきております。
また、令和6年度の税制改正では、従来、外形標準課税の対象法人については、単純に資本金の額1億円超の法人という基準によって判定していたところ、減資等による外形標準課税を回避する動きが見られたため、そのような動きに対応するために対象法人の見直しが行われており、今後も、益々、法人事業税では、外形標準課税の重要性が増していくものと考えられます。
また、令和7年度の税制改正大綱には「事業税付加価値割の課税標準の算定について、法人が各事業年度にオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる土地又は家屋の賃借を行った場合において、その取引に係る契約に基づきその法人が賃借権等の対価として支払う金額があるときは、その金額のうち法人税の所得の計算上損金の額に算入される部分の金額は、その損金の額に算入される事業年度の支払賃借料とするほか、所要の措置を講ずる。」(下線筆者)とあり、リース会計基準の改正に対応した改正が行われるようです。
従来、単に賃貸借取引として支払賃借料を計上すればよかった建物の賃借などについても、一定の金額以下のもので重要性の乏しいものを除き、オンバランスの処理が求められ、建物の賃貸契約締結時において、使用権資産、リース負債として貸借対照表に計上することが求められるようです。会計処理としては、賃料の支払時に、リース負債を減少させ、支払利息を計上し、資産として計上していた使用権資産については、減価償却費の計上によって減少させていくといった処理が必要になるようです。
外形標準課税への影響としては、基本的には、法人税の所得の計算上損金の額に算入される部分の金額について、その損金の額に算入される事業年度の支払賃借料とするということであり、法人税の所得の計算をしっかりやっていただければ、大きな影響はないということになろうかと思われます。また、大綱では、賃借権等の対価として支払う金額のうち法人税の所得の計算上損金の額に算入される金額を支払賃借料とするということなので、当該支払の際に会計上支払利息とされている部分があったとしても、それは、純支払利子の対象とするのではなく、純支払賃借料の対象として計算するということになるのかと思われますが、外形標準課税の計算上、どちらで計算しても、収益配分額の純支払利子になるか、純支払賃借料になるかの違いであり、基本的には合計金額としては変わらないため、大きな影響はない(純支払利子又は純支払賃借料がマイナスとなっている場合には、それらを零として計算するため影響が出ます。)のですが、いずれにしても、今後成立する法令や発遣される通知によって具体的な取扱い等が明らかになってきますので、今後の動向に注目しておく必要があります。
本稿では、法人事業税の概要について、外形標準課税の基本的な仕組みなどを中心に説明いたしましたが、法人事業税において、外形標準課税の重要性が増してきている現状において、その基本的な仕組み等を理解しておくことは、非常に意義のあることと考えます。
本稿が、外形標準課税の理解の一助となれば幸いです。
了
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第1回 法人事業税の概要(外形標準課税を中心に)
プロフィール
鈴木 久志(すずき ひさし)
TKC税務研究所 特別研究員
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