実務に大きな影響が出る「消費税の軽減税率制度とインボイス」

第1回 消費税軽減税率制度の概要とスケジュール

更新日 2018.10.22

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会
税理士 畑中 孝介

2019年10月1日より、先送りされてきた消費税の10%の引上げと軽減税率が導入されることになりました。また、2019年10月1日から「区分記載請求書等保存方式」を経て、2023年10月1日にはインボイス方式である「適格請求書等保存方式」が導入されます。
当コラムでは、実務面に影響を与える課題についての対応策を講じていただくために、軽減税率とインボイス方式について解説します。

はじめに

 数年来、先送りされてきた消費税の10%の引上げと軽減税率の導入が、いよいよ2019年10月1日に導入されることになりました。対象品目は「飲食料品(酒類・外食を除く)」及び「新聞」とされます。小売・卸売・飲食等直接売上に関わる業種だけでなく、飲食や飲料などほぼすべての事業者が購入側として軽減税率への対応を行う必要があります。
 また、2019年10月1日からの現行制度をベースにした「区分記載請求書等保存方式」を経て、2023年10月1日にいわゆるインボイス方式である「適格請求書等保存方式」が導入されます。
 税率が複数にわたることから、請求書の記載要件や帳簿の記載事項が増えるとともに、適格請求書の発行事業者登録なども必要になりますので、各種システムや仕入税額控除要件などの見直しが必須になるでしょう。特に免税事業者等の登録事業者でない事業者からの仕入等については「仕入れ税額控除の対象外」になるなど実務面に大きな影響が考えられます。
 事業者、経営者にとって、軽減税率は税務の問題にとどまらず、請求書発行、会計システムやレジシステムの変更、各種経費精算システムの変更改修や軽減税率対象品目の従業員教育など、多岐にわたる検討課題があります。
 上記のように、経理部門だけでなく現業部門等に大きな影響が発生しますので留意してください。

※当コラムでは経理部門に与える影響を主に記載しています。
そのため一般的な内容及び詳細な内容等については「Q&A改正消費税・税率アップ・軽減税率への実務対応」(注)をご参照ください。

(注)TKC会員のみ購入できる書籍です。TKC会計・税務セミナーに参加されるか、お近くのTKC会員にお問い合わせください。

 また、制度の骨子は平成28年度税制改正法案での内容とほぼ同一になっております。

1.スケジュールの概要

 下記図表の通り、制度としては大きく分けて2段階に分かれます。

  • ① 第1段階として現行制度に記載事項を加えた「区分記載請求書等保存方式」(2019年10月1日~)
  • ② 第2段階としてインボイス制度が導入される「適格請求書等保存方式」(2023年10月1日~)

 第1段階は現行の制度の延長線上であり、罰則等もなく、仕入れ税額控除の方式も現行制度同様です。
 一方で第2段階はインボイス方式となっており、罰則等も強化されるとともに「適格請求書等」が発行されないもの、適正に請求書や帳簿が記載されていないものについては「仕入税額控除ができなくなる」など、現行制度とは大きく異なります。

2.税率

 軽減税率の対象となる課税資産の譲渡等は2種類とされ、軽減税率は 8%(消費税6.24%、地方消費税1.76%)とされます。

※通常の8%税率とは国税・地方税の割合が異なるため税率区分は別区分と考えるべきでしょう。

(1) 対象品目
  • ①「飲食料品」…食品表示法に規定する食品(酒類と外食等が除外)  飲食料品と飲食料品以外の資産が一体となっているもの(一体商品)については、一体資産の販売価格(税抜)が1万円以下のもので、その価額のうち食品に係る価額が3分の2以上を占めているときに限り、全体を飲食料品として軽減税率の対象とされます(一体資産全体の価格のみが提示されている場合に限る)。例えば、おもちゃ付菓子、ティーカップと紅茶セットなどです。
  • ②新聞
     一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行される新聞で定期購読契約が締結されたものに限られます。
     適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されるまでの間は、現行の請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応するための措置が講じられます。
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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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