更新日 2022.05.23
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
税理士 小山 勝
いよいよ、令和4年4月1日以後に開始する事業年度からグループ通算制度が始まります。
当コラムでは、グループ通算制度において重要になる“子会社を含めたグループ全体”の体制構築のためのポイントを整理し、6回にわたり各ポイントについて解説します。
- 目次
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グループ通算制度の適用を受けるためには、親法人となる内国法人及びその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人である子法人のすべてが、国税庁長官から通算承認を受ける必要があります。
そして、この通算承認を受けるためには、親法人の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の3月前の日までに、親法人及び子法人すべての連名で、通算親法人の納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官にグループ通算制度の承認の申請書を提出する必要があります。
グループ通算制度の適用を受けると、親法人が、法人税の計算に必要な情報を必要な時期までに子法人から収集する仕組みを構築しなければならなくなりますが、この申請書の提出は、親法人及び子法人が行う初めての共同作業ともいえます。
1.グループ通算制度の承認の申請における提出書類・提出時期
申請に必要な書類は以下のとおりです。なお、これらの書類の様式は、国税庁のホームページから入手することができます。
グループ通算制度の承認の申請(国税庁)
(1) 親法人が作成する書類
親法人は次の書類を作成し、子法人が作成する下記(2)の書類と併せて、原則としてグループ通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日の3月前の日までに提出します。例えば、3月決算法人の場合は、申請書の提出期限は12月末になります。
- ①グループ通算制度の承認の申請書(兼)e-Tax による申告の特例に係る届出書(初葉)
- ②付表1(通算親法人となる法人の主要株主等の状況)
- ③出資関係図、グループ一覧
なお、設立事業年度からグループ通算制度の適用を受けようとする場合には、設立事業年度開始の日から1月を経過する日とその設立事業年度終了の日から2月前の日とのいずれか早い日が提出期限となります。
また、設立事業年度の翌事業年度(その設立事業年度が3月に満たない場合に限ります)からグループ通算制度の適用を受けようとする場合には、設立事業年度終了の日とその設立事業年度の翌事業年度終了の日から2月前の日とのいずれか早い日が提出期限となります。
(2) 子法人が作成する書類
子法人は次の書類を作成し、書類の提出期限に間に合うように親法人へ提出します。書類に記載する内容がわかるのであれば、実務上は、子法人に代わって親法人が作成するケースもあると考えられます。
- ①グループ通算制度の承認の申請書(兼)e-Tax による申告の特例に係る届出書(次葉)
- ②付表2(発行済株式等の状況)
2.申請書の作成上の留意点
次に、申請書に係る作成上の主な留意点について確認します。
(1) 「グループ通算制度の承認の申請書(兼)e-Tax による申告の特例に係る届出書(初葉)」
通算親法人となる法人が(初葉)を、通算子法人となる法人が(次葉)をそれぞれ作成し、すべての法人分を親法人がとりまとめます。
グループ通算制度の適用を受けると、法人税及び地方法人税の申告については、資本金1億円以下であっても電子申告(e-Tax)義務化の対象になります。そのため、電子申告の義務化対象法人に該当するという届出を兼ねた様式となっています。
(初葉)には「通算子法人となる法人」欄があり、「(子法人数 法人)」の空白箇所には、(次葉)を作成した子法人数を記載します。子法人数が一致していないと申請が却下されるケースもありますので、留意してください。
また、(初葉)・(次葉)とも「法人の帳簿組織の状況」を記載する欄があります。ここは、法人で備付け・保存している帳簿書類の□にレ印を付してください。通算法人については、青色申告に従った帳簿書類の備付け・記録及び保存の要件が定められています。
なお、提出部数に関してですが、電子申請で提出する場合は1部、つまり1度のデータ送信で済みますが、紙により提出する場合は3部必要です。
(2) 「付表1 通算親法人となる法人の主要株主等の状況」「付表2 発行済株式等の状況」
通算親法人となる法人が付表1を、通算子法人となる法人が付表2をそれぞれ作成し、申請書に添付します。
付表1の「通算親法人となる法人の主要株主等の株式数等」欄には、発行済株式の総数又は出資の総額に対する保有株式数又は出資金額の多い上位10株主等に係る氏名等を記載します。記載する株主等の氏名や保有株式数等は、申請時における状況であり、直近の申告書に記載した前期末の状況ではありませんので、留意してください。
付表2には、通算子法人となる法人の発行済株式の総数、自己の株式数、従業員持株会が有する株式数等の事項を記載します。「出資関係図における一連番号」欄には、後述する「出資関係図」や「グループ一覧」で付した一連番号を記載します。
(3) 「出資関係図」「グループ一覧」
いずれも通算親法人となる法人が作成し、申請書に添付します。申請書に記載したすべての法人を記載します。特に決まった様式があるわけではなく、記載内容に漏れがなければ、法人独自のレイアウトでエクセルやワードにより作成して大丈夫です。国税庁からはサンプルが公表されていますので、作成にあたっての参考としてください。
3.手続きについての留意事項
申請をした後にもいくつか留意するポイントがありますので、それらを簡単に確認します。
(1) 通算承認又は却下の処分
親法人が申請書を提出した後は、国税庁長官がその申請に対して通算承認又は却下の処分をします。ただし、事業年度開始の日の前日までにこれらの連絡がなかった場合は、親法人及び子法人のすべてについて通算承認があったものとみなされ、事業年度開始の日からその効力が生じます。実務上は、この「みなし承認」となることが多いでしょう。
(2) 申告期限の延長の特例
通算制度に際し、法人税の確定申告について申告期限の延長の特例の適用を受けようとする場合は、親法人が「申告期限の延長の特例の申請書」を所轄税務署長に提出する必要があります。これは、通算制度を適用開始する前、つまり、個別申告をしていた際に申告期限の延長の特例の適用を受けていた場合であっても、改めて提出する必要があります。なお、通算子法人は、この申請書を単独で提出することはできません。
提出期限は、適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から45日以内とされており、提出のタイミングが通算制度の承認申請書とは異なります。失念しないように留意しましょう。
延長申請が承認された場合は、原則2か月の申告期限の延長が認められます。
また、法人税の確定申告について延長申請が承認された場合でも、消費税については適用がないことにも留意してください。消費税の確定申告について申告期限を延長しようとする場合は、別途手続きが必要です。
(3) 各都道府県・市町村に対する手続き
通算制度の承認を受けて通算法人となったときは、事務所等が有する各都道府県・市町村に対して、通算制度の承認に関する届出書を提出しなければなりません。この届出書の様式や添付書類、提出時期は都道府県・市町村により異なりますが、例として、東京都の場合は、通算法人となった日から15日以内に「法人税に係るグループ通算制度の承認等の届出書」を、提出することとされています。
また、法人税の確定申告について申告期限の延長申請が承認されたときは、主たる事務所等が所在する都道府県に対して、届出書や申請書を提出する必要があります。これも都道府県によって様式等や提出時期が異なります。
いずれも、地方税(住民税・事業税等)に係る手続きですので、通算親法人・通算子法人ともそれぞれ必要な書類を用意し、定められた期限までに提出する必要があります。
通算制度の開始に当たっての手続きは普段から出てくるものではなく、企業にとっては馴染みが薄いものです。ご不安な方は、通算制度に詳しい専門家(税理士法人など)に相談しながら、対応を進めることをお薦めします。
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第1回 グループ通算制度体制構築のポイントの概要
プロフィール
税理士 小山 勝(こやま まさる)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC全国会 システム委員会 FXクラウド(固定資産)小委員会会員
- 略歴
- 2011年9月まで株式会社TKC勤務を経て、現在、税理士法人青山アカウンティングファームに勤務。株式会社TKCでのシステム設計・営業経験を活かし、上場企業から中小企業までの税務顧問業務、会計・税務申告システムの導入・運用コンサルティング等に従事。
- 主要著書
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- 『令和6年用 法人税申告全書 2023年 12月号』 (税経通信)
- 『月刊税務QA』(税務研究会)、『税経通信』(税務経理協会)などに執筆
- ホームページURL
- 税理士法人 青山アカウンティングファーム
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